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日本eスポーツ連合、ついにTier1タイトル「Counter-Strike: Global Offensive」を国内採用
新たにビックカメラをスポンサーに迎え、2019年も国内外で積極的に活動へ
2018年12月13日 19:38
一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)は12月13日、メディア関係者向けの活動報告会を開催し、アジアeスポーツ連盟との共催で、アジアのeスポーツアスリートと4タイトルで対決するeスポーツイベント「eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本代表 vs アジア選抜~」を1月26日と27日の両日、幕張メッセで開催することを明らかにした。闘会議 2019およびJAEPO2019との合同開催で、賞金総額は1,500万円。
報告会では、大別して3つの内容が報告された。1つは今年1月22日のJeSU設立からこれまでの活動内容、もう1つは冒頭で紹介した「eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本代表 vs アジア選抜~」、3つ目は今後の展開として、7社目となるスポンサーとJeSU地方支部11団体が発表された。
会場となったのは、セガグループが入居する住友不動産大崎ガーデンタワーのセガグループ大会議ホール。JeSU会長の岡村秀樹氏が代表取締役社長を務めるセガホールディングスのお膝元となる。JeSU関係者やゲームメディアのほか、新聞系や経済誌なども参加。依然としてeスポーツは高い関心を集めていることを伺わせた。
最初に登壇した岡村氏は、「日本におけるeスポーツの啓蒙と普及」、「海外への選手派遣」という2つの観点から報告を行なった。
日本におけるeスポーツの啓蒙と普及については、JeSU設立発表当時大きな話題となった「プロライセンスの認定」に関して最新情報が報告された。2018年2月の闘会議からスタートしたプロライセンス制度だが、現在はライセンス認定タイトルは11タイトルに増え、127名にプロライセンス、1名にジュニアライセンス1名、そして8チームにチームライセンスをそれぞれ与えている。
これまでに実施された公認大会は34大会、賞金総額は1億2,977万円。岡村氏は、参加してくれた選手、応援してくれたファン、賞金を提供してくれたスポンサーに対して感謝を述べつつ、「初年度で公認大会の賞金総額が1億円を超えたことは、設立趣意に叶う活動ができているのではないか」と自信たっぷりにコメントした。
こうした結果、東京ゲームショウでも中間報告が行なわれた(参考記事)ように、eスポーツへの認知が、2017年9月時点で14.4%だったものが、2018年7月時点で41.1%まで向上。岡村氏は、2018年新語・流行語大賞でeスポーツがトップテンを受賞し、日経MJヒット商品番付2018年においても西の小結に選出されたことを笑顔で報告。「どうでもいいっちゃどうでもいいんですが」と謙遜しながらも、団体トップとして大きな手応えを感じている様子だった。
そして「日本のeスポーツの啓蒙/普及」において2019年でもっとも大きなイベントとなるのは「茨城ゆめ国体2019」の一部として実施される「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」。4月から全国47都道府県で予選を行ない、10月の国体の場で、都道府県代表として本戦を戦う。競技種目は「ウイニングイレブン」で、JeSUは日本サッカー協会と共に運営協力を行なっていく。
次に「海外への選手派遣」については、8月に行なわれた第18回アジア競技大会のデモンストレーション競技となったeスポーツ大会に、5タイトルで日本代表予選を行ない、そのうち「ウイニングイレブン」と「ハースストーン」の2種目の代表選手を本戦に日本代表として派遣し、日の丸を背負って熱い戦いが繰り広げられたことを報告。中でも「ウイニングイレブン」では初出場で金メダルを獲得する成果を上げた。岡村氏は「表彰式で国歌が奏でられ、日章旗が揚がるのは感動的だった」という。
また、9月の東京ゲームショウでは、多数のeスポーツ大会が開催されたほか、フェイエノールトのeスポーツチームを日本に招待し、浦和レッズのeスポーツチームとの親善試合を「FIFA18」で行なったことなどが報告された。
そのほか、10月にはIeSF(国際eスポーツ連盟)主催の「eスポーツワールドチャンピオンシップ」に選手を派遣し、「鉄拳7」銀メダル、デモンストレーション競技の「モンスターストライク」で金銀を独占、国別順位で5位に入ったことを報告。「初手からなかなか好成績を上げることができた」とこちらも満足げだった。
さらに、JeSUのIeSFが異例の速さで承認されたことも合わせて報告された。本来であれば、申請開始から準加盟が認められた状態で1年程度実績や活動経過を見てから承認するかどうかを決めるのが通例ということだが、例外的なスピードで加盟申請が承認されたという。
岡村氏は、「JeSUの活動を続けていく上でIeSFの加盟は重要なこと。選手の活躍の場を広げるという理念にも合致しており、今後さらに多くの選手を海外に派遣できる機会も増えるし、その実現に向けて頑張っていきたい」と抱負を述べた。
岡村氏は全体のまとめとして「駆け足でやってきたので、追いつき切れていないところもあった」と100点満点ではないとしつつ、「来年度は完成度を上げて、チャンスを活かしていく、そして国体をしっかりやっていくというところに眼目を置いて頑張っていきたい」とコメント。来年も引き続き、自ら牽引していく方針を明確にした。
