【特別企画】

ニュルをオンラインで! ニュルブルクリンク1時間耐久レース「e-Nurburgring Race」レポート

まさかのモリゾウ選手も参戦!? オールジャパンで挑んだアツ過ぎるレースに密着

5月24日開催

 皆さんは一度は「ニュルブルクリンク」や「24時間耐久レース」というワードを見聞きしたことはないだろうか。年に一度、ドイツにある「ニュルブルクリンク」サーキットに於いて行なわれる世界一過酷なレース、それが「ニュルブルクリンク24時間耐久レース(以下、ニュル24h)」である。

 2020年はこの5月23日(土)~24日(日)に決勝レースが行なわれるはずだったが、新型コロナの影響により開催延期(執筆時点で9月24日~27日予定)となってしまった。そんな中、同レースに参戦し続けているTOYOTA GAZOO RACING(以下、TGR)とSUBARU STI(以下、SUBARU)がメーカーの垣根を超えてこの決勝が行なわれているはずだった5月24日にオンラインイベントを開催することになったのだ。本稿ではその模様を余すところなくお届けしたい。

【e-Nurburgring Race】

新型コロナで延期と参加見送り。でもそこには走らずにはいられない者たちがいた!

 TGRとSUBARUは、クルマ開発のメッカでもあるニュル24hへの挑戦を通してモータースポーツの魅力を伝えてくれるとともに、レースドライバーと開発ドライバー、あるいはレース経験のない、ディーラーのメカニックらで組んだチームなどで参戦、トップチェッカーに向かって邁進するのはもとより、クルマの開発や高度な技術を習得する人材育成のために参戦している。これは「レースが人を鍛え、クルマを鍛える」というチャレンジであり、市販車をはるかに超えるレーシングスピードで24時間走り続けるニュル24hというのはそれだけ過酷でチャレンジングなレースなのである。

 その結果市販車開発・販売への様々なフィードバックが行なわれることで私たちはより安全で、よりよいクルマに乗ることができているのだ。もちろん今年も現地からこの熱い想いが届けられるはずだった。筆者も数年前から毎年トヨタ86を始めレクサスLCやトヨタGRスープラ、スバルWRX STIなどのニュル24hへの挑戦とその後の市販車の発展・熟成がとても楽しみだったのは言うまでもないし、なにも疑うことなく2020年シーズンを迎えたはずだった。

 しかし世界的な疫病の発生に世界中のスポーツイベントが中止・延期となる中、TGRとSUBARUのスタッフは屈することはなかった。そう、今や世界はインターネットでつながり、プレイステーション4と「グランツーリスモSPORT」というオンライン対戦が苦も無く実現できる環境がすでに整っているのだ。さすがの新型コロナもインターネットに感染することはできない!

 「なんとかニュル24hの代わりになるようなイベントは開催できないだろうか……」。そう考えたであろうTGR/SUBARU両担当者はすぐにこのイベントを思いついたのではないだろうか。2020年に入りF1やインディカー、SUPER GT、SUPER FORMULA、ニュル24h等が開催されないことに完全に不完全燃焼だった。特に今日はF1モナコGP・インディ500・ニュル24hが同時に開催される。毎度寝不足祭りになる日なのだ。レース好きの筆者もこのイベントに驚くとともに「やっぱみんなレースしたいんだよね!」と嬉しさがこみ上げたのだった。

 そしてこのイベントには2019年のニュル24hに参戦したRACING PROJECT BANDOHとKONDO RACINGも参加することになり、まさに”オールジャパン”として行なわれる前代未聞のオンラインイベントとなったので出演者によるニュル24hへの想いやeスポーツの可能性などをお伝えしたいと思う。

着々と進む本格バーチャルレースへの胎動

 今回のイベントはトヨタが開設した「e-Motorsports Studio supported by TGR」をメイン会場に、各ドライバーは自宅からの参戦となった。

e-Motorsports Studio supported by TGR イメージ画像

 今回のイベントを開催するにあたり、司会進行を務める勝又智也氏から挨拶があった。

「新型コロナウイルスの感染拡大により、モータースポーツイベントの中止・延期だけでなく我々の通常の生活も自粛せざるを得ない状況が続いております。一部地域を除き緊急事態宣言が解除されるなど少しずつ日本全体が前に進み始めていることは私も非常にうれしく思います

 感染者数が日々増える中でも毎日大変な対応を続けられていらっしゃる医療従事者の方々、そして輸送関係など我々の生活のために動き続けくださっている方々、それを支えるご家族の皆様に対して本当に感謝の想いでたくさんです。ありがとうございます」

