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「セブンス・リバース」×「FINAL FANTASY XI」コラボインタビュー
「セブンス・リバース」プロデューサー田中弘道氏、ディレクター廣瀬髙志氏に聞く「FFXI」とのコラボ、MMORPGへのこだわり
2017年11月10日 12:00
ガンホー・オンライン・エンターテイメントのAndroid/iOS用オンラインRPG「セブンス・リバース」は正式サービスより1周年を迎えることを記念して、スクウェア・エニックスのMMORPG「FINAL FANTASY XI(以下、『FFXI』)」とのコラボレーションイベントを実施する。
なぜ「FFXI」とのコラボなのかというと、「セブンス・リバース」のプロデューサーは、かつてスクウェア・エニックスにて「FFXI」のプロデューサーを務めた田中弘道氏。「セブンス・リバース」は1周年を、「FFXI」は15周年を迎えるということで、今回は田中氏が手がけたオンラインRPG2作品がコラボすることになったというわけだ。
また、「セブンス・リバース」のディレクターは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントのオンラインRPG「ラグナロクオンライン」に制作担当として携わった廣瀬髙志氏が務めている。
そこで今回は田中氏と廣瀬氏に、コラボレーションについて、お2人のそれぞれの作品を経ての「セブンス・リバース」というオンラインRPGについて、さらには当時のエピソードやオンラインRPGというゲームジャンルそのものについての考えなど、様々なお話を伺ってみた。
“MMORPGの次の形”を目指し、5年前からスタートした「セブンス・リバース」
――「セブンス・リバース」の正式サービスより1周年ということですが、まずはこの1年を振り返ってのご感想はいかがですか?
廣瀬氏:「もう1年経つのか!」という気持ちです。あっという間だったと感じるぐらいに濃い1年でした。スマートフォンのゲームを運営するのが初めてだったこともあり。「ラグナロクオンライン」の時もオンラインゲームを運営するということが初めてだったんですけど、この1年も同じように手探りでやってきました。
市場のトレンドがどんどん移り変わっていくなか進んできたので、始めたばかりの時に「これが正しいだろう」と思っていたのに、フタを開けてみると状況が違っていたりということもありましたね。そういうところを勉強しつつ、変えるべきというところはスピーディーに変えていく。それを毎月続けて突っ走ってきました。
そうしたこちらの展開に対して、熱意のあるプレーヤーさんからすぐに反響を頂けるというところは、PCで「ラグナロクオンライン」を運営してきた時と変わらなくて、やりがいのある1年でしたね。
田中氏:「セブンス・リバース」は実は、開発がスタートしてから5年が経つんですよ。この1周年というのはその5年のうちの1年で、その前の4年間もバタバタとしていたんです。そのバタバタの勢いのまま走り続けているという感じなんですよ(笑)。
――なんと、サービス前の開発期間が4年あったんですね。その頃のお話も気になります。
田中氏:1番最初の5年前というのは、僕がスクウェア・エニックスからガンホーへと移る頃ですね。その前にガンホーの代表である森下と話したことがあったんです。
お互いに「ラグナロクオンライン」や「FFXI」を10年以上運営してきた同士だったわけですが、感じていたのは“MMORPGの不便さ”とでもいいましょうか。リアルタイムな同時接続であるがゆえにパーティー編成するときに時間待ちが長くなったり……ジュノ(「FFXI」の中心的な都市)なんかがそうでしたよね? パーティーを組むのに長いと2、3時間かかってしまうこともあって。そういうところは次第に、今のスマートフォン市場に見られるような手軽さやスピード感の求められる層に馴染まなくなっていくだろうなと感じていたんです。
ただ、そうは言っても一部のソーシャルゲームのような見知らぬ人とその場限りのプレイをするというのではコミュニケーションのあるMMOならではの良さは感じられない。そこで、いいところ取りというか、“同時接続ではなくても、いつものメンバーとパーティーが組めて、ギルドという単位でお互いをよく知る人と遊んでいる感覚の得られるゲーム”を作ってみたいという話をしたんです。
それから僕は、病気が原因でスクウェア・エニックスを退社することになったのですが、それから廣瀬と2人で「ゲームを作ってみようか」という話をするようになったのがスタートでした。ただ、その後に僕は病気で入退院を繰り返すようになって。廣瀬を1人ぼっちにさせてしまったのは申し訳なかったですね。
――なるほど。実際の開発はどのように始まっていったのでしょう?
