【特別企画】
本日は「GANTZ」第1巻発売から23周年!
2023年12月11日 00:00
本作最大の謎である黒い球体“ガンツ”――はたしてその目的は? いったい誰が作ったのか?
死者を部屋へ転送し、現代科学の枠を越えた武器を与え、そして星人との戦いに強制的に送り出す――。本作最大の謎は、この黒い球体“ガンツ”がどのようにして作られ、何を目的にしているか、という点に尽きるだろう。ここではガンツの機能や、ミッションと呼ばれる星人との殺し合いについてのルールなどを説明する。
ミッションが始まる直前に参加者はガンツのある部屋に転送される。この転送は強制的に行なわれ、例え参加者が日常生活を送っていようが何をしていようが問答無用だ。多くの場合、まず前ミッションの生き残りメンバーが、次いで直近に何らかの理由で死亡した者が新規参加者として転送されてくる。その際、死亡時のケガなどは治った状態で転送される。
ガンツのある部屋はドアや窓に触れることができず、外へ出ることもできないが、窓から東京タワーが見えており、場所が都内のどこかということがわかる。そしてしばらくするとガンツが起動し(※)、ミッションの討伐対象である星人の情報が球体表面に表示される。しかしその情報はまるで幼児が書いたような稚拙な文章で、あまり参考に出来ないものがほとんどだ。
※起動時には地域ごとのテーマソング(?)が流れる。東京チームのガンツからは“ラジオ体操の歌”、大阪チームは“吉本新喜劇のオープニング曲”が、「GANTZ:E」では“佐渡おけさ”が流れる。
標的のデータが表示されたあとは、ガンツ本体から武器やスーツの入ったラックが飛び出してくる。物理的にガンツの内部に収まるような数や大きさではないのだが、その原理は一切不明だ。その後参加者は星人との戦いの場へと順次転送されていく。武器を持って転送されればミッションでそれらを使用できるが、そうでない場合は丸腰で戦わなければならない。
戦闘場所は1キロメートル四方の範囲が設定されている。範囲から外れると警告音が鳴り、そのまま留まると頭部に埋め込まれた爆弾が爆発、死亡に至る。またミッション中は一般人に対して星人やメンバーの姿、音声などは感知されないが、物理的な影響は及ぶ。何らかの理由でミッションの存在を一般人に知られてしまった場合、その原因となった人物はこれまた死亡してしまう。
標的を全滅させる、もしくは制限時間が過ぎるとガンツ部屋に転送が始まり帰還できる。その際ケガは修復されて部屋に返され、例え手足がもがれたり致命傷を負っていた場合でも、生きている限りは五体満足の状態で再生される。
生き残ったメンバー全員の転送が終了すると、ガンツによる採点が始まる(※)。ただし星人を殲滅できなかった場合は加点されず、それまでのミッションで獲得した得点も0に戻される。さらに、次回のミッションで獲得点数に下限が設けられ、達成できない場合は死亡するといった厳しい条件が追加されてしまう。
※……ガンツの名前の由来は、石森章太郎原作のTV特撮番組「がんばれ!!ロボコン」に登場するガンツ先生が採点する様子との類似点から。ただしこの呼び名は東京チームのもので、大阪チームは黒い球体を“黒アメちゃん”などと呼んでいる。
採点が終わると部屋から出られるようになり、日常生活に戻ることが可能になる。その際スーツや武器を持ち出すこともできるが、それらの装備を一般人に認識されると死亡してしまう。また次回ミッションの開始時にそれらを装備/所持しないまま転送されてしまうと、補充されることがない丸腰状態でミッションが開始される。
こうして改めてみてみると、いくら高得点で死者を再生することが可能とはいえども、かなり厳しい条件下での戦いを強いられていることがわかるだろう。たとえ制限時間いっぱい逃げ回って生き延びたとしても、やがてはクリア条件が厳しくなっていくので、いつかは自身で星人を討伐しなければ死亡するようになっている。
なお、ミッションで100点獲得した場合は以下の3つの報酬から1つだけ選択することができる。
1. 記憶を消されて解放される
2. より強力な武器を入手できる
3. メモリーの中から人間を再生する
1はガンツやミッションについて、メンバーたちの記憶などを消去され、以後ガンツ部屋に転送されることなく日常生活を送ることができるようになる。2はZガンやハードスーツ、はては数10メートルにも及ぶ巨大なロボットなど、初期に与えられるものよりはるかに強力な装備を得ることができる。
