【特別企画】

劇場版中編アニメ「BURN THE WITCH」レビュー

「BLEACH」久保帯人が世界に放つ新たな物語!ドラゴンを相手に魔女コンビがロンドンを駆け抜ける!

【BURN THE WITCH】

10月2日より公開

2週間限定イベント上映&世界配信同日スタート

上映:新宿ピカデリーほか全国35館/松竹ODS事業室

配信:「Amazon Prime Video」・「ひかりTV」

 10月2日(金)にイベント上映・配信開始予定の劇場中編アニメーション「BURN THE WITCH」。今回、上映・配信に先駆け試写会で本作を視聴する機会を得たので、その魅力をお伝えしたい。

 「BURN THE WITCH」は、「BLEACH」の久保帯人氏が2018年8月「少年ジャンプ50周年記念号」で発表した読み切り短編。2020年3月に「BLEACH20周年記念プロジェクト」として、アニメ化と全4話でのシリーズ連載が発表された。そして、8月24日発売の「週刊少年ジャンプ」38号(集英社)で表紙&巻頭カラーによる短期集中連載が開始され(コミックス1巻は10月2日発売予定)、そのストーリーが中編アニメとして公開される。なお、原作漫画は「少年ジャンプ+」で1、2話と共に電子書籍版が期間限定無料公開中だ。

【アニメ『BURN THE WITCH』本PV②】

重く独特な世界観と今風な登場人物たち

 物語は、
「世界には表(フロント)があれば裏(リバース)がある。遥か昔からロンドンに於ける全死因の72%は、人々が見ることのできないドラゴンと呼ばれる“異形の存在”が関わっていた」
という、久保帯人氏らしいダークな世界観による「リバース・ロンドン」が舞台。

物語の中核となるドラゴンの存在

 そして、そのドラゴンの存在を見ることができるのは、フロント・ロンドンの“裏側”に拡がるリバース・ロンドンの住人だけだ。本作の主人公は、その中でも選ばれし「魔女(ウィッチ)/魔法使い(ウィザード)」。ドラゴンと直接接触する資格を持つ、自然ドラゴン保護管理機関「ウイング・バインド」(通称、WB)の保護官である「新橋のえる」と「ニニー・スパンコール」の魔女コンビだ。

主人公の魔女コンビ「新橋のえる」(写真左)と「ニニー・スパンコール」(写真右)

 重厚さを想像させる独特の世界観にも関わらず、本作をダークファンタジーではなく、ジャンプ作品らしい、明るさとユーモアを兼ね備えたエンタメに昇華させているのは、なんといってもこの魅力あふれる2人の存在だ。

 アニメに限らず、異世界物語の導入部は、その世界観の説明が必要となるが、本作では2人の会話で説明口調にならず、自然とドラゴンと魔女のファンタジー要素を現代文明のロンドンに巧みに重ね合わせており、知らず知らず作品に没入できる構成となっている。

表の顔はアイドル「ニニー・スパンコール」

 金髪で勝ち気な性格が伝わってくるニニー・スパンコールは、フロント・ロンドンでアイドルグループ「セシルは2度死ぬ(セシル・ダイ・トゥワイス)」のリーダーという「表」の顔を持つ。

表ではアイドル、裏では魔女

 読み切り編の冒頭での、
「おとぎ話なんかクソでしょ」
「バカしか魔法にかかんないなら、あたしは魔法をかける側がいい」
という、劇中でも流れるモノローグから伝わる様に、表と裏のない、自分を偽らない強いアイドルというキャラクターだ。

 演じるのは「トリコ」の鈴役で声優デビューし、「ラブライブ! サンシャイン!! 」で主人公グループAqoursのライバルユニット、Saint Snowの鹿角聖良役としても活躍中の田野アサミさん。

 社会に迎合する事を宿命付けされたはずのアイドルという立場でありながら、アイドル然とはしていない鮮烈な自己主張を放つアンビバレンツな個性を持ったキャラクターを、田野アサミさんが演じる事で説得力を持たせつつ、「女子が主人公だからって萌えアニメじゃない!」という強烈な萌え要素を感じさせる事に成功している。

