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歌広場淳さんも参戦! 俺より強い企業に会いに行く!「大丸有まちづくり30周年 e-Sports Festival」レポート

大手町・丸の内・有楽町地区の企業が「ストII」で決着を付ける前代未聞の大会が開幕!!

3月15日~17日開催

会場:丸ビル1階マルキューブ

 東京駅周辺の大手町・丸の内・有楽町地区のまちづくりを進める“大丸有まちづくり協議会”は、同設立30周年を記念したeスポーツイベント「大丸有まちづくり30周年 e-Sports Festival~俺より強いやつに大丸有で会いに行く。~」を3月15日より17日まで開催した。

 イベントは丸の内にある、丸ビル1階 マルキューブで行なわれた。ゲームとは縁遠い街で、あえてeスポーツイベントをやるというこの挑戦的なイベント。格ゲーファンの筆者としては見のがせるはずもなく、前のめりで参加した。

 初日の15日には、大手町・丸の内・有楽町地区に事務所を置く企業、店舗に勤めている人を募い、「ストリートファイターII(以下ストII)」で最強の企業を決めるという前代未聞の大会が開催された。会場にはスーツ姿のサラリーマンや、作業着に身を包んだ参加者などが多く、普段の格闘ゲームの大会とはまったく異なる空気感があった。格ゲーマーでもない企業勤めの人たちを巻き込み、“格ゲーでまちづくり”という一風変わったこのeスポーツイベントの様子をお届けしたい。

【会場の様子】
従来のeスポーツイベントでは余りお目にかかれない、スーツを着込んだ人たちの姿があった
イベント会場の隣ではコラボカフェも開催していた。ここもスーツ姿の人が多く、大半は普段からの利用者の様子。平日ということもあり、コラボメニューや展示で浮かれているのは筆者だけであった

どの選手も実力は未知数! 企業の看板を背負って大激突!!

 イベントには、「ストリートファイター」シリーズのプロデューサーの綾野智章氏、実力派プロゲーマーのえいた選手、芸能界一のゲーマー歌広場淳さんが登壇。企業対抗戦の前に、PS4ソフト「ストリートファイター30th アニバーサリーコレクションインターナショナル」の収録タイトルの中から、競技タイトルである「ストリートファイターII'(ダッシュ)」でえいた選手対歌広場さんのエキシビションマッチが行なわれた。ルールは2ラウンド先取制の1本勝負。

「ストリートファイター」シリーズのプロデューサーの綾野智章氏
プロゲーマーのえいた選手
ゴールデンボンバーの歌広場淳さん

 キャラクターはお互いにケンを使用。キャラ性能差が一切無い、実力だけがものをいう熱い試合だ。開幕は互いに波動拳を撃ち合って相手の出方を探り合う。流れが見えてきたか、歌広場ケンが放つ波動拳に合わせてジャンプ攻撃を重ね、着実にダメージを与えていくえいたケン。これに焦ったか、ジャンプで飛び込む歌広場ケンに、待っていましたといわんばかりのタイミングで昇龍拳がヒットし、1ラウンドを危なげなくえいた選手が勝ち取る。試合前には「ストII」は昔に少しだけやったことがある程度と語っていたえいた選手だったが、その実力はかなりのもの。2ラウンド目も先の戦いと同様に、うまく上からの攻撃を通していくえいた選手。気持ち良いほどにジャンプ強キックを食らわせていき余裕の勝利。プロの実力を見せつけた。

【「ストリートファイターII'」のエキシビションマッチ】
赤いケンがえいた選手。ジャンプ攻撃と対空攻撃を正確にヒットさせ、終始えいた選手が優勢の流れであった

 エキシビションマッチは第2戦に突入。2戦目は、シリーズ最新作の「ストリートファイターV アーケードエディション」で行なわれた。こちらでもキャラクターは変わらず互いにケンを選択。1ラウンド目の開幕早々にジャンプ攻撃からの強力なコンボを叩き込むえいた選手。画面端に追い込まれ、打撃で固められながら投げをガンガン決められ、後がない歌広場ケン。

 えいたケンの体力は8割も残っており、勝負あったかと思われていた瞬間、Vトリガーを絡めたコンボがえいたケンにヒット。ここから見事に流れを変え、えいた選手のコンボミスなどの隙を突いて最大火力のコンボを決めて1ラウンド目を歌広場さんが先取。会場に駆けつけた歌広場ファンの女性たちから黄色い歓声が上がった。

 大番狂わせの展開に後がないえいた選手。しかしここからは本気モード。無敵判定のあるEX竜巻旋風脚やEX昇竜拳で攻め込む歌広場ケンの攻撃を、冴えわたる読みで的確にガード。技後の硬直にコンボに次ぐコンボを叩き込み、瞬く間に1ラウンドを取り返すえいた選手。

