【特別企画】

20年以上の時を経て登場した名作CRPG「バルダーズ・ゲート3」のPS5版プレイレポート

エンディングは1万7,000通り! PS5版が12月21日に発売

【バルダーズ・ゲート3】

12月21日 発売予定

価格:8,580円

 ゲームアワードのGolden Joystick Awards 2023にて最高賞「Ultimate Game of the Year」を受賞した人気のファンタジーRPG「バルダーズ・ゲート3」。8月にPC版が発売され、12月21日には、スパイク・チュンソフトよりプレイステーション 5向けの日本語版が登場予定で、多くの日本人ファンが心待ちにしているタイトルだ。

 本作はテーブルトークRPG(TRPG)「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下「D&D」)のシステムをベースにした作品で、TRPG特有のダイス(多面体サイコロ)を使用した成否判定や、物語や戦闘がプレーヤーの選択によって変化する自由度の高さ、そしてデジタルゲームだからこそ表現できる美麗なグラフィックスによる映像表現により好評を博しているシリーズだ。

 海外のユーザーやコアゲーマーに人気の本作だが、読者の中には何故「バルダーズ・ゲート3」が何故そんなにも人気なのかわからず、気になっている人もいるのではないだろうか。そこで本稿では、そんな「バルダーズ・ゲート3」の魅力を紹介すると共に、筆者が実際にスパイク・チュンソフトに伺った際に聞けた話や、実機プレイをした日本語版について紹介していく。

「バルダーズ・ゲート」とは

 そもそも本作は、1998年にカナダのゲーム制作会社BioWareによって開発されたRPGソフト「バルダーズ・ゲート」から始まったシリーズだ。「アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ 第2版」をベースにしたコンピュータRPG(CRPG)である本作では、広大なマップ、画期的なReal Time with Pause(RTwP)方式の戦闘システム、人間味を感じるNPCのモラルシステムなど、当時としては革新的なシステムが多く組み込まれており、その完成度の高さからコンピューターRPGのジャンルでは異例の大ヒットを叩き出した。

画像はセガより発売された「Baldur's Gate 完全版」のもの

 ちなみにタイトルにもなっている「バルダーズ・ゲート」は「D&D」の世界「フォーゴトン・レルム」に登場するソード・コースト地方に存在する都市の名前。この世界「フォーゴトン・レルム」については映画「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」という作品で舞台となっているので、気になる方は是非とも観てほしい。作中にはクリーチャーや魔法など、共通する要素が数多く登場しているおり、「D&D」や「バルダーズ・ゲート」の世界観や雰囲気を知るのにオススメの作品となっている。

【映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』ファイナル予告(日本語吹替】

 そんな「バルダーズ・ゲート」シリーズから20年以上の時を経て、新たなナンバリングタイトルとして登場したのが「バルダーズ・ゲート3」だ。冒頭でも紹介したように、本作の魅力はTRPG「D&D」をベースにしたルールで再現されている世界観とゲームシステムにある。キャラクターの作成、戦闘やNPCとの会話、ゲーム中のナレーションなど、様々な要素がしっかりとTRPGのルール通りに再現されている。

 しかも、ただ再現しているわけでなく、より多くのプレーヤーが楽しむことができるように魅力が再構築されている。ストーリーや戦闘の自由度、キャラクターたちの映像演出など、シンプルにゲームとしての完成度が高く、TGRPGやCRPGファンはもちろん、それらを知らないプレーヤーもはまる作品となっている。とはいえ、元がTRPGということもあって誰でもが簡単に遊べるゲームとはお世辞にも言いづらい。ゲーム内では「D&D」をベースとした様々な専門用語や、ゲームルールが多く存在するため、プレイしながら学んでいくところが多々ある。今回プレイできた日本語版の画像と合わせて、ゲームの流れを説明していくので、参考にしてほしい。

TRPG、CRPG初心者でも安心してプレイできる難易度設定

 先程も書いたように、TRPGやCRPGには多くのルールや学ぶ要素があるため、一般的には難易度が高めのゲームとなっている。そのため、本作ではゲームを開始すると、最初に難易度の選択から始まる。本作を始めてプレイされる方も安心してプレイできるよう、「探検家」というゲームの世界観やストーリーを楽しめるように調整された難易度もあるので、安心してほしい。また、ゲームの難易度はプレイ中に変更することができるので、「探検家」の難易度でゲームを始めたあと、ひとつ上の「冒険家」やさらに上の「戦術家」に上げることもできる。

 「冒険家」についてはゲーム本来の難易度として用意されているが、ゲーム自体の難易度が高い。そのため、本シリーズを初めてプレイする人は探検家でプレイを開始し、簡単だと感じた場合は「冒険家」に変更するのが良いだろう。