そして3は、ガンツのメモリー内に存在する人物のデータから人間を再生することができる。ここで重要なのは、あくまでもメモリー内の人物を再生することが可能というだけであり、その人物の生死は特に問われないということだ。つまり、その人物が生きていようが死んでいようが問題なく再生することが可能となっている。このため、カタストロフィ編ではレイカが玄野を再生した結果、かつての岸本と同様に本来の玄野とレイカによって再生された玄野の、2人の玄野が同時に存在することになってしまう。
ガンツは1つのみが存在しているわけではなく、大阪や日本各地をはじめ、世界各国に同様の黒い球体が多数存在している。実はこの球体はドイツの大企業マイエルバッハが製造したもので、星人との戦いは政治家や俳優、王族など各国の有力な会員に中継され賭博の対象になっている、というのだ。マイエルバッハの会長ベルンシュタインは、ある日を境にそれまで喋れなかった娘が発し始めた数字の羅列を解読、それに従って黒い球体や各種武器を製造した。しかしどのような存在が娘にメッセージの数列を送ったのかは、ベルンシュタインにもわかっていないようである。
ガンツ本体は桜井や坂田の透視でも内部を窺うことができず、Xガンなどでの攻撃も無効化する。また内部には体毛のない全裸の男性が、生命維持装置に繋がれ膝を抱えた状態で入り込んでいる。どうやらこの男性がガンツを操っているようなのだが、意識がなく直接意思を疎通することができない。ただしガンツのインターフェイスを通してのやりとりは可能だ。
玄野たちガンツ部屋に囚われたメンバーは、これら現代科学を超越した武器や防具を駆使し、謎の星人たちと人知れず戦うことになる。この「日常に未知のオーバーテクノロジーが紛れ込む」という設定は、「GANTZ」に続く奥浩哉氏の作品「いぬやしき」、「GIGANT」でも共通したものとなっている。
作中に登場する主要武器
標準装備としてガンツスーツ、コントローラー、Xガン、Xショットガン、Yガン、ガンツソードがある。それ以外のものは100点と引き替えに入手することができる。
・ ガンツスーツ
名前の書かれたアタッシェケースに収納されている、黒いボディスーツ。防御力と身体能力を飛躍的に高め、このスーツを装備してミッションに参加できるかどうかが生死を分ける重要な分岐点となる。非常に強靱だが、ある程度の耐久力を越えるとスーツ各部の丸いパーツからゲル状の物質が漏出し、高い防御力が機能しなくなってしまう。
・ Xガン
太い円筒とグリップが組み合わされた拳銃サイズの銃。撃った対象を内部から爆発させるが、着弾から数秒のタイムラグが存在する。「ギョーン、ギョーン」という独特な発射音が特徴。強化版として長い銃身とスコープ、ストック部分を備えたXショットガンも存在する。
・ Yガン
標的を捕獲・転送させるための銃。3つの銃口からアンカーが発射され、それらを結ぶ形で3角形のラインを形成し飛翔。相手に絡みついて地面に固定し、その後メンバーの転送と同様に“上”へ向かって転送が始まり、対象をその場から消失させる。殺傷能力がないため、加藤が好んで使用する。
・ コントローラー
腕に装着する端末で、敵の位置を表示するレーダー機能に加え、残り制限時間や戦闘エリアの表示機能を持つ。さらにステルス機能によって、他のメンバーや星人たちからも姿を消し去る機能を搭載している。
・ ガンツソード
非常に切れ味の鋭い片刃の刀剣。通常時は柄と鍔だけだが、使用時には数メートルも刀身の長さを伸ばすことが可能。
・ Zガン
100点を獲得した際に入手できる追加装備。発射すると対象の頭上に高圧エネルギーが発生し、地面に向かって対象を瞬時に圧壊する。撃たれた後の地面はまるで円盤状に掘削されたかのような跡が残る。銃としては最強の破壊力を誇るが、強力な星人の場合圧壊に耐えるものも存在する。
・ ハードスーツ
Zガンと同じ追加装備で、全高数メートルのパワードスーツ。身長に比べて腕が非常に長いのが特長。ジェット噴射でパンチの威力を増幅させることができ、肘には鋭利なブレードを装着している。さらに掌からレーザーを発射する機能を備える。腕部のみを転送してガンツスーツの上から装着するなど、特定の部位だけで運用することも可能となっている。
日常に潜み、人知れず勢力を拡大する“星人”たち。ミッションの標的となる彼らの正体はいったい何者?
