【特別企画】
EVOJ2024「スト6」部門レポート。翔選手を圧倒。MenaRD選手がEVO Japan「スト6」部門の初代王者に!
2024年4月30日 16:28
いよいよ試合開始! 順調に勝ちを積み重ねるMenaRD!
胸熱の公式発表の後はいよいよ選手たちが登場し、決勝大会が開始となった。試合はWinners側から進められる流れとなっており、第1試合はMenaRD選手 vs りゅうきち選手の1戦となる。MenaRD選手はルーク、りゅうきち選手はケンを使用する。
1戦目、2戦目ともMenaRD選手のルークが重要な場面での立ち回りでりゅうきち選手のケンを上回り2本先取。りゅうきち選手にとっては後がない3戦目はりゅうきち選手の攻めがうまく決まり、ラウンドを取られながらもここは勝利して次に繋ぐ。
衝撃的だったのは、4戦目のファイナルラウンド。MenaRD選手が画面端にりゅうきち選手のケンを追い詰め、ほぼパーフェクトに近い攻めで体力ゲージが僅か数ドットの状態にまで追い詰める。ここで、りゅうきち選手が反撃を見せる事になるのだが、ちょっとした小技や削りが発生しても負けてしまう状況の中、りゅうきち選手のケンは巧みな立ち回りでMenaRD選手のルークの攻撃を一切受け付けない。そしてそのギリギリの体力を維持したままで見事な逆転勝利を見せたのだ! このりゅうきち選手の勝利で2-2となり、いよいよ最終5戦目で勝負が決する事となる。
しかし、りゅうきち選手の反撃もここまで。最終5戦目はMenaRD選手のルークがしっかり連勝して勝利し、第1試合はMenaRD選手が3-2で勝利、Winners最終戦にコマを進めた。惜しくも敗れたりゅうきち選手はLosersに落ち、もけ選手と当たる事となる。
続くWinners側の第2試合はLexx選手 vs Vxbao選手の1戦。Lexx選手はガイル、Vxbao選手はJPを使用する。立ち回りとしてはJPが有利な状況が多い試合展開が続いていたが、Lexx選手の要所での飛びなど距離の詰め方が見事。Lexx選手のガイルが1試合も落とすことなく3-0で勝利し、Winners最終戦にコマを進めた。
これによりWinners最終戦はMenaRD選手とLexx選手による一戦となる。また、敗れたVxbao選手はLosersに落ち、翔選手と当たる。
ここからはLosersの試合が行なわれる。第3試合はりゅうきち選手 vs もけ選手の1戦。りゅうきち選手はケン、もけ選手は春麗を使用する。
1戦目、2戦目ともりゅうきち選手のケンが猛攻を見せるも、もけ選手の春麗が巧みな立ち回りでこの攻防を制して2連勝。りゅうきち選手にとっては本当に後がない3戦目、1ラウンドはもけ選手の春麗が攻め切って勝利し、いよいよリーチに。だが、りゅうきち選手のケンの飛びに対してもけ選手の春麗が放った超必殺技・SA3がなんとガードされてしまう。
ここで流れが変わったのか、りゅうきち選手のケンの勢いが止まらず、ギリギリの攻防が続く中、逆転劇を見せてりゅうきち選手のケンが3-2で勝利した!Losersでの敗退は終了を意味するため、もけ選手はここで敗退となってしまった。
続く第4試合はVxbao選手 vs 翔選手。Vxbao選手は先ほど使用したJPではなくケンを選び、翔選手はJPを選択。Vxbao選手は普段はJPを使用しているが、ミラーマッチを避けるためか相手がJPを使用している場合にケンを選択している事が多い。今回もそれに倣う形となった。
しかしこの選択が裏目となったか、1戦目、2戦目とも翔選手のJPが順当に勝ちを重ね、あと1本というところまで追い詰める。あとがないVxbao選手は3戦目からJPを選択してJP同士のミラーマッチとなる。
3戦目は一進一退の攻防ながら、Vxbao選手のJPの立ち回りがうまく、ここを勝利。しかし、4戦目は翔選手のJPが終始冷静な立ち回りを見せ、好調に試合を進める。こうして迎えたファイナルラウンド、ここで翔選手がJPの凶悪なSA2「ラブーシュカ」を発動すると、同時にVxbao選手のJPも「ラブーシュカ」を発動。Vxbao選手はパリィで対応するも、翔選手はドライブゲージがなかったため、パリィできずにバーンアウトしてしまう事態に陥ってしまう!
