【特別企画】

「ラスト レムナント」が14周年! ボス戦ひとつに2時間も当たり前? 極悪難易度バトルが超面白い

【THE LAST REMNANT -ラスト レムナント-】

2008年11月20日 発売

 スクウェア・エニックスが発売した「ラスト レムナント」が、本日で発売14周年を迎えた。本作はXbox 360用のRPGとして発売され、「ファイナルファンタジーXVI」でディレクターを務める高井浩氏がディレクターを務め、プロデューサーには「ロマンシング・サガ」シリーズなどで有名な河津秋敏氏、キャラクターデザインに直良有祐氏、音楽に関戸剛氏らが携わっている。

 2009年4月9日にはWindowsへと移植されたほか、発売から10年経った2018年12月6日には、ついにリマスターとしてプレイステーション 4版が発売、そのさらに半年後にはNintendo Switchにも移植されたことで、意外と最近になってプレイしたという人も多いのではないだろうか。

 本稿では、そんな「ラストレムナント」の特徴を思い出と共に振り返りたい。まだまだこれからも遊んでほしいタイトルだけに、できるだけネタバレには触れないようにしている。基本的には思い出を振り返る記事の内容のため、本作の複雑なシステムの一部の説明は割愛させてもらっていることをご了承いただきたい。

【『THE LAST REMNANT Remastered』ローンチトレーラー】

「ラスト レムナント」といえばまずはやっぱりバトル

 「ラスト レムナント」の大きな特徴は、集団VS集団の大軍勢バトルだ。パーティ人数最大5名までの1ユニオンをひとつの単位としており、最大18名まで出陣させることができる。例えば、3名のユニオンを6つ作ってもいいし、4名、4名、5名、5名という4つのユニオンを作ってもいい。

 敵も同じようにユニオンを組んでおり、パーティの最大HPはユニオンに所属しているキャラクターの合計HPとなる。多くの人数でパーティを組んだほうが最大HPは高くなる半面、そうなるとユニオン数そのものは少なくなるため、たくさんのユニオンで敵を囲んで殲滅する、というような戦略は取りにくくなる。

 このように「どこでどのようにパーティを組んで、どのような戦略を組んでいくか」という点では、どこかシミュレーションRPGにも近いような戦略性があるのが「ラスト レムナント」だ。

大人数でのバトルが最大の特徴(※画像はXbox Marketplaceより)

 だが、バトルは正直に言ってかなり難しかった。何が難しいというと、まずシステムが難しい。味方ユニオンと敵ユニオンが正面からぶつかりあう「ロックアップ」。ロックアップ中の敵ユニオンに攻撃をしかけることで発生する「サイドアタック」、ロックアップ中のユニオンがひとつ、サイドアタック2つのユニオンがいるところにさらに攻撃をしかけることで発生する「リアアサルト」、ロックアップ、サイドアタック、リアアサルトの全ての条件を満たしているユニオンに攻撃をしかけることで発生する「マッシブストライク」。この用語だけでもう「わけがわからない」となりそうだが、実際プレイしている方も序盤のうちは「何を言っているのかさっぱりわからない」状態のままプレイしていた。

 仕組みさえ理解できてしまえばそこまで難しくないのだが、例えばそれこそ「リアアサルトってつまりバックアタックでしょ? バックアタックでいいじゃん!」というような、わかりにくい用語が多かったのもバトルシステムを難しく感じていた要因のひとつである。こう書くとまるでディスっているように思うかもしれないが、筆者は「日本のRPGで3本の指に入る名作のうちの1本はラスト レムナント」であることを譲らないひとりである。つまり、わかりにくい部分はあるのだが、理解さえしてしまえばそこがスルメゲーになるという、それが本作の魅力なのだ。

ユニオン同士で協力し合う、大人数で戦っているからこそのバトルシステム(※画像はXbox Marketplaceより)

 また、本作のバトルの特徴のひとつに、コマンドバトルでありながらただのコマンドバトルではないところが挙げられる。

 通常のコマンドバトルでは、「たたかう」や「まほう」、「アイテム」といったコマンドがデフォルトで設定され、そこからさらに細かい行動を指定するのを想像すると思う。しかし本作では「武器(物理)で攻撃しろ」や「術法(魔法)で攻撃しろ」といったような自ユニオンの特徴にあわせてコマンドの内容も変わっていく。HPが減っている味方ユニオンがありつつ自ユニオンにHP回復手段がある場合は「回復しろ」といったような内容が出てきたりするのだが、HP回復手段を持っていないユニオンの場合はそういったコマンドが一切出てこない。

