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【特別企画】トラックボールユーザー待望の52mm大玉「HUGE」レビュー

10カ所もの入力を備える大型トラックボールの実力やいかに

発売中

【M-HT1URBK(有線タイプ)】

価格:12,430 円(税別)

【M-HT1DRBK(無線タイプ)】

価格:14,210円(税別)

トラックボールにしては珍しく8ボタン+上下チルトホイールと多くの入力を備える

 エレコムは、人差し指・中指操作タイプトラックボール「HUGE」シリーズとしてワイヤレスモデルの「M-HT1DRBK」と有線モデルの「M-HT1URBK」を発売した。価格はワイヤレスモデルが14,210 円(税別)で、有線モデルが12,430円 (税別)。

 日常のPCライフのみならず、長年どっぷりはまり込んでいる「League of Legends(LoL)」をはじめゲームプレイにおいてもトラックボールを使う筆者。久しぶりの新型大玉タイプの発表ということで、発売と同時にウキウキで購入して使用してみたところ、結果的には乗り換え先として大いに"アリ"。というかメイン機が入れ替わってしまうレベルで気に入ってしまったので、本稿では本機をご紹介したい。

何故今「HUGE」なのか

左から本レビューの主役、中指・人差し指操作タイプのエレコム「M-HT1URBK」、同タイプのサンワサプライ「MA-TB38(廃盤)」、ロジクールの親指操作タイプ「M570」。共通するのはボールで操作するということぐらいで、形も操作する指も様々

 トラックボールは、マウスのように接地面を動かして操作するのではなく、天面に配置された「ボール」を操作して入力するポインティングデバイスだ。その独特の入力方法からボールさえついていれば操作が可能、ということで本体形状の自由度が高いため、ボールそのもののサイズや操作をする指に応じて多様な商品がラインナップされている。

 筆者は2013年頃に初めて購入したトラックボール、サンワサプライの「MA-TB38」をメイン機として使用しており、55mmの大径ボールの操作感と中ボタンクリック付きのスクロールホイールの存在に満足していた。この機種のスクロールホイールの位置には賛否両論あるが、筆者はこの配置がとても気に入っていて、かなりの愛着を持って使用してきたのである。

 その後、親指操作タイプに興味が出てきてロジクールの「M570」を購入してみたり、ゴロゴロゴロ……というボールの操作感を求めてロータリーエンコーダを搭載するケンジントンの「Expert Mouse 5(廃盤)」をオークションで購入してみたりしていたのだが、「大型ボール」、「スクロールホイール付き」の条件を満たす「MA-TB38」が相変わらずメインを張っていた。しかし、同機種は既に廃盤となっており、入手が困難になってしまっている。なのでもしこれが壊れてしまったら……ということで次なる機種を物色していた。

 老舗ケンジントンの名機「Expert Mouse (通称EM7)」や「SlimBlade Trackball」は実際に触れてみて素晴らしい機種であることは知っているのだが、筆者はホイールクリックを多用するため、ホイールの代わりにリングが搭載されているという機能的な面で選択肢から除外。また、同エレコムの「DEFT」シリーズは人差し指・中指操作と親指操作の両タイプが用意されている上にホイールもついているということでこちらも検討していたのだが、大玉に慣れてしまった筆者には少々球のサイズに不満があり、こちらも選択肢からは除外していた。

 ああ、大玉でホイールがついていてなんかイイカンジのトラックボールないかなー!というところに発表された「HUGE」シリーズ。人差し指・中指操作タイプ、かつ直径52mmの大型ボールを搭載していてスクロールホイール付き、ということで、筆者の求める全てが詰まった本機種に一も二もなく飛びついた。

 「HUGE」には有線と無線の2種類がラインナップされているが、トラックボールは本体据え置きで用いるため、ケーブルが操作の邪魔になるということがない。また、このサイズだと持ち運びは厳しいだろうと判断し、有線モデルの「M-HT1URBK」をチョイスした。

直径52mmの大玉を搭載!細部まで気を使った構成でノンストレスの操作が可能

ゲーミンググレードのセンサーを搭載
ボールの直径は52mm。ボールペンと比べるとこのようなサイズ感

 まず目を惹くのはトラックボールの心臓部、52mmのボールだ。ボールは大きければ大きいほど操作の安定性が増し、使いやすくなる。球が小さいとカーソル操作でふらついてしまったり、長距離の移動に必要な操作量が増えてしまったりということがあるのだが、このサイズのボールであればその心配もない。

