【特別企画】

「ドラクエ4」35周年! 延々とザラキを唱えるクリフトにぐぬぬ。AI戦闘やキャラクター、カジノなど今でも愛される要素満載の名作RPG

【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】

1990年2月11日 発売

 エニックス(現スクウェア・エニックス)より1990年2月11日に発売されたファミコン用ゲームソフト「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」(以下、「ドラクエIV」)が、本日2025年2月11日で発売35周年を迎えた。

 本作は、「ドラゴンクエスト」シリーズの第4作目であり、ファミコン版として発売された最後の「ドラゴンクエスト」となる。

 全部で5つの章に分かれたシナリオと、AIによる戦闘システムや5人以上の仲間キャラクターと同時に冒険できる馬車システムが導入された。また、後に発売された「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」、「ドラゴンクエストVI 幻の大地」とともに「天空シリーズ」と呼ばれ、その第1作となる。

 本稿では、そんな「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」の思い出を振り返っていきたい。

【スマホ版『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』プロモ映像】
ファミコン版「ドラクエIV」

シリーズでも唯一。全5章から成るオムニバスストーリー形式

 シナリオは全5章のオムニバス形式となっており、1章ごとに主人公と舞台を変えながら進んでいくのが特徴だ。各シナリオが独立しており、勇者が登場するのは最後の第5章。第1~4章までは、勇者を支える仲間たちの話となっている。

 第1章「王宮の戦士たち」では、王宮戦士のライアンが、バトランド王国の領内で発生している子どもたちが行方不明になる事件の解決に挑む。ライアンは戦士というだけあって、いわゆる脳筋キャラクターとなっており、肉弾戦を得意とするキャラクター。旅の途中でNPCのホイミスライムのホイミンが加入して、ホイミンが主に回復役を担当することになる。

 基本的に脳筋キャラなのでバトルは難しいところがなく進んでいく、最初のチュートリアル的な存在の章となる。

ライアン

 第2章「おてんば姫の冒険」では、サントハイム王国のおてんば王女アリーナが、武術大会の噂を聞きつけ、そっと城を脱出。お付きの僧侶クリフトや魔法使いブライとともにおしのびの旅に出る。物理攻撃を得意とするアリーナ、回復役のクリフト、魔法攻撃が得意なブライの3人パーティーで、感覚としては「ドラクエII」に近い構成。前章のライアンと違って各キャラクターがどのような役割を担っていくのかをしっかりと把握しながら戦闘を進めていく必要がある。

アリーナ
クリフト
ブライ

 第3章「武器屋トルネコ」は、レイクナバに住む商人トルネコの物語を楽しめる。トルネコは、いつか大きな町で店を開くことを夢見ており、町の近くの洞窟にお宝が隠されていると聞きつけて、宝を見つけるべく冒険に出ることになる。

 とにかくお金を稼ぐことが目的で、ほのぼのとした雰囲気になっており、本作の中でも異色の章だ。トルネコの商人としての成功の過程を描くシナリオで、RPGながらボス敵はまったく登場せず、お金を得ることでイベントが進行する。

トルネコ

 第4章「モンバーバラの姉妹」では、モンバーバラの町で活躍する踊り子のマーニャと占い師のミネアの姉妹が主人公となり、殺害された錬金術師の父エドガンの敵討ちを目的として、キングレオ大陸を旅をしていく。

 魔法使いのマーニャと僧侶のミネアという、前衛キャラクター不在の2人旅になるため、これまでの1~3章よりも難易度は高めとなっている。戦士のNPCオーリンが加入するまでは、特に厳しめの戦いを強いられることとなる。

マーニャ
ミネア

 この章まできてようやく、本作の物語の核心に迫る内容が明かされる、重要な章となっている。

 第5章「導かれし者たち」で、ついに勇者(主人公)が登場する。住んでいた村をデスピサロに壊滅させられ、ただ一人生き残った主人公は旅に出る。ミネアに勇者としての自らの使命を知らされた主人公は、ほかの7人の導かれし者たちを探すことになる。