田中氏:僕が最初に入院する前に、デベロッパーのブラウニー・ブラウンという……もともとスクウェアで「聖剣伝説」シリーズなどを手がけたチームからその後何人かが独立して立ち上げた会社ですけど、そこが任天堂さんから独立して「ブラウニーズ」という会社に変わるということで、ご挨拶に来て頂いたんです。
任天堂から出向という形で「ブラウニー・ブラウン」の役員をしていた吉田が、今はガンホーの取締役になっていたりという繋がりもあったりして、いろいろとお話しているなかで「じゃあ、一緒にやってみようか」ということになったんですよ。
そんなわけで、開発は「ブラウニーズ」、ディレクターは廣瀬ということで開発が始まるという矢先に、僕が入院していなくなっちゃったんです(笑)。あとはお任せしますという感じでしたね。そんなこんなもありつつ、だんだんと形になっていったのが「セブンス・リバース」なんですよ。
廣瀬氏:吉祥寺の「ブラウニーズ」さんにガンホーからのメンバーがお邪魔していた時期もありましたね。
――今日に至るまでにかなりの紆余曲折があったのですね。「セブンス・リバース」は早い段階から今の形が見えていたのでしょうか。
田中氏:最初はプラットフォームもスマートフォンと決めていたわけでもなく、単純に“MMORPGの次の形”として、ユーザーさんの拘束時間を減らして自分の都合でプレイできるものはできないだろうか……というのがスタートでした。
今の「セブンス・リバース」の形に至るまでも“スマホなのだから、ああしよう、こうしよう”というのは考えなかったです。常にMMORPGとしてどうなのかという概念で作っていますね。なので「セブンス・リバース」はスマホのゲームとしては随分とガチな作りになっていますね(笑)。
――長くゲーム開発されているクリエイターさんほど、プラットフォームを問わずにゲームデザインを考えられる人が多いように思います。プラットフォームへのイメージや縛りがなく「ゲームが動いて遊べるのなら何でもいいんですよ」とあっけらかんにおっしゃられるような。
田中氏:これまでもいろんなハードでやってきましたし、そういうところはあるかもしれませんね(笑)。そういう意味では、スマホはゲーム機として携帯性も汎用性も高くて、ゲームプラットフォームとしてとても優れているなと思いますよ。
――なるほど。「セブンス・リバース」を1年運営されてユーザーさんの反応はいかがですか? お2人の手がけた「FFXI」や「ラグナロクオンライン」はヘビーなプレーヤーさんも多数生みましたが。
田中氏:そうですね。ユーザーさんというよりゲームの「セブンス・リバース」の方が1年のうちに変わっていったところが多くあるというところからお話すべきと思いますが、1年前にスタートした頃はギルドという形がなかったり、掲示板がなかったり。手探り状態でした。
例えば、弊社の「パズル&ドラゴンズ」はスマホゲームの中でも先駆け的な存在ですけど、コミュニティ的な要素はあえて少なくしてフレンドというものに留め、ユーザー同士の縛りを外しているんですよね。MMORPGの人と人との繋がりの魅力はそれとは正反対の方向性にあって。それぞれに良さがあるとは思いますが、スマホゲームながら逆へと振ってみたのが「セブンス・リバース」になっています。
廣瀬氏:1年でゲーム内はだいぶ変わりましたが、やりこんでいる人はもう単純なキャラクターレベルだけでなく装備やアビリティのレベルなどもMAXになっていますね。
MMORPGって他のプレーヤーさんに認めてもらえたりっていうところもあって、今で言うとTwitterなどですが、昔だと掲示板ですごいプレーヤーが崇められたり(笑)。そういうのも楽しみの1つですよね。「セブンス・リバース」でも、「この人はどれだけプレイしているんだろう!」って驚くようなスタープレーヤー的な人が出てきています。
田中氏:MMORPGで自分のレベルを上げたり装備を強化したりするのって、自分のためだけじゃなく、一緒にパーティーを組む仲間のためだったりするんですよね。そこのギブアンドテイクがポイントというか、人と人との繋がりを感じられるところだと思います。
「セブンス・リバース」は、他のプレーヤーさんに自分のキャラクターを使ってもらっても報酬は用意していないんです。使われた回数が出るだけなのですが、それでもプレイのモチベーションになってくれているようです。
――報酬目当てではなくユーザー同士の繋がりがプレイのモチベーションになっているというのは、いかにもMMORPG的ですね。