探検家(初心者用の難易度)
 ゲームを始めてプレイする方や、ゲームが得意でない方でも安心してプレイできるように+2の習熟ボーナスや、商人のアイテム価格が安くなっているなど、プレイしやすいように補正がされる。

冒険家(ゲーム本来の難易度)
 そもそもの難易度がわりと高めなゲームなので未プレイの方は先に探検家でゲームに慣れる事をオススメする。

戦術家(熟練者用の高難易度)
 敵のヒット・ポイントやアーマークラスが増加するほか、使用する武器や能力も変更される。さらに敵のAIが「Brutal AI」と呼ばれる、より戦略的に思考するAIへと変更される。

戦術家の難易度では倒しやすいパーティーメンバーや、魔法使いなどが優先して狙われるなど、実際にダンジョンマスターと対峙しているような体験が味わえるように敵が行動してくる

 難易度選択後はオープニングムービーが流れ、キャラクターメイクへと移行する。

物語はマインド・フレイヤーと呼ばれる邪悪な種族が操る浮遊艦・ノーチロイドに囚われた主人公が、マインド・フレイヤーの幼生を植え付けられるところから始まる

 ちなみに本作はCEROレーティングがZなだけあり、なかなかに過激なシーンが多い。日本で発売されるPS5版については過激なゲーム内演出がカットされたり、変更されている。

序盤から脳が剥き出しになっているキャラクターが登場するなど、かなり壮絶な世界だ

多彩な種族とクラスによる自由度あふれるキャラクターメイク

 ゲームを開始するにあたり、プレーヤーのキャラクターを作成する必要がある。TRPG同様におそらく多くのプレーヤーが悩み、時間を取られるのがここだろう。キャラメイクではオリジナルのキャラクターが作成できる「カスタム」と、作中登場キャラクターとしてプレイできる「オリジン」から選択できる。

 「オリジン」では作中に登場する7人のキャラクターの中から1人を主人公として選択できる。ダークアージを除く6人のキャラクターはオリジンキャラクターとしてゲーム内に登場する存在で、最初から目的や思想、嗜好をもつ人物たちである。旅の中で仲間にできるキャラクターたちになっているが、最初の時点で7人から1人を選び、それぞれの物語を体験することができるようにもなっている。

【アスタリオン】
【レイゼル】
【ゲイル】
【シャドウハート】
【ウィル】
【カーラック】
【ダークアージ】

 カスタムキャラクターを作成する場合、11の種族と28の亜種族のなかから一つを選択し、クラスや能力、技能などを設定していく。種族毎に得意な武器や1ターンに移動できる距離、暗闇での視界、恩恵を受けられる特性など、様々な特色がある。もちろん種族の特性によっては特定のクラスで便利だったりすることはあるが、必ずその種族じゃないといけないということはないので安心してほしい。万が一自身のキャラクターのクラスやスキルが思っていたのと違ったり、合っていなかったとしても、ゲーム内でクラスやステータスをリセットして設定しなおすことが可能だ。

【エルフ】
【ティーフリング】
【ドラウ】
【ヒューマン】
【ギスヤンキ】
【ドワーフ】
【ハーフエルフ】
【ハーフリング】
【ノーム】
【ドラゴンボーン】
【ハーフオーク】
種族には亜種族があり、見た目や能力が変わる。エルフの場合は呪文が得意なハイエルフや、隠密や移動力の高いウッドエルフなどがいる
ドラゴンボーンなどは色によって使用できるブレスの属性が変わるので面白い

 また、外見では選択した種族の特徴をベースに男女はもちろん、肌の色や髪型、顔や声など、かなり細かいところまでいじることができる。

 ゲームをプレイするうえで重要になるのが、キャラクターのクラスだ。「バルダーズ・ゲート3」には12のクラスと46のサブクラスが存在しており、どのクラスに就くかでプレイスタイルが大きく変わってくる。

基本となる12のクラス

ファイター
 剣や盾、などの近接武器はもちろん、弓などの遠距離武器も使いこなすオールラウンダーのクラス。重装防具が装備でき、高い耐久力を誇る。

バーバリアン
 ファイターと違い、中装防具までしか装備できないが、バーバリアンの激怒という自身の攻撃力と耐久力を強化するバフによって、高い攻撃力を耐久力で戦うことができるクラス。

パラディン
 重装防具に加え、回復魔法も使うことができるクラス。聖なる力により一部の敵に対して攻撃が有利になる。

クレリック
 味方を癒やしたり、補助することができるヒーラー系のクラス。攻撃力はアタッカークラスに及ばないものの、ある程度の火力も持ち合わせており、オールラウンダーに活躍できる。

