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【GDC 2019】リワークと「K/DA」スキンで「アカリ」人気が急上昇、中国ではヤスオが大人気!「LoL」におけるチャンピオンの分析データを公開
2019年3月23日 17:24
プレーヤー5人でチームを組み、相手の本拠地の破壊を目指すPC用MOBA「リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)」。
「LoL」はゲームシステムそのものの競技性の高さや、そこからくるeスポーツとしての面白さはもとより、それぞれ全く異なるプレイフィールや見た目、バックストーリーを持った膨大な数のチャンピオンの中から自分と合う、あるいはメタ(その時々のパッチで強いとされる戦術、チャンピオン選択)に合ったものを選んで勝利を目指す、という"キャラゲー"的な要素も持ち合わせている。
そんな「LoL」における現在のプレイアブルキャラクター(=チャンピオン)の数はなんと143人。チャンピオンは直近で実装された「サイラス」のように完全に新規のキャラクターとして登場するものもいれば、既存チャンピオンの「アカリ」や「スウェイン」、「ヌヌ」や「エイトロックス」、「アーゴット」などのように、これまでの特徴を活かしつつスキルの刷新を行ない、名前が同じほぼ新チャンピオンとして再登場することもある。
また、各チャンピオンの性能はパッチごとに細かく強化・弱体化が行なわれることで、ゲーム環境は常に変動を続けている。昨日まで常に試合で見かけたチャンピオンをパッチ後にさっぱり見なくなったり、逆にドマイナーだったチャンピオンが一躍毎ゲーム引っ張りだこのトップTierに躍り出たりもするのも日常茶飯事で、これが毎回のゲームプレイに変化を生み出していると言える。
GDC 2019で登壇した自らをヤスオメインと語るRiot Gamesのlead of Gameplay Insights Nathan Blau氏によれば、こうしたチャンピオンの実装や調整はチャンピオンの使用率や人気、プロシーンにおけるチャンピオンの活躍度合いなど、多角的なデータ分析により検討が続けられているとのこと。セッションでは日頃公式APIを用いた外部データサイト「OP.GG」などで参照できるものとは一味違ったデータが3つのテーマに分けて公開されたので、こちらの内容をご紹介する。
「アカリ」の使用率はリワークで急上昇。「K/DA」スキンも追い風に
まず提示されたのは2018年7月より2019年3月にかけての「アカリ」のプレイレート。「アカリ」は2018年8月にリワークの対象となっており、持ち前の突進力やサステイン(回復力)、煙幕などといった特徴はそのままに、スキルの刷新が図られた。あわせてストーリー的には「シェン」率いる「均衡の守人」を抜けたり、ゲーム内のモデルやスプラッシュアートも少し成長した姿に変更されている。
グラフを見ると、リワーク直後の8月にはプレーヤーがこぞってプレイしたことにより使用率が急激に上昇。その後はまずまずのレートで安定するが、11月にも1つの山を迎える。
そう、これはK-POPのアイドルをモチーフにした「K/DA」スキンの実装によるものだ。「K/DA」は「アーリ」、「イブリン」、「カイ=サ」そして「アカリ」の4人組アイドルユニットという設定で、ちょうど「スターガーディアン」シリーズのように専用のPVと楽曲(POP/STARS)が用意されたり、「Worlds 2018」ではオープニングイベントでライブを行なったりした。ゲーム内でも「アカリ」に限らずK/DAスキンを身につけたチャンピオンを見かける機会は激増しており、まさに大ヒットスキンであったと言える。
さて、その後は使用率こそ安定しているものの、研究が進んだことによりプロシーンでは常にピックされるかバンされるという強力なチャンピオンとなっており、バランス是正のために行なわれたパッチ9.3の弱体化とともに使用率が下落。続くパッチ9.5では少々上方修正が行なわれたことにより使用率は再び上昇……と、ゲーム内での強さはもとより、スキンの発売などでもチャンピオン使用率が大きく変わることが示された。
「リー・シン」は人気、「イラオイ」はニッチ。モンスター勢は不人気傾向に……
次の話題はチャンピオンの使用率とゲーム内でそのチャンピオンと出会う確率の相関だ。使用率が高く、かつ遭遇率が高いチャンピオンが人気(Popular)、使用率が低くてめったに会わないチャンピオンが不人気(Unpopular)なのは当然として、"使用率は低いが遭遇率が高い(Niche)"のは少数のそのチャンピオンを愛するユーザーが熱心に複数回使っているということを意味しており、逆に使用率が高くて遭遇率が低い(Broad)チャンピオンは"とりあえず使ってみる人が多い"ということを意味している。