田中氏:「ラグナロクオンライン」も「FFXI」もそうだったと思うのですが、MMORPGは向こう側にいる人との繋がり、相手の存在を感じられるところが1番の面白さだと思います。
――やはりそこが大きいですね。ただ、そうしたオンラインの魅力、特にMMORPGならではの魅力というのは、かつてはコンシューマーでも環境を整える必要があったり敷居が高い世界でした。今はお2人がそれをスマートフォンのゲームで追求しているというのは、時代の変化を感じる話です。
田中氏:そうですね。ですが、言ってしまえば「どれもゲームだよね」と思いますし、どんなプラットフォームでやるかは、やはりあまり関係ないのではと思います。
「FFXI」でもPlayOnlineというものでクロスプラットフォームを掲げていましたが、遊ぶデバイスは動くならなんでも良いという考えが当時にもありました。もう今から15年以上前の2000年頃の話ですけど、PlayOnlineの構想を発表したときにはゲームセンターにマシンを設置して、それでも遊べるようにしたかったり、携帯端末でプレイできるようにしたかったり。
――確かに、今からすればPlayOnlineの構想はクラウドベースのプラットフォームに繋がるような……。マンガを読めるようにするとかもありましたが、それは今の電子書籍ですし。時代を先駆けていましたね。
田中氏:早すぎたのかもしれませんね(笑)。2000年頃ってそれこそネット接続も定額制ではなくてまだまだ“テレホーダイ”の頃でしたから。
※“テレホーダイ”とは、電話の音声通話でネット接続をしていた時代に、23時~翌8時までの深夜から朝に限って通話料金が定額になるサービス。このためネットやオンラインゲームは23時からがゴールデンタイムだった。
――ISDN、ADSLの頃ですかね。ネット自体がまだ一部の人の趣味と言える頃でした。
田中氏:従量制が普通で、23時になるとみんな一斉にログインしていましたよね。そういう意味では「FFXI」を始めた頃はテレホーダイの時間がコアタイムで、その時間にみんな集まるからパーティー編成がしやすかったんですよ。
ただ、その後にネット接続が定額制の時代になってくると「FFXI」にログインするのはいろんな時間に分散するようになって。そういうネット環境の変化がゲーム内にも変化を起こしていました。
――確かにそうでした。僕は常に「FFXI」にログインしっぱなしになりましたね。ログアウトするのはメンテナンスの時だけでした(笑)。
全員:(笑)。
田中氏:この15年ほどでネットワーク環境は激変しましたよね。当時は携帯電話といえばフィーチャー・フォン、いわゆるガラケーでしたが、「FFXI」の競売所にガラケーで接続できるような仕組みを1度発表したりもしました。ですが、まだ携帯での定額制の契約がなかったものですから、NTTの研究所と相談させてもらったりもしたんですけど、最終的に挫折して。その後にパケット定額制とかになっていくんですよね。
――そうやって考えると、田中さんは初代「ファイナルファンタジー」以前からスクウェアでゲーム開発に携わり、MMORPGのゲーム制作でも、ネットワーク環境や携帯デバイスの変化や進化と共に進んでいて。常に時代の流れに対応しながらのゲーム制作なんですね。
田中氏:振り返ってみると、コンシューマーのハードでもだいたい5年ぐらいのサイクルで、ファミコンからスーパーファミコンになり、プレイステーションが出てきたりと変わっていきましたが、ネット環境やスマートフォンという変化はさらに大きなものでした。これから先の5年には、また新たな動きが起きていくのではと思います。
そうした大きな変化の中でも「FFXI」や「ラグナロクオンライン」が続いているのは、コンテンツをしっかりと評価してもらえたからなのかなと思えます。
「FFXI」とのコラボではAF装備、レリック装備、おなじみモンスターたちも登場!
――今回の「FFXI」とのコラボレーションですが、「FFXI」をある程度プレイしていた人なら誰もが知っているであろうものがいろいろとありますね。
田中氏:「FFXI」を知っている人はもちろんですけど、あまり知らないという人にも楽しんでもらえるものにしないといけないのですが……やっぱりこだわりを出し過ぎている感じもしますね(笑)。
開発スタッフに「FFXI」を遊んでいる人が多いですし、逆に「FFXI」のスタッフも「セブンス・リバース」を遊んでくれているんですよ。それもあって今回のコラボはとんとん拍子に話が進みました。
――このコラボはどちらから、どのような成り行きで始まったものなんですか?