 また、どの敵ユニオンに行動するかによってもコマンドの内容が変わってくるため、「出したい攻撃のために敵ユニオンを選ぶか、殲滅したいユニオンを優先でその中で選べるコマンドから最善を選ぶか」といった駆け引きも必要になってくるのだ。

「加勢しろ」や「状態回復にまわれ」といったコマンドから行動を選択する(※画像はXbox Marketplaceより)

 そんな集団VS集団が特徴の本作だが、とにかくゲームの中心にあるのがバトルである。どれくらいバトルに重きが置かれているかというと、ひとつのボスを倒すのに2時間ほど費やすくらいだ(Xbox 360版の場合のみ。Windows版以降は倍速モードなどが搭載されているため、長くても30分もかからず終わるようになった)。

 あの当時のゲームは全滅したからといって直前からやり直すような機能はなく、セーブデータをロードしてやり直しになる。ふとしたタイミングでボス戦に突入してしまった場合、ここまでの戦闘を無駄にしないためにも意地でもボスに勝たなければならない、という場面もあり、明らかな負け戦であろうとも粘って粘って粘って2時間戦い続ける、ということもザラではなかった。

 その最たるところはやはり「地獄門」や2連戦となる「拠点戦」だろう。拠点戦も後に途中でセーブできるポイントを挟めるようになったのだが、Xbox 360版では、前哨戦から七人衆戦までの1時間コースのバトルが2連戦ブッ続けで発生するようになっており、前哨戦をジリ貧で潜り抜けてきた以上、七人衆戦で絶対負けたくないというような、とにもかくにも「死んでも負けられない」場面が多々あり、それが2時間粘るバトルへと繋がっていた。

バトルは長時間続く。負けるとやり直しになることを考えると、絶対に負けられない(※画像はXbox Marketplaceより)

 倍速モードが搭載されて以降はゲーム全体がさくさくと進むようになったため、2時間もの間、手に汗握るバトル体験はXbox 360限定だったと思うとそこだけが残念なのだが、倍速モードを切れば今でも当時の速度感を体感することは可能である(わざわざやる人もいないとは思うが……)。

 何はともあれ、緊張感のあるボスバトルを楽しめるゲームなのは間違いない。そこを潜り抜けて死ぬ気で敵を倒したその時に味わえる高揚感は、死にゲーに近いものがある。RPGでありながらあれだけアドレナリンが大量に分泌されるようなゲーム性は、今の時代にこそぴったりなのではないだろうか。

仲間の成長システムも独特だった

 「ラスト レムナント」は仲間の成長システムも特徴的だった。本作は河津氏が関わっていることもあり、陣形やバトル中に技を閃いたり、武器や技名に「サガ」シリーズの片鱗があるのだが、成長システムも「サガ」シリーズに近く、レベル制ではなくバトルでの行動を通じて各種ステータスが伸びていくようになっている。

 特に主人公のラッシュは物理属性で育てていくならば物理攻撃を頻繁に使うように、術法属性で育てていくならば術法を中心に使うようにと、どちらにでも育てることができるのだが、初回では漠然と戦っていると曖昧なキャラクターになってしまいがちで、なかなか自分の思い描いた成長をさせられないというジレンマを抱えることになる。だからこそ、周回プレイを重ねたくもなるという、これもまたスルメゲーの要素を兼ね備えている作品だった。

主人公のラッシュ(※画像はXbox Marketplaceより)

 また、集団VS集団という本作のシステム上、多くの仲間を抱えることになる本作だからこその独自の成長システムもあった。

 そのひとつが、仲間が自分の成長方針についてラッシュに尋ねにくること。そうしてもうひとつは、自分の欲しい武器をラッシュが手に入れると、それを「欲しい」とおねだりしてくることだった。基本的に仲間の装備はこちらで変えることはできず(変更できるのはラッシュのみ)、「欲しい」と言ってくるのを待つしかない。

 そして一度あげてしまった武器は取り返せなくなるのだが、Xbox 360版のみ、唯一どうしてもこれだけは今でも「何故だったんだ……」という非道な出来事があった。それは、ラッシュが最初に出会うアスラムの侯爵ダヴィッドが、Mサイズの片手剣キャラでありながら、Lサイズの氷の剣を欲しがるというもの。うっかり氷の剣を渡してしまうと、ダヴィッドがこれまで片手剣で覚えてきたウェポンアーツが全て使えなくなるという、1周目ではほぼ誰もが味わうことになる罠だった(なおPC版以降、ダヴィッドは氷の剣を欲しがらなくなったため、この罠はXbox 360版でしか味わえない)。