バーンアウト状態ではインパクトが返せないばかりか、画面端でインパクトを食らうとノックダウンが発生する大ピンチの状況。ところが、それを狙ったVxbao選手のJPによるインパクトを翔選手は当て身技アムネジアで受け止めてこのピンチを脱出! そのまま翔選手が3-1で勝利した。
続く第5試合はWinners1戦目で勝利したMenaRD選手 vs Lexx選手。MenaRD選手はここでブランカを選択、Lexx選手はガイルだ。体力ゲージ的には互角の勝負を見せるMenaRD選手のブランカとLexx選手のガイルだが、要所での粘りが強いMenaRD選手を崩しきれない。試合中はどちらが勝つか全く見えない攻防が展開するも、終わってみれば、MenaRD選手の3-0勝利となり、MenaRD選手の独壇場だったかのような結果だけが残る。こうして負け知らずのMenaRD選手がグランドファイナルへの進出を決めた。
ここからはLosers側の試合が続く。第6試合はLosers1戦目で勝利した翔選手 vs りゅうきち選手の対決だ。1戦目は翔選手のJPが積極的な攻めを見せて勝利、2戦目はりゅうきち選手のケンが画面端の見事な攻めで勝利して1-1にする接戦が展開された。
3戦目からは翔選手の動きが徐々にりゅうきち選手のケンを圧倒していく。4戦目では翔選手のインパクトに対して、通常技と必殺技の巧みな猛攻でインパクトを潰すなどりゅうきち選手のナイスプレイが見られたが、最終的には翔選手が攻めきり、3-1で勝利。
ここで勝利した翔選手は、次の第7戦、Losers最終戦にてLexx選手と激突する。ここはギリギリの攻防を見せる両者だが、画面端の攻防や遠距離からの攻めなどで、終始翔選手が有利に試合を展開。3-0で勝利してグランドファイナルへの進出を決めた。
いよいよ迎えたグランドファイナル。最後の8戦目はWinnnersを勝ち上がったMenaRD選手に対して、Losersで粘りを見せた翔選手が激突する。対戦前には翔選手とMenaRD選手の両者が壇上でにらみ合いを見せる場面も見られた。
最終戦、MenaRD選手はブランカを選択、翔選手はJP。JPとブランカの対戦は、本来ブランカが不利とされる組み合わせだが、蓋を開けてみると、翔選手のJPがMenaRD選手のブランカに全く歯が立たない。1戦目こそラウンドを取れた翔選手のJPだが、ほぼ完全勝利の形でMenaRD選手のブランカが圧倒。3-0の勝利でそのまま、MenaRD選手の優勝となった!
