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15周年を迎えた元祖「アサシン クリード」。徐々に解き明かされていく謎、自由度の高い暗殺アクションが魅力の1本
2023年1月31日 00:00
- 【アサシン クリード】
- 2008年1月31日 日本発売
いまではユービーアイソフトを代表するタイトルとなった「アサシン クリード」シリーズ。その記念すべき第1作目「アサシン クリード」がグローバルで発売されたのは2007年11月29日。日本では、2008年1月31日にプレイステーション 3版が発売された。その後シリーズは、メジャータイトルだけでも12本、他にゲームやコミック、アニメに映画と無数のスピンオフ作品が生み出されている。
今年は15周年記念作品となる「アサシン クリード ミラージュ」が発売される予定。発売日はまだ不明だが、日本が舞台となる「アサシン クリード レッド」も発表されている。本稿では、当時の思い出なども交えつつ、第1作「アサシン クリード」について語っていきたい。
え? このゲームSFなの?
本作が発売された当時、筆者はMMO世界の住人として日夜レベル上げにいそしんでいたため、ちょっとばかりコンソールの事情には疎くなっていた。そのため当初は“なんだかカッコいいあんちゃんが出てる歴史ゲーム”くらいの認識だった。あまり得意ではないアクションゲームだったこともあり、気にはなるけれど、まあ、とりあえずレベリングが忙しいからそれどころじゃない。
だがある日、ふと「アサシン クリード」の話題になった時、友人がこんな言葉を口にした。
「ああ、あれSFですよ」
え? SFなの? 歴史ものじゃないの?
その後は、いくら問い詰めても、「これ以上はネタばれなので」の一点張りで何も答えてもらえなかった。なるほど、プレイした今となっては彼の気持ちはよくわかる。だが、隠されると気になるのが人間というもの。この時だって、ほんの雑談程度の軽い気持ちだったというのに、この会話の後めちゃめちゃ気になって即購入した。
そう、本作を世界遺産観光山登り歴史アクションゲームだと思っている人は多いと思うが、実はSFなのだ。
本作の本当の舞台は現代で、主人公は、家を飛び出しバーテンダーをしているデズモンド・マイルズという青年だ。彼はアブスターゴ社という会社によって拉致され、よく事情のわからないままアニムスという装置でDNAに残った先祖の記憶を追体験することとなる。
このデズモンドの先祖こそ、伝説のアサシンと名高いアルタイル・イブン・ラ・アハド。ゲームは過去パートと現代パートを交互に繰り返しながら進んでいく。
暗黒の中世、十字軍の侵攻に耐える中東が舞台
「アサシン クリード」第1作目の舞台となるのは、1191年のダマスカス、エルサレム、アッカなどの都市とその周辺。ちょうど1189年から始まった第3回十字軍遠征の真っ只中。1187年からイスラムの英雄サラディンの進撃によって、エルサレムをはじめ十字軍が治めていた十字軍国家が壊滅した。
この事態を受けて、教皇グレゴリウス8世の呼びかけにより、イングランド王リチャード1世(獅子心王)や、フランス王フィリップ2世、神聖ローマ帝国フリードリヒ1世らが参加した第3回十字軍遠征が行なわれることとなる。
なんだか世界史の教科書のような話だ。「アサシン クリード」はもちろんフィクションだが、綿密な時代考証によって当時の雰囲気を正確に再現することに労力が注がれている。
例えば、イスラム勢力が治めるダマスカスやリチャード1世の軍勢が迫るエルサレムではサラディンの名前を出して徹底抗戦を訴える人が町で演説をしているが、リチャード1世に占領されているアッカでは十字軍に恭順を示すよう説得が行なわれている。
もちろん、ゲーム的な制約もあり完璧に再現できるわけではない。だが、多分こんな雰囲気だったのではないか、という空気感はよく表現できている。その中でも特に筆者のお気に入りは、暗殺を決行した後に街中に響き渡るヒステリックな鐘の音と、エルサレムで暗殺を邪魔してくる物乞い。物乞いは、そのせいで兵士に見つかったりとイラつかせてくれる厄介者ではあるが、もしかするとこういうことがあったかもしれないと思わせてくれるリアリズムがある。
暗殺方法は自由。伝説のアサシン、アルタイルを操作
ゲームの主人公は、アサシン教団のマスターアサシン、アルタイル。非常に能力が高く、若くしてマスターアサシンの座に就いたが、その才能ゆえに自分の力を過信し、ある任務で大失敗したうえに仲間を危機に陥れてしまう。その罪によって見習いに降格されたアルタイルは、汚名返上のために、導師アル・ムアリムから命じられる任務をこなしていく。