田中氏:僕は月に1度通院して薬をもらっているのですが、その病院がまさにスクウェア・エニックスの社屋の裏にあるんですよ。近いので通院の帰りに立ち寄って、社内のラウンジでご飯を食べつつ「どう、やってる?」みたいな感じで話をしています(笑)。
一昨年に手術をしてそこから通院しているので、2年ぐらい前からですかね。それで去年ぐらいに「『FFXI』は今年で15周年ですよー」という話になり、そのタイミングだと「セブンス・リバース」も1周年なんだよねということで一緒に何かやりますか、となって。
――なるほど。「FFXI」が他社さんのタイトルとがっつりコラボするのは、これまでほぼないですよね。スクウェア・エニックスのゲームにシャントットなど一部キャラが出ているのはありますが。
田中氏:「FFXI」と他社とでは初めてなんじゃないですかね? そもそも僕がスクウェア・エニックスを辞める5年ぐらい前だと、「FF」シリーズのナンバリングがコラボをするというのはありえなかったというか、タブーというか、そういうところがありましたから。
廣瀬氏:「セブンス・リバース」のユーザーさんに「どういったタイトルとコラボすると嬉しいですか」というようなアンケートを取ったのですが、RPGジャンルだと「FFXI」が1位だったんです。ユーザーさんからも期待されていたものなので、実現してもらえて嬉しいですね。
――なるほど。そうしてできあがったコラボのジョブや装備、モンスター画像ですが……力が入っているというか、これってもう素材の元データをスクウェア・エニックスさんからもらっていますっていうレベルのものですよね?
田中氏:「FFXI」が使っている開発ツールというのは15年前のものを今も使っていますので、今主流なツールとはデータの互換性がないんですよね。なので、スクリーンショットなどをもらって忠実に再現しました。
10年ぐらい前にも実は、ガンホーのグループ会社であるゲームアーツに「FFXI」のモデルデータ制作を手伝ってもらえないかという話をしたことがあったんです。ただその時も、ツールのフォーマットが合わないので無理ですという話になって。そのあたりは毎回苦労するところですね。
――ユーザーさんにあまり知ってもらえていない、昔のデータを使うときのあるあるですよね。そのまま手軽に動かせるものではないどころか、新規で作るほうが楽というケースも多々あるという。とは言え、今回のコラボは装備もモンスターも見た目そのままにでてきますし、オリジナルストーリーもあるということで、かなり力の入ったものになっていますね。
田中氏:こだわって作っていますね。「セブンス・リバース」は以前にも「進撃の巨人」や「七つの大罪」などともコラボしているのですが、キャラを出して終わりということはなく本気で作っていますね。毎回ちょっと手間を掛けすぎているとも思います(笑)。
ゲーム自体に世界観があるとキャラクターの貸し借りだけには収まらなくなりますよね。お互いの世界観の落としどころをちゃんと見つけないと、浮いたコラボになってしまう。お話と世界観がそれぞれにあって、その2つをちゃんと融合させるというのは、コラボとしては難易度が高いですね。
廣瀬氏:今回のコラボには、「FFXI」から竜騎士セット装備のドラケンアーマーがあるのですが、それにあわせて竜騎士というジョブそのものを「セブンス・リバース」に実装しているんですよ。
――なんと、コラボにあわせて新ジョブも追加されているんですね。
廣瀬氏:そうなんです。もともと「ドラグーン」という竜騎士的なジョブの構想はあったのですが、特に実装時期は決まっていなくて。そこで今回のコラボがあり、そこに装備もあったので、このタイミングで登場することになりました。
――ゴブリンやマンドラゴラのかぶり物の頭装備ももらえるんですね。これは「FFXI」のオフラインイベントなどでもらえたりしたキャップですよね。
田中氏:そうです。こちらはイベントダンジョンをクリアするともらえる収集品を交換所に持っていくともらえる、おしゃれ装備的なものですね。
「セブンス・リバース」はアバターの着飾りを楽しむというところも売りのひとつです。最近もファッションコンテストイベントの第2回を開催したのですが好評頂いています。この装備もかわいらしいですし、ぜひゲットしてもらいたいですね。
――なるほど。「ラグナロクオンライン」も装備のかわいさが話題になったりしていた記憶がありますし、「FFXI」も装備の外観が充実していましたし。お2人の携わった作品って装備の表現にこだわりを感じますね。装備周りの表示をはしょらないというか。
田中氏:MMORPGってプレーヤー自身が主人公ですよね。なので、キャラクターよりも身につけている装備の方に比重が寄るんです。好きなNPCキャラクターがいるとして、そのキャラクターが身に着けている装備が欲しいというのが、プレイの行動動機になったりしますよね。
とは言っても、スマホでの表示でこれだけディテールをしっかり作って見せるのは大変なんですけどね。
――そうですよね。でも、逆に言えばここまでできちゃうんですよね。闇の王とかのモンスターはもう原作そのままという感じです。