勇者

 8人(進行次第では最大10人)の仲間がそろった後は、天空城へ行くために必要な天空の武具を集め、魔王討伐を目指す。

 主人公である勇者が物語中盤まで登場しない、ということには当時賛否両論あったのだが、この章仕立ての構成によって、RPGにありがちな中だるみを防ぎ、各仲間キャラクターを深く描くことに成功した。また、魔王討伐という王道物語ながら、何故デスピサロが人間への憎しみの化身となったのかなど、魔王側の物語もより深く掘り下げた。

 それもあってか、デスピサロは今でも「ファンから愛される魔王」となっており、2023年12月1日に発売された「ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅」では、デスピサロが魔王となる前のピサロが主人公となるほどだった。

 ちなみに「DQM3」で明かされる事実も多いので、「ドラクエIV」でデスピサロの想いに影響された人は、ぜひこちらも遊んでみてほしいところだ。

キャラクターに愛着が持てるか否かで印象が変わる

 本作は、「ドラクエIII」のように自分で好みのキャラクターを作成して自由なパーティを編成できるのではなく、導かれし者たち8名からパーティを組むことになるので、どうしてもキャラクター縛りのような構成になった。

 しかし、ストーリーとしては各キャラクターとも非常に良くできており、ここで各章のキャラクターに愛着を見いだせた人には、とても楽しめる作品である。

 実際筆者は自由性の高い「ドラクエIII」にもとても思い入れがあるのだが、キャラクターとしては圧倒的に「ドラクエVI」が好きで、天空シリーズの中でも「ドラクエIV」が一番好きなほどである。

 中でも好きだったのは、格闘家である王女アリーナ。実際、物語上でも加入のタイミングなどから少々優遇されており、「ドラクエVI」最強キャラのひとりとしても挙げられることもあって、アリーナを愛用していたというプレーヤーは多いと思うのだが、筆者の場合、アリーナの明るく朗らかな性格が好きだったというのもある。王女らしくなさそうに見えるが、時にはやはり彼女は純然たる姫なのだと思わされるイベントも盛り込まれており、そのギャップもとても良かった。

 どちらかというと男性キャラクターを好きになることの多い筆者だが、アリーナは「ドラクエ」シリーズの中でもかなり上位にはいる好きな女性キャラクターである。実際、ゲーム発売当時はマーニャ・ミネア姉妹のほうが他作品へのゲスト出演も多かったのだが、最近ではアリーナもだいぶゲスト出演が増えてきており、人気の再燃を感じている。

戦闘はAIを全面に押し出したものに

 第1章~4章までは手動でコマンド入力を行ない、キャラクターの行動を指示するバトルなのだが(NPCはAI)、第5章からは主人公を除く味方キャラクターたちは、指定された作戦に従い、AIによって自動的に行動するようになる。

 主人公はターンの最初にまずチーム全体のコマンドとなる、たたかう・さくせん・いれかえ・にげる、を選択肢、チームの方針決定後に、さらに主人公のコマンドとなる、こうげき・じゅもん・どうぐ・ぼうぎょのいずれかを指示するシステムだ。