司会進行:勝又智也氏

 「私たちが関係をしております、モータースポーツ業界もご存じの通り活動自粛となっており、様々なレース・イベントが中止・延期となっている中で少しでも明るいニュースをお届けしたいと思い、4月29日にe-MotorSportsFes、5月17日にはスーパーフォーミュラのバーチャルシリーズが開催されました

 たくさんの応援や、ファンの皆様の笑顔を寄せられるコメントを通じて感じることができました。今回もチャットで皆様とつながっておりますので暖かい応援メッセージをお待ちしております」

司会進行:勝又智也氏

 ある意味新型コロナの影響がなければこういうイベントはなかっただろうと思うとこの挨拶は非常に心に響くものだった。

 次にTGRアンバサダー脇坂寿一氏が紹介され、「本日5月24日はトヨタスープラの誕生記念祭27周年でございます。よろしくお願いします」と挨拶。続いてSUBARUから実況解説としてレーサーの松田晃司氏が登場、「2015年からSUBARU On Tubeを通してNBRニュルブルクリンク現地からリポーターをしていました。本日はよろしくお願いします」と挨拶があった。

TGR:脇坂寿一氏
SUBARU:松田晃司氏

 先週の5月21日にTGRが参戦見送りの決定を出したが、これについて脇坂氏は「TGRとしては非常に厳しい判断をせざるを得なかった。関係者が現地で凝縮した開発にあたったがクルマの開発にかける時間が足りなかった。ということで参戦見送りになった」とTGRとして苦渋の決断であったこと、「2021年のニュルに戻りたい」と抱負を語ってくれた。

TGR参戦見送りを報告

 ここでSUBARU辰己総監督が登場。「TGRの発表はどうか?」という質問に「クルマの開発が時間的にできなかったこと、みんなの安全面を考えるとやむなしということだったのだろう。今年も一緒に走れると思っていたけど我々もすぐに動けない状態。世界中のモータースポーツの置かれている状況を考えると、もう少し時間をいただき支援していただいているスポンサーなども含めもうちょっと待って判断していきたい」とコメント。SUBARUとしても参戦できるかどうか微妙だという答えだった。

SUBARU:辰己総監督

 そして司会の勝又氏から「クラスは違えど同じ日本のチームが戦っていることの意味は非常に大きいと思います」と両社を激励した上で、「e-Nurburgring Race」に参戦するドライバーが紹介された。

 SUBARUからは2015年の初挑戦からWRX STIで3年ぶりのクラス優勝をもたらし、SUBARUとともに5年にわたりニュルをドライブ、実に5回中4回SP3Tクラスでの優勝に貢献している山内英輝選手、そしてニュルへの挑戦はTGRで2012年からスタート、8回のキャリアを持ち2018年からSUBARUに合流しSP3Tクラスで2年連続優勝している井口卓人選手の2名が紹介された。

山内:ハードル上げられて緊張していますけど、SUBARUのAWDの力を見せつけたいと思います
井口:GAZOO RACINGもSUBARUも知っている私は今日、非常に楽しみにいい感じで走りたいと思います

 TGRからはニュルへの挑戦は2011年からの石浦宏明選手、昨年2019年に初挑戦した佐々木雅弘選手、2013年から挑戦しており、昨年のスーパーGTでチャンピオンを取った大嶋和也選手……(ここで寿一監督から「小嶋選手がんばれよ!」と言葉をかけられ、「大嶋だよ!」とツッコミ返す場面が。さすがです)そして蒲生選手が紹介。

石浦:ついさっきこのレーシングスーツを袖を通したんですけどまさか家で着るとは想像してませんでした。こんなに安全なニュルのレースは初めてなんで思いっきり楽しみたいと思います
佐々木:本来なら今日がレースの日だったと思うんですが、今回ゲームを使ってうまく走っていきたいと思います
大嶋:今年、久しぶりのニュルで楽しみにしていたんですけど結局一度も行くことができずに残念なんですが、ここで頑張って走りたいと思います
蒲生:蒲生ですよろしくおねがいします

 2019年ニュルの経験が豊富なNOVEL RACINGとタッグを組み参戦したRACING PROJECT BANDOHからRC F GT3の吉本大樹選手が紹介された。