表彰式において、コメントを求められたMenaRD選手は「日本という国は『ストリートファイター』シリーズが生まれた、格闘ゲームが生まれた場所です。MenaRDの身体はドミニカ共和国で生まれましたが、その心は日本で生まれたと思っています。なぜならMenaRDの心こそ『ストリートファイター』シリーズその物だからです。そして心から一言、”ありがとうございます”」とし、最後のありがとうございます、を日本語で言うサービスを見せ、会場を盛り上げた。
過去の敗戦からJP対策ではなく「翔」対策をしっかりやっていた
表彰式を終えた後、メディア向けに行なわれたインタビューにおいて、記者から前作「ストリートファイターV」から「スト6」に変わって、ゲームそのものに関して率直な感想を求められると、MenaRD選手は「ゲームシステムやキャラクターが変わる事も重要なんですが、それよりもやはり自分のメンタルをずっと保つことが1番で、常に試合に集中できているこのメンタルを1番大事にしているし、そこが今回勝てた要因だと思っている」とし、その粘り強さの秘密を垣間見せた。
ブランカとJPの組み合わせはブランカが不利と言う印象だが、今回圧勝して見せたMenaRD選手。ブランカの強さの秘密について聞かれると、キャラクターではなくプレーヤーが重要と述べ、「とにかく、翔選手というのは僕にとってすごく気の抜けない存在で、寝る時でも思い出すぐらいのすごいプレーヤーです。これまでもラスベガスやサウジアラビア、シンガポールの時も負けたりしているので、すごく翔選手を意識してきた。JP以外にも翔選手のプレイ映像やリプレイなど全てチェックしていたので、翔選手への対策をしっかりやっていた成果が出た」とし、キャラクターではなく、プレーヤーの人対策を重点的にやっている点を強調した。
「EVO Japan 2024」そのものについての感想を聞かれると「『スト6』の日本での受け入れられ方が本当に素晴らしいと思っている。今回5,000人規模の大会になったということで、当初は参加するか迷っていたが、歴代3番目に大きい大会ということもあって、これは絶対出なきゃな、という思いで参加した。試合だけではなく、ファンとの交流など、3日間の経験全てが自分にとって大事な物になった」とした。
翔選手以外に、本大会で最も印象に残った選手について聞かれるとりゅうきち選手を挙げ「ちょっと自分のミスもあって、2-2のギリギリの状況に追い込まれたってところで、最終的に勝つことができて良かったですけど、この追い詰められたタイミングっていうのはなんか、こうふっと上がるというか、やはり緊張したところもあったので、今大会の中では印象に残っています」と語った。
ここで記者が以前話を聞いた時に、ドミニカでは任天堂の「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの方が人気があると話した事があったが、現在「スト6」になってドミニカでの人気は変化したかについて聞かれると、笑いながら「ドミニカでは確実に『スト6』が1番有名なタイトルだと思っていますし、何より僕の戦いを、その格闘ゲームファンやコミュニティだけではなく、全てのドミニカの方々が見てくれているという実感がすごくあります。こうやって見てくれている事がすごく嬉しいですし、『スト6』になって色んな人々が興味を持ったりプレイするようになっているので、今はもう間違いなく世界中でも1番だと思いますし、ドミニカでも1番だと思います」として、インタビューを締めくくった。
さらなる高みを目指して、日本開催の「CAPCOM CUP」に期待!
以上、「EVO Japan 2024」の「ストリートファイター6」部門の決勝大会の模様をお伝えした。オフラインで行なわれた8試合は普段のプレイでは見る事のないギリギリの攻防が感じられる熱い戦いばかりなので、リアルタイムで見逃した人も是非、アーカイブなどで視聴してみてほしい。
そして実際に現地で観戦していると、選手たちの挙動や仕草などオフライン開催ならではの恩恵も多い。また、オフラインの醍醐味の1つとして、会場での声出しや応援の数々がダイレクトに感じられるのはかなり心地よい。シンプルな歓声や声掛け以外にも、応援している選手のキャラクターがコンボを決めると、コンボのタイミングで「ハイ!ハイ!」と声が掛けられたり、ダメージを受けると、「痛い!痛い!」と悲鳴を上げるなど、応援のバリエーションも幅があって面白かった。
優勝したMenaRD選手だが、その試合を見ていると、とにかく体力やゲージがない状態での粘り強さがとにかく印象に残る。どの試合も決して楽に勝っているわけではなく、ギリギリの体力ながら、それを意識しつつ、キッチリと確実なリターンを取っている印象を受けた。
MenaRD選手はとにかくどの大会にも姿を見せて上位に食い込む、正に「スト6のラスボス」となりつつある。もちろん全ての大会で優勝しているわけではなく、前回の「CAPCOM CUP 10」ではプロゲーマーのふ~ど選手に敗れていたり、ときど選手とも一進一退の攻防を繰り広げるなど、日本勢も決して負けてはいないが、MenaRD選手にはここぞというところの粘り強さが感じられる。
筆者の個人的な感情だが、是非「スト6」が1番盛り上がっていると言われる日本から、こうした圧倒的なチャンピオンが登場する日を楽しみにしている。
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