続いて、今回の報告会の目玉となった「eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本代表 vs アジア選抜~」は、JeSU副会長の浜村弘一氏が報告を行なった。
「eSPORTS国際チャレンジカップ」は、IeSFのアジア部門であるAeSF(アジアeスポーツ連盟)とJeSUの共催による日本対アジアというユニークな建て付けのeスポーツイベント。冒頭でも触れたように、「闘会議」や「JAEPO」との合同開催で、それらの目玉となるイベントとなる。
本イベントでもっともエポックメイキングなのは、Valve CorporationのオンラインFPS「Counter-Strike: Global Offensive(以下、CS:GO)」が競技種目の1つになっているところだ。
JeSUは、日本国内のeスポーツの普及啓蒙を目的とした団体で、設立当初、その原動力はあくまで“国産のeスポーツタイトル”だった。言い換えれば、日本が世界に誇れるeスポーツタイトルとeスポーツアスリート、JeSUの手でこの両輪をグングン回して世界に送り込む、これがJeSUが求める理想形だ。
この目標の難点は、設立初期の時点から指摘されていたことだが、JeSUが認定しているeスポーツタイトルと、“世界”が認定しているeスポーツタイトルに大きなズレがあり、公認大会でせっかく日本代表に選ばれても、世界で活動する場が与えられない、あるいは少ないことだ。
実際、現在JeSUが認定している11タイトルに、いわゆる“Tier1”のeスポーツタイトルは1つもない。ここでいうTierとは、eスポーツコンサルティングをグローバルで展開するSMARTCASTが、独自の指標で行なった格付けで、たとえばTier1は年間賞金総額500万ドル以上、月間視聴時間2,000万時間以上、ソーシャルファン数900万以上となっている。恣意的な判断ではなく具体的な数字を元に算出しており、eスポーツタイトルの規模を図る一定の目安となる。
6月時点のデータであるため既に入れ替わっている可能性はあるが、Tier1には「League of Legend」を筆頭に、「Fortnite」、「Dota2」、「CS:GO」、「Overwatch」、「ハースストーン」の6タイトルが選ばれている。一方、JeSU認定タイトルは、海外タイトルの「レインボーシックス シージ」と「コール オブ デューティ ブラックオプス4」のTier2が最上位で、国産タイトルの「ストリートファイターV」や「鉄拳7」はTier3に留まり、ランク外のタイトルも多い。この状態は、言わば野球やサッカーといった人気競技をスポーツとして認めず、マイナースポーツだけで世界と戦おうとしているようなものだ。
JeSUとしては、JeSU自身の力で認定タイトルをTier1に引き上げるのか、それともTier1に相当するタイトルを公認に選ぶのか、多くの競技人口を抱える競技団体として選択を迫られていた。そうした中発表されたのが、「eSPORTS国際チャレンジカップ」だ。JeSUが世界にアピールしたい「ウイニングイレブン2019」、「ストリートファイターV アーケードエディション」、「鉄拳7」といった国産タイトルの中に混じってeスポーツ界でもっとも長い歴史と伝統を持つeスポーツタイトル「CS:GO」が含まれている。JeSUは、国内タイトルにこだわらず、ついにTier1のeスポーツタイトルも取り入れていく方針に舵を切ったことになる。賞金総額はスポンサー各社から集めた1,500万円で、タイトルごとに4等分する。単純計算で1タイトルあたり375万円で、賞金もかなりビッグだ。
日本とアジアそれぞれの代表の選抜方法は、JeSUによる推薦形式にするのか、予選を行なうのかについて現在検討中ということだが、4種目中唯一のチーム戦となる「CS:GO」については、カーリングのように国内のいずれかのチームをまとめて日本代表として選出する形を検討しているという。
順当に行けば、国内最大の「CS:GO」大会であるGALLERIA GAMEMASTER CUPを2連覇し、IeSFの日本代表にもなったSCARZ Absoluteが選ばれそうだが、既報のようにIeSF後にSCARZを脱退して無所属となっており、日本代表選びは混沌としている。どのような判断が下されるのか続報に注目したいところだ。
再度登壇した岡村氏から語られたのは、地方支部の開設だ。JeSUが将来的な目標として掲げているのはJOCへの加盟だ。JOCに加盟するためには、“スポーツ団体”として認められる必要があり、スポーツ団体として認められるためには、JeSU設立のきっかけとなった“国内統一団体”であるだけでなく、本部、地方支部、会員というピラミッド構造を全国津々浦々まで浸透させ、日本全国での具体的な活動実績が必要不可欠となる。その第1歩となるのがJeSU地方支部の開設となる。
実態としては日本eスポーツ協会(JeSPA)時代の地方支部を復活させ、改めて地方支部として認定する形で2019年1月21日より稼働を開始する。岡村氏によれば、地方自治体からeスポーツイベント開催に関する問い合わせが増えていることもあり、地方自治体との協力関係の構築が地方支部の最初の仕事となるようだ。
なお、11都道府県以外の地方支部については「慎重に増やしていきたい。急がないつもり(岡村氏)」と慎重な姿勢を見せた。JeSU本部と地方支部は、大会運営のノウハウをはじめ、IPを持つメーカーへの繋ぎ込み、使用許諾の仲介、課題の共有などが主なやりとりとなるが、まずは11団体との間で支部活動の完成度を高めた上で、1年ぐらいの活動実績、運営状況などを吟味しながら認定するかどうかを決めていきたいという。