吉本:24時間は2度しか経験がないんですけどVLNには2013年くらいから行ってました。今年はニュルいけなくて残念ですけどeモータースポーツデビュー戦頑張ります

 昨年初挑戦したもう一つのチームといえばKONDO RACING、このチームから松田次男選手、そしてスーパーGTでも活躍している高星明誠選手が紹介された

松田:僕はプレステ2で止まっているのですが、久々のプレステでニュルを練習できればと思っています
高星:TGRとSUBARUさんのチャンネルにお邪魔してますが、レースはガチャガチャにしつくして帰りたいと思います

 今回スーパーGTなどで活躍されているこの豪華な9名のドライバーが参戦、一人一台となる構成でどういうレースになるか非常に楽しみだ。

屈指の難易度を誇るニュルブルクリンクはチャレンジングなサーキット

 ここでニュルブルクリンクを紹介しておこう。全長約25キロ、山手線1周、富士スピードウェイ5周分、高低差約300m、寒暖差25度、天候も場所によって全く違う。世界一の草レースとも呼ばれ、エントリー200台越えすることもあり、本当に過酷なサーキットである。

広大な敷地を使うこのサーキットには“世界の全ての道がある”と評され、世界中の自動車メーカーがテストに使用する聖地
東京でいえばほぼ“東京タワー”くらいの高低差がある
有名な“カルーセル”。すり鉢状になったヘアピンコーナーは2箇所ある。

 各ドライバーが練習走行に入り、ここで各チームのニュルへのきっかけなどを語ってくれた。

 坂東監督:「昨年初めて出させていただいて、世界の厳しさを知った。リベンジしたかったが今年はもともと参戦するつもりではなかった。また準備していつかニュルの総合優勝を目指したい」

RACING PROJECT BANDOH:坂東正敬氏

 辰己総監督:「1980年代前半にその存在を知ってからちょくちょく行くようになった。90年代、SUBARUは世界と戦える車を持っていないと思い、自動車会社としてはここで鍛えたかった。2008年~2009年にかけて、WRC撤退もありモータースポーツの無いSUBARUになってしまうという危機感からメーカーとしてチャレンジしようということになった」

 脇坂氏:「もともとモリゾウ(トヨタの豊田章男社長)とマスタードライバー成瀬さんの運転訓練という意味をかねてスタートさせ、2007年GAZOO RACINGでのニュル挑戦となった」

 辰己総監督:「ほぼノーマルカーを走らせる。ディーラーメカニックを連れて行ってスキルアップさせる目標をもって挑戦している」

ZOOMで配信されていた。様々なツールを使って実現されている。

 脇坂氏:「目的は”もっといいクルマ作り”。世界のメーカーが自動車の開発に訪れる聖地でクルマと人を鍛え、持っといいクルマを作り、そのいいクルマに乗っていただくすべての皆さんを笑顔にしたいという思いが込められてる」

 坂東監督:「そもそもドイツに住んでいて免許もドイツで取得。サッカー選手になることができなかったため次の目標としてレースの世界へ。タイヤのコンペティションが無いかと探していたところレクサスとヨコハマタイヤといういいパッケージが手に入ったので2019年参戦。名を残せれば、という思いから」

 松田選手:「近藤監督から参戦の依頼があったのと憧れの海外レース、ニュルへ出たかった。走った時のカルチャーショックがすごかった。2019年初参戦でノーミス・ノーペナルティ・ノートラブルで走り切り、総合9位、クラス8位といい結果だった要因は、いいチームを結成していいクルマに仕上げてもらってチームワークも素晴らしかった。しかしながら世界のトップレベルとの差を痛感した」

 坂東監督:「正直厳しい、準備不足で課題が見えたいい経験だった。出るなら一番上のクラスで出たかった。レギュレーションもころころ変わって苦労したが経験できたのでその経験を活かしたい」

 辰己総監督:「いろんな日本メーカーに出てほしい。日本のクルマファンにニュルを知ってほしい。あわせて日本の力を世界に魅せられたのでは」

 脇坂氏:「レクサスLCは2018年のリベンジだった。GRスープラは先代80スープラしかなかったが渇望した新型車両だった」

トヨタの豊田章男社長(モリゾウ)と電話で会話

 と、ここで緊急電話が到来。さすが脇坂寿一、子芝居が入る!

 電話の相手はなんと”モリゾウ”だった!

