【特別企画】

ロジクール「G515 LIGHTSPEED TKL」インプレッション

ロープロファイルのベストセラー「G913」の後継機がついに登場!

【G515 LIGHTSPEED TKL】

2024年7月25日発売予定

価格:21,890円

 ロジクールは、ゲーミングブランド「ロジクールG」より、ゲーミングキーボード「G515 LIGHTSPEED TKL」を7月25日に発売する。ブラック、ホワイトの2色展開、スイッチはタクタイル、リニアの2種類で、価格は21,890円。本稿では、リリースに先駆けて体験することができたのでインプレッションをお届けしたい。

【7月25日発売の新製品】
7月25日発売の新製品。ゲーミングマウス「G309」は、その名の通り「G304」の後継モデル。ドライバ未着ゆえ、インプレッションは後日お届けしたい
【G515開封】
【ロープロファイルキーボード?】
ロープロファイルキーボードを知らない方のために、フルストロークキーボードとの比較。上がフルストロークのG413 TKL、下がG515。真上から見るとあまり違いは感じられない
平置きした状態。左がG515、右がG413 TKLキーの高さが大きく異なることがわかる
スタンドを立てた状態。スタンドで高さを確保するため、打鍵位置はほぼ変わらない

“ロープロファイル”をゲーマーに知らしめた「G913」の最新後継モデル

 今振り返ってみても2019年の「G913」の登場は衝撃的だった。ロジクールGにおいて、9から始まるプロダクトは最上位、つまりハイエンドモデルを意味するが、そこに大胆にもロープロファイルキーボードを持ってきたのだ。当時、ゲーミングキーボードの分野に、ロープロファイルは影も形もなく、少なくともハイエンドモデルに搭載されるシステムという認識はプロゲーマーも含めてほとんどのゲーマーが持っていなかったはずだ。

 筆者も当時「どうしたものか」と評価しあぐねたのを覚えている。削り出しのアルミニウム合金ボディに、つや消しキーキャップをフローティングスタイルで搭載。これ見よがしのボリュームダイヤルも上質で、誰がどう見ても滅茶苦茶にカッコイイ。「だけど、キーボードがフルストロークじゃないの? なんで???」という感じである。

【ハイエンドモデルがロープロファイルキーボードに】
ロジクールのハイエンドモデルがロープロファイルになった。これは衝撃だった

 キーボードは、筆者にとっても欠かせない商売道具であり、たとえば、海外出張時にフルストロークのキーボードを持ち込む記者は筆者以外にもたくさんいた。つまり、わざわざフルストロークキーを持ち運ぶぐらいだから、わざわざ“ノートPCのようなキー”でゲームをするのはもってのほか、という価値観に凝り固まっていた。

 ところが、である。使い込んでいくうちに、ロープロファイルキー≒ノートPCのようなキーという認識はまったく誤ったものであり、浅めのキーストロークながらしっかりとした打鍵感、そして何より打てば響くといった印象の入力スピードの速さにすっかり魅せられた。職業柄、様々なキーボードに手を出しているが、この5年間でもっとも長い時間叩いているキーボードは、間違いなく「G913」と、そのバリエーションモデルG913 TKLだ。

【ロジクール ロープロファイルファミリー】
上からG913、G913 TKL、G515

 「G913」リリース後は、ロープロファイルがゲーミングキーボードの一翼を担う存在になったのはご承知の通りだ。最大のライバルといっていいRazerも「DeathStalker V2 Pro Tenkeyless」に独自開発のロープロファイルキーを搭載してきたし、日本が誇るハイエンドゲーミングキーボード「ZENAIM」(東海理化)もロープロファイルだ。ZENAIMは、リリース初期に不具合を起こし、大きな勉強代を払うことになったが、最初からロープロファイルを希求したのは、そこに価値があると判断したからに他ならない。

【Razer「DeathStalker V2 Pro Tenkeyless」】
【東海理化「ZENAIM」】

 今回取り上げる「G515」は、ゲーミングデバイスメーカーが目標にしてきた「G913」を、自らリニューアルしたモデルだ。しかも製品名が「G915」(余談だが、「G913」の海外での名称は「G915」)ではなく、「G515」であるところがポイントだ。「G913」をリニューアルしながら、手に取りやすい価格帯まで下げたミドルレンジモデルというわけだ。

