【特別企画】
「斑鳩」22周年。「敵弾に当たる」という新たな概念を生み出した全く新しいSTGを振り返る
2023年12月20日 00:00
- 【斑鳩】
- 2001年12月20日 アーケード版稼働開始
トレジャーが2001年12月20日にアーケードでリリースした縦画面シューティングゲーム「斑鳩(いかるが)」。本作は、本日2023年12月20日で稼働開始から22周年を迎えた。
「斑鳩」は、“敵弾に当たる”ことも攻略要素の1つとして取り入れた画期的なゲームシステムが魅力のシューティングゲーム。稼働時点では家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」と互換性のある基板「NAOMI」でリリースされ、後にドリームキャストで最初の家庭用が発売された。そこからゲームキューブ、Xbox 360、PCなど様々なハードで移植された根強い人気があるゲームだ。2018年にはPS4/Nintendo Switch版も発売された。
今回はそんな「斑鳩」の思い出を振り返る。今回のスクリーンショットは主にSteam版を用いているため、アーケード版とは画面レイアウトが異なることをご理解いただけると幸いだ。また、ストーリー上のネタバレを含んでしまうので、それを踏まえた上で閲覧していただきたい。
敵弾を避けるのではなく「触れる」という画期的なゲーム性
シューティングゲームをプレイしたことがあるなら、見出しの言葉が不思議でならないだろう。シューティングゲームは、敵の弾に触れないよう回避しながら弾を撃ち、敵を撃破してステージを進めていくのが基本。だが、「斑鳩」には属性というシステムがあり、自機の属性が白では白の、黒では黒の弾に被弾しないようになるのだ。
「斑鳩」で撃ち出される攻撃には「白属性」、「黒属性」という2つの属性が存在する。属性は弾の色で判別でき、白色の弾・レーザーは白属性、黒色ならば黒属性となる。
上の画像はまだ1面なのだが、一般的なシューティングゲームの常識で考えると弾の数が多く、高難易度に思える。だが、自機は属性変化という手段でこの弾幕を潜り抜けることができる。「斑鳩」には、弾だけではなく自機にも属性が存在し、同属性の弾は被弾しても自機がその弾を吸収しミスにはならない。しかし、自機の逆の属性の弾は被弾するとミスとなる。また、属性を切り替えている最中にはどちらの属性の弾にも完全に無防備な時間があるため、タイミングを見計らって切り替える必要がある。
そして、敵にも属性が存在し、敵の色で属性を判別できる。黒色の敵ならば黒属性、白色の敵ならば白属性だ。攻撃する際、敵の色と逆の属性で攻撃すれば、大ダメージを与え、同属性で攻撃したときより早く撃破することができる。
また、敵の弾を吸収すると画面上のメーターが上昇し、一定以上になると敵にホーミングレーザーを放つ「力の解放」という大技が使用できる。
これだけならまだ比較的とっつきやすいルールだが、難易度ノーマルでは「同属性で敵を撃破した場合、その属性の撃ち返し弾が放たれる」、ハードに関しては「全ての敵を撃破した際に撃ち返し弾が放たれる」というルールが追加される。これにより「反対の属性で攻撃して速攻で撃破すべきか?」や「力の解放を行うために敢えて同属性で戦うべきか?」といった考えが必要になる。これが「斑鳩」の難しい点でもあり、醍醐味だ。
スコアアタックやエクステンド(アクションゲームで言う1UP)を意識すると、チェインボーナスも考えなければならない。チェインボーナスは、同じ色の属性の敵を3体続けて撃破するごとに、点数にボーナスが追加されていくシステム。敵属性が白・白・白、または黒・黒・黒の順番で撃破すると点数が大きく増えていくのだ。チェインが切れる条件は白白黒、黒白黒のように、異色の敵が混ざっているときだ。白白白の後に黒黒黒とした場合やその逆ならばチェインは継続する。
一般的なシューティングゲームでは、敵を見かけたらすぐに撃破して、敵の数を早期に減らすことが多い。しかし、1コインクリアや、スコアアタックの際はチェインボーナスを繋いでいくことが大事になるため、チェインが切れる敵は放置するといった立ち回りが必要だ。
ステージ1のボス戦の第1形態は白属性のボスからの白弾攻撃。黒属性で戦えば大ダメージを与えられるが、シューティングゲームの1面ボスとしては攻撃が苛烈である。
第2形態は黒い盾のようなものから黒属性の攻撃を放ってくる。第1形態とは違い、自機を白属性から黒属性に切り替えて戦うのが良いだろう。最終形態は白属性と黒属性の拡散弾を交互に放ってくる。ボス自体は白属性なので黒属性での攻撃が有効だが、敵弾を回避するために適宜属性を切り替え戦うのがベターだろう。
ステージごとに入るタイトル付きの演出のカッコよさはSTG随一!
本作では、ステージが開始されて少し経過するとステージの題名と共に詩のようなテキストが表示される。ステージ1の題名と共に表示されるのは「嗚呼、斑鳩が行く・・・・・・」。この文字だけでシビれるプレイヤーも多いのではないだろうか?
