【特別企画】

小宇宙(コスモ)を燃やせ! 9月10日は「聖闘士星矢」コミックス第1巻が1986年に発売された日!

【「聖闘士星矢」コミックス1巻】

1986年9月10日 発売

コミックス1巻表紙

 「ペガサス流星拳!」、ある世代の人達は誰もがこの必殺技を真似しただろう。9月10日は車田正美氏のマンガ「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」コミックスの第1巻が1986年に発売され、今年で37年目にあたる。この機会に作品の面白さを再確認したい。

 集英社の週刊少年ジャンプにて連載されていた「聖闘士星矢」は、1980年代の"現代"を舞台に、神話の時代から受け継がれる「聖衣(クロス)」を纏って戦う戦士達の物語だ。主人公・ペガサス星矢達は現代に転生した女神・アテナを守り、強大な敵と激しい戦いを繰り広げていく。

 「聖闘士星矢」はコミックスの人気に加え、アニメ化でその人気を爆発させた。「小宇宙(コスモ)を燃やして原子を砕く」、「聖闘士(セイント)に同じ技は二度と通用しない」などのフレーズは当時の少年達の心を震えさせた。そして星占いの12星座で、「獅子座や射手座、水瓶座は勝ち組」、「蟹座や魚座はいまいち」といった、独特の「星座カースト」を生み出し、多くの少年達に影響を与えた一面もある。それは「聖闘士星矢」が間違いなく名作だったからである。作品の魅力を今一度振り返ろう。

聖闘士、聖衣、そして黄金聖闘士! 当時の少年少女達を魅了した魅力的な要素の数々

 「聖闘士(セイント)」はこの世に邪悪がはびこるときかならずや現われるという希望の闘士だ。彼等は神話の時代、戦いの神でありながら守るための戦いに徹した女神アテナを守った。残忍な神アレス、巨人ギガース、大地を賭けポセイドンとも戦ったアテナを守り続けた、真の勇気と力を持った少年達だったという。

 少年達は武器を嫌うアテナを守るため己の肉体を武器とした。その拳は空を引き裂き、その蹴りは大地を割ったと言われている。そして彼らが纏うのが神話時代より受け継がれる「聖衣(クロス)」だ。聖闘士は聖衣を纏い、自身の中の内なる宇宙、「小宇宙(コスモ)」を燃やすことで、無限の力を発揮するのである。

主人公・ペガサス星矢。どんなときにもへこたれず勝利を掴む熱血少年だ。画像は「聖闘士星矢」公式ページからの引用

 「聖闘士星矢」は車田氏が少年少女に受け入れやすいように自身のサービス精神を最大限に発揮した作品と言える。聖衣という鎧を纏い、超常の力を発揮し、強大な敵を打ち破る聖闘士は男の子を夢中にさせた。主役級の聖闘士をはじめ、敵の聖闘士にも美形が多く、ギリシャ神話をベースとした世界観は女の子をも惹き込んだ。アニメ、玩具との連携も密接に行なわれ、大きな人気を集めたコンテンツとなり、現代でも続編や外伝、そしてフィギュアの商品が展開されている。

 なによりもやはり聖闘士と聖衣の設定が良かった。主人公・星矢は己の中に眠る小宇宙を燃やすことで、大岩をも砕き、その拳は音速を超える。そして聖衣を纏うことでその力はさらに上がるのだ。

星矢の必殺技「ペガサス流星拳」。一秒間に100発以上の音速の拳を放つ。聖闘士は小宇宙を燃やすことで超常の力を発揮するのだ

 聖衣にはそれぞれ"星座"が設定されており、星矢が纏うのは「ペガサスの聖衣」。オブジェ状態では金属が組み合わさったペガサスの模型のような形だが、パーツを外し変形させることで、鎧となるのだ。コミックスの巻末にはオブジェ状態から鎧へと変形するデザインが公開され、各聖闘士それぞれの聖衣とオブジェ状態を見ることができた。