 「G913」のウィークポイントは、高品質、ハイエンドがゆえの価格設定だ。今でも実売29,000円前後はする。「G913」、「G913 TKL」共にハイエンドかつ人気商品であるため憎らしいぐらい値段が下がらない。使い手からすれば、値崩れしないのは高品質と人気の証と言えるが、購入する機会を失ったままの値下げ待ちPCゲーマーも少なくないはずだ。

 加えて発売から5年。さすがにアーキテクチャに古さが来ている。USBはMicro USBだし、キーキャップは剥がれやすいABS、なかなか使う機会がないボリュームダイヤルなど、こうした部分を改めてリニューアルしたのが「G515」となる。

 ロジクールGの製品戦略は、スタートしたときから変わっていない。まずはシンボルとなる9(ハイエンド)を打ち立て、そこからバリエーションを下ろしていく。「G515」も「G913」のバリエーションモデルだが、単なるバリエーションとも言い切れないのは、「G913」からパワーアップしているポイントが多々あることだ。それではさっそく新型ロープロファイルキーボード「G515」の魅力をじっくり見ていこう。

【G913 TKL、G515比較】
G913 TKL(上)とG515(下)を比較していく。G913が使い込まれているのは、実際に筆者が使い込んでいる私物だからだ
G515ではスタンドを立てる前提なのか、中央上部の滑り止めがなくなっている
高さは22mmとまったく同じ
左側面。G515はロープロファイルスイッチが第2世代になっている
右側面。製品名に加えてGロゴが側面に配置されている
スタンドを立てた状態

ロープロキーボードの新たなスタンダード「G515」

 「G515」の進化は大別してデザインと打鍵感だ。まずはデザインから見ていこう。

 見ての通り、「G515」はデザインが一新している。削り出しのアルミニウム合金ボディから複数のプラスチックを組み合わせたものとなり、上部のメディアキーエリアには取っ手のような出っ張りが設けられ、そこにボタンやインジケーターがすっきりまとめられている。

 外装についてはアルミほどの高級感はなくなったものの、プラはプラでマットな質感が良好で、こちらの方が好きというゲーマーも多そうだ。

【G515ディテール その1】
この出っ張りのおかげで、キーに触れずにしっかり持てるようになった
上部ボタンは4つから3つに
右側のボリュームダイヤルとボタンは全廃され、インジケータランプのみが残った

 ボタンは8つ(Bluetooth、LIGHTSPEED、ゲームモード、LIGHTSYNC、メディアキー)から3つ(Bluetooth、LIGHTSPEED、ゲームモード)に減り、電源スイッチは同じスライド式だが、USBはmicro USBからUSB Type-Cに進化している。

 キーキャップはABSからPBTとなり、ペタ付きのないサラッとした質感に変容。「G913」は汗をかいたときのペタ付き感が玉に瑕だったが、そこはしっかり対応された印象だ。

 そして、「G913」との最大の違いが打鍵感が進化しているところだ。キー自体のぐらつきがほとんどなく、静穏性に優れ、それでいてしっかりとした打鍵感がある。

 まず、十字型スイッチとスタビライザーにはルブ(潤滑)が施され、打鍵感を向上させている。また、内部に層状構造を採用することで静穏性も実現。キーボード全体の剛性感、キーがスッと入る感覚、そして静穏性。細かいところで満足感が向上している。

【G515ディテール その2】
上がG913、下が515。キーキャップがABSからPBTになったことで質感も変化している
キートップが剥げてしまった筆者のG913 TKL。ある意味使い込んだ“勲章”のようなものだが、RGBライトの影響で悪目立ちするのも事実
G515では、こうした剥げがなくなる
上からG913、G913 TKL、G515。ロープロファイルスイッチも第2世代に。これが安定感に寄与している
上からG913、G913 TKL、G515。スペースキーはスタビライザーを撤廃しているものの、安定感は増している

 そのほか「G913」との違いについてまとめておくと、サイズはいずれも368×150×22mmと、公称サイズは同等となっているが、実際に並べて見ると「G515」のほうが左右が数mmずつ短い。厚みについては、かなり内部構造を変えているにもかかわらず同じ22mmに仕上げてきたのはロジクールとしてのこだわりだろう。

 逆に重量は810gから880gに増量。内部機構の変化によるものと見られるが、テンキーレスながらしっかりとした重量感があり、多少粗っぽく叩いてもビクともしない安定感がある。