任務は毎回同じ段取りで進んでいく。最初に本拠地マシャフでアル・ムアリムから標的の情報をもらう。情報をもらったら、馬に乗って目的地まで旅をする。街ではまずアサシン教団の隠れ家を訪ねて、情報をもらう。この情報を基に探索を開始する。
マップのあちらこちらにある塔や教会などのビューポイントに上って街を見下ろすことで、証拠を集めるためのミッションがマップ上に表示されるようになる。「アサシン クリード」では、ビューポイントはまださほど高くないので、登るときに背筋を寒くせずに済む。これが「アサシン クリード II」になると、格段に高くなり、ビューポイント登りも手に汗握るスリリングな要素になる。
マップのマーカーを頼りにスリや盗聴、尋問などのミッションをこなして証拠をつかむと、再び隠れ家に戻って暗殺の許可をもらう。これだけの段取りをこなしてようやく暗殺がスタートする。後半までずっとこのサイクルが繰り返されるところは冗長さもあるが、移動方法や暗殺手法、暗殺の順番などは自分で選ぶことができる。
最初に兵士を倒して減らしておいたり、市民救出ミッションをこなして逃亡を手助けしてくれる自警団を呼び出してもいい。この第1作目では、飛びかかりながらの暗殺や、壁につかまっての暗殺がまだできないので、相手の背後から近づいて倒すか、剣で戦って倒すことになる。
暗殺に成功するとターゲットと短い会話を交わすカットシーンが挿入される。ここで交わされる会話で少しずつ作品の秘密が紐解かれていく。
アクション要素はシンプル、簡単操作でクールに決まる
本作のアクション要素は、アクションゲームとしてはかなりシンプルな作りになっている。難易度設定はなく、武器は剣、短剣と投げナイフ、素手、アサシンブレードの4種類のみ。
剣は威力があるが、攻撃スピードが遅く、大勢の敵に囲まれた時には使いにくい。短剣は逆に大勢に囲まれた時に威力を発揮する。投げナイフは5つしか持てないが、遠距離の兵士を一発で仕留めてくれる。
アサシンブレードは、左手の手甲の中に隠されている暗殺用の刃で、手の動きで出し入れを行なう。使用するとき邪魔にならないよう、この武器の使い手はみんな左の薬指を切り落としている。
素手は、情報を持っている相手を殴って尋問したり、任務の最中に通行を妨害してくる邪魔なNPCを殴って追い払うために使う。中盤以降は、投げナイフを調達するために、街の暴漢を襲ったりもする。なんとも物騒な話だが、なにしろ暗殺者なのだからこの程度は朝飯前だ。相手から鍵や手紙をスリ取るミッションもある。
アクションはストーリーが進むごとに少しずつアンロックされていく。カウンター攻撃やつかみ返しができるようになると、10人近い敵を相手にアサシン無双を演じることも可能になる。本来はギリギリまで群衆の中に身を隠し、ターゲットを暗殺した後は、群衆の中に溶けるように消えていくというのがマスターアサシンらしい仕草なのだろうが、なかなかそうはいかない。
ボスがめちゃくちゃ強いというわけではない。もちろん後半のボスたちはそれなりに歯ごたえがあるが、ターゲットにしているのは欲深い商人だったり、怪しげな実験をしている医者だったりと、悪者ではあるが戦闘力皆無の相手もいる。
「アサシン クリード」では彼らをいかに、らしく、そつなく、かっこよく暗殺するかが問われる。別にそれに対してBランクからSランクまで評価が付くわけではないが、伝説のアサシン、アルタイルにかっこ悪いことをさせたくないという気持ちがすべてだ。
本作はカウンターを上手く決めると、特殊フィニッシュが発動する。いくつかパターンがあり、そのすべてがカッコいい。つまり本作におけるアクションとは、いかにカッコいいカウンター攻撃で敵を倒すかということになる。カウンター攻撃は、敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押すと発生するので、とりあえずボタンを押しまくっていれば素人でもマスターアサシンぽい動きができる。
アクションゲームではあるが、筆者のように複数のボタンを組み合わせた複雑なアクションにはついていけません、というアクションゲーム弱者にとても優しいところは、筆者としては推したいポイントだ。
怒られ、けなされ、それでも頑張るアルタイル
さて、次に本作の主要ギミックであるステルスを紹介しよう。
ステルスの基本は群衆に紛れ込むこと。「アサシン クリード」の敵兵士は怪しいものを見るとすぐに疑い始め、そのまま一定時間が経つと「アサシンだ!」と叫びながら襲ってくる。
その疑いを回避するため「祈る」というアクションで巡礼者を装う。兵士がずらりと並んで入れない場所でも、巡礼者に交じって入り込むことができる。