星人は、ミッションの標的に指定される生命体の総称だ。ガンツから“○○星人”と名付けられているが、悪ふざけ的な名前の付け方がされており、名称からその特長を推し量ることは難しい。そのほとんどが人間以上の生命力、身体能力を有しており、ガンツスーツや各種武器で立ち向かわない限り太刀打ちすることすら難しい。
一般人から姿を隠すために透明化していたり、擬態してその存在を公にしないようにして、普段は静かに暮らしている星人が多い。そのような者からすれば(強制されたとはいえ)、ガンツメンバーの方こそが彼らの生活を脅かす侵略者になる、という点には留意したい。ただし中盤以降は、オニ星人や大阪編の妖怪のように、姿が見え一般人へ無差別に襲いかかる星人も登場するようになる。
星人は人間や仏像、彫刻など普段見慣れたものに擬態している。しかしその正体は地球上の生命体とはまったく異質の生命体であり、通常時の外見からはかけ離れた真の姿と能力を隠している者がほとんどだ(※)。
※……例えば田中星人は人型の外装を纏っているが、内部には粘液にまみれた鳥のような生物が入っている。またあばれんぼう星人・おこりんぼう星人編のボスである千手観音の正体は、まるで映画「エイリアン」(1979)に登場するゼノモーフのような外見の生命体だった
本作に登場する代表的な星人
・ 田中星人
生命維持装置を兼用した、人間のような外装を纏っている鳥形の星人。しかしその外見は安っぽく、一目で違和感を覚えるような出来になっている。口から超音波を発することができ、その破壊力は数度でガンツスーツを破壊するほど。ボスは外装を纏っておらず、口に生命維持装置をくわえている。
・ あばれんぼう星人・おこりんぼう星人
仏像に擬態して寺院に潜んでいる星人。いくつかの種類があり、金剛力士像型のあばれんぼう星人・おこりんぼう星人、通常の仏像型の仏像星人、巨大な大仏型の大仏星人、そして四天王星人などが存在する。ボスは千手観音像に擬態しており、レーザーや強力な酸、鋭利な刃物などを所持している。また身体の破損を逆行させて修復することが可能。非常に手強く、玄野以外のミッション参加者が全滅した。同一個体かは不明だが、スピンオフマンガ「GANTZ:E」ではさらに強力になった千手観音が登場している。
・ かっぺ星人
田舎の子どもを戯画化したような。麦わら帽子にタンクトップ、半ズボン姿の人型の星人。恐竜型星人のリーダー的存在で、通常時は弱いが攻撃を受けるたびに巨大化して強くなる。恐竜型星人はラプトルサン、トリケラサン、チラノサンなどが存在。ボスのブラキオサンは首や尾を破壊しても再生し、長い首を鞭のように振り回す。また身体のどの部分にも眼球を生成できるため、死角が存在しない。
・ オニ星人
人間の男性に擬態した星人で、知能が高く言語による意思の疎通が可能。社会的な集団を形成して暮らしており、ガンツメンバーのこともある程度把握している。幹部格のオニ星人は炎を操る者、象や巨大なハエに変身する者、身体を岩石のように変え硬質化する者などが存在する。ボスのオニ星人は身の丈3メートルはある巨人で、圧倒的なスピードとパワーに加え、地面をえぐり取るほどの強力な雷を操る。どの個体もそれまでの星人に比べてはるかに強く、終始ガンツメンバーを圧倒した。
・ ぬらりひょん
大阪編で登場する、妖怪に擬態した星人。お歯黒べったり、牛鬼、ろくろ首、泥田坊など昔話に登場するお馴染みの妖怪たちの姿をしているが、烏帽子の下に突起状の口を隠し中から触手が飛び出すなど、実際は外見を模しているだけのようである。幹部格の天狗・犬神は非常に強力で、Zガンの連射を何度も耐えしのいだ。ボスのぬらりひょんは驚異的な再生力と学習能力を持ち、次々と形態を変化させる。弱点は意識外からの攻撃のみで、不意打ちなどで全身を一度に破壊しない限り、肉片からでも再生してしまう。ファンの間では作中最強格の星人との呼び声も高く、1体で100点という高得点だった。
・ 巨人族
カタストロフィ編に登場した、巨大な人型種族。形態は人間に酷似しているが10数メートルの巨体で、目と鼻孔は4つあり、指が6本ある。ガンツに匹敵するレベルの超科学文明を有しており、巨大宇宙船で全世界に飛来しアメリカや中国を壊滅させた。彼らが以前住んでいた星系は何世代も前に滅んでおり、移住先として地球を選びやって来た。宇宙船の内部は空間圧縮装置によって見た目よりもはるかに広大となっており、その圧倒的な科学力で地球を蹂躙、人類を滅亡寸前まで追い込んだ。
広がり続ける「GANTZ」ワールド。スピンオフ作品やメディアミックスは今なお展開中!