 また、操作用のボールは支持球と呼ばれる小さな球を用いて概ね3点で支持する構造となっているが、本機の支持球には2.5mmサイズの人工ルビーが用いられている。そのため非常に滑らかな操作感となっており、引っかかりを感じることはまるでない。

 ここがステンレス球であったりすると長期間使用しているうちに摩耗してしまって引っ掛かりが出てきたりすることがあるのだが、人工ルビーは非常に硬度の高い鉱石のため、摩耗することがほとんどない。そのため長期間に渡る使用でも安心して使い続けることができるだろう。

 センサーにはゲーミンググレードの光学式センサーを搭載しているとのことで、思った通りの操作をストレスなく行なうことができる。正直明らかな違いを実感できる部分ではないのだが、少なくとも思った通りの動作をしてくれており、意図と違う動きをしたりということは無いので、見えないところでその恩恵を受けているようだ。

「HUGE」の名の通り安定性抜群の大型フォルム。パームレストが非常に快適

低反発素材のパームレスト。かなりの広範囲をカバーしており、手のひらの載せ心地は非常に快適
実際に手を置くとこのような感じに

 本機は「HUGE」という名を冠しているだけあってとにかく大きい。そのため設置には多少の場所をとるが、安定性は抜群で、激しい操作をしても本体がズレて動いてしまったりということがない。

 トラックボールはその特性上設置場所さえ確保できればそれ以上のスペースを要求しない。また、本体は固定されているのでクリック操作時にカーソルが動いてしまうということもないため、持ち運びの利便性を無視すれば本体サイズの大きさは多大なメリットを生み出すのである。その点で本機「HUGE」は極めて操作感のよいトラックボールといえるだろう。

 手のひらが接する部分には低反発素材のパームレストが設置されている。ここは非常に気に入っている部分で、硬すぎず柔らかすぎずといった感触のパームレストは非常に手触りが良く、手を置いた際のフィット感が非常に優れている。

 ただし素材の関係上経年劣化が気になるところで、数年に渡って使用した際にどうなるかというのは若干の不安要素ではある。ただ、少なくとも1カ月程度の使用ではほぼ変化は見られていない。

 ちなみに「HUGE」では無線モデルもラインナップされている。トラックボールは1度設置すれば本体を動かすことはなく、マウスと比較してケーブルが邪魔になるということはあまりないので、個人的には電池の残量を気にする煩わしさを避ける意味でも有線モデルをおすすめしたい。

 ただ、無線モデルのレシーバーは1円玉サイズと非常に小型になっている上、本体に収納が可能だ。本機は持ち運びには若干厳しいサイズのような気もするが、どこでも持ち歩いて使いたい、あるいは作業環境から接続用のケーブルを1本でも減らしたいという要望に応える選択肢も用意されている。

無線モデルのレシーバー。1円玉サイズと非常に小型だ
レシーバーは本体に収納が可能

8ボタン+2方向チルトホイール付き!メインスイッチはオムロン製のマイクロスイッチを搭載

本体左側面。各ボタンと上下チルト入力が可能なホイールを搭載。
手元でカーソル速度を調整することもできる

 本機には8つのボタンとチルト入力に対応したホイールが搭載されている。どことなくマイクロソフトの「トラックボールエクスプローラー」に似たボタン配置であるが、デフォルトでは左クリックと「戻る」、「進む」のショートカット、そしてチルト付きホイールが親指側に設置されている。

 そしてボールの左側には専用のソフトウェア「エレコムマウスアシスタント」を導入することで自由に設定ができるFnキーが2つ設置されている。本体右側には右クリックと、同じくFnキーが1つ設置されており、これで合計8ボタン+チルトホイール2方向の10カ所の入力を備えている。

 左右のメインボタンにはオムロン製のマイクロスイッチが搭載されているとのことで、クリック感は非常に良い。スペック上公称はされていないがFn3キーにも感触からしてマイクロスイッチが搭載されているようだ。それ以外の「進む」、「戻る」とFn1、Fn2キーには恐らくタクトスイッチが導入されているため、メインキーとは多少押し心地が異なっている。