【G515/G913 TKL比較表】

 押下圧はG913の50gに対して、45g(タクタイル)、43g(リニア)とわずかに軽い。キーストロークは2.7mmから3.2mmとわずかに長くなったものの、アクチュエーションポイントは1.5mmから1.3mmと短くなり、さらに高速入力が可能となっている。

 バッテリーは価格を抑えるために10%ほど減量したということで、バッテリーの持ちは40時間から36時間に減少している。接続は変化はなく、有線、LIGHTSPEED、Bluetoothの3種類。「PRO X 60」と同等に、ほぼ全キーのカスタマイズが可能な「KEYCONTROL」にも対応している。

【G HUB】
RGBイルミネーションを設定できる「LIGHTSYNC」
今後デフォルト機能になってきそうな「KEYCONTROL」
ゲームプレイ時にオフにしたいキーを設定できる「ゲームモード」

ラピトリ非対応ながら、満足感の高い上質なロープロゲーミングキーボード

 以上、「G515」の特徴と魅力をざっと紹介してきたが、「G913/G913 TKL」からの乗り換えに値する上質なロープロファイルゲーミングキーボードだと感じた。良い感じのロープロファイルを待っていた方には最適な一台だろうし、「G913」がいい加減ヘタってきた方、有線タイプの「G813」オーナーで次こそは無線を考えている方、ロープロファイル未体験者あたりにオススメできるキーボードだ。

【ついに世代交代か】
2020年から愛用してきたG913だが、これを機に普段使いキーボードをG515に乗り換えるつもりだ

 懸念材料としては、ラピッドトリガーには対応していないところだろう。ロジクールは、現時点ではラピッドトリガーに対応したキーボードは1台も出していない。ラピトリ自体は、ゲーミングデバイスとしてのキーボードを革新的に進化させる素晴らしいテクノロジーで、「PRO X 60」のレポートでも触れたが、ゲーミングキーボードからラピトリを排除するという選択肢はもはやないように思う。

【ラピッドトリガーで先行するRazer】
Razerは主要モデルにラピッドトリガーを搭載している
ラピッドトリガーは、オンのみならず、オフも0.1mm単位で調整できる

 当然ロジクールもラピトリ対応のキーボードは開発中だと思われるが、それがいつになるのかはわからない。筆者含め、ロジクールからラピッドトリガー対応キーボードの登場を待ち望んでいるゲーマーは多いと思われるが、ラピトリにこだわりたいなら素直に待った方が良い。ロジクールは、高速入力の回答としてロープロファイルを推し進めているところがあるが、ロープロファイルはラピッドトリガーの代用にはなりえないからだ。

 その一方で、筆者のように原稿を書いたり、レポートを書いたり、チャットをしたりなど、普段使いもしたいという欲張りなゲーマーは、ラピッドトリガーは慎重になった方がいい。

 というのは、ラピッドトリガー対応キーボードは、0.1mm単位で入力の設定が可能で、なおかつ入力し易くするため押下圧が小さく設定されている場合が多い。たとえば、押下圧30gで0.1mm設定だと、手をホームポジションに置いただけで頻繁に誤入力が発生するぐらいピーキーなデバイスになってしまう。このため筆者はFPSをプレイする時だけラピトリ対応キーボードに切り替えるようにしている。キーボードの使い方に応じて何を選ぶかチョイスしたいところだ。

【筆者のPCゲーミング環境 最新版】
G515(左下)、PRO X 60(右下)、REALFORCE GX1(右上)、Xbox Elite ワイヤレス コントローラー シリーズ 2(左上)。全部繋ぎっぱなしで、すぐ切り替えられるようにしている

 G515を使って見てまだ数日だが、すっかり気に入った。この原稿もすべてG515で書いているが、剛性感と触り心地、ギアとしてすっと指に馴染む感じ。ロープロファイルのロジクールが、ミドルレンジで、質の高いギアを仕上げてきたなという印象だ。

 最後にG515は、G913のようなハイエンドカテゴリではなくミドルレンジのプロダクトであるため、取扱店がPCショップに限定されず、家電量販店も対象になる。新型ロープロファイルの良さをぜひご自身の手で体験してみて欲しい。

【G515の魅力は打鍵感!】
G515の良さは打鍵感。ぜひロジクールの第2世代ロープロファイルの良さを体感してほしい