【特別企画】
「スト6」を筐体でプレイしたい! 地元にゲーセンが無いアーケードゲーマーが「スト6」対戦台を自宅に構築
2024年3月1日 00:00
- 【ストリートファイター6】
- 発売中
GAME Watchの読者なら、ゲームセンターに設置されたビデオゲーム機をご存知だろう。大きなモニターにレバーとボタンが一体となった機械である。業務用ゲームを遊ばせるマシンで、アーケード筐体(以下、筐体)と呼ばれるものだ。
ビデオゲーム創世記からゲームセンターでゲームを遊んできた筆者のようなゲーマーは、様々な筐体でゲームを楽しんできた。「スペースインベーダー」、「パックマン」、「ゼビウス」、「テトリス」、「ストリートファイター」など、ゲームの思い出は筐体と共にあると言っていいだろう。
最近では対戦格闘ゲームがeスポーツとして盛んになってきた影響もあって、高品質なアーケードコントローラー(アケコン)が家庭用として販売されるようになり、家庭用ゲーム機でも満足感の高いプレイ体験を得られるようになってきたが、アーケード筐体でゲームを遊ぶ楽しさは別格である。
そんなアーケードゲーマーにとって待望の大型タイトルといえば2023年12月に稼働を開始した「ストリートファイター6 タイプアーケード」である。アーケード版を飛び越えていきなりコンソール版がリリースされることが当たり前になった時代で、このAC版「スト6」の存在は筆者のようなゲームセンター世代の格闘ゲーマーを大いに喜ばせてくれた。
ただ、そんな喜びもつかの間、稼働開始後に致命的な問題に気が付いてしまった。筆者が在住する宮崎と、隣接する鹿児島、熊本では1台も稼働していないのだ(大分には2店舗あるが、宮崎市から遠征するには遠すぎる)。2024年2月末現在、この状況は変わっていない。
「それならば自宅に作ってやろう」と考えたのが本企画のきっかけである。AC筐体「ノアールキャビネット」にPS5を接続し、PS5版「スト6」とノアールキャビネット2台で、往年の対戦台を構築してみたので、その成果をご報告したい。
なお、アーケード筐体を用いた環境構築は、電気および電子に関する専門の知識が必要となる。本稿で得た知識で発生したいかなるトラブルも責任を負えないのでそのつもりで一読いただきたい。
PS5×ノアールキャビネット2台で対戦台を構築
まず、アーケード筐体で「スト6」環境を構築するにあたって、以下の条件で運用することを念頭に計画してみた。
1、使用筐体はバンダイナムコのノアールキャビネット
2、メインで接続するゲーム機は、プレイステーション 5
3、Xbox Series X等、他のゲーム機の接続も可能にする
4、ゲーム機は無理に内蔵にせず、外付けで接続する
環境構築に使用したノアールキャビネットは手持ちのもので、とあるゲームセンターが筐体を廃棄する際に譲り受けたものだ。筐体の仕様は下記の通り。
・モニターの入力端子は、VGAとDVIの720pまで
・I/O基板はバンダイナムコ純正で専用基板
・入力電源はAC100V。家庭用コンセントで動作可能
以上を踏まえて下記の方法で作業を行った。作業自体は構想から部材工具をすべて集めるのに2カ月は掛かった。
・映像信号はVGA端子を使用。映像コンバーター「HDMItoVGA(音声出力付き)」を使用
・VGA信号と音声信号は、I/O基板へ直接接続
・筐体のコントロールパネル(以下、コンパネ)とゲーム機との接続は、筐体のI/O基板を通さず、USBコントローラー基板を使用しコントローラーコンバーターを使用
・コンパネのボタンは、6ボタン+スタートのみで、家庭用ゲームとしては数が少ないため、増設用のボタン穴を開ける
・コンパネのUSBケーブル、映像信号用のHDMIケーブルを筐体下部の小窓から外に出しPS5と接続
・コンパネのUSB基板をPS5で認識させる為に、Brook社製のコントローラーコンバーター 「Wingman FGC」を使用
・今回コンパネに使用した、レバー、ボタンはすべて三和電子製
PS5版「スト6」をアーケード筐体でプレイする。最高にハッピーな操作性
筆者は日頃からアケコンを使用してオフラインイベントに参加する為、普段はアケコンを膝置きでプレイしている。膝置き歴は10年超のベテランである為、今では何の支障も無くプレイできる。しかしながら、筐体でプレイする「スト6」は非常に快適で楽しい。今までの環境をはるかに超える快適さだ。
筐体のモニターサイズは32インチで顔からの距離も近い為、普段使用している23インチのゲーミングモニターに比べて大迫力だ。
筐体の重量は100kgに及び、本体に固定されたコントローラー部分(コンパネ)は、少々乱暴な操作をしても問題なく、非常に高い安定感で操作ミスを抑えてくれる。筆者がヒートアップして激しい操作を行っても、まったく問題が無い。
そして注目すべきは、筐体付属のスピーカーだ。まず音質の良さに驚く。ゲームに没頭したい時にはボリュームを上げプレイすることもしばしば。
なお、今回USBコントローラー基板に採用した「GP2040-CE」とコントローラーコンバーターの「Brook Wingman FGC」は、入力遅延が大変少なく操作は快適である。
また、ゲームセンターの対戦台を再現するため、筐体2台を横並びの対戦台にした。遊びに来た友人が「いつもでないスクリューが出る!やっぱり筐体はいいな」と喜んでプレイしていた。いつも筆者と一緒に「スト6」を遊んでいる息子にも大好評で、我が家の対戦は筐体で行うのが日課になっている。
ただ、完璧とは言えず、問題もいくつかある。1つはノイズ。筐体が若干振動しているようで、ビリビリとノイズが鳴る。ゲーム中はスピーカーのおかげで気にならないが、ゲームをプレイしていないアイドリング中は、どうしても気になってしまう。
また、重量が重いため、床の形状や材質によっては、床に傷がついたり凹みができたりする。自宅にアーケード筐体の導入を検討する方は、床の材質などを確認する必要があるだろう。
また、ノアールキャビネット備え付けのモニターは、1080pや4Kの入力に対応していないため、PS5の性能を最大限に発揮できない。これは将来的にモニターの交換も検討していきたい。
ゲームセンターの操作感でアケアカが遊べる!
家庭用ゲーム機では、ハムスターの「アーケードアーカイブス」をはじめとした往年のアーケードゲームが販売され、筆者も所有している。試しにプレイしてみたが、やはりいつもより楽しく感じる。やはりゲーセン小僧だった頃の記憶が呼び起されるのだろう。
やっぱりアーケードゲームは筐体で遊びたい!
「スト6」を筐体で遊びたい一心で環境を整えてみた結果、筐体を使用したビデオゲーム体験は、単なるデバイスの良し悪しではなく、童心に帰るような別の快感を得られ、大変満足している。
副産物としてクラシックなビデオゲームを筐体で遊ぶ環境も手に入れる事になり、今所持しているゲームはもとより、まだ購入していないクラシックゲームにも再度興味が湧いている。
筐体の前に座り、ゲーム開始前に、レバーを左手でグルグル回しながら、右手でボタンチェックするように無造作に叩く時間は、何とも言えない高揚感に包まれ、これから行われるゲーム体験が普段より待ち遠しく、筆者がゲームセンターで体験した感覚そのものだ。ゲームを筐体でプレイする感覚は、何事にも変えられない特別な喜びだ。今後のゲームライフがより豊かになる事は間違いないだろう。
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