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ゲーム会社がVR/ARにいま注目すべき理由は?MCJ、TGSでパネルディスカッションを開催

 「東京ゲームショウ2019」のMCJブースにて、ゲーム業界やIT業界の識者を招き、「ゲーム会社がVR/ARにいま注目すべき理由」と題したパネルディスカッションが開催された。

 登壇したのは佐々木瞬氏(ヒストリア 代表取締役)、橋本善久氏(リブゼント・イノベーションズ 代表取締役)、関根健太氏(積木製作 シニアディレクター)、岡田和也氏(Epic Games Japan サポートエンジニア)だ。モデレーターを務めたのは久保田俊氏(Mogura 代表取締役社長 CEO)。

左から久保田俊氏、佐々木瞬氏、橋本善久氏、関根健太氏、岡田和也氏

 まずどのあたりのタイミングからVR・ARに携わってきたのかという問いには、佐々木氏は4、5年前の東京ゲームショウでコンテンツを出したのが最初で、橋本氏は2016年になってVRの機器が出そろったときにテニスのVRコンテンツを作ってから。関根氏はOculusRift DK1が日本に入ってきた2013年の初めに開始したという。関根氏はゲーム業界とは異なる建築業界の人なのだが、VRを使ってプレゼンができないかと考えたのがきっかけという。

 VR業界で今注目されている分野を聞かれて佐々木氏は「アトラクション向けならば事例も多い。一般家庭と言うより施設で特殊な体験を与える、ハードとセットで強烈な経験ができるコンテンツが多い」と語る。非ゲームの世界でも、児童者のビジュアライズやシミュレーションといったところで使われているのだという。

 建築業界についても花開いてきたのではという意見に対して関根氏は「建築にはVRの相性がいい」と語る。DK1とデスクトップPCを担いで不動産業者や設計事務所へ持っていったのだそうだが、「先行事例は?導入実績は?」と言われてしまい、なかなか使ってもらえなかった。「先行事例がない限り(この業界は)動きづらい」。しかし今年になってからやっと花が開いてきて、「VRってどういうものなの?」、「いや5年前に提案しましたが」という話にもなったのだとか。

 橋本氏はVR設備については場所の問題があるので、家庭に入っていくのはまだ先だと語る。業界的にはホットな話題となっているものの、エンタメも、エンタープライズもエデュケーションも、実作業ができないのので、「マウスやキーボードのリアルにはまだ勝てない」と見ている。

 岡田氏はUnrealEngineのサポートを行なっているが、「2、3年前はゲーム関係のサポートが多かったものの、最近では自動車業界などのノンゲーム側の問い合わせが増えている」とのこと。加えてARやHoloLens関係の問い合わせもあるそうだ。

 関根氏はVRが導入されつつある現在について「Unreal Engineはゲームエンジンと言うよりリアルタイムレンダリングエンジン」と語り、建築物のモックアップを作るのにはこれまで1カ月かかっていたのが、すぐにリアルタイムで見られる便利性があり、有用だと説く。「施工の過程でどのようなところに危険が伴うのか感じることができるのがVR。図面だけでは伝わらなかったことに使える。この半年の間に随分と入ってきた」(関根氏)。

 コンシューマー向けのVRへの展望を聞かれて岡田氏は「VRやARが特別な分野から手段として確立していく中で、非ゲーム分野の会社が、VR製作の発注先としてゲーム会社を探しているパターンが多い」と語る。

 関根氏も「建築業界がレアケースと言うが、それはノウハウがなかったから」とし、「ゲームを開発している人にとって見れば視点を変えるだけ。何がウケるのか、作品として売れるコンテンツを作るのが課題だが、エンタープライズでは課題があって、困っているクライアントにどういうサービスを提供するかが大事。それを明示することに尽きる」と語る。「ゲームにこだわっているのは当然だが、ちょっと目を向けると生かせるジャンルは山ほどある」(関根氏)。

 橋本氏は「VRやARは1回盛り上がって冷めたような気もするが、これからが本番。家庭に入っていくかは微妙だが、一般の人が(気軽に)触れられるものになる。エンタメだろうがエンタープライズだろうが、この分野は伸びる」と強調。「ゲームという解釈を広げて、リアルタイムエンターテインメントの目を広げると活躍する場はある」(橋本氏)。

 佐々木氏は「ゲーム開発会社との視点で語ると、VRの開発は楽しい。儲かる儲からないにかかわらず。それはゲームデザインがはっきりとできるから。しかし昨今ではゲーム開発が大型化してきていて、1人でゲームを作れる人がどれくらいいるのか。いいサイズで作れるのがVR。ビジネス的に跳ねるとは思えないが、そこを取りに行くと実力が付く。ぜひ飛び込んでほしい」と今後に期待を寄せた。