【特別企画】

「ラストレムナント」15周年! 高難易度バトルはRPG界のソウルライクゲーム!?

今でもプレイしてほしい不朽の名作

【THE LAST REMNANT -ラスト レムナント-】

2008年11月20日 発売

 スクウェア・エニックスの「ラスト レムナント」(以下、「ラスレム」)が、2023年11月20日で発売15周年を迎えた。本作はXbox 360用として2008年11月20日に発売されたRPG作品。2023年6月に発売された「ファイナルファンタジーXVI」でディレクターを務めた髙井浩氏がディレクターを務め、プロデューサーには「ロマンシング・サガ」シリーズなどで有名な河津秋敏氏、キャラクターデザインに直良有祐氏、音楽に関戸剛氏らが、制作に携わっている。

 後にWindowsへと移植されたほか、発売から10年経ってついにPS4版が発売、そのさらに半年後にはNintendo Switchにも移植されたタイトルとなっている。現在では、PS4/Nintendo Switch/Android版がプレイしやすい。

 実は筆者は昨年の14周年の時も、「どうしても『ラスレム』の記事が書きたい!」と筆を取っており、2年連続の周年記事の担当となる。前回は思い出を振り返るというコンセプトだったため、今年は”今からでも遅くない! 改めて「ラスレム」をプレイしてほしい!”という記事にしたい。

 これから年末年始にかけて、どのゲームをプレイしようかと悩んでいる人がいたら、ぜひ参考にしてほしい。

 ちなみに本稿の内容は、主にPS4/Switch版に準拠している。Xbox 360版などとは異なっている部分もあるので、注意してほしい。

 なお、「『ラスレム』のことは大好きだ! 今更紹介記事とかは不要!」というファンは、ぜひ去年の記事を読んでみてもらえれば幸いだ。

【『THE LAST REMNANT Remastered』ローンチトレーラー】

40名以上のユニークリーダーが登場する、個性的なパーティメンバーたち

 「ラスレム」の一つ目の特徴は、とにかく多いユニークリーダー(仲間)たち。

 ユニークリーダーは、ストーリー上で仲間になったり、各街のギルドで雇用したり、クエストをクリアしたりと、様々だ。

 そんなたくさんの仲間を率いるのが、主人公のラッシュ・サイクス。ラッシュは、小さな島に両親と妹のイリーナと住んでいたが、両親は有名な研究者で留守がちで、実質イリーナとの2人暮らしの生活を送っていた。しかしある日イリーナが誘拐されてしまったことで、ラッシュは島を出て妹を探す旅に出た。

ラッシュ・サイクス

 その途中で出会ったのが、アスラム侯爵ダヴィッド・ナッサウ。ダヴィッドは若くしてアスラム領主となった青年で、レムナント「ゲイ・ボルグ」の使い手だった。ダヴィッドは、自身の目的のためにラッシュの妹探しを手伝う申し出をする。

ダヴィッド・ナッサウ

 ダヴィッドが束ねるのが、ミトラのエマ、ソバニのトルガル、ヤーマのブロクター、クシティのパグズ、という、アスラム四将軍。

 ミトラはラッシュやダヴィッドのように人間とほぼ同じ見た目で、能力も平均的。ソバニは猫のような顔と四本の腕を持っており火力に優れ長命、ヤーマは魚のような姿で最も巨大な体躯で力強く、クシティはカエルのような姿で知力に長けた小さい体。「ラスレム」の世界はこれら4つの種族で構成されており、アスラム四将軍はこの世界観を活かした構成となっているのだ。

パグズ
トルガル
ブロクターとラッシュ

 ラッシュは一見平凡な青年で、どちらかというと侯爵であるダヴィッドのほうがリーダー然としているが、ラッシュの明るさと大らかさで仲間はどんどん増えていき、最終的には40名以上ものユニークリーダーが仲間となる。

 もちろん、そのユニークリーダーたちはミトラからソバニ、ヤーマ、クシティと、種族もバラバラ。また、性格も非常に個性的。「サガ」シリーズが好きな人ならば端々で「サガ」魂を感じる、ユニークなキャラクターが勢揃いしている。

