【特別企画】
いよいよ開幕! 新作アーケードゲームの見本市「JAEPO2020」
今後のゲームセンターの趨勢を占う、3つのキーワードを使って見どころを徹底解説
2020年2月6日 11:59
- 2月7~8日開催(※7日は関係者のみ)
- 会場:幕張メッセ 国際展示場ホール
- 前売券 1,300円 当日券 1,500円(税込)
- 小学生以下無料
アーケードゲームの業界団体である一般社団法人 日本アミューズメント産業協会(JAIA)が、毎年2月に幕張メッセで開催する新作アーケードゲームの展示イベント「ジャパンアミューズメントエキスポ(JAEPO)」がいよいよ7日より開幕する。
アーケードゲーム以外にもプライズ(景品)や両替機、レバー・ボタンなど関連機器の開発・販売やサービスを提供するメーカーがブースを出展を行ない、街のゲームセンターよりもひと足早く、最新のゲーム・サービスを体験できるのが魅力のイベントである。
一般公開日には各メーカーが開催するイベントステージにおいて、プロデューサーや有名タレントをゲストに招いた新作ゲームの発表会や、人気タイトルのプレイヤー日本一決定戦などのイベントなども行なわれる。
なお、昨年はGzブレイン、niconico(ドワンゴ)、JeSU(日本eスポーツ連合)との合同開催による、「JAEPO×闘会議×JeSU 2019」という名称で実施されたが、今回は再びJAIA単独での開催となる。
現在のアーケードゲーム業界の市場規模は、直近のデータを見ると3年連続で前年比を上回っているものの、ピーク時に比べると約3,000億円も縮小している(※)。ゲームセンターの店舗数も減少の一途をたどっており、非常に厳しい状況が続いている。さらに、昨年10月からは消費税率がアップするという逆風にもさらされており、とりわけオペレーター(ゲームセンター経営者)側は、今後は新規の客層を取り込めるようなヒット商品、あるいはサービス開発の成功がなければ、今後ますます経営が苦しくなることは必至だろう。
そんな状況下で開催される「JAEPO2020」には、はたして現在の苦境を打破する可能性を秘めた新作ゲームやサービスが出展されるのだろうか? 以下、本イベントにおいて見どころとなるポイントを、かつてゲーセンで店長をしていた経験を持つ筆者が、独断と偏見で選んだ3つのキーワードに絞って解説していこう。
※筆者注:市場規模は、JAIAが毎年1回発行する「アミューズメント産業界の実態調査報告書」から引用。平成29(2017)年度の調査による市場規模は6,388億円で、ピークは2006年度の9,262億円。
キーワード1:「eスポーツ」のムーブメントを取り込めるのか?
今回、筆者が最も注目しているポイントは、いまだにeスポーツのムーブメントにうまく乗れていない感があるアーケードゲーム業界において、これを打ち破るだけの面白さがあるeスポーツ関連の新作ゲーム、またはサービスが発表されるかどうかである。
eスポーツという単語が世間一般にも広く知られるようになって久しいが、ことアーケードゲームにおいては、あらかじめeスポーツのムーブメントをきちんと取り込むことを意図したうえで新規に開発し、成功したタイトルは皆無に等しい。現時点で、eスポーツという単語をタイトルに含んだ作品は「ぷよぷよeスポーツ アーケード」ぐらいしかなく、しかも本作ですら家庭用の「ぷよぷよeスポーツ」のほうが先んじて発売されているのだ。
今回のeスポーツ関連の出展で特に注目すべきは、5月から開幕予定である、音楽ゲームを使った初のeスポーツプロリーグ、コナミの「BEMANI PRO LEAGUE(ビーマニプロリーグ)」と、本リーグで使用される「beatmania IIDX27 HEROIC VERSE」だ。賞金総額が2,000万円という金額も目を引くが、それ以上にアーケード用筐体を使って行なわれることと、選手はコナミによるプロテストに合格し、なおかつドラフトによってゲームセンターを経営するオペレーターによって作られたチームに指名されることが参加条件になっていることが最重要ポイントだ。
よって、本プロリーグに出場する選手たちは、自身が活躍することで賞金が稼げるだけでなく、所属チームのオペレーターが経営するゲームセンターの宣伝にもつながり、ひいてはアーケードゲーム業界全体の活性化にもつながる可能性を秘めていると言えるだろう。ただし、本リーグの開催はゲームセンターではなく、コナミが新設した「eスポーツ銀座スタジオ」を使用して行なわれるため、現時点では具体的にどのようにしてオペレーター側にも利益が還元されるのか、そのスキームの詳細は不明だ。「JAEPO2020」会場でのステージイベントなどで、その続報が明かされることを大いに期待したいところだ。
もちろんコナミに限らず、ほかのメーカーもeスポーツのムーブメントを取り込むための新作タイトル、あるいはサービスをはたして出展するのかも注目だ。「この苦境を脱してみせるぞ!」という各メーカーの「本気」を、ぜひ会場で見てみたい。
キーワード2:メダルゲームの“電子化”がさらに進むのか?