 戦いはファイナルラウンドに突入。女性ファンからの声援もあってか、開幕から歌広場ケンの動きのキレが凄まじい。えいたケンの飛び込みを華麗に昇竜拳で落として画面端まで運んでいく。圧倒的な体力差でえいたケンを追い詰める歌広場さん。これはもしやプロに勝ってしまうのでは……!? そんな空気の中、攻めに転じるえいた選手。歌広場ファンからの落胆の声を浴びながらも果敢に攻め、一気に巻き返して勝利を掴んだ。

 プロを相手にかなりの接戦を見せた歌広場さんは試合後、「やっぱり、プロの壁は厚かったです」とコメント。大盛り上がりのなかエキシビションマッチが終了した。

【「ストリートファイターV」のエキシビションマッチ】
青のケンが歌広場さん。プロと互角に戦う歌広場さんだったが、最後にあと一歩届かなかった

 エキシビションマッチを終えた後、この日のメインイベントである企業対抗戦が開幕。大会にエントリーされた企業はなんと39社。各企業から代表選手を1人選出し、企業同士で戦っていくというeスポーツ史上かつてない大会だ。ここからの試合は2ラウンド2本先取制となる。予選はA~Dの4ブロックに分かれ、各ブロックの優勝者が本戦に進むトーナメント形式。1回でも負けたらその時点で敗退となる過酷なルールだ。

 参加者の年齢層や「ストII」歴はさまざまで、大会に出ると決まってからソフトを買ってプレイし始めたという若い世代や、リアルタイムで「ストII」に触れて現在までプレイしているという年季の入ったガチゲーマーも出場していた。

 それぞれのブロックで予選が開始され、初めに目を見張ったのが試合前の挨拶だ。対戦する企業の相手となんと“名刺交換”を始めたのだ。サラリーマンの鑑ともいえる姿に、意表を突かれて笑ってしまった。まさに会社の看板を背負った企業対抗戦ならではの面白い光景である。

 参加者が使用しているキャラクターの大半が「リュウ」と「ガイル」に集中していた。リュウは飛び道具、対空、突進技をオールマイティに取り揃えて使いやすさはピカイチ。ガイルは複雑なコマンドが不要で強力な技が簡単に繰り出せる。こういった理由からこの2キャラを使用する人が多かったのだろう。

社会人の常識、名刺交換は大会でも忘れない参加者たち
ダントツの使用率で、試合のほとんどがリュウとガイルの組み合わせによるものだった

 予選の戦いの様子は、技を出すのにも苦戦する人や手慣れた立ち回りを見せる人など、レベルの振れ幅のある戦いが繰り広げられていた。しかし、上手い下手に関わらず、プレイしている人とそれを応援する同じ会社の人たちが一丸となって楽しんでいるのが印象深かった。普段は真面目に働いている立派な大人たちが、童心に帰ってゲームで対戦して盛り上がっている姿を見て、“これは良いイベントだな”と純粋に思えた。

手作りのプラカードやうちわを持参して応援している企業もあった

 数時間の長きに渡る予選大会を勝ち抜いた企業は、「セールスフォースドットコム」、「野村総合研究所」、「BFT」、「マイクロネットワークテクノロジーズ」の4社。準決勝まで駒を進めるだけあり、4社とも予選ではかなりの実力を見せていた。まさに大丸有の「ストII四天王」といっても過言ではないだろう。

 最強の企業の座をかけて、この4社がぶつかり合う。準決勝第1試合はセールスフォースドットコムのガイルVS野村総合研究所のダルシム。コントローラを握る顔は真剣そのもの。開幕はダルシムがリーチの長さを活かして牽制するも、伸びる手や足を上手く狩ってダメージを与えていくガイル。ソニックブームで流れを完全に掴もうとするも、ダルシムはスライディングで見事に潜り抜け投げを食らわせる。「ストII」の投げは威力がとても高いので、かなりのダメージを与えられる。

 互いに引かない熱い試合展開。壁に追い込んだダルシムに当て投げを連続でお見舞いし、1ラウンド目をガイルが制した。2ラウンド目はさらに集中して相手の動きをよく見ているダルシム。ガイルの飛びや、隙を見せた瞬間を逃さず的確に手足を伸ばして攻撃をヒットさせていく。体力はダルシムが圧倒的優勢。しかし追い詰められてからのガイルが強かった。ドリルキックで迫るダルシムにサマーソルトキックで迎撃。そこからはコンボと当て投げで攻めまくり、体力残り2割から逆転勝利。セールスフォースドットコムがストレートで1本目の勝ちを奪っていく。予選の戦いとはまるで違う高レベルな戦いに、会場中から大きな歓声が沸き起こった。

