【特別企画】
「ドラクエ8」が本日で20周年! シリーズ初の完全3D化作品で、発売前のファンの不安感を発売後に払拭した至極の名作
2024年11月27日 00:00
- 【ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
- 2004年11月27日 発売
スクウェア・エニックスが、2004年11月27日にプレイステーション 2にて発売した「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」(以下、「ドラクエ8」)が、本日2024年11月27日で発売20周年を迎えた。
本作の開発は「レイトン教授」シリーズなどで有名なレベルファイブだが、当時はまだちいさなデベロッパー会社というイメージだった(レベルファイブがパブリッシャー化したのは2006年のことである)。
スクウェアとエニックスが合併しスクウェア・エニックスとなってから初の「ドラクエ」本編となったこと、当時はまだあまり名の知られていなかったレベルファイブが開発元であるということから、ファンの間では発売前こそ不安視されていたタイトルだったが、蓋を開けてみればシナリオやバトル、システム面など、非常に良くできた作品となっており、多くの「ドラクエ」シリーズファンを満足させる作品となり、全世界で490万本以上を出荷しPS2史上最多出荷数を記録する大ヒット作品となった。
本稿では、そんな「ドラクエ8」の魅力を振り返りたい。
シリーズ初の完全3D化作品でリアル寄りの画風になった
本作の特徴は、なんといってもグラフィックだろう。これまでの二頭身系のキャラクターから一新して、本作では本格的にリアルな画風へと変わった。
鳥山明氏のキャラクターデザインにとても忠実なキャラクターが画面の中を動き回り、そしてフィールドもリアル化。これまでの「ドラクエ」とがらりと雰囲気を変えたものの、アニメ絵風の絵柄を上手く動かしてみせ、シリーズファンも納得の仕上がりとなったのだ。
頭身の上がったキャラクターはもちろんのこと、フィールドの移動もこれまでのシリーズと変わってキャラクターの後方から見る視点になった。これにより一部「3D酔い」と呼ばれる現象も起こるには起こったのだが、筆者の個人的な感覚では「ドラクエ8」よりも「ドラクエ7」のほうが画面酔いがひどかったので、ここは個人差が大きいところだろう。
従来の作品では町や城などはフィールドマップにアイコンで置かれていたが、本作ではフィールドマップからも町などの建物がきちんと建築物として表わされるようになった。これにより、「遠くの建物が霞んで見える」といったような表現方法も使われるようになり、非常に広大な世界を感じられた。
特に飛行移動ができるようになってからの上空からの見下ろし表現も秀逸で、とても臨場感あふれるものとなっている。
しかし完全3D化することで、これまでのシリーズと比較しても一枚の画面から得られる情報が少なくなるというデメリットもあったのだが、このデメリットは地図などでカバーして、従来のファンでも楽しくプレイできるような工夫がされていた。
仲間キャラクター4名を紹介したい!
本作のパーティメンバーは、主人公、ヤンガス、ゼシカ、ククールの4名で固定となっており、基本的に仲間の入れ替えなどが発生しない。この4人の仲間が大好きだったので、ぜひ改めて紹介したい。
主人公
本作の主人公で、「ドラクエ8」にちなんで「エイト」と呼ばれることが多い。トロデーン王国近衛兵の、18歳。幼い頃に記憶を失ってトロデーン城に迷い込み、幼馴染である王女ミーティアの願いで、近衛兵となった。
しかしトロデーンは、ドルマゲスによるイバラの呪いで滅んでしまう。主人公はトロデーンを救うために、国王トロデとドルマゲスを追う旅に出ることになった。
ヤンガス
見た目と違い、義理人情に厚い性格。山賊だったが、山賊生活が嫌になり、普通の生活を送ろうとする。しかし、いかつい容姿が災いしてうまくいかず、結局山賊に戻ってトロデーンを旅立った主人公らを襲うのだった。だが主人公に返り討ちにされ、そして助けられる。これを機に主人公のことを(年下だが)「兄貴」と呼んで、同行することになった。
ゼシカ
美人でスタイル抜群な、名家のお嬢様。お嬢様らしく気が強くてわがままなところもあるが、なんだかんだと優しい。兄をドルマゲスに殺されており、その敵討ちのために家を後にしたところで、主人公らと出会い、やがて主人公の仲間に加わった。
特殊スキルが「おいろけ」なところからも、自身の持つ魅惑のボディについては自覚しているものと思われる。
ククール
マイエラ修道院・聖堂騎士団の聖堂騎士。幼少時に流行り病で両親を亡くし、マイエラ修道院でオディロ院長によって育てられたが、オディロをドルマゲスに殺され、敵討ちのため主人公らの旅に加わった。
クールで容姿端麗なので、女性ファンが多い。しかし口が悪い。いわゆるナルシスト。聖職者ながら、ナンパも酒も嗜む。
という、たった4名ながらも個性豊かなパーティメンバーとなっており、特に筆者はわかりやすいククール推しである。
これまで筆者は「ドラクエ」シリーズを全てリアタイで遊んできているものの、「ドラクエ」でいわゆる「キャラ愛」というものを抱いたことがなかったのだが、ククールは「ドラクエ」シリーズの中で初めて「キャラ愛」を覚えたキャラクターだった。徐々にお人よしになっていく姿はまさにクーデレ。
とは言っても、内面を自由に想像して投影できる主人公ももちろん好きだし(他の3名に比べてどうしても影は薄いが)、ヤンガスは可愛いし、ゼシカのふとみせる弱気なところにドキっとしたりと、この「ドラクエ8」のパーティ全員が大好きだった。