侯爵ダヴィッド(※画像はXbox Marketplaceより)

 しかもこのタイミングがゲーム中盤から終盤に差し掛かり、育成もいよいよ最後を見据えて本格的になってくるようなタイミングのため、ダヴィッドに氷の剣を渡したが故に、強力な仲間だったダヴィッドを二軍落ちさせるしかない、というプレーヤーもいたはず。筆者もXbox 360当時、パーティに6名まで入れられるユニークリーダーから、そっとダヴィッドを外したひとりである。PC版以降はパーティ全員をユニークリーダーにすることができるようになったため、この制限を知らないファンもいると思うが、Xbox 360版は色々制約が多かった。

 ちなみに、Xbox 360版をプレイした人にはぜひ当時の最終6名のユニークリーダーを聞いてみたいところだ。筆者はラッシュ(物理特化)、ボルソン、トルガル、パグズ、エミー/エマ、イリーナという、1周目は比較的平凡なユニオンに終わったのだが、2周目以降はゴール公やイェーガー、ホーワンゲールなども加えており、ラッシュは2周目以降ずっと術法特化で育てている。PC版、PS4版などでも弊ユニオンのラッシュは全て術法特化だ。これは単純に他のユニークリーダーで使いたいキャラクターが圧倒的に物理型が多いので、バランスを取るために術法特化にしているのだが、「我が家のラッシュは絶対にこれ!」というような「あなたのおうちのラッシュくん」も、合わせて尋ねてみたい。

キャラクターデザインや街の雰囲気、音楽も最高だった

 当時から「一風変わった尖ったRPG」とされていた本作だが、その最たるところは音楽だ。関戸剛氏をメインコンポーザーに据えた音楽はロックが中心となっている。特に本作で長く聞くことになるバトル音楽はいずれも完成度の高いロックで、14年経った今でも筆者は気分を上げたい時は本作のサントラを聞いているくらい、とにかくバトル曲がかっこいい。

 ボス戦や戦闘中のモラルの上下で使われている「Clash of Opposites」や「Struggle Eternal」、「Reversal!」の熱いギターの唸りも最高だが、屋外でのノーマルバトル曲は「Sword Sparks」、屋内(主にダンジョン)でのノーマルバトル曲は「Flamedrop」に変わるなどの仕掛けも面白く、そして前述の2時間戦ったボスの一画である地獄門戦の「The Gates of Hell」や七人衆戦の「Press to Victory」などの曲らは、もはや「親の声より聞いたバトル曲」である(トラウマ曲とも言う)。

 なお、これらの楽曲はいずれも特にギター演奏家としても名高い関戸氏が自らギターを弾いている。ぜひサントラを持っている人は、改めて関戸氏のギターにも注目して聞き返してもらいたい。

【『THE LAST REMNANT Remastered』バトル紹介映像】
1曲目が「Struggle Eternal」、1分13秒頃より流れる2曲目が「Clash of Opposites」だ

 直良氏が描くキャラクターも素晴らしく、本作の重厚な世界観にピッタリだった。そして各街にはレムナントという世界各地に存在する謎の物体があり、不思議な力で周辺にある自然や人々に何らかの影響を与えている。このレムナントのデザインなども非常に心を惹かれるものとなっており、「これもレムナント……?」というような物も多々存在して、ゲーム中全く飽きることなく世界探索を楽しむことができた。

リマスター版で新たに描かれたイラスト

 Xbox 360版発売当時は制限も多く、決してスマートにいかない部分も多かった本作だが、その不満も乗り越えるほど面白いのが「ラスト レムナント」。実際、Steamで発売されて以降、Steamでの評価は非常に高い(現在、Steamでは購入不可)。PS4にSwitch、Androidと遊べるハードも増えてきたので、まだまだ新たにプレイをする人が増えてくれると嬉しい。

 クセが強いからこそ、読者にも「確かにJRPGの中でも最高の1本のうちのひとつかもしれない」と思ってもらえる可能性があるタイトルだ。こんな話をしていたら筆者も再び「ラスト レムナント」に触れたくなってきた。これを機会にまた遊んでみようと思う。

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