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人差し指操作タイプの決定版なるか!?ハイエンドトラックボール「DEFT PRO」レビュー

発売中

価格:17,780円(税別)

左が本稿の主役、エレコムの人差し指操作タイプ「DEFT PRO」。続いて人差し指・中指操作タイプの「HUGE」、ロジクールの親指操作タイプ「MX ERGO」。トラックボールの形状は操作する指に応じて大きく異なる

 エレコムは、人差し指操作タイプのトラックボール「DEFT PRO」を発売した。価格は17,780円(税別)。

 そもそもトラックボールとは本体に備え付けられたボールの動きをセンサーで読み取ってポインターを動かす仕組みの、マウスとは異なる方法でPCへの入力を行なうデバイスだ。

 "ボールを転がす"という操作しているだけで楽しくなるような独特の構造や、1度設置してしまえばその性質上本体サイズ以上の場所を取らないこと、手首が固定されるので腱鞘炎になりにくいこと……など、マウスと比べてメリットも多々あるデバイスなのだが、そのニッチさと操作に慣れが必要なことからマウスほどに市民権を得られておらず、製造しているメーカーや機種数自体が少ない傾向にある。

 そんな中、エレコムは精力的にトラックボールを作り続けているメーカーの1つで、中でも昨年発売された人差し指・中指操作タイプの「HUGE」はトラックボールにおいて久しぶりのハイエンド機種の登場ということで界隈では話題となり、その形状から往年の名機である「トラックボールエクスプローラー(マイクロソフト)」からの乗り換え先としても注目を集めた。

 そして今回、既存の人差し指操作タイプの既存モデル「DEFT」をベースに、ゲーミンググレードのセンサーや耐摩耗性に優れる2.5mmの人工ルビー製支持球などの基本仕様を引き継ぎつつ、各パーツのグレードアップとボタン配置の刷新を行なった上位モデルとして「DEFT PRO」が発売された。

 今回、本機を実際に試す機会に恵まれたので、本稿ではその実力についてお伝えしていこう。

握りやすく高性能なトラックボール

 「DEFT PRO」は「DEFT」と同じく人差し指での操作を想定したトラックボールだ。しかし、「DEFT」よりボールサイズはひと回り大きく、人差し指・中指操作タイプを謳う「HUGE」よりひと回り小ぶりなサイズ感になっている。

 個人的には「HUGE」のその名を体現するようなボールと本体の"デカさ"に惚れ込み、自宅用と仕事用で2個購入して仕事もゲームも「HUGE」1本で行なうほどに気に入っているのだが、持ち運びまで考えると確かに少々大きすぎる感もある。一方で「DEFT」はコンパクトでスペースを取らず持ち運びにも向く一方、大径ボールファンには少々物足りないボールサイズになっていたので、「DEFT PRO」はその隙間を埋めるようなサイズとも言えるだろう。

本体背面はグッと盛り上がり、手のひら部分をしっかりサポート

 いざボールに人差し指をかけてみると、親指と中指は自然に左右クリックに添えられる。また、薬指と小指は右側面に設けられた窪みに自然に収まり、手のひらはグッと盛り上がった背面部分に支えられるような形になる。

 この持ち方がメーカー推奨で、実際極めて収まりのいい形ではあるのだが、筆者の場合はよりボールのサイズが大きい「HUGE」に慣れているためか、どうもボールを人差し指と中指の2本で操作するクセがある。そのため「DEFT PRO」でも指を1本ずらして人差し指と中指でボールを操作し、薬指を右クリックにかけるようなスタイルで使用しているのだが、こちらでも小指はしっかりと窪みに収まり、違和感なく操作が行なえる。

 本体がコンパクトな分「HUGE」のようにリストレストは付いておらず、本体手首側には急角度の勾配がついている。そのため、本体と腕の位置関係によっては手首の位置が低すぎるということも有りえるので、このあたりは別途リストレストを用意するのもアリかもしれない。

メーカー推奨の持ち方。人差し指でボールを操作し、他の指は自然に這わせる形だ

 トラックボールの心臓部とも言えるボールは直径2.5mmの人工ルビー製支持球によって3点で支えられており、新品の状態では若干引っかかる感じはあるものの、しばらく使って馴染んでくるとゲーミンググレードを謳うセンサーと相まって、スルスルと滑るようなカーソル操作ができるようになる。バランスの良いボールサイズのおかげで瞬発的な動きも制御しやすく、FPSのようなゲームも快適にプレイできるだろう。

 ちなみにこの支持球がルビーであるというのも重要なポイントで、ここが鉄球だったりすると長期間の使用ですり減り、接地面が球から平面へ近くなることで操作感が悪化していく。その点ルビーはダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ鉱物のため、長期間のハードな使用にも耐えることができるのだ。

幾層にもコーティングされたボールと、ゲーミンググレードの光学センサーが正確なカーソル移動を可能とする
親指側にはボタンとスイッチがギッシリ。一瞬ギョッとするが使い勝手は良好