 モリゾウ:「今日はオールジャパンでeニュル期待しています!」

 脇阪氏:「去年ニュルでKONDOチームにいかれてましたよね?ちょっと近藤監督に電話していいですか?」

 さらに近藤監督に電話をする脇坂氏。

近藤真彦(マッチ)監督にまで電話をかける脇阪氏

 脇阪氏:「ある人と電話つながってまして……いいですか?」

 近藤監督:「もちろん……あ、章男社長! 去年ニュルでお世話になりました!」

 モリゾウ:「去年の今頃、ギンギラギンをガンガラガンって言っちゃってごめんなさいね」

 近藤監督:「酔った勢いで……」

 モリゾウ:「酔った勢いで……」

 ※ここのやり取りはとても楽しいのでぜひアーカイブ(27:44ごろ~)で見ていただきたい。

 脇阪氏:「日本のチームがニュルでクルマを開発するのはいいですよね」

 モリゾウ:「メーカーはワークスで出るもよし、プライベーターが出るもよし、これが日本のいいところ。トヨタのGAZOO RACINGはどちらかといえばプライベーター。こういう活動がいいクルマ作りやクルマ好きを増やしてくれているなと感じている。辰己総監督にもよくしてもらった」

 近藤監督:「章男社長には”ニュルはクルマと人を育てる”、”プライベーターが一番大きい顔をしていいんだ”と教わった。SUBARUにはホテルの手配の仕方も教えてもらった。感謝しています」

 脱線しかかる二人に「放送に乗ってるんで」とチクリ。

 脇阪氏:「今回のイベントに参戦しませんか!?」とムチャぶり!

 モリゾウ:「可能であれば出たい!」

 と、なんだか含みを持たせるやり取りも!

 ここからトークに戻ってニュル24hのサポートについて語られた。

 辰己総監督:「量産車で量産パーツで参加しているので、現地ドイツのディーラーから調達したこともある。そういった意味では日本国内でレース参加しているのとそれほど変わらない」

 脇阪氏:「クルマは総合産業であり、色んなパーツで成り立っている。共にニュルの地でもっといいクルマ作りに協力いただいている。パートナーへお礼を言いたい」

 松田選手:「ヨコハマタイヤなど、開発に協力してもらっている」

 坂東監督:「クラウドファンディングで参戦させてもらった。タイのチームから車両を調達できた。そしてヨコハマタイヤがレクサス用のタイヤを作ってもらった。皆さんに感謝しています」

 ここで視聴者からの質問をコメント欄からいくつかピックアップしようとするも、多数のコメントが来ていて何と言ったらいいかわからない状態で選ぶことができない! モリゾウ参加への歓迎コメントも。コメント欄スクロールで流れてしまって読めないでいる がファンとの距離が近いのもこういうイベントのいいところだ。

レース開始! こんなニュル見たことない! レースは過酷なスプリントに!

第1レース

【今回のレースのレギュレーション】
Gr.3(GT3)車両
TGR:GR Supra Racing Concept
SUBARU:WRX Group3
KONDO:GT-R GT3
BANDOH:RC F GT3
カーリバリーは視聴者から寄せられたものを使用している。

BOPあり:出力差は無し
タイヤ:レーシングソフト
ペナルティ:サイドプレスのみ有効
スタート方式:ローリングスタート
1時間耐久レース
スリップストリーム:強
ブースト:強

特別ルール
ピットイン時に坂東監督からクイズやリクエストを出される!
不正解の場合レース復帰できない!

 コメント欄から「モリゾウ、着替えていきます!」と参戦する気たっぷりのコメントが。何時登場するのだろうか?そして坂東監督から呼びかけのときにSUBARUの松田さんなのか、KONDOの松田次男選手なのかがわからなくなるという視聴者が感じていたであろうツッコミが入る!筆者も混乱していた。

 14時50分頃ようやくレーススタートした。KONDOが1、2で1コーナーへ突入、いきなり石浦選手が松田選手を玉つきでコース外へ押し出す。

レーススタート!
KONDOが1、2でレースを引っ張る
押し出される松田選手

 脇阪氏:「これほんとにやると1年クルマ開発できなくなる!」と警告。

 脇阪氏:「こんな団子のまま北コース行くの?」と心配するほどの混戦で”ノルドシュライフェ”に突入していく全車!

集団でノルドシュライフェへ!

 吉本選手:「井口にサンドイッチにされました!」と悲痛の声が。こういうレポートが視聴者に聞こえてくるのもeスポーツならでは。

 そして作戦なのか下位に沈むTGR勢に寿一監督から激が飛ぶ! そしてスリップストリームやブーストの影響のためかあまりのスプリントレース状態に脇坂氏が「これ1時間こんな感じで行くんですか?」と心配するほど。

ここに固まっているのにはなにか理由が…?