【セールスフォースドットコムVS野村総合研究所】
これまでの試合でも、圧倒的な強さを見せてきたセールスフォースドットコム

 もう後がない野村総合研究所。2本目では手足を伸ばす攻撃が立て続けにガイルにヒット。迎撃で放ってくるソニックブームもよく見てスライディングでうまく対処していく。ガイルに一切の自由を与えず、飛んできたところを立ち強キックで落とし、サクッと1ラウンドを先取。ダルシムに距離を取られると厳しいガイル。ダメージをもらいながらも距離を詰め、強力な投げを連発して辛くも1ラウンドを取り返したセールスフォースドットコム。

 戦いは最終ラウンドにもつれ込み、マッチポイントとなったセールスフォースドットコム。遠距離の有利な位置をキープしながら、近づこうとするガイルを制していくダルシム。リーチの長い攻撃でじわりじわりとガイルの体力を削っていき、近づかれたところをトドメの投げをお見舞いし、この試合を野村総合研究所が勝ち取った。

後がない場面で巻き返していく野村総合研究所

 一進一退の攻防で、戦いはファイナルセットに突入。先ほどの遠距離をキープする戦法とは打って変わり、低空ドリルキックでガンガン攻め込むダルシム。距離を詰めて投げ、投げ、投げ! ダルシムのげんこつ(投げ)でガンガン体力を奪い、ガイルを軽く撃破する。

 完全に流れを掴んだか、2ラウンド目もダルシムが優勢。地上にいても空中にいても伸びる手足がガイルに襲い掛かる。ガイルの自由を完全に奪い、最後はソニックブームをかわしながらドリルキックを叩き込んでガイルを撃破。野村総合研究所が決勝戦進出を果たした。

ガイルを相手に確かな手応え掴み、見事決勝に進出

 続いて準決勝第2試合はBFT対マイクロネットワークテクノロジーズの対決。使用キャラはお互いにガイル。実力の差がダイレクトに出る熱い同キャラ戦だ。両者ともに熟練された立ち回り。発生が早くリーチの長いしゃがみ中キックと、飛び道具のソニックブームを軸にダメージを奪い合っていく。息苦しい地上戦が続いたところで、マイクロネットワークテクノロジーズが勝負の飛び込みを仕掛ける。しかし相手は飛びに厳しいガイル。待っていましたとサマーソルトで迎撃し、1ラウンドをBFTが先取。

 2ラウンド目もBFTが優勢。飛び込みをしっかりアッパーで落としてダメージを取っていく。ソニックブームでマイクロネットワークテクノロジーズのガイルを固めて、ガードしているところに投げを連発。圧倒的な勢いでBFTが1セット目を奪っていく。


【BFT対マイクロネットワークテクノロジーズ】

緑がBFTでオレンジがマイクロネットワークテクノロジーズ。危なげなく最初の1セットを取っていくBFT

 2セット目。マイクロネットワークテクノロジーズもただで負ける訳にはいかない。さっきのお返しといわんばかりに、距離を詰めて強烈な投げを連続で決め、1ラウンドを制する。その勢いは止まらず、2ラウンド目もしゃがみ中キックを軸にBFTガイルの体力を削っていき、安定した立ち回りで圧勝。マイクロネットワークテクノロジーズも1セットを取り返した。

マイクロネットワークテクノロジーズも1セットを取り返し、先の読めない展開となる

 決勝進出が決まる最終セット。互いにしゃがみ中キックとソニックブームの応酬。食らっているのはマイクロネットワークテクノロジーズのガイルが多く、BFTガイルが体力的に優勢。終始しゃがみ中キック合戦が続くも、勝ったのはBFT。

 ここでBFTがマッチポイント。2ラウンド目も試合展開は変わらずしゃがみ中キックとソニックブームが互いに飛び交う。拮抗した戦いが続き、両者共に残り体力は僅か。1つのミスが命取りとなる局面、BFTガイルが繰り出すソニックブームに合わせて飛び込みを仕掛けるマイクロネットワークテクノロジーズガイル。イチかバチかの賭けであったが、見事ジャンプ攻撃がヒットし、マイクロネットワークテクノロジーズが1ラウンドを奪い返す。

 戦いはついにファイナルラウンド。開幕からBFTガイルのソニックブームでガードを固めさせて投げが決まる。これをもう1度狙い、投げを仕掛けようとしたところにマイクロネットワークテクノロジーズガイルのサマーソルトキックが飛び出す。高度な読み合いに会場の熱が高まる。

