【特別企画】
あの興奮の日々から36年。「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」の思い出を実機の画像とともに振り返る
2023年1月26日 00:00
- 【ドラゴンクエストII 悪霊の神々】
- 1987年1月26日発売
- メーカー:エニックス
- 価格:5,500円(税別)
- 対応機種:ファミリーコンピュータ
今から36年前の1987年1月26日、エニックス(現:スクウェア・エニックス)から「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」(以下、「ドラクエII」)がファミリーコンピュータ向けタイトルとして発売された。
本作はコマンド入力式RPGというジャンルをゲームファンの間に定着させた金字塔「ドラゴンクエスト」(1986年5月27日発売)の続編であり、それから約8カ月後という今ではちょっと考えられない早いスパンでの発売となった。
前作から100年後の物語を描いた続編にして、マップの大幅拡大やパーティシステムの導入、新たな移動手段「船」の追加など、RPGとしての完成度が大幅に高まり、発売日から店頭に行列ができる大ヒットとなり、その売上はファミコン版だけで240万本にも及んだという。筆者もそのうちの1本を手にしたリアルタイムのプレーヤーであり、今回この周年企画の執筆に手を上げさせていただいた次第だ。「ドラクエII」発売当時の思い出話に少しだけお付き合いいただければ幸いだ。
発売日の1987年1月26日は平日の月曜日。にもかかわらず店頭には大行列ができ、会社や学校を休んで買いに行った人も!
前作「ドラゴンクエスト」の興奮冷めやらない1986年10月、「週刊少年ジャンプ」の「ファミコン神拳奥義」の袋とじコーナーにて「ドラクエII」の発売が明らかにされた。この段階でパーティ制の導入やグラフィックスの向上、モンスターの種類が100種類(製品版では80種程度となった)いるなどの情報が発表され、筆者も含め前作に熱中したプレーヤーは大いに心が躍った。
発売日1987年1月26日は月曜日であり、学生だった筆者は買いに行くことができなかったのだが、「週末に買えるだろう」とたかをくくっていた。その判断が間違いだったことに気づくのは数日後のことで、当日は店頭に長い行列ができ、同級生の何人かが学校を休んで買いに行ったという話も耳にしていて、実際に週末の店頭には「ドラクエII」の姿はどこにもなく、しばらく悶々とする日が続いた。
その後無事購入することができたのだが、長い前置きの割にいつ頃にどうやって入手したのかはまったく覚えていなかったりする。同年4月に本作のラジオ特番がニッポン放送の「オールナイトニッポン」内で組まれていて、筆者はその番組をゲームクリアした段階で聴いていたので、2月か3月には入手していたのだと思う。
そんな大きな期待を込めてプレイした「ドラクエII」は、前作から何もかもが進化を遂げていた。ロゴと「II」の文字をあしらった盾が上下から現れる演出が施されたタイトル画面から、ゲーム画面の主人公をはじめとするキャラクターには上下左右を向くパターンが用意され、メニューのコマンドも8個から6個に減って遊びやすくなっているなど、触ってすぐに前作との違いを実感した。パーティシステムと新呪文の追加により戦闘時の戦略の幅が大きく広がり、モンスターも同様にパーティを組んで出現し手強くなっていた。
勇者ロトの血を引く3つの国の若者3人が集結し、世界を破滅させようとする大神官ハーゴンを倒すために旅に出る前作の100年後を描く物語は実にドラマチックで、それを盛り上げるサウンドに演出は筆者の特にお気に入りのポイントだ。
主人公が3人揃うとメインBGMの「遙かなる旅路」が「果てしなき世界」へと変化するのは斬新だったし、前作の舞台のアレフガルドに足を踏み入れると「広野を行く」(「ドラゴンクエスト」フィールドBGM)が流れてきたことに鳥肌が立った。
当時アイドルだった牧野アンナさんが歌ったタイアップソング「Love Song 探して」はゲーム冒頭の名前入れや復活の呪文入力画面で使われたが、ペルポイの町にいる「うたひめアンナ」に話しかけると、BGMが同曲に変わるのも粋な演出だ。この「ドラクエII」のサウンドは全体的に完成度が高く、シリーズのトップIIIに入ると個人的に思っている。
恐ろしく高いとされる難易度も、当時はそういうものだと受け入れて楽しんだ
前作と比較して難易度が高いとされる本作だが、筆者は純粋にそういうものだと認識して遊んでいた気もする。確かにムーンペタ周辺のマンドリルや大灯台のドラゴンフライ、ロンダルキアのドラゴンやブリザードなど、パーティシステムによる敵の群れの暴力的な強さは多くのプレーヤーにトラウマを植え付けたほどで、しかもエンカウント数がそれなりに多いから大変だ。
謎解きやダンジョンの構造なども前作と比較するとグッと難しくなっていて、特に「すいもんのカギ」を持つ「ラゴス」の居場所や、ロンダルキアの洞窟の落とし穴に悩まされた人は多いだろう。
筆者の場合、ラゴスはあまり苦労することなく偶然発見し、ロンダルキアの落とし穴は遠回りにはなるものの壁際を歩くことで落ちずに進めるルートをマッピングしながら見つけてクリアした記憶がある。
1つのタイトルに集中してプレイできた当時の境遇だったからこそ、高難易度という洗礼にも耐えられたのだろう。しかし、当時のブラウン管テレビに映し出される復活の呪文の誤字だけは自分の落ち度もあり、何度か苦渋を舐めることとなった記憶もある。
これだけのヒットを飛ばしたタイトルであるため、発売後の話題にも事欠かなかった。はぐれメタルが落とす「ふっかつのたま」や、メイジバピラスが落とす「ふしぎなぼうし」などのレアアイテムの存在がゲーム誌面や口コミで伝わり、それを入手するためにロンダルキアへと足を踏み入れるやり込みプレイは、今でいうハクスラに通じるプレイスタイルであった。
また、発売後しばらくして発見された復活の呪文「ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらぺぺぺ……」は、シリーズはもとより、ゲーム史上に残る“裏技”の1つである。
アイテムに関して個人的に思い出深いのは、ボツになってしまった「あぶないみずぎ」のエピソードだ。「あぶないみずぎ」はムーンブルクの王女専用の防具として超高額で売っていて、“防御力は1しかないが、フィールドでの王女が水着姿になる”という魅惑の(!?)アイテムだったが、容量の都合でボツとなり、その代わりに「ミンクのコート」が入ったというのだ(前述のラジオ特番での堀井雄二氏の発言より)。
この「あぶないみずぎ」に関しては、後にMSX版「ドラクエII」で別の形で入手できるイベントが追加され、続編の「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」では上記に近い仕様で登場し、以降シリーズの名物装備にもなった。
「ロト伝説」の2作目となった本作だが、翌1988年にはその完結編となる続編「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」が発売される。「ドラクエII」が100年後の未来の世界だったのに対し、この「ドラクエIII」は過去の世界を描いていたことも驚きの設定であった。同作の思い出もたくさんあるが、それはまた次の機会に述べることにしたい。
ちなみに本作を含めた三部作は、現在はリメイク版をNintendo Switchとプレイステーション 4、ニンテンドー3DS、スマートフォンでプレイすることが可能だ。発売から30年以上が経過した現在に新しい形で体験する「ロト三部作」は、当時からのファンには懐かしく、当時を知らないファンには新鮮な味わいとなるはず。ゲームの歴史を未来へと繋ぐ意味でも、ぜひ遊んでみていただきたいものだ。
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