 小さな混乱の中、するするっとSUBARUが抜けだし1、2になったことで辰己総監督が「決まったね」と勝利を確信。見かねたTGR脇阪氏からSUBARUの2台に「これオーディションらしいよ?」とプレッシャーをかけると「やばい」、「真剣に走ります」などとリアルなレースではまずありえない会話が展開された。

SUBARU、盤石の態勢だが…

 そしてTGRは燃料セーブ作戦では?という憶測が流れると脇阪氏が「我々はTGRでございます」と返し、一同笑いが起きるといった場面も。

この画面構成ができるのも現代ならでは。リアルでも見てみたい

 さすがに全員が無難にコースをクリアしていくのはさすがニュルを知るプロドライバーといったところ。

 脇阪氏:「ニュルはアンジュレーション(起伏)も激しく、路面もバンピーでクルマが跳ねる。サスペンションがよくないとアクセルが踏めないほど」

 辰己総監督:「昔は全開で行けなかった。SUBARU AWDはニュルで鍛えられている」

 そんな中、「なんじゃこれ~!!」ドライバーが皆悲鳴を上げる。全員口々に「こんな映像見たことない!!」と驚嘆の声が漏れる。筆者もニュルでこんな団子レースみたことがない。「とんでもないレースになっています!!」解説・ドライバーも視聴者もみんな笑いながらとても楽しそうなのが印象的。

ニュル最長のストレートで横並び!
ストレート終盤で一斉に団子に!
そして台数が減る

 筆者もいち視聴者としてこの瞬間を共有できていることがとてもうれしい! そして石浦選手が突っつかれてコースアウト! 「なにもかもないですよコレ!(怒)」。このコメントにみんな大爆笑! このゆるい雰囲気が友達が集まってレースゲームやってるぽくてさらにいい!

奥で横を向いてるGR Supra

 各車ピットインを減らす作戦ぽいのは燃費対策ではなく対坂東監督対策でもあるようだ。しかし坂東監督がイチオシのクイズネタがあるので2番手高星選手に先にピットに入るように指示が出る。気軽にドライバーと会話できるのがeスポーツのいいところか。

 そして指示通りピットインした高星選手へのクイズは「トム・コロネルはどれでしょう」だった! どうやら坂東監督のZOOMの背景に移っているらしいが視聴者には見えなくて残念。それでも高星選手は正解し、ピットアウトすることができた!

指示通りピットイン
妙なクイズに思わず笑みがこぼれる

 こんな感じでいろんな意味でグダグダであり、しかしながらプロドライバーたちがハイレベルで破綻することのない超接近戦を繰り広げている。坂東監督からのクイズにどんなものが出たのかを含め、残りのレースはぜひアーカイブで確認していただきたい。

ちなみに山内選手はクイズクリアならず

レース終盤、ついにあの方が参戦!

 そしてレース終盤、レースコントロールから「コース上に異変がある」と連絡が……あまりに速いセーフティーカーが登場、そのドライバー名は「Safety_Car M」この”M”はモリゾウだ! ここから前代未聞の忖度レースが繰り広げられることに。

セーフティーカーに乗って登場したモリゾウ選手

 全員がモリゾウを抜けずにもじもじする展開が続く中、

 モリゾウ:「抜いていいよ~」

 石浦選手:「精神的に抜けないです」

 全員大爆笑!!

モリゾウを抜けないTGRの忖度GR Supraご一行様。モリゾウを後方から守っている

 最終的にどの選手が優勝したのかはぜひアーカイブで確認していただきたい。リアルなニュルでは絶対行なわれないeスポーツならではのレース展開が繰り広げられて、参加しているドライバーや視聴者すべてが笑顔になれるのはとても素晴らしいことだと思う。終わった後のみんなの楽しかったのがよくわかる笑顔がとても印象的だった。ここでレース後のコメントで石浦選手がとてもいいコメントを出してくれたので紹介する。

 石浦選手:「やってる側としてはこれまでの『グランツーリスモ』の中で一番面白かった。これはeスポーツじゃないとできない、スピンしても挽回できるし誰が勝つかわからないというのは『グランツーリスモ』でしかできない面白いレースだった。普段100%でニュルを走ることはないので、今日は全員全開で走れてこんな面白いニュルはなかった」

 このコメントがeスポーツの特徴を端的に表しているな、と感じた。

全員楽しそう!見ている私たちももちろん楽しい!

第2レースは24時間レース名物、夜の闇を突き進む!

