【特別企画】
「メトロイド ドレッド」は「条件が揃ったから開発できた」。坂本賀勇氏Q&Aセッション
「開発チームと心をひとつに」。開発の経緯など多くを語る
2021年6月17日 22:00
- 10月8日 発売予定
- 価格:
- 7,678円(税込、パッケージ版)
- 7,600円(税込、ダウンロード版)
- 10,978円(税込、スペシャルエディション)
任天堂はE3 2021の中で、10月8日発売予定のNintendo Switch用2Dアクションゲーム「メトロイド ドレッド」についてのメディア向けイベントを開催した。イベントでは、プロデューサー坂本賀勇氏が本作について語るQ&Aセッションも行なわれた。
「メトロイド ドレッド」は、19年ぶりとなる2D「メトロイド」シリーズの最新作。シリーズおなじみの探索要素だけでなく、主人公サムスが謎のロボット「E.M.M.I.」に追われる恐怖も本作の大きなエッセンスとなっている。配信番組「Nintendo Direct | E3 2021」にて初公開され、その後の番組「Nintendo Treehouse: Live | E3 2021」にてプレイデモの様子も公開された。
また、坂本氏が開発の経緯やコンセプトについて語っている動画「メトロイド ドレッド Development History」も公開されている。メディアイベントでは動画内で触れている内容についても言及しつつ、現在の手応えなどを語っていった。
Mercury Steam Entertainmentとの出会いが最大の“条件”に
――「メトロイド ドレッド」のタイトル名は以前から噂にはなっていました。なぜここまで時間がかかったのでしょうか。
坂本氏:15年前からコンセプトはありました。ただ、当時の技術やハードウェアの能力に限界があったり、開発を進めていくための条件も揃わなかったりと、思い描いていたコンセプトどおりに上手くいかないなと。一度は開発をやりかけたのですが、そのままやめていました。
その後もチャンスはあったのですが、イメージ通りのものができなさそうなので、これもやめました。
大きな転換になったのは、ニンテンドー3DS「メトロイド サムス リターンズ」(2017年発売。「メトロイド2 RETURN OF SAMUS」のリメイク作)の開発を担当したMercury Steam Entertainmentとの出会いです。彼らは能力やセンスが優れていて、とてもいいチームでした。彼らと出会ったことで、ひとつの大きな目標に向かうことができました。なので、どちらかというと条件が整うまでに15年かかった、という感じです。
――なぜいま、このタイミングで2Dの「メトロイド」というスタイルになったのでしょうか?
坂本氏:2D「メトロイド」の次作は「メトロイド ドレッド」であるべきだと考えていました。Mercury Steam Entertainmentとの出会いもそうですし、任天堂のチームとのコミュニケーションも通じて、「今が作るべきときだ」となりました。繰り返しになるのですが、条件が揃ったわけです。
15年前というと、ニンテンドーDS時代かと思うのですが、その頃のハードウェアのスペックでは「メトロイド ドレッド」のコンセプト実現は難しいものがありました。その後ハードスペックは上がってきたのですが、今度は開発体制が整っていないなどが障害でした。Mercury Steam Entertainmentと出会って条件が揃うなかで、今みなさんに一番親しんでいただいているハードとしてNintendo Switchが選ばれたということです。
SA-Xの“追われる恐怖”をさらに拡大する
――今作のサムスの性格はどう描かれているのでしょうか?
坂本氏:プロフェッショナルに徹した寡黙な戦士、とのイメージで捉えていただければ間違いないと思います。
――「メトロイド ドレッド」のカットシーンについて教えてください。
坂本氏:「メトロイド サムスリターンズ」のとき、3Dのカットシーンと2Dのゲーム画面がシームレスにつながるようにすると表現として上手くいくことがわかりました。なので、「メトロイド ドレッド」でも様々な手法を使ってその場の状況や緊張感を描くようにしています。
また、今回はストーリーを大切にしています。その表現をするために、カットシーンは重要なポジションとして位置づけています。
――過去作の「メトロイド」シリーズからの影響はいかがでしょうか。
坂本氏:最も意識しているのは、GBA「メトロイド フュージョン」(2003年発売。シリーズ第4作)でのSA-Xとの遊びです。SA-Xはサムスを追跡するキャラクターですが、ここをもっと広げていきたいと考えました。
SA-Xの遊びの緊張感をより大きくして、本来の「メトロイド」のゲームデザインに上手く取り込めれば、多彩な刺激のある「メトロイド」になると思いました。ホラーというよりは、サムスが恐怖に見舞われてしまう、という状況です。彼女が恐怖に打ち勝って、前進する姿を描くための刺激として重要な要素になっています。
――若い世代には「メトロイド」シリーズをプレイしていない方もいると思います。どう考慮しましたか?