 マイクロスイッチは入力したときに「カチ、カチ」としたクリック感とともに小気味のいい音のするスイッチで、タクトスイッチは「コチ、コチ」といった少しおとなしい感触と音がするスイッチとなっている。

 筆者はマイクロスイッチの感触が好きなので全てマイクロスイッチだとなおよかったのだが、タクトスイッチはマイクロスイッチに比べてスイッチそのものが小型なので、複数ボタンを設置するためにこのような仕様になっているものと思われる。

 左ボタンはサイズも大きく、位置的にも押しやすいのだが、右クリックはスイッチ自体がやや狭い作りになっている。ブラウジングや書類作成の際はそんなにヘビーに操作することはないので問題ないのだが、右クリックを多用するゲームなどをプレイする時には連打する際に指の位置が安定せず、入力精度が落ちてしまう。例えば筆者が良くプレイしている「LoL」ではキャラクターの基本移動が右クリックとなるため、素の設定では正確な操作はちょっと厳しいというのが正直なところで、個人的にこれは結構致命的な問題であったりする。

 しかし、エレコムが提供するソフト「エレコムマウスアシスタント」では左クリックを含む全てのキーの設定変更が可能な上、各キーに任意の操作を3つまで組み合わせて設定することもできる。さらにアクティブとなっているアプリケーションに応じて自動でプロファイルを切り替える設定も可能となっており、かなり自由度の高い設定ができるようになっている。

 そのため筆者は「LoL」がアクティブの時は左右クリックを入れ替える設定にしている。自動で切り替わってくれるのでいちいち面倒な設定をしなくても済むし、左クリックボタンは非常に押しやすいので大変に快適だ。

 また、通常使用においてはFnキーに「Ctrl+W」と「Ctrl+Shift+T」、「中クリック(ホイールクリック)」を割り振っており、それぞれ「閉じる」、「閉じたタブを開く」、「リンクを新規タブで開く」に対応させることで、Chromeでのブラウジングに特化した設定にしている。今まで使っていたトラックボールでは5ボタン+ホイールだったため、「HUGE」によって多ボタントラックボールの恩恵をフルに受けている状態で、多ボタンってこんなに快適だったのか!と今更ながら感動している次第である。

各ボタンは自由に入れ替えができるほか、キーを組み合わせて1ボタンで入力することもできる
筆者はまだ未設定だが、キーに対してマウスジェスチャーの登録も可能だ
アプリケーションを指定しておくと、アクティブになったときに自動で設定を切り替えてくれるようにもできる

トラックボールでゲームプレイ!

「HUGE」を用いた「Shoot」のスコア。14段階中上から5番目の評価「A」ということで、まずまずの結果ではなかろうか。

 ところで、筆者は日常のPC利用はもちろん、どんなゲームもトラックボール1台でプレイしている。その様子に対してトラックボールを知らない人からはそもそも「ナニソレ?」、存在は知っているけど使ったことがないという向きからは「そんなもんでゲームすんの!?」などという声が聞こえるが、勝利のため、あるいはスコアのためには自らが使いやすいデバイスを使うことが肝要だ。

 なのでトラックボールでもゲームはできる!!ということを証明するため、まずは操作感の目安として、まずは動く的をポイントしてクリックする「Shoot」をプレイしてみた。マウスを使わなくなって久しいので、マウスと比べてどうかという話はもはやできないのだが、似たような操作感のトラックボール「MA-TB38」と「HUGE」で何度か試してみたところ、概ね「A」評価を取ることができた。「A+++」から「F」までの14段階中上から4つ目の評価ということで、そこまで悪いスコアではないと思われる。ある程度慣れればこのくらいは動かせるということで、ゲーミング用途においてトラックボールそのものが大きく劣っているわけではないと言えるのではなかろうか。

「LoL」のプレイ風景。集団戦では冷静かつ迅速に目標をクリックすることが求められる

 また、先ほどから名前を挙げている「LoL」のプレイにおいても筆者は本機「HUGE」をバリバリ使用している。「LoL」は5人vs5人で戦ういわゆるマルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ、通称MOBAというジャンルのゲームで、「レーン」と呼ばれるルートを進んでくる敵ミニオンや、あるいは10人が入り乱れる集団戦で正確に敵チャンピオンをクリックするなど、「StarCraft」シリーズなどのRTSほどではないもののかなりシビアなポイント操作が求められるゲームだ。