田中氏:モンスターの方はほぼプレイステーション 2レベルのグラフィックスそのままで出せていますね。一方で、装備品になると「FFXI」とはプレーヤーキャラクタの頭身が違いますので、そこは多少アレンジして新規に作り起こしたものになっています。
廣瀬氏:装備品では「レリックウェポン」が10種類登場するのですが、レリックウェポンと言えば固有の技ということで、さすがに技の効果は「セブンス・リバース」のゲームシステムに合うアレンジはしているのですが、演出的なところは「FFXI」ユーザーさんから見ても「あぁ、これこれ」って言ってもらえるように頑張りました。
――「FFXI」を知っているからこそのこだわりを感じますね。アーティファクト装備の布や金属の感じとか色味なんかも、しっかりと再現されています。
田中氏:「FFXI」の頃ってまだライティングやシェーダーは使っていなくて、影とかも全部テクスチャーに手描きで書き込んでいるんですよ。なので今回検証のために借りた元データをうちのグラフィックスチームが見たときには「なんて作り方をしているんだ!」って驚いていましたね。
廣瀬氏:「セブンス・リバース」も同じで、テクスチャ-に影を描いたりはするんですよ。
田中氏:そうだよね。ただ「FFXI」はその描き込み具合がぶっとんでいたというか(笑)。
――今のお話ですと、「FFXI」と現行スマホゲームの「セブンス・リバース」だと、技術的なフォローが似通ってくるというか。近いところになってくるのでしょうか。
田中氏:そうですね。バランスの問題でゲームにもよると思います。スマホのマシンパワーを贅沢に使っているゲームだとライティングとかも使っていますよね。「セブンス・リバース」はマシンパワーを抑えつつのバランスにしていますから。
――マンガ的な手法というか、テクスチャーに書き込んでマシンパワーを抑えつつ見栄えも整えるという。
田中氏:その方向をやるには職人的な技術や工夫が必要になるんですよね。グラフィックスチームは逆に大変だったりするんですよ。
――なるほど。今回のこのコラボもそうした見せ方の工夫をどう持ってくるのかは苦労されたのだと思いますが、完成したものの再現度はとても高いですね。
廣瀬氏:ありがとうございます。質感もいい感じにできていると思います。
田中氏:先ほども少し話ましたが、スクウェア・エニックスから借りたデータをMaya(3Dアニメーションソフトウェア)で読み込んで出力するのにも、テクスチャーを全部貼り直さないといけなくなったようで。元の外観を見つつ泣きながら作業していたみたいです。
――あるある話だとは思うのですが、「FFXI」のデータでももうそうなってくるんだというところに時間の流れを感じますね。
田中氏:そうですね。例えば「FFXI」をPS3やPS4に移植しようとすると、あまりにも手間が掛かりすぎるので、だったら1から作った方が早いという話になるぐらいなんです。そうしたところから「FFXI」を移植するという展開ではなく、「FINAL FANTASY XIV」が生まれていったところがありますね。
――オリジナルストーリーも用意されているということですが、こちらはどのようなものでしょう?
廣瀬氏:「セブンス・リバース」では世界観やシナリオ自体は力を入れていて、開発初期から世界観やシナリオは井上信行さんに担当して頂いています。今回のコラボのオリジナルストーリーも井上さんが手がけています。
その井上さん自身も「FFXI」のヘビーなユーザーさんだったようで、「セブンス・リバース」の世界観と「FFXI」の世界観を自然に融合していますし、どちらの作品のファンの人にとっても、おもしろおかしく楽しめるものになっていると思います。
田中氏:井上さんは、もともとスクウェアで「Sa・Ga2 秘宝伝説」を制作したときに僕と一緒だったのです。それ以降は「ロマンシング サガ」や「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」などに参加して、独立してからは任天堂の「マザー3」のディレクターをやっていました。
そんな井上さんには、「セブンス・リバース」でストーリーを書く上で「歌舞伎風の効果音と舞台演出風にして欲しい」というのを僕からはオーダーしたんです。横画面なのもありますが、舞台の上で芝居を見るような。スポットライトを当てたりとか。なので、独特なイベント展開をしているゲームになっています。
――コラボに合わせての「セブンス・リバース」1周年記念のイラストですが、こちらは直良有祐さんが描かれたということで。直良さんは昨年にスクウェア・エニックスを退社されて、現在はフリーランスで活動されているんですよね?
田中氏:そうですね。1年ぐらい前に直良さんが独立するということで、元OBなんかが集まって送別会というか食事をしたときにも「フリーでもやっていけるよ」なんて話していました(笑)。
――今回のお話は田中さんの行動範囲のなかで生まれてるんですね(笑)。
田中氏:人間関係でやっています(笑)。
――でもそれだけに、ユーザーさんに喜んでもらえそうな、垣根のない豪華なものになったんですねー。
田中氏:そうですかね?