大抵のステージ開始時には、自機は敵陣に深く攻め入るためにブースターを吹かせながら突撃していくのだが、その演出に魅了された方も多いだろう。
「斑鳩」が稼働した時期には、「バーチャファイター」が巻き起こした3Dブームによって、ドット絵を用いないSTGも存在していた。それでもこの「斑鳩」のようなカッコよく敵の本拠地に攻め入る描写ができていたゲームはそう存在していなかったと思う。筆者のゲーセン仲間はほとんどが格闘ゲーム勢だったが、時々時間つぶしに「斑鳩」を触るというプレイヤーが数多く居た。理由を聞くと「カッコイイから」と大抵返ってきた。「斑鳩」の演出の美しさは群を抜いていたのだ。
エンディングまでのストーリーと演出も秀逸
ここからはストーリーの根幹に関わるネタバレを多分に含むので閲覧にはご注意いただきたい。
「斑鳩」は、圧倒的な力で世界を支配している「鳳来の国」から自由を取り戻すために戦うというストーリーだ。人々から自由を奪った「鳳来の国」の中心人物「鳳来 天楼(ホウライ テンロウ)」が「産土神黄輝ノ塊(ウブスナガミ オウキノカイ)」を掘り出したときに人智を超えた力を得て、各地で武力侵攻を行うようになった。また、この物体に制御装置を取り付け、その力を取り込もうともしていた。
それに反抗する「天角(テンカク)」という組織があったが、鳳来によって全滅させられてしまう。その天角の生き残り「森羅(シンラ)」と、森羅に敗北した後行動を共にするようになった少女「篝(カガリ)」が自由を取り戻すため鳳来に戦いを挑む……というものである。
最終ステージでは鳳来との戦いとなるのだが、ここでの戦いも非常に演出が素晴らしい。
鳳来の最終形態ではなんとこちらの力の解放に近い性質を持ったホーミングレーザーを“ボス本体の属性も変化させつつ”放ってくる。敵が搭乗する機体の属性を変化させるのはコレのみである。斑鳩(ここでは自機の名前の斑鳩を指す)が属性を切り替えながら力の解放でレーザーを撃ち合うことになるのだが、ユーザーから「力の解放合戦」とも呼ばれるこの攻略法は、まるで映画の演出の様に見える素晴らしい演出だと筆者は感じる。
そして鳳来を撃破した後、斑鳩のリミッター解除を行い、この全ての元凶である「産土神黄輝ノ塊」こと「石のような物体」の破壊を試みる。リミッター解除による力の解放を行うため、ここからは通常ショットが使用不可能になり、純粋な回避能力と属性の切り替えを用いて石のような物体からの攻撃を時間切れまで凌ぐことになる。
そして制限時間まで持ちこたえると、リミッター解除した斑鳩の力の解放で石のような物体を破壊するのだが、発射し続けていると徐々に斑鳩の機体は破損していく。遂に石のような物体に取り付けられた制御装置を破壊するのだが、斑鳩の機体も爆散していくのだった……。
石のような物体は、トレジャーが1998年にリリースしたシューティングゲーム「レイディアントシルバーガン」にも登場しており、そちらでも真ボスの扱いを受けていた。どうやら石のような物体は「地球の意志そのもの」であり、人類を滅ぼすも生み出すも自由自在で、人類が自らの都合のいいように進化していくことを望み、それが叶わぬようであれば滅ぼし、また人類を生み出してリセットするといったことを行っているようである。
本作では斑鳩が力の解放を用いて破壊した(完全に破壊できたかは不明だが)ので、これにより人類は本当の自由を手に入れたのかもしれない……。
難易度は高いが、それでも皆を引き付ける魅力があるゲーム
「斑鳩」はシューティングゲームでも独特のシステムで、難易度自体は非常に高い。特にシューティングゲームでは回数制限はあるものの、画面上の敵弾を消し去ったり、自機に無敵時間を付与してくれるボム(ボンバーともいう)というシステムが「斑鳩」には用意されておらず、まるごと取り払ったゲームはなかなかない。
筆者も学生のころゲームセンターでプレイしたが、2面からはパズルを解くようなパターン作成が大変で、中々先には進めなかった。白と黒が散りばめられ、自機が今どっちの色なのか、同属性の色で敵を勢いで倒してしまった結果、大量の撃ち返し弾によって白と黒が複雑に混ざり合って逃げ場がなくなる・・・ということもしょっちゅうだった。
友人たちと2面で残機がなくなり、頭を抱えるのは日常茶飯事だった。だが、それでも皆が笑顔で楽しんでたのは記憶に残っている。それは美しいグラフィックと、ステージデモだけの限られた文章で考察する世界観が大変魅力的だったからだ。
22年経過した今でも、多くの家庭用ゲーム機やPCで移植されているのはその人気の根強さの証拠だ。また、現在ゲームセンターでNAOMI基板のバージョンを見つけるのは困難だが、タイトーのオンラインコンテンツ配信システム「NESiCA×Live」にて「斑鳩」は稼働している。現在でも十分通じる美しいグラフィックをゲームセンターで見つけた際はぜひ体験してほしい。
(C)TREASURE