パッチごとに数値をグラフ化してみると、操作難易度は高いができることの幅が広く、しかも上手くいくととてもカッコいい「リー・シン」が人気で、たまに見かけるプレーヤーは熟練の猛者といった印象がある「イラオイ」はニッチ、初心者にも使いやすいのでMidメイジの入門用として勧められることの多い「アニー」、そして最近だと特にジャングルで猛威を奮ったものの、パッチ7.16の時点では「カーサス」が不人気だったことがわかる。
また、縦・横軸はそのままに、「ケイトリン」や「トリスターナ」などのADCを抽出してパッチ7.16時点のデータをグラフ化してみると、ジャングルで運用されることが多い「キンドレッド」を除くと「クイン」が最もニッチなADCとなるが、ニッチ具合にかけては「イラオイ」ほどではないことがわかる。一方で「チョ=ガス」や「アニヴィア」などの"モンスター系"チャンピオンは軒並み不人気気味で、人気かつ使い込まれるチャンピオンが不在となっているようだ。
さらに「アカリ」を例に、パッチ毎の数値をグラフ化したのが下記のものだ。先程のプレイレートからもわかる通りリワーク実装直後の人気は凄まじいものがあり、その後はパッチやスキンの実装で大きく人気と遭遇率が変動している。
リージョン毎に全く異なる「好き/嫌い」
最後の話題はチャンピオンの人気と「好き/嫌い」についてだ。ライアットゲームズはプレーヤーからのフィードバックをリージョンやメインロール、性別などの要素ごとに分類して分析を行なっており、セッションではいくつかの例が示された。
まず「アサシンが好きなプレーヤーが好きな/嫌いなチャンピオン」の結果を見ると、アサシンプレーヤーが最も好きなチャンピオンは「ゼド」であり、最も嫌いなチャンピオンは「ノーチラス」であることがわかる。機動力とバーストを兼ね備えたアサシンの鑑のような「ゼド」と、硬さとCCを武器に戦う「ノーチラス」はまさに対極にあたるチャンピオンであり、この結果はある意味納得感がある。
また、中国において「ヤスオ」は「快乐风男(Happy Wind Man)」と呼ばれて親しまれており、全チャンピオン中2位とトップクラスの人気を誇ることが明かされた。ちなみに他のリージョンでは「そのチャンピオンがフェアかどうか」という項目において「ヤスオ」はほぼ最下位近いにもかかわらず、中国においてのみ比較的フェアなチャンピオンだと認識されているとのことだ。
余談だが「ヤスオ」は活躍するために高度なスキルを要求されるチャピオンで、その分上手いプレーヤーは1人でゲームの勝敗を決めてしまうこともある。一方でそうしたプレイに憧れた習熟度の低いプレーヤーがボロボロに負けたりすることも多く、さらに負け試合は印象に残りやすいことから「LoL」の世界では「敵のヤスオは強いが味方のヤスオは超弱くてアホで迷惑」というミームが存在している。
さらに北米と中国リージョンで「最も好きなチャンピオン」上位9人を比較すると、北米ではADC4(ジン、ルシアン、ジンクス、ザヤ)、サポート3(ラカン、スレッシュ、ブラウム)、アサシン2(ケイン、エコー)となったのに対し、中国ではADC4(カイサ、ヴェイン、エズリアル、ジンクス)、サポート1(スレッシュ)、アサシン4(リー・シン、ジャーヴァンIV、ヤスオ、ゼド)と、中国リージョンではアサシンを始め1人でゲームを動かせるタイプのチャンピオンが好まれる傾向にあることがわかる。
一方で「最もアンフェアな(=不快な)」チャンピオンを見てみると、北米では「ヤスオ」をはじめ「レンガー」や「フィズ」など、育った時に止め辛かったり、理不尽なほどのバーストダメージを叩き出すチャンピオンが嫌われる傾向にあるが、中国では単純に「シャコ」や「シンジド」、「アイバーン」など遭遇率は低くても"うざい"、"めんどくさい"チャンピオンの名前が多く挙がった。「LoL」はリージョンごとに戦略がかなり異なるのが面白いところでもあるが、それに関連してか好き/嫌いなチャンピオンが全く違うというのも非常に興味深いデータと言える。
チャンピオンのピック率や勝率は公式APIを基にした外部データサイト「OP.GG」などで用意に確認することができるし、これを参考にしてパッチ毎の対策を練っているプレーヤーも多いことと思うが、今回のセッションではゲーム内外の動きがチャンピオンの使用率に直結していることが改めて明かされたほか、プレーヤーの好き/嫌いというなかなか表には出てこないデータまでもが提示され、非常に興味深いセッションとなった。