廣瀬氏:いえ、そこは「そうなんです!」って言ってください(笑)。
田中氏:そうか。じゃあ……そうなんです、自信作ですよ(笑)。
全員:(笑)。
「FFXI」や「ラグナロクオンライン」経験者のスタッフ多数で、ガチなゲーム性に自然となった「セブンス・リバース」
――お2人から見て「セブンス・リバース」をプレイされているユーザーさんは、どういった人が多いという印象ですか?
田中氏:上から下まで幅広くて、学生さんなんかもいらっしゃいますね。私がいるギルドメンバーには「来週テストなので……」なんて話をする人もいます(笑)。ただ、そうは言ってもゲーム性がハードなところもあるので、スマホだけでなくコンシューマーゲームもプレイされてきた人が多いのかなと思いますね。
廣瀬氏:そうですね、MMORPGをプレイしていたという人、まさに「FFXI」や「ラグナロクオンライン」をプレイしていたという人も多い印象です。
――なるほど。ゲームとしては、ゲームシステムの複雑さであったり難易度であったり、あとはやり込みの幅をどこまで想定するかなどユーザーさんの層を考えるところがあると思うのですが。そのあたりは「あまり意識しないけど……緩いゲームにはしない」という感じだったのでしょうか。
田中氏:そこは成り行きというか。結果的にそういうゲームになったという感じですね。
廣瀬氏:コアなゲームが好きなスタッフが結構いて、「FFXI」や「ラグナロクオンライン」をプレイしていたという人も多いんです。そういうのが好きだったメンバーが作っているので“ライトにも遊べるけど、やろうとすると奥行きも出てくるゲーム”に自然となるんですよね。
田中氏:歯ごたえを求めてしまうというか。求めすぎるというか。
――スタッフの方も両MMORPGをやりこんだ世代の人が多いんですね。そうすると……結構ガチなところのあるゲームに自然となりそうです(笑)。
田中氏:スマホからゲームを遊び始めたという人が「セブンス・リバース」をプレイするとびっくりされるかもしれませんね。逆に昔から「FFXI」などをプレイされてきたような人だと、「これくらいの歯ごたえは欲しいよね」って思ってもらえるかもしれない。
――お2人の考え方からしても、ゲーム性に「スマホだから……」と意識したところはなさそうですし、自然としっかり遊べるゲームになったという感じなんですね。
廣瀬氏:そうですね。ただ、スマホだからという点だと操作についてはやはり意識しています。操作しやすい遊びやすいインターフェイスにしようというものですね。ですが、それ以外の、特にゲーム性の部分においてはそういう意識はなくて。突き進んでしまいましたね(笑)。
――「FFXI」や「ラグナロクオンライン」を手がけてきた経緯から「セブンス・リバース」で重視しているというポイントは何かありますか?
田中氏:そうですね……こだわりは実はあまりないんですよね。ゲームを作る上で、そのときに1番面白いものを作ろうというスタンスでやってきていて。常にユーザーさんの声を聞いて、1番遊びやすい形にしていこうというのがありますね。ちょうど10月のバージョンアップでもユーザーインターフェイスを大きく変えていたりします。
廣瀬氏:サービスを開始してから変えてきたところとしては“コスト感”がありますね。スタミナを消費してダンジョンに行くのですが、そうした何かを消耗して何かを得るという、コストと得られる対価のバランスというのが難しくて。効率化をはかってみたり、ゲームの進行スピードも変えました。
――スタミナ消費という概念はMMORPGにはないものですし、スマホのゲームとしてはバランスを作る重要なポイントですよね。プレイの手触りというかライトやヘビーという手触りにも関わってきます。
廣瀬氏:そうなんですよね。もっと遊びたいんだけどスタミナがないのがブレーキになって、結局プレイを辞めてしまったり。
田中氏:とは言っても、健康のことも考えるとそれぐらいでプレイに区切りがつくのが良かったりしますね(笑)。
廣瀬氏:いつまでも遊べてしまうシステムにすると止め時がなくて、飽きるまで一気に遊んで終わりってなってしまう感じになるんですよね。
田中氏:なにかしらブレーキがあった方が楽しめるものです。高橋名人の「ゲームは1日1時間」ですよ(笑)。
廣瀬氏:スマホならではというか、時代の変化というか。フィールドマップなどを移動する時間はスキップしたいという声もありますが、そこは話し合いました。
――いわゆるオープンワールドのゲームにあるファストトラベルのように、短縮できる機能が欲しいということですか。
田中氏:ただ、いわゆるスマホアプリのゲームにありがちな「ダンジョンをリストで選んで移動する」という作りにはしたくなかったんですよ。
廣瀬氏:そこは色々な意味で冒険というかこだわりの部分ですね。
――フィールドマップはきちんとしたものがあったほういいですか?