古くからゲームセンターの花形ジャンルのひとつであるメダルゲームにおいては、メダルの完全電子化の流れが加速するかどうかを2つ目の注目ポイントとして挙げたい。
昨年11月に稼働を開始した、セガ・インタラクティブのマスメダル競馬ゲーム「スターホース4」は、業界初となるメダルの完全電子化を実現させた。従来のメダルゲームは、プレーヤー自身の手でメダルを購入(正確には、店舗からの貸し出しを受ける)、または店に預けたメダルを必要な分だけ払い出してから遊ぶのが常識であった。
だが、本作ではメダルを完全電子化したことで預け払いの手間が省け、オペレーター側もリアルのメダルを用意しなくても稼働させることが可能となり、運営コストの効率化にもつながるメリットが得られるようになったのだ。完全電子化の実現は、長いアーケードゲームの歴史においても特筆に値する出来事と言っても差し支えないであろう。
筆者もゲームセンター店員時代に、メダルの在庫や洗浄などの流通管理、筐体のメンテナンス業務など、日々のオペレーションには人的にも金銭的にも時間的にも、かなりのコストが掛かることを身をもって経験した。だからこそ、今後は完全電子化の流れがますます加速するのではないかと予測している。今回、各社が出展が予定している新作メダルゲームにおいても、「スターホース4」と同様にオペレーションの負担を軽減できる、完全電子メダル化の対応が常識と化すのか? そして、完全電子化によって新たな遊びやサービスが誕生するのかにも注目して見ていきたい。
キーワード3:現代のゲームセンターの“命綱”、プライズゲームの未来やいかに?
3つ目のポイントは、業界全体のオペレーション売上高(ゲームセンターでゲーム機を稼働させたことによって得た売上)のうち、およそ半分近くを占めるプライズゲームの新作タイトル、およびプライズゲーム用景品の動向だ。
筆者が最も大きなポイントと考えているのが、ここ1、2年ほどの間に相次いで登場した、PCやスマホ用アプリでプライズゲームを遠隔操作して遊べる、オンラインクレーン(プライズ)ゲームとの競合対策ができているのかどうかだ。オンラインクレーンゲームの登場によって、今やプライズゲームはゲームセンターだけの専売特許ではなく、スマホ1台あればいつでもどこでも24時間遊べて(ゲームセンターが風営法によって、深夜営業を禁止されているにもかかわらずだ!)、しかも取った景品は自宅まで配送してもらえる時代になってしまった以上、もはや競合は避けられない。
もしもオペレーション売上高の半分近くを占めるプライズゲームが、オンラインクレーンゲームに客をごっそり奪われるような事態になった場合は、アーケードゲーム業界全体が極めて危機的な状況に追い込まれることになるのは間違いない。よって今回の「JAEPO2020」では、いつにも増して客がゲームセンターにまでわざわざ足を運んで遊びたいと思わせるような、斬新なアイデアを盛り込んだ新作プライズゲームが出展されるのか? そして、10年ほど前に大人気を博した「ONE PIECE」関連グッズのように、ひとりでも多くの人に「欲しい!」と思わせるようなキャラクター、あるいはアイデア雑貨などの景品が出展されるかどうかにも大いに期待したい。
また、オンラインクレーンゲームの「とるモ」を運営するバンダイナムコアミューズメント、同じく、「タイトーオンラインクレーン」のタイトー、「セガキャッチャーオンライン」のセガエンタテインメントの大手3社については、既存の直営店で運営するプライズゲームとの棲み分けをどうするのか、あるいは直営店と連動した新サービスを展開するのかにも注目してみたい。
なお、開催初日の7日(金)はビジネスデーにつき、ビジネス関係者のみ入場可能となっているため、一般の来場者は入場できない。一般公開日は、翌8日(土)の1日だけとなっているので、現地へ出掛ける予定の方はくれぐれもご注意を。