 ボタン構成は左右ボタン、戻る&進むボタンと機能割当ボタン3個にホイールクリックを加えた合計8個。使用頻度の高い左右クリックには1,000万回のクリックに耐えるオムロン製のマイクロスイッチが採用されており、カチカチとした感触が心地よい。感触からして薬指にあたる機能割り当てボタンにもマイクロスイッチが採用されており、その他のボタンにはタクトスイッチが用いられているようだ。

 欲を言えば全て耐久性と押し心地に優れるマイクロスイッチを採用して欲しかったところではあるが、マイクロスイッチはタクトスイッチに比べてコストが嵩む上にサイズが大きく設置に場所をとるので、本体サイズと価格のバランス上致し方なしというところだろうか。

 ボタンの配置はよく練り込まれており、アクセスも良好だ。いずれのボタンも自然な動作で入力に移れるのは好感が持てる。ミッチリとボタンが詰め込まれた特徴的な親指側に位置する機能割り当てボタンなどは一見使いにくそうに見えるかもしれないが、"親指を曲げて押す"のではなく、"親指の第1関節で押す"というイメージで操作するとスムーズに入力できる。

 実際筆者も使いはじめは親指側ではなく、「DEFT」や「HUGE」のようにボール横にあれば人差し指で入力できるのに……などと思ったものだが、1度慣れてしまえば便利に使える位置なのである。

「DEFT PRO」のボタン配置。「DEFT」と同じく8ボタンを備えており、底面にはポインタ速度の変更スイッチとドングルの収納場所、Bluetoothのペアリングボタンを備える

 各ボタンは専用ドライバの「エレコム マウスアシスタント」を用いることで、ボタンの入れ替えや3キーまでのキーボード同時入力などの機能を割り振ることができる。トラックボールの製品群を見渡しても、8ボタンというのはかなり多い部類に入るので、ゲームミング用途にも適正があるといえるだろう。ゲームタイトルによってはサイドボタンの有り無しで操作の快適さや反応速度が段違いだったりということがあるので、同時入力を含めて自由にキーを割り振れるのは嬉しいところだ。

キー設定の自由度は高く、任意のキー3つを組み合わせて入力することも可能。また、設定はプロファイルとして複数パターン保存しておくこともできる
カリカリと小気味の良い音を立てて回るホイール。切り替えスイッチは青がBluetooth、赤が無線に割り振られており、直感的にわかりやすい

 ホイールは「DEFT PRO」独自の光学式エンコーダを採用しているとのことで、稼働時に部品の摩耗がないような作りになっている。回し心地はカリカリとした感じで、回す感触がきちんと味わえるものになっており、どちらかというと「スルスルスル……」と回る「HUGE」のホイールとは明確に異なる手触りだ。好みは分かれるかもしれないが、筆者はこの「DEFT PRO」の"ちゃんと回してる感"が非常に気に入った。

 「DEFT PRO」は接続方式も多彩で、有線はもちろん付属のドングルを用いた無線接続のほか、Bluetoothでの接続にも対応している。USBケーブルを繋ぐと有線モードが優先されるが、ワイヤレス接続時には親指側のスイッチを切り替えることでそれぞれの接続方式を選択することができる。ドングルは本体に内蔵できるようになっているのでモバイルにも便利であるし、そもそもドングルを持ち歩かずにBluetoothで接続してしまうこともできるので、使うシーンを問わない。

 ここまで見てきたように、「DEFT PRO」は操作感もよく、反応も良好、計8つのボタンを備える上に信頼性の高いパーツによって長期に渡るハードな使用にも耐えうるなど、"PRO"の名に恥じない高品位なデバイスとなっている。

 もちろんこうした特性はゲーミング用途でも存分に活かすことができる。例えば100人が孤島に降り立ち、最後の1人になるまで生き残りを賭けて戦うTPS「フォートナイト」などでは瞬発的なエイムはもとより、敵の攻撃を咄嗟に防ぎ、有利な位置取りを取るための建築なども行なう必要がある。必然的に操作量も多くなるため、各ボタンに何を割り振るか?ということを詰めて行けば、より効率的なプレイが可能になるだろう。トラックボールの中でも「DEFT PRO」はそのスペックから特にゲームに向いたトラックボールと言える。

「フォートナイト」では撃ち合いでのAIMはもちろん、瞬発的な建築なども求められる

 トラックボールも当然ながらマウスと同じく、手に合う合わないがある。ことトラックボールではどの指を使って操作するタイプなのかということにはじまり、形状がしっくりくるか、気持ちよくボールを操作できるかどうかも重要なポイントとなる。そんな中、トラックボールは製品数の分母が少ないため、ハイスペックで"中玉"とでも言うべきボールサイズを備えた「DEFT PRO」の登場は極めて重要な意味を持っているのだ。

 もし手に合うようであれば、「DEFT PRO」はトラックボールでゲームをする向きには心強い味方になってくれることだろう。是非1度試して見ていただきたいと思う。