 マンガではこれらの設定を丁寧に熱い物語に落とし込んでいる。星矢の戦いは聖衣の後継を巡る試験から、聖闘士同士が争う「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)編」へと展開していく。星矢は小柄な少年だが、小宇宙を燃やすことでカシウス、ベアー檄といった大きな体を持つ敵を撃破する。

コミックス巻末には聖衣の設定画が描かれる。オブジェ形態から身に纏う聖衣に変形する。星矢達主役級の聖闘士は物語が進む中で聖衣のデザインはアップデートされていった

 他の聖闘士が登場することで聖衣の個性化、特殊能力も描かれる。中国・廬山五老峰の大瀑布の底に眠っていた龍星座(ドラゴン)の聖衣は、全ての聖衣の中で最高の硬度を持った盾と、同じ硬度を持つ右拳が特徴であり、この聖衣を纏うドラゴン紫龍の拳は、星矢の聖衣を易々と損壊させる。また、アンドロメダ星座の聖衣の腕パーツには2つの鎖「星雲鎖(ネビュラチェーン)」が繋がれており、この鎖は防御本能を持っており、持ち主であるアンドロメダ瞬が意識せずとも動き、様々に変化し防御と攻撃を行なう。ヒドラ市が纏う海ヘビ星座の聖衣は猛毒を放つ牙を生やし、再生が可能だ。

最大の防御力を持つ盾と、同じ堅さの右拳を持つ龍星座の聖衣を纏うドラゴン紫龍
自己防衛本能を持つ星雲鎖を装備するアンドロメダ座の聖衣を纏うアンドロメダ瞬

 物語が展開していく中で特に大きく盛り上がったのが、「黄金聖闘士(ゴールドセイント)編」だ。星矢達は実は88の星座のうち最下級の青銅聖闘士(ブロンズセイント)であり、12人の黄金聖闘士はその最高位に君臨する。転生したアテナと共に聖域(サンクチュアリ)の陰謀を暴こうとするアテナと星矢達だったが、敵の罠にはまったアテナは倒れてしまう。彼女を救うには黄金聖闘士が守る12宮を12時間で突破しなければならない。

 何者かの陰謀により黄金聖闘士達はアテナを偽物だと思っており、星矢の行く手を阻む。彼等は聖闘士の最上位に君臨する者達であり、その拳は光速に匹敵する。本来は絶対かなわない敵だが、星矢達は小宇宙を燃やし、第6感をも超える「第七の感覚(セブンセンシズ)」に目覚めるという奇跡を起こし黄金聖闘士と戦いを繰り広げていく。

黄金の聖衣を纏う黄金聖闘士達。獅子座のアイオリアは人気の高いキャラだ

 「聖闘士星矢」ではこの黄金聖闘士の印象が非常に大きかった。彼等は黄金に光り輝く聖衣を纏い、その姿もキャラクター性も印象的だった。「黄金聖闘士編」は本作が最高潮に盛り上がった時期であり、アニメ化、ゲーム化、フィギュア化も波に乗りブームを作り上げた。

 一方で、作品外では「星座カースト」という独特の流れが生まれてしまった。12人の黄金聖闘士は印象的ではあったが、車田マンガの味付けとして、「カッコイイ」と「カッコワルイ」が如実に出ていた。星座占いで誰もが誕生日で星座で分類できる以上、小学生にとって自分を黄金聖闘士に当てはめ、他の子供と優劣を競うのは避けられなかったのだ。

 特に「蟹座」と「魚座」は純粋な悪役だったため不当な扱いを受け悔しい思いをした人は多かっただろう。それまでは「女の子っぽい」とからかわれた「乙女座」は黄金聖闘士の中でも最強格であり、一目置かれた。「双子座」、「水瓶座」もカッコ良かった。また黄金聖闘士の美形キャラクター達は女性にも人気を集めた。