坂本氏:常に最高の「メトロイド」を作ろうとは考えていますが、今回はE.M.M.I.とのゲームパートがキーになっています。
今までの「メトロイド」とは少し違った刺激ですし、“追われる恐怖”は「メトロイド」を知らない方でも興味を持つのではないかと期待しています。
――「メトロイド」の新作を作りたいというモチベーションはどこから来るのでしょうか。また、「メトロイド ドレッド」を作る上で最もエキサイティングしたことは何でしょうか。
坂本氏:一番のモチベーションになっているのは、「最高のものを提供したい」と常々考えていることです。この目標は衰えることがありません。
エキサイティングなのは、長年描いてみたかったE.M.M.I.に関する部分のゲームプレイが、当時想像していた以上の状態でプレイできるようになっていることです。私自身も満足していますし、みなさんにもぜひ発売日に手にとって遊んでもらいたいと思っています。
「メトロイド ドレッド」はかなりの自信作!
――今作が「メトロイド」シリーズ5部作の最終章にあたるのでしょうか。
坂本氏:「メトロイド」シリーズでは、サムスとメトロイドの奇妙な運命、関係性といったものを描いてきました。そのストーリーが今回で一区切りになる、ということですね。
ただ、これで「メトロイド」シリーズが終わってしまうわけでもないし、それはみなさんも望んでいないことだと思います。もちろん我々も望んでいません(笑)。次に新しいエピソードとして何が来るか、楽しみにしていただければと思います。
――E.M.M.I.のストーカー的なふるまい、その最大のインスピレーションは何でしょうか。
坂本氏:具体的なインスピレーションは特にないのですが、SA-Xにも通じる“追いかけてくる強力な敵”を不気味に表現したかったんです。E.M.M.I.はロボットですが、ロボットの無慈悲で無機質な怖さ、感情を持たずに捕らえるためだけに動いている怖さを強調するためにあのようなデザインになっています。
――プロデューサーとして、どのように「メトロイド ドレッド」に関わったのでしょうか。
坂本氏:前作でもそうだったのですが、Mercury Steam Entertainmentと任天堂のチームは心を一つにしています。会社は違いますがワンチームとして、コミュニケーションしたり、一緒にアイデアを考えたり、良し悪しを見極めたりもしました。プロデューサーとしてだけでなく、クリエイティブな面でも私の役割を務めたと思います。
――15年前の最初のアイデアから変わった点はありますか?
坂本氏:コンセプト自体は変わってません。サムスを脅かす恐怖、追い詰めていく部分。何ら変わっていませんね。
――プレイするのに最適なモードはありますか?
坂本氏:お客様のスタイルに応じて、どう遊んでも快適になるようにしています。大画面でも、持ち歩いても、どちらでも変わりなく快適に遊べます。
――前作までで技術的に難しかったものが、「メトロイド ドレッド」で導入されたということはありますか?
坂本氏:あればよかった、というものはあるかもしれませんが、ひとつひとつのゲームはそれぞれで完結しています。タイトルごとに必要なものを作っていくことがゲームデザインでは正しいと思います。そういう意味では、「メトロイド ドレッド」では今作に最も必要なものを揃えています。
――最後にみなさんにメッセージをお願いします。
坂本氏:「メトロイド ドレッド」は我々としてはかなりの自信作です。多くのみなさんに手にとっていただいて、喜んでもらいたいと思っています。「メトロイド」を知らない方、若い世代の方に向けても、たとえば今作のオープニングを見ればどんな話だったのかがすべて入っています。むしろ、今作から「メトロイド」シリーズに入っていただいてもいいのかなと思っています。E.M.M.I.という新しいエッセンスも入っています。よろしくお願いします。