第2レース

 そしてなんと第2レースが開催。テーマは“ニュルの未来”ということでビジョングランツーリスモ車輌を使って1周、夜設定で走ることに。使用したビジョングランツーリスモ車輌は以下の通り。

【グランツーリスモ VISION GT車両】
TGR:FT-1 VGT
SUBARU:VIZIV GT VGT
BANDOH:LF-LC GT VGT
KONDO:NISSAN CONCEPT 2020 VGT

こわい! なんでこんな環境で走れるんだろ…やっぱりプロドライバーってすごい…

 こちらもレースの模様・結果はアーカイブをご覧いただきたいと思う。すぐさま日時の設定ができて夜のレースを行なえるのもeスポーツならでは。そしてそれにすぐさま対応できるプロドライバーの技術はやはりすばらしいものだし、こういう素晴らしいレースを見ることができるのもまたありがたいと思う。

 レース後、吉本選手がいいコメントを出してくれたので紹介しておこう。

 吉本選手:「最初のグランツーリスモが20年前くらい前に登場したときの衝撃がすごかった。そこからここまでの進化がすごいことだ。コントローラーも進化してきて、フィードバックを一番重くしていて日々いいトレーニングになっている。オンラインでみなさんと時間を過ごすことができてよかったです」

グランツーリスモの進化をリアルにつなげている吉本選手

 とのことだった。確かに筆者もそう思うところがある。実際にコクピットを用意してグランツーリスモで数回レースをすると汗をかくくらい体力を使うことがある。シミュレーター・トレーナーとして機能し始めているeモータースポーツは新たなステージに上っていると感じられる。

 最後に脇坂氏から「ご視聴いただきましたファンの皆様どうもありがとうございました。今コロナで大変な時期なんですけれどもモータースポーツ業界はちょっとでも皆さんに楽しんでいただくため、今回はTGRとSUBARUさんと協力してこういうイベントが立ち上がり、そこにKONDO RACINGさん、BANDOHチームがジョインしていただいてこういう放送をお送りさせていただきました

 ファンの方々がコロナの影響でモータースポーツを見たい!という感情をぐっと押し殺して感染拡大防止を努力されている中、我々モータースポーツ関係者としてこのコロナが収束した暁にはモータースポーツの力で皆さんをもっともっと笑顔にしたいという気持ちがあって、ここに集まって今日のイベントになったと思います

 我々TGRとしてもっともっといいクルマ作りを徹底的に行いながらモータースポーツを精一杯盛り上げていきたいとおもいます。TGRは豊田章男社長、友山プレジデントという体制でもっともっと皆さんがいい笑顔になるようなクルマ作りとモータースポーツを頑張っていきますので今後とも応援よろしくお願いします。ありがとうございました」と締めくくってくれた。

脇坂アンバサダーから挨拶

 そして、医療従事者への感謝の意味を込めて全員が拍手、このイベントは終了となった。

医療従事者への感謝の拍手

これはリアルなのか、バーチャルなのか…!?

 オンライン・ニュルブルクリンク1時間耐久レース「e-Nurburgring Race」はいかがだっただろうか。実際のレースを現地なり放送などでご覧になっている方々からすると、クルマの挙動やレースのルール、ストラテジーなど確かにまだ”リアルなレース”とは言い切れないところもあるにはあるだろう。しかしながらシミュレーターとして位置づけられるようになった昨今のレースゲームはもうバーチャルではないのかもしれない。

 実際、ここまでフェアなレース展開が行なわれると「さすがプロドライバーは違う!」という感想になるのだがそれを表現しうる環境が数十年かけてここまで高度化・高解像度化、つまり”リアル化”が進められた恩恵ではないだろうか。このことは現状のeスポーツがバーチャルではなくリアル方向に近づきつつあることを示している。環境がさらにパワーアップすればリアルだとかバーチャルだとかは関係なく、これはこれで通常のスポーツイベントとして成立する可能性もあるんじゃないか?と今後の発展に大いに期待できるのではないかと思う。

 近い将来インターネットのバックボーンが増強され、5Gが当たり前になり、プレイステーション4PROの10倍の性能とも噂されているプレイステーション5や新グランツーリスモ登場もあるだろうしレーシングコントローラーも素晴らしいものがある状態になった時、リアルとバーチャルのレースシーンは徐々に垣根を失い融合していくことになるだろう。考えただけでもワクワクしてこないだろうか。奇しくも今回新型コロナが背中を押したようなところもあるが、人類のステージが一つ進んだように思う。まさにCHANGE THE WORLD,CHANGE THE RACEだ!