レビュー
「メトロイド ドレッド」レビュー
サムスとメトロイドの因縁がついに決着!? 恐怖を演出する最凶の敵も登場
2021年10月7日 00:00
- 【メトロイドドレッド】
- ジャンル:探索アクション
- 発売元:任天堂
- 開発元:任天堂、MercurySteam
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 発売日:10月8日
- 価格:
- ダウンロード版 7,600円(税込)
- パッケージ版 7,678円(税込)
- スペシャルエディションパッケージ版 10,978円(税込)
- スペシャルエディションダウンロード版 10,900円(税込)
任天堂が1986年よりシリーズ展開するアクションゲーム「メトロイド」は、今年2021年で発売から35周年を迎える。「メトロイド」はファミリーコンピュータのディスクシステムで発売され、アイテムによるパワーアップ型の探索アクションゲームとして、1つのジャンルを築いたタイトル。その35年目、最新作である「メトロイド ドレッド」が発売される。
「メトロイド ドレッド」では、迷路状になったサイドビューのマップを探索し、パワーアップアイテムを入手してその探索範囲を広げていくゲームシステムを従来のシリーズから継承しつつ、最新作ならではのスタイリッシュなアクションや新たなアビリティが追加されている。さらには、圧倒的な強さを持つ敵と対峙する恐怖を演出するなど、新しい手応えを感じられる内容となっている。
本稿では、シリーズで長く綴られてきた浮遊生命体「メトロイド」と主人公「サムス・アラン」との因縁に一区切りがつくという、そのストーリーにも注目が集まる本作の製品版プレイレビューをお届けしていく。
「メトロイド」シリーズ35周年を飾る、ナンバリング5作目の作品
この「メトロイド ドレッド」は、ナンバリングタイトルとしては5作目。ストーリー的な前作にあたる「メトロイド フュージョン」は2003年(北米では2002年)発売なので、実に約19年が経過している。その間、「メトロイドプライム」シリーズ(2003年〜)や「メトロイド Other M」(2010年)といった、サイドビュー視点ではないタイトルがリリースされてきているが、シリーズとして最も新しい作品はニンテンドー3DSで発売された「メトロイド サムスリターンズ」(2017年)となる。なお、「メトロイド サムスリターンズ」はサイドビュー視点のゲームボーイ「メトロイドII RETURN OF SAMUS」のリメイクだ。この「メトロイド ドレッド」でもそれを受け継ぐ形となっている。
今年のE3で披露されたティザー映像では、そのイントロで「METROID 5」の文字が掲げられ、ナンバリングタイトルであることをアピールしていた。シリーズは「メトロイド」、「メトロイドII」、「スーパーメトロイド」、「メトロイド フュージョン」、そしてこの「メトロイド ドレッド」という時系列でストーリーが描かれている。初期シリーズはゲーム中であまり詳しいストーリー描写はなかったが、本作の発売にあたり、任天堂の公式サイトにてあらすじとその開発エピソードが綴られているので、改めて目を通してみると、本作に至るまでの流れがわかるだろう。また各シリーズは以下の形で、現在も配信タイトルとしてプレイができるので、参考までにお知らせしておきたい。
「メトロイド」 (1986年)
・Nintendo Switch Online
・ニンテンドー3DSバーチャルコンソール
・Wii Uバーチャルコンソール
「メトロイドII」 (1992年)
・ニンテンドー3DSバーチャルコンソール
・リメイク版「メトロイド サムスリターンズ」
「スーパーメトロイド」 (1994年)
・Nintendo Switch Online
・ニンテンドー3DSバーチャルコンソール
・Wii Uバーチャルコンソール
「メトロイドフュージョン」 (2002年)
・Wii Uバーチャルコンソール
未知の惑星「ZDR」で襲撃されたサムスは、脱出のために最深部から地上へと向かう
前作となる「メトロイドフュージョン」で、恐るべき寄生擬態生物「X」に寄生され、その天敵であるメトロイドから精製されたワクチンによって一命を取り留め、「X」に対抗しうる体質を得るとともに、惑星SR388もろとも「X」を消滅させたサムス・アラン。本作では、「メトロイド フュージョン」で綴られたストーリーを踏まえ、消滅させたはずの「X」の存在を示す映像の真偽を確かめるためにサムスが惑星「ZDR」に向かうところから始まる。サムスはそこで鎧とアームキャノンを身に付けた謎の鳥人族に攻撃され、身に付けていたアビリティのほとんどを失ってしまう。サムスが目覚めるのはZDRの最深部であり、地上への生還を目指し、惑星内を探索していく。
操作は「メトロイド サムスリターンズ」に準じている。移動はLスティックにアサインされ、サムスを中心に全方向に撃てるフリーエイム(Lボタン+Lスティック)も備えている。武器は連射可能なビームと、強力だが弾数制限のあるミサイルを使い分け、敵の攻撃に対してタイミングよく繰り出す「メレーカウンター」や、立ち止まらずに地表の狭い通路をすり抜けられる「スライディング」といったアクションを最初の段階から行なえる。ドアで仕切られたサイドビューのエリアを行き来して敵と戦いながらマップを探索し、道中でアイテムを取ったり、特定の敵を倒したりすると、サムスのアビリティが戻り、探索範囲が広がっていくシリーズ恒例のゲームシステムはいうまでもなく健在だ。