 作戦は、以下の6種類。

・みんながんばれ
 状況に応じて攻撃・補助・回復のバランスが取れた戦闘を行なう。

・ガンガンいこうぜ
 各自、最大威力の攻撃手段で攻撃する。まさに「ガンガンいこうぜ」の名の通りの作戦だが、MPがすぐに枯渇する。

・いのちだいじに
 HPの回復を一番重要に考える作戦だが、回復魔法ばかりを連発するのではなく、「被害を出さない」ような行動を取ったりもする。

・じゅもんせつやく
 回復呪文より回復アイテムを使ったりと、MPを節約することに特化した作戦。ボス戦が控えているような長いダンジョンでは有効。

・じゅもんつかうな
 「じゅもんせつやく」はたまに呪文を使うが、この作戦は呪文を一切使わずに戦うことになる。

・いろいろやろうぜ
 普段使わないアイテムを使うこともあれば、全く意味のない呪文を使うこともある。

 ただ、いかんせんファミコンの性能では限界があり、有名なのは「クリフトがボス(即死無効)にザラキ(即死魔法)を連発する」という行動だろう。特に呪文系のキャラクターは、「ここでこの魔法を使ってほしい」というプレーヤーの願いを無碍にすることが多く、アリーナやライアン、トルネコのように呪文を持たないキャラクターのほうが使いやすい、という状態になってしまった。

 また、キャラクターとしては勇者があまりに強すぎた。ギガデイン、ベホマズンといった強力な魔法を勇者が習得してしまうため、実質マーニャ、ブライ、ミネア、クリフトは趣味キャラクター的な立ち位置になってしまったのだが、恐らくはAI戦闘で詰んでしまうことを恐れての調整だったのだろう(勇者を勇者たらしめんとするための調整だったのかもしれないが)。

 戦闘面では少々課題の残る作品だったが、ファミコンという時代を考えれば致し方なしといったところだ。

 なお、「AI学習」とは謳っているが、現代のいわゆる「生成AI」とは大きく異なっていることは述べておきたい。いまであれば、キャラクターたちはもっと有用な学習をするはずだろう。

 また、プレイステーションとニンテンドーDSにてリメイク版が発売されているが、そちらには戦闘中の仲間の行動を細かく指示できる「めいれいさせろ」が追加されている。スマートフォン版は、基本的にDS版をベースにしている。

 「めいれいさせろ」は、便利になったようでいて、4人分のコマンドを入力する手間というのもあり、現代のAI学習を積んだ「ドラクエIV」というのもプレイしてみたいものである。

カジノやちいさなメダルといった、今でこそお馴染みな要素も初登場!

 本作から、昨今の「ドラクエ」にはおなじみの存在となった、カジノやちいさなメダルなどが新たに登場した。なお、「ドラクエIII」などにもちいさなメダルが登場した覚えがあるプレーヤーも多いと思うが、「ドラクエIII」にちいさなメダルが登場したのはスーパーファミコンでのリメイク版からである。

 カジノはエンドールの城下町にあり、「モンスター格闘場」の他、スロットマシンとポーカーをプレイすることができた。カジノにハマってしまうプレーヤーが続出し、かくいう筆者も、メインストーリーそっちのけでカジノをプレイしまくってしまった。しかも集めたコインで非常に高い守備力を誇る「はぐれメタルのたて」など、強力な装備を入手できるということもあり、なお一層カジノから出られなくなってしまったものだ(とはいえ、勇者ははぐれメタルのたてを装備できなかったのだが……)。

 ちなみに、FC版のみ、第3章ではコイン922,747枚をたったの24ゴールドで、第5章ではコインを838,861枚をたったの4ゴールドで買えてしまうというバグがあり、これによって50,000コインで交換できるはぐれメタルのたてがちっともレア装備でなくなってしまっていた。

 ちいさなメダルは、メダル王に渡すことで集めた枚数に応じてレアアイテムと交換してくれる。ちいさなメダルは全32枚(FC版)なので、昨今の「ドラクエ」作品よりは探すのは楽だったうえに、当時はモンスターからのドロップもねらえるアイテムが景品だったので、カジノより若干のめりこむ夢中度は下がったが、それでも20枚ではぐれメタルヘルムがもらえるなど、集める甲斐は充分あった。

 リメイク版ではちいさなメダルの数も増え、景品もより一層豪華になり、さらにやりこみ甲斐が増しているのが嬉しいところだ。

 以上、駆け足になったが、「ドラクエIV」を振り返った。昨年の2024年には「ドラクエIII」がHD-2Dで蘇ったが、「ドラクエIV」にもぜひこういったリメイクを期待したいところだ。