田中氏:ゲームの世界を実感してもらったり、旅しているというのを実感してもらうためには、フィールドマップを移動していくというのは不可欠ですね。リストから移動するのだと世界がどうなっているかというのが頭に浮かんでこないです。
――そこのこだわりはすごくわかります。世界観やスケール感に関わりますよね。
田中氏:旅をして1度たどり着いたところなら、次からは一瞬でジャンプできるようにするというのはありだと思いますね。
廣瀬氏:「セブンス・リバース」は実際にそういう作りにしました。1度行ってクリアしているところにも素材が欲しくて何度も行くのですが、クリア済みのところにはジャンプできる機能を後から追加したんですよ。
――なるほど。初めての場所を進んでいく新鮮さというのは大事ですよね。マップを進んでいって景色が変わっていったり、曲が変わっていったりというのが僕はRPGで1番好きかもしれません。やっぱり何度も往復させられるのは嫌なんですけども(笑)。
田中氏:そうですよね。あとは、「セブンス・リバース」には裏の世界というのもあるんです。それは、昔「某RPG」における裏世界のように、表の世界とはガラっと変わる要素がありましたよね。あの驚きとか感動をやりたくて入れているんです。
スマホのゲームってお話が一方通行で1度通ったエリアには戻らないというものが多いのですが、「セブンス・リバース」ではそのあたりも、素材集めや評価を高めるために何度もダンジョンに行ったりしますし、世界観を下地にした物語も大事にしています。あまりになんでもスキップできる作りにすると、お話の方も読まなくなっちゃうと思うんですよ。
お話はちゃんと読んでもらいたいので、あえてストーリー展開中に3択を入れるようにもしています。毎度毎度3択が出てきて、どれを選んでも大筋では一緒だったりはするのがもうユーザーさんにはお馴染みなのですが(笑)。それでもそういうのがあると物語の流れを読んでもらえるようになりますね。
――なるほど。今のお話にも「後から追加した」というのがありましたが、「セブンス・リバース」を運営されていくなかで重要視されているのは、ユーザーさんの声にすぐさま対応したり、常に考え続けて変化させていくことなんですかね。
田中氏:そうですね。それはもうスマホでなくともですし、昔に僕らがやっていた「FFXI」や「ラグナロクオンライン」でもそうでしたし、オンラインゲームである以上はそこが1番になると思いますね。
田中氏、廣瀬氏の考える“MMORPGにおいて変わらず大切なもの”
――なるほど。逆に、田中さん廣瀬さんのお2人が考える“変わらないもの”についてもお伺いしたいです。RPG、MMORPGにおける重要視すべき普遍的なもの……なにかございますでしょうか?
廣瀬氏:そうですね。“RPGやMMORPGとはなんぞや?”というのを考えると、私としては実はすごく単純な答えで、基本はロールプレイング(何かの役割を演じるという意味合い)だと思うんですよ。
例えば、自分のなりたい職業なり強さであったり、そういう目指しているものへ近づいていけること。ほかにも、身につける装備品にこだわってみたり、あとはMMORPGでのテキストチャットの喋り方なんかもそうでキャラクタになりきってみたり。「セブンス・リバース」ですとシチュエーションに合わせたコメントが自動で出ますから、そこに何か自分の個性を入れてみたり。
そういう他人とは異なる自分の表現やこだわりができることとか、その上で協力や競争が楽しめる要素があるというのが、MMORPGとしてのコアな部分ではないかなと思いますね。人を意識しないのであればオンラインである必要はありませんから、その人それぞれの違いがあって、それが一緒に何かをするというのは、PCであれコンシューマーであれスマホであれ、MMORPGを作るという上で大事なことで、そこは変わらないのではないでしょうか。
田中氏:僕も同じですね。「FFXI」の頃からも話してきましたが、MMORPGの良さというのは用意されたゲーム性だけでなく、向こうにいるプレーヤーさんとの繋がり、人とのコミュニケーションで、その人の性格なりに触れられるというのが楽しいところだと思います。
ゲームの中に用意してあるストーリー上の出会いと別れだけでなくて、本当の他のプレーヤーさんとの出会いと別れもあって、リアルなものを体験できる。そこが1番の面白さだと思いますね。
廣瀬氏:MMORPGではみんな自分のキャラクターの姿ですし、その人の本当の見た目からは入らないですからね。そのぶん、その人の本当の性格というか人となりが見えてきますよね。
田中氏:そうした要素は、あまりに行きすぎるとどうしてもゲーム内での人間関係が重いともなりかねないので。「セブンス・リバース」ではライトな繋がりにしたかったというか。かつてのMMORPGよりも軽いコミュニケーションで楽しめるようにしていますね。