その中でもメレーカウンターはかなり重要なアクションと言える。特定の敵が攻撃する瞬間に発するフラッシュに合わせてXボタンを押すと、衝撃波で敵を弾き返してスタンさせ、サムスがその敵に自動でアームキャノンを構える。そのまま撃てば倒せるわけだが、このとき倒した敵は普段よりもたくさんのアイテムをドロップするという特性を持っている。エネルギーやミサイルが減っているときに有効だが、タイミング次第でダメージを受けてしまうリスクがあるので、使うタイミングを見極める必要がある。アクションの選択肢としてはいいバランスで、決めるととにかく爽快だ。タイミングはそれほどシビアではないので、ゲームの序盤で練習しておくといいかと思う。
アクション全般は難しいものではないが、サムスがアビリティを得ることでアクションが増えていくので、操作は自ずと忙しくなっていく。ただ、マップにはアビリティ入手後に新アクションを使って進めるようなレベルデザインが施してあるので、アクションの使い方は理解できるはず。
また今回、マップの内容ががかなり詳細で、ドアなどがどのアビリティに対応しているのかが一目でわかるようになっている。新しいアビリティを身に付けたときに、マップの袋小路になった場所などをチェックしてみて、該当するアビリティを使う場所を見つけたら、そこに向かえば、新たな道が開けるというわけである。
それともうひとつ、サムスの能力に「エイオンアビリティ」というものが存在する。サムスが透明状態になる「ファントムクローク」、一定距離を超高速移動する「フラッシュシフト」などがエイオンアビリティで、この世界に存在する特殊なエネルギー「エイオン」を消費して、サムスに特別な力を持たせてくれるものだ。
エイオン自体は、エイオンアビリティを使っていない間にすぐに回復するが、上限があるので使うタイミングが重要になる。特に「ファントムクローク」は、次に触れる「E.M.M.I.」から逃れる手段として欠かせないもので、その使いどころが攻略で重要な要素のひとつとなっている。
マップ内を徘徊し、サムスを追跡するE.M.M.I.。接触すれば一巻の終わり!
本作を語る上で外せない「恐怖」を演出する存在が「E.M.M.I.」である。「E.M.M.I.(エミー、Extraplanetary Multiform Mobile Identifier=惑星外多形態機動調査機)」は本来サムスの敵ではなく、銀河連邦が調査のために惑星ZDRに送ったロボットで、機動性に優れ、宇宙で最も硬質とされる特殊素材で作られている。
サムスはZDRで消息不明となったE.M.M.I.と遭遇、容赦なく攻撃されたところからなんとか脱出し、以降このZDRの各所で、合計7体のE.M.M.I.に追われることとなるのだ。
E.M.M.I.はマップ上の「E.M.M.I.ゾーン」と呼ばれる区画を徘徊していて、そのエリアにサムスが入り込むと、センサーによって足音を検知し、発見すると猛スピードでサムスを追跡する。通常のサムスの装備でE.M.M.I.を破壊する手段はなく、接触するだけで捕獲されゲームオーバーとなってしまうのだ。これは今までの「メトロイド」シリーズでは考えられなかったゲームシステムで、E.M.M.I.が出現するエリアに足を踏み入れると同時に、プレーヤーを凄まじい緊張感と恐怖が襲うのである。
もちろん対抗手段はいくつか存在し、たとえば前述のファントムクローク。これを使って姿を消すと、E.M.M.I.のセンサーに検知されることがなくなり、やり過ごすことができる。ただしファントムクローク使用中はサムスの移動速度が下がり、アクションも限定され、効果時間も長くはないので、使いどころを見極めなければならない。ちなみにファントムクローク使用中でも、もし接触してしまったら結果は同じだ。
E.M.M.I.を倒すための手段はただ1つ、「オメガキャノン」を使った攻撃である。これはサムスがある手段をもって身に付ける一時的なパワーアップで、E.M.M.I.の装甲を破壊するほどの威力を持っている。このオメガキャノンをもってしても、段階を踏んでの攻撃が必要で、その間に捕獲されてしまう可能性ももちろんある。
そんなE.M.M.I.を7体も相手にしなければならない地獄のような展開にも思えるが、E.M.M.I.は「パトロール」、「サーチ」、「チェイス」の3段階のモードにより動いており、各モードの動きの法則を理解すれば回避しやすくなるし、マップの構造やファントムクロークの使い時などを理解できていればより有利に動ける。しかし、それでも捕獲されてしまうこともある。対応の難しさはかなり絶妙に設計されていて、「やられたけど次はいけそう」というモチベーションが続くぐらいのバランスだ。筆者も、このぐらいの手応えはアクションゲームの刺激としてとても気持ちがよかった。また「メトロイド」シリーズといえば、アイテム取得100%やクリアまでのタイムアタックといったやり込みがファンの間で恒例となっているが、E.M.M.I.がこの遊びにどう影響するのかも楽しみだったりする。
事前に公開されたプロデューサーの坂本賀勇氏による解説動画では、この「メトロイド ドレッド」でサムスとメトロイドのストーリーが一区切りされることが明らかにされている。筆者も初代からのファンとして少し残念な気持ちになっていたのだが、ゲーム本編は新旧要素を取り混ぜたツボを突く内容で、シリーズ35周年にふさわしいアクションゲームとして完成していた。既に存在しないと思われるメトロイドとサムスの因縁がこの後どう描かれるのか、ストーリー的にもかなり面白くなっているので、ファンならずともぜひプレイして、「メトロイド」シリーズのアニバーサリーを体感してほしい。
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