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ウメハラ選手など「ストV」のトッププレーヤーがビジネスマンにeスポーツの熱を伝える!
「新経済サミット」内のセッション「eスポーツはここまできた」にて試合を実演
2019年6月21日 18:48
一般社団法人新経済連盟は、6月20日に日本最大級のグローバルカンファレンス「新経済サミット(NEST TOKYO 2019)」を開催した。
新経済サミットは「5G」や「医療とAI」など、新たな技術とビジネスについてのセッションが行なわれる催し。その中でCyberZの代表取締役社長 山内隆裕氏による「eスポーツはここまできた」と題したセッションが行なわれた。
イベント自体がビジネス色の強いものであることから、セッションの内容はeスポーツに詳しくない人向けにeスポーツの今後の展望や課題を語るというもの。さらにそのセッションで語られた"eスポーツの熱量"を実演するため、ウメハラ選手を始めとしたトッププレーヤーたちが登壇し「STREET FIGHTERⅤ ARCADE EDITION」を用いたデモンストレーションマッチが行なわれた。
本物のスポーツを凌駕する勢いのeスポーツ
始めに登壇した山内氏は、eスポーツのイメージをわかりやすく伝えるためにある映像をモニターに映し出す。その映像は2017年にラスベガスで開催された「EVO2017」の「STREET FIGHTERⅤ ARCADE EDITION」部門でときど選手の優勝が決定した場面である。動画の中では、会場中が割れんばかりの歓声に包まれていた。
「動画を見ていただくと、これは格闘技や、本物のスポーツに並ぶエンターテイメントの様相だったと思います。興奮で観客がドッと湧くというスポーツでよく見る光景でしたが、eスポーツもすでにその局面まで来ていますし、世界的にその波が広がっています」と山内氏は力強く語る。
さまざまなジャンルの競技人口と比べてみると、世界でもっとも多いのがバスケットボールの4億5,000万人。続いてクリケット、テニスと来て、次に多いのはPCゲームの「League of Legends」なのだという。1つのタイトルだけで9,000万人というプレーヤーがおり、これは既にゴルフプレーヤーを超えるプレイ人口なのだという。
もっとも人口が多いeスポーツ種目である「League of Legends」の世界大会「World Championship Final」は、動画視聴者数9,960万人、会場の来場者数4万人と、1億人近くの人が注目をしていたというのだ。この数字に山内氏は「本物のスポーツを凌駕している」とコメントした。
日本のeスポーツファンは現在383万人。スマートフォンの普及により、試合や大会などの動画を目にすることがこれからも多くなっていき、動画を見てハマる人やプロゲーマーを目指そうという人が増え、4年後には786万人にまでなると予想している。
今後のeスポーツの発展についての課題も挙げられた。近年では日本でも賞金が1億円を超える大規模な大会が開催されてきているが、世界では28億円という高額賞金の大会もあり、まだまだその差は大きいと語る。海外ではゲームの売り上げの一部を賞金に当てる方式を取ることで高額な大会賞金を用意しているが、日本では法律の関係上、この方式を取ることができない。これについて山内氏は「eスポーツ発展を阻害しているということはなく、日本に合ったeスポーツのやり方を模索していけば、さらなる発展が見込める」と主張する。
日本でのeスポーツは、まだマイナースポーツの域を出ておらず、選手も観戦者も楽しめる競技にしていかなければならないと山内氏は言う。「この1、2年でeスポーツの魅力をどれだけ伝えられるかというのが普及への課題なので、そこはしっかりと取り組んでいきたい」と意気込みを見せ、山内氏によるプレゼンテーションが終了した。
プロによるデモンストレーションでeスポーツを体感
セッションの後半は、eスポーツ種目のメジャータイトルである対戦格闘ゲーム「STREET FIGHTERⅤ ARCADE EDITION」を使って、プロゲーマーによるデモンストレーションが行なわれた。登壇したのは、eスポーツシーンの第一線で活躍する「ウメハラ選手」、「ボンちゃん選手」、「マゴ選手」、「ときど選手」の4名。
試合の前に、4人が今日の意気込みを語る。「いつも試合をしている環境と違うので戸惑うかもしれないんですけど、集中して良い試合をできるよう頑張りたいと思います」とウメハラ選手。続くボンちゃん選手は「デモンストレーションの対戦というのはあまりないんですけど、普段やっているパフォーマンスをお見せできればと思います」とコメント。「やり過ぎちゃいけないと言われてきたゲームが、まさかこんなところまで来るとは思いませんでした。今日はみなさまに真剣な姿をお見せできれば」と語るマゴ選手。最後にときど選手は「普段の練習の成果を存分に出して良い試合を見せたいと思います」と自信満々の様子を見せた。