この4名で進めていくシナリオは、自由度こそ低く、また主人公に関する謎も何故かクリア後要素に押し込められてしまって本編では明かされないのだが、全体的には非常によくできていたと言える物語になっており、一本道ストーリーでありつつ、一本道を活かした筋の通った物語になっていたと感じられた。特に主人公らとラスボスとの関連性については、本作が随一とも言えるのではないだろうか。
登場人物の死亡など重い話が多く「暗い」とも言われたストーリーだったが、筆者はこの暗さが大好きで、特に教会内部のドロドロ感などはもはや大好物の域だった。
これまでより格段に奥深いシナリオになっていると感じられ、リアルになったことで演出面も強化され、それらが相まって、筆者の「ドラクエ」で初めて「推し」という概念が誕生したのだと思っている。
戦闘システムに「テンション」や「スキル」が加わり、難易度は良いバランスだった
戦闘はいわゆるランダムエンカウント式で、4人のパーティキャラクターが横一列にならんで行なう方式。ターン制で、コマンド入力をするタイプのバトルだが、設定した作戦に応じてオートでコマンド入力をさせることもできる。
そして今では当たり前のようなことだが、装備した武器によって武器のグラフィックが変化するようになったのも「ドラクエ8」からだ。また、戦闘時にキャラクターが敵を攻撃する3Dアニメーションが入った。
そして攻撃の威力を高める新システムに「テンション」が登場。テンションを上げるとダメージ量が通常時と比べて増大する他、防御や回復呪文などの効果もテンションによってアップする。テンションは「ためる」コマンドの使用によって最大4段階まで上昇し、4段階目では「スーパーハイテンション」状態になる。テンションの効果を一度発揮したり、ステータス異常や特定の攻撃を受けると、普通の状態にもどる。
このテンションの使い道は多岐にわたり、ためる、ためない、スーパーハイテンションを狙うのかどうするのかを考えることで、これまでのシリーズより格段に戦略性の高いバトルとなった。
テンションの導入によってバトル全体の難易度は若干上がったように感じられたが、これはむしろこれまで比較的ざっくばらんなバトルだったことに対して、もっとバランス面を重視したのだろうと思われ、実際、「ちいさいこどもがプレイできない」とかそういった声はほとんど見受けられなかった。
他、レベルアップによってスキルポイントが得られ、スキルを覚えることができるようになった。キャラクターによって習得できるスキルが違っていたため、これが各キャラクターの個性にもつながっていたのだ。
スキルポイントをひたすら溜めてめちゃくちゃ強い技をいきなり覚えてなぎ倒す、というようなことはできないシステムになっていたので、良いゲームバランスを保つことができたように思う。
グラフィックの強化に伴い、これまでよりもたくさんの数のモンスターが一度に登場するようになったため、一見バトルは難しくなったように感じられる。実際仲間が4人そろうまでは少々キツい場面もあるのだが、敵の強さはそこそこといったところで、一回の戦闘に時間こそかかるものの、たびたび全滅してしまうというような理不尽さは感じられなかった。
もう少しテンポさえ良くなれば、本作は「ドラクエ」シリーズの中でかなり推したいバトルとなっている。
すぎやまこういち氏によるBGMももちろん良い
PS2になったことで音質が格段にアップした本作の音楽は、今でも非常に愛されている。当時「ドラクエ」シリーズはオーケストラ版が発売されてからオリジナルサウンドトラックが発売される、という順番だったのだが、本作では初めてオーケストラ版よりも先にオリジナルサウンドトラックが発売された。
誰でも知っているであろう「序曲」は、より壮大なアレンジとなった。
フィールド曲の「広い世界へ」は、タイトル通り、「ドラクエ8」が作り出した広い世界への冒険へといざなう楽曲で、これまでのフィールド曲に比べて尺も格段に長く取られており、壮大な世界をのんびりと旅するような一曲だ。
「雄叫びをあげて」は通常戦闘曲。「広い世界へ」がこれまでのシリーズより長尺になったのに対して、「雄叫びをあげて」は比較的短い尺の曲となっていて、特にオーケストラ版のアレンジが迫力があってすばらしいので、ゲーム音源よりはオーケストラ版を推したい一曲だ。
ラスボス戦の「おおぞらに戦う」は「ドラクエ3」のラーミアでの飛行時の曲「おおぞらをとぶ」のアレンジとなっており、こちらは「ドラクエ3」のラーミアの時とはまったく違う激しいアレンジに、さぞ驚くことだろう。
全体的にBGMの評価も高い作品で、ストーリー、システムとともに、本作の評価を上げた要因のひとつである。かくいう筆者も、「おおぞらに戦う」は、「ドラクエ」シリーズのラスボス楽曲のなかで一番好きな楽曲である。「ドラクエ3」の「勇者の挑戦」と並ぶほどの名曲で、「勇者の挑戦」と「おおぞらに戦う」のどちらが名曲かと言われると、「それはもう個人の好みです」としか言いようがないレベルだと思う。
なお、2015年にニンテンドー3DSに移植されている本作だが、新たな仲間が増える他、PS2版からダンジョンやシナリオ、ボスが追加されている、エンディングパートナーが選べる等、変更が加えられているので、今からプレイする人は3DS版がおススメである(個人的にiOS版、Android版は画面が見にくく、あまりおススメできないのだが)。
「ドラクエ11」などで初めて「ドラクエ」シリーズに触れたという人にとっても違和感なくプレイできる「ドラクエ」なので、ぜひ20年愛される本作をまだ遊んだことがない人は、これを機にプレイしてみてほしい。
(C) SQUARE ENIX