 リアルな3Dグラフィックスによって描かれる本作だけに「サガ」シリーズとは程遠いように見えるかもしれないが、「サガ」シリーズが好きな人ならばニヤリとするキャラクターも登場するので、ちょっと癖のあるキャラクターが大好きだという人ならば、絶対にお気に入りのキャラクターが出てくるだろう。

最序盤で仲間にできつつ、ラストまでスタメンで活躍できるボルソン

”レムナント”という未知のものに迫っていく物語

 「ラスレム」には、”レムナント”という未知の物体が登場する。

 レムナントは、物語上でも「強い力を持っているけれど、誰が何のために作ったかもわからず、正体は謎」とされており、ダヴィッドの「ゲイ・ボルグ」のように大砲の姿をしているものもあれば、ひとつの街を形成するほど巨大なもの、宝石のような小さいものまで、大きさから形まで違っている。レムナントが持つ巨大な力を利用しながら、世界は繁栄を続けてきた。しかし、レムナントの力によって支配する者と支配される者に分かれてしまったことにより、世界は戦乱の時代へと陥ってしまう。そして1000年が経った頃、いよいよラッシュを軸にした物語が動き始めるのだ。

ダヴィッドのゲイ・ボルグ

 レムナントが存在しない島で育ったラッシュがレムナントとどう関わっていくのか、そもそもレムナントとは何なのか、その物語はとても重厚で壮大。しかし「ラスレム」の良いところは、重厚ながらもわかりやすいストーリーだ。

 様々な人間の思惑と思惑が絡み合ったような”現在何をやっているのか解らなくなる重厚さ”ではなく、ストーリー進行自体はラッシュの視点からかなりわかりやすく描かれている。一方で、40名以上に及ぶユニークリーダーにまつわるサイドクエストなども豊富で、世界観はサイドクエストからもかなり掘り下げられているのだ。

 筆者はこのストーリー構成も、非常に気に入っている。あちこちの思惑が絡み合うに絡み合っての物語は確かに理解が難しく、難しいとなんとなく「壮大だったな……」という感想になりがちなのだが、本作の壮大さは複雑怪奇な物語ではなく、物語を取り巻く世界設定――すなわちレムナントそのものにあると言っても過言ではない。

 中心にあるのは常に、レムナント。もちろんレムナントにまつわる思惑はあれこれあるのだが、基本的にラッシュの視点で語られる物語のため、ラッシュの知らないところでAとBが手を組んだだの、CとDが裏切っただの、「つまり今誰と誰がどうなっているわけ!?」と頭を抱えてしまうような複雑さはない。「一方その頃」にちょっと疲れてしまった人にこそ、遊んでほしい物語である。

最初はラッシュの妹イリーナを探すところから始まるのだが、物語はもちろんそれだけでは終わらない

バトルは多人数VS多人数の集団バトル

 本作の大きな特徴は、多人数VS多人数の大軍勢バトル。1つのユニオンに最大5人まで編成可能で、18名まで出陣させることができる。40名以上に及ぶユニークリーダーでユニオンを組むのが一般的だが、Xbox 360版の時の名残で一般リーダーという汎用ユニットもいる。現行機でわざわざ一般リーダーを使うのはやりこみの域とも言えるが、一応ユニークリーダー以外も仲間にできることは覚えておくといいだろう。

 こちらが多人数で1つのユニオンを結成しているように、敵側もユニオンを組んで登場する。パーティの最大HPは、ユニオンに所属しているキャラクターの合計HPとなる。当然ながら、HP500の3人で組むとユニオンのHPは1,500に、4人で組むとHPは2,000、最大の5人を入れれば2,500になるというわけだ。

 一見、「なら5人で組んだほうが強いじゃん」となりそうなのだが、そうはいかないのが本作のバトル。

 はっきり言おう。本作のバトルは誰もが口を揃えて「難解」と言うレベルで、難しい。ストーリーが解りやすくて面白いと言った矢先にこれを言うのは非常に心苦しいのだが、バトルの難易度に関してはわかりやすさの欠片もないというレベルである。