 しゃがみ中キックの相打ちで両者共にみるみる体力が削られていき、またも互いに残り1撃で決まるという局面に立たされる。マイクロネットワークテクノロジーズガイルが決死の飛び込みを仕掛けるが、それに合わせてBFTガイルも飛び込み、空中投げを華麗に決めてフィニッシュ。本物のeスポーツ大会と錯覚するほどの熱い試合に会場が本日1番の歓声に包まれる。激闘を制し、決勝に駒を進めたのはBFT。

魅せ技の空中投げを決め、見事決勝に進むBFT

 “大丸有”で最強の企業を決める決勝戦に進んだのは、野村総合研究所とBFTの2社。「ここまで来られるとは思ってなかったんですけど、せっかく来たのでしっかりハメ殺したいと思います」と、禁じ手を口にして勝利宣言する野村総合研究所。それに対しBFTは「ここまで来たからには優勝したいですね。ダルシムもあんまり好きじゃないので」とバチバチの空気感。初めは異色のeスポーツイベントという雰囲気だったが、本場のeスポーツ大会さながらの熱量を感じた。

 会場中がさらにヒートアップし、ついに決勝戦がスタート。ここまで何度もガイルを相手にしてきた野村総合研究所ダルシム。ガイルの対処法はわかっているといわんばかりに果敢に攻める。安全圏からリーチの長いしゃがみ強パンチで牽制し、ガイルが攻め込んできたら低空のドリルキックをお見舞いし、サクッと1ラウンドを取っていく野村総合研究所。

 慣れないダルシム戦に苦戦を強いられるBFTガイル。2ラウンド目も完全にダルシムのペースに飲まれ、スライディングで密着してからの投げを連発。宣言通りハメ殺しを有言実行した野村総合研究所が1セットを勝ち取った。

【野村総合研究所対BFT】
最強をかけた戦い。スタートから良い滑り出しを見せる野村総合研究所

 非常に早い展開で勝敗が決した1本目に続き、2セット目が始まる。ここもやはり苦しいのはBFTガイル。対空性能の高いダルシムの立ち強キックが待ち構えているので、うかつに動くことができない。守りに入りすぎ防戦一方になってしまい画面端に追い込まれるBFTガイル。こうなってしまうとまさに地獄。飛び道具のヨガファイヤーを連発され、ガードするも体力は少しずつ削れていく。これにはたまらずジャンプで端から逃げようとするも、しっかりと対空攻撃で落としていくダルシム。完全に流れを掌握し、野村総合研究所が1ラウンドを先取。

 優勝にリーチがかかる野村総合研究所。ここはどうしても負けられないBFT。端に追い込まれないよう警戒しながら、しゃがみ中キックとソニックブームで一定の距離を保っていく。勝ちを焦ったか、野村総合研究所ダルシムが投げのハメ殺しを狙うべく距離を詰めていく。BFTガイルもそれはしっかりと学習済み。近づいてくるところに攻撃を置いてダルシムを撃破。厳しい戦いであったが一矢報いることに成功した。

 首の皮一枚繋がり、ファイナルラウンドに突入。今度はさすがに慎重な立ち回りを見せるダルシム。飛び道具とリーチの長い牽制で、狙い通りガイルを画面端まで運び込むことに成功。端を背負いながらもしっかりと迎え撃つガイル。互いに体力は残り僅か。飛び込みで勝負に出るガイルだったが、ヨガファイヤーを置かれていて直撃してしまう。ギリギリの接戦に勝利し、見事優勝に輝いたのは野村総合研究所。

両者ともかなりの実力であったが、相手のキャラ対策の差で野村総合研究所が優勝に輝いた

 試合後、野村総合研究所は「優勝できて純粋に嬉しいです。大丸有のために盛り上がれたかなと思っています。素晴らしいゲームでした。ありがとうございました」と満面の笑みを見せた。惜しくも敗れてしまったBFTは「すごくいいダルシムでした。最後も中足1発当てれれば勝てる場面はあったんですけど、焦ってしまいました。あと、投げ対策ができてなかったのが駄目だったなと思います。もしまた機会がありましたら頑張ります」と、試合の反省点を語った。

 最強の企業の座に輝いた野村研究所には、ヘッドセットと「ストリートファイターV アーケードエディション」のソフト、さらに「ストリートファイター」30周年記念メダルが授与され、大盛り上がりのなかイベントは幕を閉じた。

 企業同士が「ストII」で戦うという今回のイベント。本音を言うと、話題性だけでそれほど盛り上がりはしないのではないか? という疑問もあったのだが、参加してみてみるとその考えは一瞬で吹っ飛んだ。年齢や性別、業種などの垣根を越えて「ストII」で大いに盛り上がっていた。今回のイベントで、プロの大会とはまた違った“地域の一体感”や“お祭り的”な感覚で楽しめる、eスポーツの新たな一面を垣間見ることができた。次回があるならまた是非とも参加したいと思う。