 実は操作ボールが小さいとマウスで長距離を移動させるのと同じように細かなボールの"持ち替え"が発生するので、「グワッ」と動かして「ピタッ」と止めるピンポイントの操作が難しかったりする。

 その点「HUGE」の大径ボールは指のポジションを変えることなくフルHDのモニター1画面分程度の移動距離は余裕を持ってカバーできる上、人差し指・中指の2本で支えて操作する形になるので、ピンポイントな操作が非常にやりやすい。

 また、ゲーム内では相手のスキルを避ける、フェイントをかける、あるいは有利な位置取りをするために、カーソル操作+「チャンピオンの移動」をする右クリックは常に連打しているような形になる。

 トラックボールはもともと指先で操作する仕組みになっているため、手首への負担が少ないと言われている。そのため、マウス操作による腱鞘炎対策として奨められることもあるほどで、カーソルの細かな左右移動が手首に負担をかけることなく楽にできる。長時間のプレイでも疲れにくいのも嬉しいポイントだ。

 これらの操作の快適さや疲れにくさといったメリットは全てボールのサイズに起因するもので、さらに低反発素材のパームレストがその快適さを後押ししている。そうした意味で大型筐体・大径ボールの「HUGE」はハードなゲーミング用途に耐えうるといえるだろう。ただし、やはりデフォルトの右クリックはその細さから連打はしにくいので、「LoL」においては左右クリックの入れ替えが必須だ。

「PUBG」。キーバインドをいじり倒して快適な設定を日々追求しつつ楽しんでいるが、腕そのものが悪すぎて"ドン勝"率は極めて低い

 他にも現在人気大爆発中の「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」などもプレイしており、ここでも「HUGE」を使用している。ポインティングデバイスとしてはエイミング等も問題なく行なえるし、咄嗟の反応にもきちんとついてきてくれる。

 各ボタンには今のところ「しゃがむ」、「伏せる」、「フリールック」、「主要武器1」、「主要武器2」や回復アイテムなどを割り振って使用しているが、ここはまだ最適化ができそうな気がしており日々調整している。これはボタンが沢山あるが故の悩みであり、トラックボールユーザーとしてはなんとも贅沢なことだと思っている。ちなみに"ドン勝"率は極めて低いというかほぼ0に近いのだが、これはデバイスのせいではなく筆者の力量であることを補足しておく。

 一方「LoL」や「PUBG」のように激しい操作ではなく、RPGやADVなどの比較的緩やかな操作をリラックスして行なうのにもトラックボールは最適だ。というのも手首を固定して指先で操作するという仕組み上、肘の位置を問わないからである。つまりいわゆる"ごろ寝"姿勢でゲームをプレイするのにはうってつけで、かくいう筆者もスコアを競うジャンルのゲームでなければそれはひどい姿勢でゲームをプレイしている。

 Steamなどで購入した山積みのゲームをリラックスしてのんびりとプレイしたいとき、トラックボールは心強い味方になることだろう。

思い出したように突然プレイしたくなる入国審査シミュレーション「Papers,Please」。
世界観に浸りつつのんびりとプレイしたいバーテンダーADV「VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action」

こだわりが感じられる「HUGE」

 トラックボールはマウスに比べて省スペースで設置ができたり、設置する面を選ばないのでとりあえず置けば動かせるという大きなメリットもあるし、なによりボールを操作しているだけで楽しいという不思議な面白さがある。そして今回の「HUGE」は思いきったサイズ設定や支持球やスイッチの仕様など、細かなところまで相当にこだわって作られていることがみてとれ、さらに多数のキーを備えつつそれぞれ自由度の高いキーカスタマイズも可能、と実際の使用感も相当に快適であった。

 何よりここまでの多入力を備えた大径のトラックボールはこれまで存在しなかったのである。そうした意味でも「HUGE」シリーズの存在は、トラックボール史においても非常に意味のあることのように思われる。少なくとも筆者は今後「HUGE」をメイン機として使っていくつもりであるし、非常におススメできる逸品である。特に「大玉党」のユーザーには機会があれば是非1度触れてみていただきたいと思う。きっと満足できるはずだ。