 何が難しいというと、まずシステムが難しい。

 味方ユニオンと敵ユニオンが正面からぶつかりあう「ロックアップ」。ロックアップ中の敵ユニオンに攻撃をしかけることで発生する「サイドアタック」。ロックアップ中のユニオンがひとつ、サイドアタック2つのユニオンがいるところにさらに攻撃をしかけることで発生する「リアアサルト」。ロックアップ、サイドアタック、リアアサルトの全ての条件を満たしているユニオンに攻撃をしかけることで発生する「マッシブストライク」。

 ……という、ユニオンVSユニオンの位置関係をまず把握しなければならない。そして重要なのは、「サイドアタック以降は敵の反撃を受けない」点だ。

 基本的に敵ユニオンの数が多い時は、ロックアップを意識する。敵が1~2ユニオンしかない場合は、サイドアタック以上を狙う。

 しかし多くのボスはマルチロックアップという複数ユニオンをロックアップする能力を持っており、雑魚戦のように適当に2つ以上のユニオンをぶつければサイドアタックが取れるというわけではない。

 ここで、前述の”ユニオン数”が意味を持ってくるのだ。最大HPは2,500あるけれど、3つのユニオンしか組めないというのと、最大HPは1,500だけれど5つのユニオンが組める場合とで、取れる戦術に違いが出てくる。

 だがもちろん、最大HPを少なくすることによって、すぐユニオンが壊滅してしまうということでは、目も当てられない。ならばやはりユニオン数を減らして最大HPを確保したほうが得策のように思えるかもしれないが、敵も複数のユニオンで登場する。

 味方が3ユニオンのところに敵が6ユニオンで現れた場合、どうなるだろうか。

 3ユニオンはロックアップ状態に持ち込めるとしても、敵のほうが3ユニオンも多いならば、敵にサイドアタック以上を取られてしまうということになる。もしもこれで味方が4ユニオン、5ユニオンいれば、敵が6ユニオンで現れてもサイドアタックを取られるのはそう多くなく済む。それに全体攻撃を受けた場合、1ユニオンに属するキャラクターが多いほど、ダメージを受けてしまうというデメリットもあるのだ。

 つまり本作は、ユニオンの戦力と、ユニオンの総数のバランスを上手く取りながら進めていくバトルとなる。

 ちなみにこのロックアップシステムについては、最初は「何を言われているのかさっぱりわからない」となりがちだが、一度理解できてしまえばさくさく処理できるようになる。

 他にも独特の成長システムや、士気(モラル)によるバトルの駆け引き、ちょっと変わったコマンドバトルなど、本作のバトルは非常に奥深く作り込まれているのだが、これらを全部説明していると攻略サイト一式のようなボリュームになってしまうので、ここでは割愛させてもらう。

 本作のバトルはこのようにシステムの難解さもあれど、そもそものバトルの難易度が高い。RPGなので死に覚えゲーでこそないものの、難易度はそれに近いと思っても良いだろう。しかしこの高難易度バトルが、ハマればハマるほどスルメゲーとなる。言うなれば「コマンドRPG界のソウルライクゲーム」なのである。

上手く強敵を倒せた時の快感は、まさにソウルライクゲームのようだ

15年経った今でも遅くない! 「ラスレム」をプレイしよう!

 本作はゲーム時間の大半をバトルが占め、しかもそのバトルは難易度が高いとあり、総合的に見てハードルの高いゲームにはなってしまったのだが、尖ったゲームだからこそ15年経ってプレイしても色あせない魅力がある。

 特に筆者の推しポイントは、直良有祐氏による美しいキャラクターデザインと、関戸剛氏による超イケイケなゲームサウンドだ。直良氏のデザイン画はHD化にあたって新たに修正されており、より高解像度なキャラクターイラストを楽しめるようになっている。そして関戸氏自らがギターを演奏しているロックなバトル曲は、長くなりがちなバトルを存分に盛り上げてくれる。もちろんバトル曲以外も素晴らしく、本作のBGMの評価は今でも非常に高い。

 「ラスト レムナント」15周年を記念して、まだプレイしていない人にはぜひ年末年始のタイミングにでも、この名作に触れてみてほしい。

 筆者は15年経っても「ラスト レムナント」を超える名作になかなか出会えなくて、困っているくらいだ。ハマればそれほどの名作になるタイトルだけに、多くの人にプレイしてほしいと願っている。

「THE LAST REMNANT Remastered」のストアページ

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