先に述べた通り、現在週刊ヤングジャンプ誌で連載中の「GANTZ:E」をはじめ、本作にはいくつものスピンオフやメディアミックス作品が存在している。ここではそれら作品を紹介する。
・ 「GANTZ:G」(マンガ)
修学旅行に向かう途中、主人公・黒名蛍たちの乗るバスが事故で転落。気付くと彼女たちは背甲の教室におり、そこには謎の黒い玉が……。「GANTZ」本編とは別のチームを描いた本作では、新規参加者が全員女性となっている。原作:奥浩哉、脚本:大崎知仁、作画:イイヅカケイタ ミラクルジャンプ掲載で全3巻
・ 「GANTZ/MINUS」(小説)
玄野がガンツ部屋に転送される前の、「GANTZ」前日譚となる小説。本編以前の西や和泉たちの姿が描かれている。ストーリー原案:奥浩哉 、小説: 日下部匡俊 、イラスト:コザキユースケ 全1巻
・ 「GANTZ/EXA」(小説)
ノベライズ第2弾。本作オリジナルの主人公ナガトモと「GANTZ」本編に登場した岸本恵を中心に展開する新たな物語。本編とは異なる世界線の物語であり、玄野や加藤も登場している。原作:奥浩哉、原案・構成:平山夢明、小説:真藤順丈、イラスト:緒方剛志 全1巻
・ 「GANTZ/OSAKA」(マンガ)
「GANTZ」大阪編に前編加筆修正を施した、雑誌サイズのB5版愛蔵版コミックス。大阪チームの視点から描かれた50ページの追加エピソードが描き下ろされている。全3巻
・ 「GANTZ:E」(マンガ)
“もし江戸時代にガンツが存在したら”という発想のもとに展開する、現在連載中のコミック。江戸に出現する星人たちと、超科学の武器で戦う武士や農民たちを描いている。原作:奥浩哉、作画:花月仁。週刊ヤングジャンプ連載中。既刊6巻。
・ 「GANTZ」、「GANTZ PERFECT ANSWER」(実写映画)
2011年に公開されたアクション映画。玄野や加藤が大学生になり、本作オリジナルのキャラクターが登場するなど、マンガ「GANTZ」本編とは異なる展開を見せる。玄野役に嵐の二宮和也さん、加藤役に松山ケンイチさん、岸本役に夏菜さんと、キャスティングも話題を呼んだ。
・ 「GANTZ ~the first stage~」、「GANTZ ~the 2nd stage~」(TVアニメ)
2004年に放映されたTVアニメ。第1期がフジテレビ、第2期がAT-Xで放送された。ネギ星人~仏像星人までと、アニメオリジナルの玄野星人編で構成されている。全24話。DVD版ではストーリーが補完され、全26話となっている。
・ 「GANTZ:O」(劇場版アニメ)
2016年に公開されたフル3DのCGアニメ映画。マンガ本編の大阪編を中心に展開する。主人公の加藤は今回が初のミッションになっているなど、大阪編単体でストーリーが収まるように描かれている。
・ GANTZ THE GAME(PS2用ゲーム)
原作マンガを題材とした3Dアクションゲーム。主人公玄野を操作し、“ヒーローレヘル”、“リーダーレベル”を上げて仲間と星人たちを倒していく。メーカー:コナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)、機種:PlayStation2、2005年3月17日発売。
23年が経った現在でも、なお色褪せぬ面白さ。SFマインドを刺激し続ける傑作を読み逃すな!
今回の記事執筆に当たって、久しぶりに「GANTZ」を全巻通読してみた。相変わらず面白く、連載開始より23年も経過している現在に読んでみても、その魅力はまったく色褪せていない。……というより、本作は筆者の中ではいまだに“現役のマンガ”であって、連載開始よりすでに23年もの月日が経過していたという事実に、改めて軽い驚きを感じたほどだ。
人工授精や世界的なネットワーク(インターネット)、AIにVR(バーチャルリアリティ)など、かつてはSF小説の中にしか存在しなかったものが次々と実用化され、現代の生活に溶け込んでいる。“現実が空想に追いついた”と言われる現在において、SFというジャンルの作品は時間と共にあっという間に陳腐化してしまうものだ。だが、この「GANTZ」は奥浩哉氏の卓越した発想と描写力によって、今も変わらぬ魅力を放ち続けている。
前述の通り、本作はスピンオフ作品が今もなお展開中だ。また本作に登場するガンツスーツのデザインは特に評価が高く、フィギュア化やスマホゲームのスキンとして登場するなどのコラボも行なわれている。コスプレイヤーにも人気で、コミケやコスプレイベントでは現在でもあの黒いコスチュームを見かけることは少なくない。
これから10年後、20年後も“傑作SFコミック”という不動の評価を受け続けるであろう、SFコミックの傑作「GANTZ」。未読の人は、これを機にぜひ手に取ってみることを強くお勧めする。
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