ニニーとの絶妙なコンビ芸「新橋のえる」

 そのニニー・スパンコールのパートナー、新橋のえるは、対象的に黒髪で伏し目がちな和風の出で立ちで、ニニーとは対照的なビジュアルだ。

快活なニニーに対して落ち着いた雰囲気の新橋のえる

 しかし計算高さも見せつつ、ニニー・スパンコールとの会話では強烈な突っ込みも見せ、心を開いている様子が描写されるのが心地よい。

 その新橋のえるは、「クロムクロ」ミラーサという妖艶なキャラクターでデビューした山田唯菜さんが演じている。「ピアノの森」アレグナ・グラナドという子供のいるピアニストから、多くの学園アニメで女生徒役までこなせる幅の広さで、気付けば新橋のえるに見た目以上の印象を与え、2人の主人公は共に絶妙のキャスティングとなっている。

ハイスピードなアクションシーンと美麗な映像も見どころ

 久保帯人氏は昨年「新サクラ大戦」のキャラクター原案を手がけるなど、元々ゲームやアニメと親和性が高いキャラクターを産み出してきたが、今回その線をさらにアニメ向けにブラッシュアップしたのが、キャラクターデザインの山田奈月氏。

 動くことで更に魅力が際立つデザインにすることで、よりキャラクターの性格が伝わってくるような、透明感溢れる爽やかな魅力に昇華させていると言えるだろう。

箒型のドラゴン「ブルームバギー」でロンドンの街を飛翔

 その2人による

のえる:「ニニーちゃん」
ニニー:「先輩をちゃん付けで呼ぶなって言ってんでしょ! 」
のえる:「ニニーちゃんが私のことのえるちゃんって呼ぶならやめてあげてもいいです」
ニニー:「なんでシレッと後輩側がちゃん付け要求してんの!?」

といった、軽妙な掛け合いで進む物語を、よりスピーディーに展開させるのが、キャラクターが空中を動く浮遊感、疾走感。それは、「甲鉄城のカバネリ」のアクションアニメーターとして名を馳せた川野達朗氏が監督を務め、動きを重視した画作りによるものだ。

【アニメ『BURN THE WITCH』本PV①】

 さらにキャラクターが動き回るリバース・ロンドンのサイバーパンクな美術は稲葉邦彦氏が担当。そして、製作を担当するスタジオコロリドのこれまでの作品同様、水彩タッチによる温もり溢れる背景が、その、魔女とドラゴンによる動きの激しさを際立たせ、従来の「アニメ」と似て非なる異質の世界を画面に出現させている。

水彩タッチで描かれるロンドンの町並み
激しいアクションシーンにも注目

 中盤、「セシルは2度死ぬ(セシル・ダイ・トゥワイス)」の元メンバー「メイシー・バルジャー」(CV.早見沙織さん)が登場。ニニーとは元同僚の関係に当たる。

 クールビューティーな容姿ながら、ニニーのことになると時にエキセントリックな言動も飛び出す。彼女の登場から物語が大きく動き出し、意外なキャラクターの活躍であっと驚く展開を迎える。

物語の展開に関わる個性豊かな登場人物、ドラゴンたち

新しい時代のジャンプアニメ。今後の展開にも期待

 「BLEACH」など久保帯人作品のファンであれば言うまでもなく必見の本作だが、これまでジャンプ的王道バトル物を読まず嫌いだった筆者の様な人間でも思わず見入る、新年代のジャンプアニメだと感じられた。

 キャラクターのこれまでと今後が気になる終わり方となっているが、短期連載最終回掲載の「少年ジャンプ」(電子書籍アプリ「ジャンプ+」で購読可能)では「シーズン2」として今後を示唆するページもあり、さらなる展開が待ち受けている事は確実。

 公式サイトでは英語表記も用意されており、世界同時公開に象徴される様に、世界基準の作品でもある。

 世界中の人とリアルタイムで同じアニメに共感出来る事は、疫病で揺れる2020年秋の明るいニュースの1つである。GAME Watch読者であれば、必ず見るべきアニメである事を断言する。

<キャスト>
ニニー・スパンコール:田野アサミ/新橋のえる:山田唯菜/バルゴ・パークス:土屋神葉/チーフ:平田広明/オスシちゃん:引坂理絵/ブルーノ・バング・ナイフ:小林親弘/メイシー・バルジャー:早見沙織ほか

<スタッフ>
原作:久保帯人/監督:川野達朗/副監督:清水勇司/脚本:涼村千夏/キャラクターデザイン:山田奈月/ドラゴンデザイン:大倉啓右/背景美術:スタジオコロリド美術部/美術監督:稲葉邦彦/色彩設計:田中美穂/CGI監督:さいとうつかさ/撮影監督:東郷香澄/音楽:井内啓二/音楽制作:ランティス/音響監督:三好慶一郎/アニメーション制作:teamヤマヒツヂ/スタジオコロリド