モンク
 高い機動力と攻撃回数を有するが、低い防御力に加え「気」という特殊なエネルギーを使用するテクニカルなクラス。

ローグ
 隠密行動を得意とするするクラス。敵に気づかれていない態で攻撃を行なうと追加ダメージが加算され、大ダメージを与えることができる。

レンジャー
 高い機動力に加え、弓での遠距離攻撃や使い魔を召喚して偵察するなど、幅広く活躍できるクラス。

ウィザード
 使用できる呪文の種類や数が多いオールラウンダーな魔法使いクラス。魔法使いクラスのなかで唯一巻物から呪文を習得できる。

ソーサラー
 魔法使いクラスの中で唯一呪文を変化/拡張して強化することができるクラス。

ウォーロック
 使用できる呪文のスロット数が少ないが、強力な攻撃呪文が使える魔法使いクラス。他の魔法使いクラスと違い、小休憩でも呪文の回数を回復させることができる。

ドルイド
 動物に変身したり、雨を降らせてフィールドに変化を与える呪文を得意とする自然系の魔法使いクラス。

バード
 味方にバフ、敵にデバフをかけることができるサポート系のクラス。

各クラスにはサブクラスが存在しており、選択するサブクラスによってキャラクターが新たな呪文や技能を習得することができる。クレリックひとつ取っても、味方を強化するバフや攻撃呪文など、サブクラスによって得られる効果が大きく変わる
ウィザードなどの魔法使いクラスではキャラクターメイクの段階から多くの呪文が用意されており、呪文を選ぶだけでもかなり悩んでしまう。どの魔法をどう組み合わせるのがいいかなど、何度も試行錯誤して探していくのも楽しみのひとつだ

 種族やクラス以外にキャラクターを彩る要素として、背景、能力、技能がある。これらはゲームプレイにおいても影響が大きい部分になっているので、簡単にそれぞれを紹介していく。

 背景はキャラクターの出自を表すもので、キャラクターがどこから来て、過去に何をしていたのかを明らかにするもの。貴族や兵士、犯罪者など12種類用意されており、選択した背景によって得られる技能が変わるほか、会話時の選択肢も影響される。

兵士の背景では過去に訓練を受けていたことから、運動や威圧の技能を得ることができる

 能力はキャラクターのステータスを表すもの。ここでは27の能力ポイントを自由に割り振ることができる。各クラスで攻撃や呪文の判定に使用される能力が変わるので、自身のクラスに対応した能力にポイントを割り振ろう。わからない場合は「推奨を使う」を選択することで、システムがオススメの形で自動的にポイントを割り振ってくれるので安心だ。

技能はキャラクターが習熟している素養。技能を習熟することで、プレーヤーが選択することで発生する判定に対してボーナスを得ることができる
TRPGがベースの本作では物事の結果が全てダイスの判定によって行なわれる
技能があれば失敗しやすい判定にもボーナスが加えられ、成功しやすくなる
嘘を見破るなど実用的なものから、犬を従わせやすくなる技能といった、様々な技能がある

自身が作成したキャラクターで幕を開けるフォーゴトン・レルムの世界

 膨大な量のキャラクター設定が終われば、いよいよ「バルダーズ・ゲート3」の世界へを足を踏み入れることができる。オープニングでマインド・フレイヤーの幼生を植え付けられた主人公が目を覚まし、ノーチロイドから脱出を試みるところから始まる。フィールドにはさまざまなオブジェクトがあり、プレーヤーはそれらにインタラクトすることができる。

ノーチロイドで目を覚ます主人公
最低限必要な情報や目的などはジャーナルが教えてくれる
フィールド上にあるほとんどのものにインタラクトすることができ、調べたり、攻撃したりと、アクションをすることができる
もちろん、場合によっては触れない方がいいものもあるので注意しよう
会話やイベントでは選択肢が多くあり、成否に判定が必要な物はその際に必要なアビリティなどが表示される

 物語を進めると敵との戦闘へと突入する。本作の戦闘はラウンド形式で、各キャラクターに行動するターンが与えられる。キャラクターは自身のターンに「移動」、「アクション」、「ボーナス・アクション」を使用することで行動する。

 武器や呪文での攻撃などが「アクション」、相手を突き飛ばしたり、ジャンプで移動したりするのが「ボーナス・アクション」となっている。移動は移動力が残っている限り何回でも行なえるので、移動→攻撃→移動なども可能だ。また、フィールドでの行動同様に戦闘中の行動判定なども全てダイスロールにて判定されているが、戦闘中はそれらの演出は省略されている。

各キャラクターの順番はステータスから算出され、それぞれのターンで行動する
戦闘中は画面中央の移動力ゲージの分だけ移動することができる
攻撃には「アクション」ポイントを消費する
「ボーナス・アクション」のジャンプを使用すると、高所や相手の背後などに飛び跳ねて移動することができる
戦闘中のダイスロール判定は省略されているため、命中率や相手の攻撃を防御するセーヴィング判定などは文字や数字で表示される