最も神に近い男・処女宮のシャカ
蟹座のデスマスクは完全な悪役。当時の蟹座の少年は不当な思いをした子も多かった

 「聖闘士星矢」はアニメも大いに人気を集め、マンガが終了した後も、続編や外伝などが生まれた。しかし振り返ってみればこの「星座カースト」は子供社会への影響が大きかったのではないかと思う。原作を全く知らない子供達も「星座比べ」に巻き込まれ、原作に興味を持ったという人は少なくなかったと思うのだ。「聖闘士星矢」は間違いなく1つの時代を作り上げたコンテンツだった。

こちらは水瓶座のカミュ。黄金聖闘士の聖衣はどれもカッコ良かった

「聖闘士星矢」の人気を支え続けるフィギュア「聖闘士聖衣神話」

 「聖闘士星矢」は2023年4月に俳優の新田真剣佑さんが主演するハリウッド映画になるなど現代でも人気を得ている。その人気を支えている1つにBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部のフィギュア「聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)」がある。

 この商品は、「聖闘士星矢」アニメ版が放映されていた1980年代、アクションフィギュアに金属パーツを使用した聖衣をかぶせるという「聖闘士聖衣大系(セイントクロスシリーズ)」が元になっている。

 「聖闘士聖衣神話」は人気のキャラクターを数度もモチーフにしアップデートを重ね、フィギュアとしてのクオリティとプレイバリューを上げ続けている。最新商品は「聖闘士聖衣神話EX ライブラ童虎<リバイバル版>」、「聖闘士聖衣神話EX 女神アテナ&城戸沙織 -ディバインサーガプレミアムセット-」、そして「聖闘士聖衣神話 ペガサス星矢(初期青銅聖衣)<原作版>」である。原作コミック発売から37年目の現在、コミックス1巻に登場した聖衣を纏った星矢が商品化される、そういう力を持ったコンテンツなのだ。

【ライブラ童虎<リバイバル版>】
「聖闘士聖衣神話EX ライブラ童虎<リバイバル版>」、2024年2月発売予定、価格は24,200円
【女神アテナ&城戸沙織】
「聖闘士聖衣神話EX 女神アテナ&城戸沙織 -ディバインサーガプレミアムセット-」、2023年12月発売予定、価格は35,200円

 「聖闘士聖衣神話」の人気はやはり原作を非常に大事にした造型にある。まるでアニメからそのまま出てきたような再現度の高いフィギュア造型に、金属パーツを多用した聖衣。そしてこの聖衣は設定同様オブジェ形態に組み換え可能なのだ。星座もチーフという所は当時の原作を知らない人も興味を持つ。まさに車田氏の目標の通り、時代を超えて新しいファンを魅了し続けている。

【ペガサス星矢(初期青銅聖衣)<原作版>】
「聖闘士聖衣神話 ペガサス星矢(初期青銅聖衣)<原作版>」、2023年11月発売予定、価格は13,750円。TAMASHIINATION2023開催記念商品

 アテナに到っては、以前はBANDAI SPIRITSが苦手としていた美少女キャラクターの表現手法の向上がしっかり伝わってくる。シリーズが続いたからこそ到達できた造型となっている。実はこのシリーズは中国での人気が非常に高い。ヨーロッパ圏、北米圏でもファンを増やしており、今後も新商品や復刻商品が販売し続けられるだろう。

 「聖闘士星矢」は現代でもその魅力が語り継がれる作品である。筆者自身、今回改めて本作の面白さを確認できたと思う。筆者は今回紹介した黄金聖闘士編の後、「ポセイドン編」はもちろん、新しい物語を生み出すべく様々な試行錯誤のある「ハーデス編」も好きだ。聖闘士達の秀逸なキャラクター性があるからこそ、現代でもフィギュアが販売され、外伝や続編なども作られ、海外で実写作品が作られるのだろう。そのキャラクターと物語の魅力は世代を超えるパワーがある。

 だからこそ新たに興味をもった人にもやはり"原点"であるマンガ「聖闘士星矢」を読んで欲しい。今までこの作品を知らなかったような人も、物語を読んで自分の中の小宇宙を爆発させ、作品世界にのめり込んで欲しい。