――なるほど。今のお話を聞いていて思ったのは、MMORPGって実際に会っているわけではないけどコミュニケーションが取れるというもので、より本心での話がしやすいところがあったと思います。それは今だと、対面して話たり電話したりするよりも、LINEなどのメッセージでのやり取りの方が話しやすいという人が多かったり。そこにも形を変えて繋がっているような感じがしますね。
田中氏:僕らが「FFXI」なり「ラグナロクオンライン」を始めた頃には今のソーシャルネットとかコミュニティのツールってなかったので、ゲーム内に通信手段を用意しないといけなかったんですよね。
それがある意味では良かったのかもしれませんが、今だとTwitter、Facebook、インスタグラムとか、ゲームに特化したものもLobiとかもあって、そこにコミュニティがありますから。ゲームはそれらと連携するような形を取ればユーザーさんも使いやすい。そういうことのできる時代になりましたね。
僕のいた頃の「FFXI」でも後期の頃には、親しい人とはSkypeでボイスチャットしながら遊ぶという人もいましたし。そういう人はゲーム内のテキストチャットも必要なくなりますよね。
廣瀬氏:時代も変わっていきましたよね。ボイスチャットが出始めの頃だと恥ずかしくて使えないという人が多くて、私の年代で今30歳代半ばぐらいの人はそうだったのではと思います。ですが、それより若い世代になると、もうボイスチャットに抵抗がなかったり。
田中氏:ボイスチャットだとネカマもできないからね。テキストなら「女子高生です」って言いつつ、実はおっさんだったりっていうこともできる(笑)。
――ネカマ以外にも、いわゆるなりきりプレイもですよね。ツールによってネタというか、文化も変わるという。今のお話でオンラインゲームだからこそのコミュニケーションの部分をお2人とも最重要視されているというのがよくわかりました。
少しお話が戻りますが、廣瀬さんがMMORPGで重視しているというポイントでは、ロールプレイが大元にあって、装備品にこだわったり育成したりというところで、RPGにおけるシステムベースなところを大事にされているのだなと感じました。RPGと言っても今は幅が広くて、例えばキャラクターにボイスありきのドラマ重視なものもありますし、逆にオープンワールド方向なものもありますし。
田中氏:若いユーザーさんにはキャラボイスとイベント演出を重視したアニメ的なタイプの方が人気があるのかなとも思うんですけどね。
廣瀬氏:そうですね。でもそこは硬派にいこうと決めたんで……硬派過ぎましたかね(笑)。
田中氏:ボイスをふんだんに入れて物語を見せていくとなると、制作の工程そのものが大幅に変わるんですよね。ボイス収録があると演出の変更や調整が簡単にはできないですから、毎月のようにアップデートしている中には組み込みづらいです。もしやるなら、声優さんのスケジュールを押さえて物語部分だけを半年ぐらい作り貯めておいて、半年前のものから順次出していくみたいなペース配分になるでしょうね。
廣瀬氏:「セブンス・リバース」は、キャラクターをユニットとして出すタイプのゲームとは違いますからね。
田中氏:そういう意味でも「セブンス・リバース」はボイス演出はないけど、世界観やシナリオには力を入れている、昔ながらの硬派なゲームです(笑)。
――「セブンス・リバース」1周年、「FFXI」15周年ということで、田中さんと廣瀬さんにこうしてお話を伺ってきましたが、当時のMMORPGを知る人からすると、いろいろと感慨深いものがありますね。
田中氏:そういう意味では「ラグナロクオンライン」も15周年なんですよ。
――そういえば……。「ラグナロクオンライン」とのコラボは予定されていないのですか?
廣瀬氏:個人的にはやりたいなと思っています。
――わかりました。それでは最後に読者の方に向けて一言ずつ頂けますでしょうか。
廣瀬氏:「FFXI」が好きでプレイしていた人や、奥の深いRPGをがっつり遊びたいという人にはぜひ、今回のコラボのタイミングに「セブンス・リバース」をプレイしてみてもらいたいと思います。
また、「セブンス・リバース」を1度はプレイしたものの最近は触ってないという人は、アップデートでゲーム内はだいぶ変わりましたので。今の「セブンス・リバース」を見てもらえたらなと思います。よろしくお願い致します。
田中氏:「FFXI」15周年と「セブンス・リバース」1周年でもあるのですが、「FINAL FANTASY」シリーズ自体も12月で30周年を迎えます。「セブンス・リバース」は「FFXI」や「FINAL FANTASY」シリーズを楽しんでもらった人にぜひ触ってもらいたいゲームに仕上がっていますので、このコラボの機会にぜひプレイしてみてください。よろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。
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