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音響デザイナーに求められるものとは? 大河ドラマ「麒麟がくる」のサウンドデザインについてNHKの音響デザイン部が紹介
2020年9月2日 19:28
- 【CEDEC 2020】
- 9月2日〜9月4日 開催
ゲームだけでなく、映画やドラマ、その他ほとんどの映像コンテンツを彩る“音楽”。その音楽は、どのようにして作られ、どのようにして流れるのか。本日9月2日より開催されている「CEDEC 2020」にて、NHKの音響デザイン部である畑奈穂子氏と坂本愛氏がNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のサウンドデザインについて、音楽制作と音響制作の2点を紹介した。
音響デザインとは、番組の枠や視聴者層、内容を検討し、音の方向性と世界観を構築する仕事だ。作曲家の選定や、その番組に必要な音楽のイメージを伝える作曲コーディネーションなどを行なう。また、ストーリーと感情の起伏を読みながら、台詞以外の音を制作・配置し舞台の空間を創っていく。そして最終的に、MA作業(MIX)をしていく。
そのためにも、まずはサウンドがどういうところを目指すのかを決めるのだという。「麒麟がくる」では、大河ドラマの歴史を考えつつも、久々に戦国大河として原点回帰をするということもあり、従来の戦国ファンはもちろん、若い視聴者層へ訴求するようなエンタテインメント性を追求するという点。また、2020年という新時代に突入していく年として、新たなチャレンジをしたいという点。そのほか、「戦国叙事詩」にふさわしいスケール感、普遍的なダイナミクス表現、「麒麟」の象徴となる民の平和への希望、命の尊さを表現するという点をピックアップし、そこを目指す道に決めたとのこと。
そこから作曲家を選定するのだが、ダイナミックな表現がほしいという希望から、「外国の作曲家はどうだろう」という話に。紆余曲折ありながらも、過去に「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」などを担当した作曲家ジョン・グラム氏が担当することになった。
通常、大河ドラマでは、平均して3回ほど録音し、曲数は平均150曲ほどになるという。また、スケジュール的に毎回「フィルムスコアリング(映像にあて録り)」することは難しいため、楽曲ストックの中から音響デザイナーが劇伴を入れる箇所を決め、選曲と編集し、演出と打ち合わせをして決定する。
今回の「麒麟がくる」では、外国の作曲家ということもあり、下記のようなワークフローで進められたことが紹介された。
作曲家にはどんな音楽が必要なのかを考え、それを伝えるわけだが、そこでは、使用する楽器などを限定しすぎず、作曲家のイマジネーションを刺激するような内容を伝えられるようにしているのだという。
次に、「麒麟がくる」での音響制作の話に移った。「麒麟がくる」のサウンドエフェクトは、戦国の混沌として時代観、その対比として、日本の美しい四季の表現、音全体としての臨場感、感情の流れを明確にし、音楽以外でも“意図”を持たせたSEの配置、キャラクターの濃い登場人物を象徴するキーサウンド、そして、「静」と「動」を際立たせるための1話43分の音構成がコンセプトになっている。
また、1話ごとの準備ワークフローも紹介された。大体1話にかけられる準備日数は7日より8日ほどとのこと。まず、最初の3日は音楽を選曲・編集し、全体の音の構成を決める。そこから演出と音楽の打ち合わせをし、必要であれば1日で修正していく。次に、2日より3日ほどかけ、効果音の制作と選定・配置・編集作業をし、最後に、周囲の環境音などを入れるフォーリーを1日で終えるという。
そして、MA作業は4日間。ダイアログ確認や、必要があればナレーションとアフレコの収録をし、効果音を入れ込んで全て音の素材が揃ったらラフミックスを始める。それをプロデューサーや演出などのスタッフが試写をし、そこで見つかった修正点を修正し、ミックスし直して、ついにファイナルミックスをつくるという流れになっている。
最後に、音響デザイナーに求められる3つのものがスライドで紹介された。音響デザイナーには、作品の世界観を表現するためにも台本を解釈する力、視聴者が楽しめるようなサービス精神、そして感性と好奇心が必要なのだという。
今回は、ドラマを事例としたサウンドデザインの話であったが、もちろんゲーム制作でも応用できるし、同じようなフローで制作しているところもあるだろう。ゲームプレイ中は何気なく聴いている“音楽”だが、そこに至るまでの音響デザイナーの仕事を知ることができ、また違った視点からゲームを楽しめるようになったのではないかと思う。
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