街では椅子に座ることで目に付きにくくなる。パルクール的なアクションが売りの作品だが、人目がある場所だと、ちょっとでも壁をよじ登ろうとすると、「あいつは何をしているんだ!」、「いい大人が、まるでガキだ」、「あれはなんの意味があるのじゃ」と四方八方から即時避難の声が響く。
本当に、そこまで責めなくてもいいじゃないか! と思うほど飛んでくる。警戒度が高い状態だと、うっかり柵に乗ってしまった瞬間「アサシンだ!」と襲われることもある。「何もやってないじゃん!」と言い訳しながら必死に逃げる。
一度見つかってしまうと、相手の視線が届かない場所まで行ってから積み藁やあずま家に隠れることで状態をリセットできる。逆に言うと、隠れなければずっと警戒状態が解除されないので、いつまでもいつまでも目が合うなり襲ってくる。
結果的に、本作では事を起こすまでは、ほんとうにおとなしく、慎重に行動しなくてはならない。壁を上ると目立つので、回り道してでも梯子を使う。歩いている時には、ツボを運んでいる人にぶつかってツボを割ってしまわないよう、「○」ボタンで人を押しのけながら歩く。兵士に見られる場所では祈りながらゆっくりと歩く。
兵士からは常に威嚇され、町の人からは非難され、上司からは注意され、同僚には嫌味を言われる。そんな針のムシロでもアルタイルは頑張る。目立たないように人ごみに紛れ、証拠を集め、ターゲットを追い詰める。そして、暗殺した後は、もう人目なんか構っている暇はない。とにかく兵士の視線が切れるまで逃げて逃げて逃げまくる。
抑圧と解放、その落差が本作の最大の魅力だ。自らの前科を悔いて、どんな逆風が吹いても文句を言わず黙々と任務をこなすアルタイル。しかし、真実にたどり着いた時。そこまでため込んだプレーヤーの気持ちも、一気に解き放たれる。そして訪れる驚愕の結末。こればかりはぜひ実際にプレイしてその目で見てほしいところだ。
原点回帰の「アサシン クリード ミラージュ」は2023年発売
本作では、終盤近くになるまで調査、暗殺という任務の流れが淡々と繰り返される。謎はなかなか解き明かされず、倒したターゲットたちが残す言葉も抽象的でわかりづらく、そういった要素が絡み合って単調で飽きると評されることもある。
だが、そんな抽象的なセリフの中から次第に見えてくる真実がはっきりと見えた瞬間、今までのじれったさは一気に吹き飛んでいく。そのカタルシスこそ、シリーズをここまで成長させてきた最初の原動力なのだ。
確かに、初代「アサシン クリード」はまだまだシステム的に洗練されておらず、粗削りな要素も多い。だが、そういった部分は「アサシン クリード II」から続くいわゆるエツィオ3部作でどんどん進化していく。だから、もし本作をプレイするなら、ぜひその後に続く3部作も遊んで欲しい。デズモンド・マイルズを主人公とした物語は、さらにその次の「アサシン クリード III」で一応の完結を見て、「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」からは現代のストーリーも別の展開に入っていく。
残念なことに、プレイステーションのサブスクリプションサービス「PlayStation Plus」には「アサシン クリード II」以降しかなく、UBIのサブスクリプションサービス「Ubisoft+」では英語版「アサシン クリード」しかない。現在「アサシン クリード」を日本語で遊ぶには、Xbox 360版かPS3版の「アサシン クリード」か1作目と2作目がセットになった「アサシン クリード I+II ウェルカムパック」を購入するしかない。
では、いま遊べるタイトルから選ぼうと思った場合、どこからプレイすればいいのか迷うかもしれないが、ストーリー的な繋がりがあるのは現代パートのみ。歴史パートはそれぞれ個別のストーリーがあるので、観光したい時代や場所でタイトルを選べといいだろう。
ゲームの時代背景は、ルネッサンス期のイタリア、フランス革命、アメリカ独立戦争、産業革命時代のロンドン、古代エジプト、古代ギリシアなど日本人から見てもワクワクするような舞台が盛りだくさんだ。
そして、今年発売される最新作「アサシン クリード ミラージュ」は、再び原点である中東へ戻ってくる。しかも原点回帰として、オープンワールドではなく久しぶりにストーリードリブンで進行するゲームになるそうだ。
時代設定的には「アサシン クリード ヴァルハラ」の少し前、9世紀のバグダッドが舞台となる。当時はバグダッドの最盛期。「平安の都」として隆盛をきわめた100万都市がゲームの中でどのように描かれるのか、そこでどんな物語が起きるのか期待は尽きない。
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