 ノーチロイドでの戦闘後、主人公たちは艦のコントロールを奪って脱出することができた。艦はバルダーズ・ゲートとエルタレルの中間地点にある川岸の街道付近に不時着し、そこからバルダーズ・ゲートを目指して旅する物語の本編が幕を開ける。

荒れた浜辺に漂着する主人公

 さて、ここまで紹介した部分までなら他のRPG作品とそこまで大きな差がないように感じる方もいるだろう。だが、本作の真髄はその自由度の高さと豪華俳優陣や美麗なCGによる演出面ある。今回開発に携わったLarian Studiosは重圧なストーリーと戦略性の高い戦闘や、自由度の高いキャラクタービルドのシステムで有名なRPG「ディヴィニティ:オリジナル・シン2」を開発した会社だ。

 その強みは本作でもしっかり受け継がれており、戦闘では相手の武器を叩き落して奪ったり、水を凍らせて相手を転ばせるなど、驚くほど自由度の高い戦略で戦いを進めることができる。それに加え、本作ではキャラクターたちの行動や演出が豪華俳優陣による演技やアニメーションで表現されており、より深い没入感を体験できる作品となっている。TRPGでおなじみのゲームの進行役によるキャラクターの心情や情景もナレーターによる朗読で描写されており、これがまたよい味を出している。

 この自由度の高さと、豪華な演出によって描かれる世界は、まるで自分が創る映画をみているようにも感じられる。他のプレーヤーとは違う、自分だけの物語を描くことができ、それを楽しむことができる。それが本作の人気の理由の一つとなっている。

 また、物語はキャラクターの種族やクラス、取得しているスキル、どこでなにをするかなどで、刻一刻と展開が変わっていく。オリジンキャラクターでプレイすれば、カスタムキャラクターとは違った物語の展開を楽しむことができる。そのため、本作のエンディングは1万7,000通りあるとされている。何周でも遊べてしまう、まさに沼のような作品だ。

ノーチロイドでシャドーハートに遭遇し、その時とった行動によって選択肢やリアクションが変わる
本作では冒険意外にもキャンプで休息をとったり、仲間とロマンスを育むなど、キャラクターたちの生活面までもをみることができるのも魅力のひとつだろう

「D&D」の用語に準拠した日本語訳

 今回もっとも注目されており、ゲーム体験で重要となっている翻訳についてだが、スパイク・チュンソフトの担当者から素晴らしい返答をいただけた。なんと本作で使用されているゲーム内の用語は全てTRPG版による「D&D」の用語に準拠されているそうだ。また、翻訳する際もキャラクターたちの個性に合わせた口調になるよう気をつけているとのこと。ただ、共有テキストになっている箇所もあり、そこに関してはシステムの都合上で口調を分けることができなかったのが心苦しい部分だとコメントしていた。

ゲーム内の単語にはベースとなっている「D&D」と同じものが使用されているので、「バルダーズ・ゲート3」をプレイすれば、TRPGの「D&D」もプレイできるようになりそうだ

 また、本作では200万を超える膨大なワードが収録されており、細かなオブジェクトやアイテムにもしっかりと設定や説明が用意されている。そういった部分も含め、翻訳には力を入れているので楽しんでいただけたら嬉しいとコメントした。

 今回先行プレイにて改めて翻訳の重要性を感じた。本作では濃密なストーリーや世界観、TRPGをベースとしたゲームシステム、個性豊かなキャラクターたちによる会話など、内容をちゃんと把握しておきたい箇所が山ほど存在している。英語でそれらを全て理解するのはなかなかにハードルが高いので、今回しっかりと日本語化されたのはとてもありがたい。

 また、マルチプレイ機能で他のプレイヤーと一緒に遊べる点も素晴らしい。従来のTRPGでは仲間と集まり、わいわいと盛り上がるのが楽しかったが、本作ではソロとマルチの両方で楽しむことができる。筆者も日本語版が出たらマルチで仲間と一緒に盛大に遊び倒す予定だ。

 ベースがTRPGということもあり、難しそうに感じる方もいるかと思われる。だが、「バルダーズ・ゲート3」は事前知識が無くても十分に楽しめるタイトルだということは強調したい。「D&D」やシリーズ前作を知らなくても楽しめる作品として完成している。また、一般的なRPGの決められたルートや、レベル上げという概念がないので、それらをよくプレイしていた方はまったく違うRPGの世界が体験できるだろう。フォーゴトン・レルムの広大なファンタジー世界で、是非とも君だけの物語を体験してみてほしい。