【特別企画】

「奇々怪界」が今月で稼働37周年! 巫女の小夜ちゃんが妖怪退治に挑む、名作アクションの魅力を振り返る

【奇々怪界】

1986年10月 稼働開始

 タイトーが開発、発売したアーケードゲーム「奇々怪界」が、1986年10月の稼働開始から今月で37周年を迎えた。

 本作はヒロインの巫女・小夜ちゃんを操作して、御札と御祓い棒の2種類の武器で敵の妖怪を倒していくアクションゲーム。妖怪にさらわれた七福神を助け出すというストーリーで、各ステージの最後に出現する巨大なボス妖怪を倒せばステージクリアとなる(※8面のみボスは出現しない)。1周全8ステージで、1周クリアするとエンディングを経て2周目に突入する。

 以下、女の子を主人公としたゲームがまだ珍しい時代(あくまで筆者の主観だが)に登場した、本作独特の面白さと魅力を改めて振り返ってみよう。

※写真はEGRETII mini版(以下同)

手強い妖怪たちを倒すと気分爽快。隠しアイテムの使い方も攻略の重要ポイント

 本作の最大の特徴は、小夜ちゃんだけでなく、一反木綿に似たオバケの「プカプカ」や、何度倒しても蘇ってくる骸骨の「がらこつ」、足の生えた鯛の「走り鯛」など、敵の妖怪たちも可愛らしく描かれているところにある。巨大なボス妖怪は「可愛い」とは言えないかもしれないが、恐怖感よりも親近感がわくコミカルなキャラクターデザインに加え、お堂や鳥居、灯籠、地蔵などが描かれた和風のマップデザインも実に素晴らしい。

 シューティングゲームのショットと同様に連射ができる飛び道具の御札と、接近した敵を吹っ飛ばせる御祓い棒による、攻撃時の爽快感の高さも本作の大きな魅力だ。本作は、ステージが進むにつれてどんどん難しくなり、1周クリアするのはけっして簡単ではない。だが、手強い分だけ難敵を倒したときの達成感がさらに増しているとも言えるだろう。

 アイテムを利用した攻略パターン作りも、本作の面白いところだ。本作は、赤く光る灯籠に向かって御祓い棒を振るか、敵の「お玉」を全滅させると御札のパワーアップアイテムが出現する。また、特定の地点を撃つと御札のパワーアップアイテムのほか、水晶玉が出現することもある。

 水晶玉は青、黄色の2種類があり、青色の水晶玉は、使用すると敵の動きを数秒間ストップさせる効果が、黄色の水晶玉は画面上の敵をすべて消し去る効果があるので、これらを利用すれば終盤ステージの難所もかなり楽に戦えるのだ(※ただし、対ボス戦では使用できない)。

 また、一部のボスには安全地帯があるので、いかにして敵の死角を突くかという、スクロールが止まって固定画面方式となる対ボス戦ならではの攻略パターンを作るのもこれまた楽しかった。

赤い御札を取ると、敵を貫通する効果が加わる
灯籠から青の水晶玉が出現したところ
黄色の水晶玉を使うと、画面内の敵を一掃することができる
当時のプレーヤー間で有名だった2面ボス「雷電王」の安全地帯。ここにいれば、なぜか小夜ちゃんは死なない

プレーヤーの意表を突くストーリーと、こだわりの演出も必見

 前述したように、本作は小夜ちゃんが七福神を救出するために妖怪と戦うストーリーであり、各ステージのボスを倒すと七福神が1体ずつ出現して小夜ちゃんを祝福する演出がある。

 その名のとおり七福神は全7体なので、本来ならば7面をクリアしたところで1周クリアとなるのが自然だろう。ところが本作では、7面でおしまいと見せ掛けて、実はクライマックスとなる8面が登場する。8面は、これまでのステージとは違ってボスキャラこそ出現しないが、ザコ敵が次から次へとひっきりなしに出て来るのでかなり難しい。しかも、クリアするためには特定の位置に隠されたアイテム(巻物)を3個取ることが必要で、すべてのアイテムが見付かるまでの間は、同じマップ上を堂々巡りさせられるのが実につらい。

 筆者は、8面に進む演出を友人がプレイ中に初めて見たが、「続きがあったのか!」と意表を突かれ、かつ面白い演出だなあと思ったことを今でもよく覚えている。

7面をクリアし、七福神がそろってハッピーエンドと思いきや、実は8面が存在するサプライズ演出があるのも本作の面白いところだ

 御祓い棒を使用中のアニメーションなど、小夜ちゃんのアクションはとても可愛らしく描かれているが、とりわけビジュアル面で凝っているのが、実はミスをしたときの演出である。

 小夜ちゃんの「やられパターン」のうち、最も出現頻度が高いのは、敵や敵弾に触れたときにその場でクルクル回りながら倒れるアニメーションだが、ほかにも多数のバリエーション存在する。水中や谷底に落ちたときの「やられパターン」はそれぞれ異なり、さらに特定の敵に触れた場合にのみ見られる、特殊なアニメーションやSE(効果音)が流れる「やられパターン」もわざわざ用意している。豊富な「やられパターン」の存在も小夜ちゃん、すなわち本作の楽しさをより高めているように思えてならない。

 本作の続編は、アーケードではまったく発売されなかったが、1987年にファミコンのディスクシステム用ソフト「奇々怪界 怒涛編」が発売されたのを皮切りに、PCエンジンやスーパーファミコンなどで移植または続編が発売され、アーケードゲームは遊ばないプレーヤーにも、小夜ちゃんの存在は広く知られることとなった。

 なお本作は、現在でもPS4とNintendo Switchで配信中のアーケードアーカイブス版、または「EGRETII mini(イーグレットツー ミニ)」で遊ぶことができる。また昨年には、ナツメアタリが新作「奇々怪界 黒マントの謎」を配信したのも記憶に新しい。

 可愛らしい巫女と妖怪たちが登場し、御札や御祓い棒を駆使して妖怪退治をする、本作ならではの面白さは、稼働開始から37年が経過した今もなお色あせない。

【豊富なやられパターンも必見】
ミスした際も多彩なアクション(?)を披露する小夜ちゃん。写真のほかにも、やられパターンのバリエーションが実は存在する