今回の試合形式はシングルイリミネーショントーナメント。2ラウンド先取で1試合勝利とし、2試合先取で次の試合へ進出となる。
最初の対戦はウメハラ選手対ボンちゃん選手。キャラクター選択は、ウメハラ選手はお馴染みのガイルを選択。持ちキャラの多いボンちゃん選手はかりんを選択。
1試合目は慎重な立ち回りで、かりんの強味である近距離に持ち込むボンちゃん選手。ガイルを画面端まで追い込み、有利な流れでガイルの体力を残り僅かなところまで削るも、Vリバーサルをスカしまうボンちゃん選手。その隙を逃さずクリティカルアーツを決め、ウメハラ選手が逆転で1ラウンドを先取。続く2ラウンド目はボンちゃん選手が取り返すも、最終ラウンドはかりんを寄せ付けない安定の立ち回りで、危な気なくウメハラ選手が勝利し、1-0となった。
続く2試合目も拮抗した試合展開で、互いに1ラウンドを取り、最終ラウンドに突入。開幕から流れを掴んでいるのはウメハラ選手。牽制で置いているガイルの強パンチや中キックが立て続けに刺さってしまい、ジワジワ削られているうちにかりんの体力は残すところ1割。悪い流れを断ち切れないまま、ウメハラ選手の勝利。決勝へと駒を進めた。
続いての対戦はマゴ選手対ときど選手。過去の大会で2人は同じチームを組んでいたこともある仲だ。キャミィとかりんをメインに使っているマゴ選手だが、この戦いではかりんを選択。ときど選手は鉄板の豪鬼で戦いに挑む。
静かな立ち上がりで始まった第1ラウンド。互いに間合いを読み合うが、攻撃に打って出たのはマゴ選手。天狐で打ち上げてEX天狐を重ねる強力なコンボで大きく体力をリード。ピンチに追い込まれたときど選手だが、必殺技が強化されるVトリガーを発動させ、マゴ選手にプレッシャーを掛けていく。画面端に追い込み、コンボからクリティカルアーツに繋げ、体力をイーブンにもっていったときど選手。どちらもあと1撃という局面、マゴ選手がVトリガーを発動。しゃがみ中キックからの紅蓮拳をヒットさせ1ラウンドを制した。流れを掴んだか、2ラウンド目は豪鬼を掴んで離さず、圧倒的な攻めでときど選手を完封した。
2試合目も一進一退の攻防が続き、最終ラウンドまで食い込むが、ときど選手が2試合目を勝利。これで戦いは1-1の大詰めに。大会さながらの熱い戦いが繰り広げられ、互いに1ラウンドを取っていく。試合はフルセットフルラウンド。大事な最終局面で流れを掴んでいるのはマゴ選手。ときど選手の飛びを的確に対空技で落とし、画面端まで一気に追い詰める。最後は最大火力のコンボを決め、魅せるプレイで勝利したのはマゴ選手。
決勝戦は戦いを勝ち抜いたウメハラ選手対マゴ選手。選択するキャラクターはお互い変えず、ウメハラ選手はガイル。マゴ選手はかりんを使用。
かりんの爆発力に警戒し、画面端に追いやられないよう、出だしからうまく立ち回っていくウメハラ選手。ソニックブームで固められ、動きの自由を制限されてしまうマゴ選手。イチかバチかの飛びで勝負を仕掛けるも、そこはしっかりと見ているウメハラ選手。サマーソルトキックで迎撃し、そこからクリティカルアーツを決めて1ラウンドを制する。
2ラウンド目は開幕から画面端にガイルを追い込むも、ペースは掴めず。どっしりと構えたガイルの前に、なす術なく敗れるマゴ選手。ストレート勝利で勝ち星を上げていくウメハラ選手。
2試合目も勢いは止まらず、ウメハラ選手が1ラウンドを制し、リーチがかかる。後がないマゴ選手だったが、最後に意地を見せた。ガイルの固いガードを投げで崩し、ソニックブームの応酬をEX天狐ですり抜けて攻め込む。そのまま近距離を維持して、2ラウンド目、3ラウンド目と立て続けに勝利。ここで1-1の最終戦に突入。
ラストとなる3試合目。両者とも慎重な立ち回りで、互角の戦いが続く。互いに体力は残り僅かという場面、マゴ選手が攻めの姿勢を見せて距離を詰めると、そこにEXサマーソルトキックを繰り出すウメハラ選手。決まったかと思われたが、マゴ選手はしっかりとガード。攻める素振りを見せ、このサマーソルトキックを誘っていたのだ。サマーソルトキックの着地に投げを重ね、高度な読み合いに勝ったのはマゴ選手。接戦の攻防に会場からは拍手が起こる。
マゴ選手にリーチがかかった2ラウンド目。やはりここも体力イーブンの展開が続く。体力は両者とも3割でEXゲージはマックス状態。攻撃を1発でももらえば、コンボでクリティカルアーツまで叩き込まれて勝負が決してしまう状態だ。互いに牽制を出し合うもガードは固い。膠着状態が続くなか、ソニックブームで揺さぶろうとしたウメハラ選手だったが、そこに紅蓮拳を重ねられ、かりんの技がヒット。そこからクリティカルアーツを食らわせ、マゴ選手が激闘を見事勝ち抜いた。大盛り上がりのなか、プロゲーマーによるデモンストレーションが終了した。
今回のイベントには、eスポーツにそれほど関心のない人も正直多かったと思う。しかし試合が始まれば歓声や拍手なども起こっており、ゲームに触れていない層にもeスポーツの熱は伝わっているように思えた。ゲームファンとしては今後のeスポーツのさらなる拡大に期待したいところだ。