【特別企画】

音楽ゲーム初のeスポーツプロリーグ「BEMANI PRO LEAGUE」はゲームセンターの活性化につながるのか?

2月7~8日開催(※7日は関係者のみ)

会場:幕張メッセ 国際展示場ホール

前売券 1,300円 当日券 1,500円(税込)

小学生以下無料

 コナミアミューズメントが今年5月に開幕予定をしている、初の音楽ゲームを使用したeスポーツプロリーグ。「beatmania IIDX27 HEROIC VERSE」を使用して、1チーム4人、全6チームによるチーム戦で勝敗を決める方式で、賞金総額は2,000万円。選手の公募はすでに始まっており(応募期限は今月16日まで)、応募者は同社による書類選考と実技・面接によるプロテストを経て、合格者は3月に開かれるドラフト会議で、各チームに指名されたプレーヤーがチームと契約することで、晴れてプロ選手として参戦資格を得られる。

 本リーグは、1シーズンを「レギュラーシーズン」、「セミファイナル」、「ファイナル」の3ステージに分けて開催される。まずは全チームが参加する「レギュラーシーズン」を行ない、上位3チームが「セミファイナル」へと進出し、「セミファイナル」の上位2チームが優勝決定戦となる「ファイナル」へと進む。開催期間は5月~10月で、試合会場は今年1月にオープンしたばかりの「esports 銀座 studio」をはじめ、関東近郊の会場を使用する予定だ。

 2月7日、8日に幕張メッセで開催されたJAEPOのコナミブースでは、eスポーツイベント「The 9th KAC beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE 決勝大会」(※)が実施されると共に、プロリーグに出場する全6チームの名称と、出場選手は対戦マッチング時に特殊な演出が用意されることも新たに発表された。各チーム名とオーナー会社は以下のとおりで、いずれもゲームセンターを経営するオペレーターであることが特徴だ。本稿では、「The 9th KAC beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE 決勝大会」の盛り上がりをお伝えしつつ、5月よりスタートする「BEMANI PRO LEAGUE」について取材してきたので、その内容をお届けしたい。

※筆者注:「KAC」は「KONAMI Arcade Championship」の略称で、コナミの各種アーケードゲームの実力ナンバーワンプレーヤー決定戦のこと。2011年に第1回が開催され、以後2014年をのぞき毎年開催されている。

参加チームとチーム名(※カッコ内は、各社が経営するゲームセンターなどのブランド名)

・APINA VRAMES:株式会社共和コーポレーション(APINA VRAMeS)
・SILK HAT:株式会社マタハリーエンターテイメント(SILK HAT)
・LEISURE LAND:株式会社山崎屋(レジャーランド)
・ROUND1:株式会社ラウンドワン(ラウンドワン)
・GAME PANIC:株式会社レジャラン(ゲームパニック)
・SUPER NOVA TOHOKU:株式会社ワイ・ケーコーポレーション(スーパーノバ)

【「BEMANI PRO LEAGUE」ロゴと大会スケジュール】
参戦する全6チームのエンブレムはご覧のとおり
初日のビジネスデイのステージでは、コナミ初の公認音楽ゲームプロゲーマーのDOLCE選手(左)と、eスポーツ推進室長の「猫叉Master」こと佐藤直之氏が登壇し、本リーグの解説を行なった

「『beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE』The 9th KAC」優勝は、韓国KKM*選手に

 「BEMANI PRO LEAGUE」に先駆けること9年、今年で9回目を迎えた「『beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE』The 9th KAC」。決勝大会は、国内およびアジア・オセアニア予選を勝ち抜いた7人と、前回優勝者のU*TAKA選手を加えた8人の選手が参加した。まずは4人ずつがA、B2つのグループに分かれて準決勝を行ない、各選手が選択した曲を1曲ずつ、合計4曲をプレイして1曲終了ごとにポイント集計し、1位は2ポイント、2位は1ポイント、3位以下は0ポイントを加算し、合計ポイントの上位2人が決勝戦に進出する。決勝戦も同様のポイント方式で、最も多くのポイントを獲得したプレーヤーが優勝となるルールで行なわれた。

 本大会のように、アーケード用音楽ゲームを使用した大会ならではの見どころは、やはり「beatmania IIDX」シリーズ専用筐体、すなわち鍵盤型に配置した7つのボタンとターンテーブルを、選手たちが機械のごとく素早くかつ正確に操作するその姿だろう。実は筆者、普段は音楽ゲームをあまりプレイしないため楽曲にあまり詳しくないが、それでも選手たちが1曲あたり1,000個を軽く超えるマーカーが降ってくる高難易度の楽曲を相手に、「あんなに多くのマーカーの出現順をよく覚えられるな! よく反応できるな!」と、思わず目を見張ってしまう迫力は凄まじいものがある。

 決勝大会に出てくる選手ともなれば、その実力差はみんな紙一重だ。プレイ中は、その時点で1位の得点を叩き出している選手と、2位以下の選手との得点差が1ケタ台の接戦が続くこともザラで、最後の最後まで勝敗の行方がわからない、スリリングな勝負が楽しめるのも大きな魅力のひとつだ。プレイ中は、スクリーン上にゲーム画面と併せて全選手の手元も映し出してくれるので、近所のゲームセンターに行ってもなかなか見る機会がない、あるいは近所にゲームセンターがないので見られない人にとっても、その超絶技巧を存分に観戦できる機会を提供してくれているという意味でも、とても意義のある大会であると言えよう。

 また、本作を普段から遊んでいてよくご存知の方は、各選手がどの楽曲を選ぶのかを見ているだけでも楽しめるハズ。例えば、演奏中にテンポが何度も急に変わる楽曲をあえて選んだ選手は、「相手のミスを誘うことを意図したのでは?」などといったように、1人プレイ時とは違った見方で楽しめるだろう。なお今大会では、準決勝Bグループに出場した韓国出身のATTIXX選手が、途中でテンポが何度も変わる「Y&Co. is dead or alive」を選ぶ作戦を用いた結果、1位の座こそ同朋のKKM*選手に譲ったものの、2位で1ポイントを獲得し、これを足掛かりにして見事に決勝進出を果たした。

 ステージ前には、今年も多数ギャラリーが押し寄せ、各プレーヤーが使用曲を発表するだけで大歓声が上がる異様なまでの盛り上がりのなか、まるで精密機械のようなテクニックを披露して準決勝の全4曲で1位を獲得、決勝戦でも2曲で1位を獲得する圧倒的な強さを見せ付けた、韓国出身のKKM*選手が文句なしの優勝を飾った。競技開始前のインタビューでは、「初めての出場なのでとても緊張していますが、良い成績が残せると信じています」と話していたが、傍から見ていて緊張している様子はまるでなく、本番でも普段どおりの実力を出せた強心臓ぶりが勝因につながったのではないだろうか。

 ただ惜しむらくは、KKM*選手は韓国在住のため、「BEMANI PRO LEAGUE」の参加資格を持たない(※選手の応募条件に「日本国内在住者」と明記されているため)。願わくば、どこかのタイミングで本リーグに出場する選手たちとKKM*選手とのエキシビジョンマッチを開催してほしいものだ。なお、決勝大会の模様はKONAMI公式YouTubeチャンネルで公開されているので、興味を持たれた方は選手たちの妙技をぜひご覧いただきたい。

【The 9th KAC 決勝大会[DanceDanceRevolution A20][SOUND VOLTEX VIVID WAVE][beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE]】

【「『beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE』The 9th KAC 決勝大会」】
今年も大勢のギャラリーが観戦した「『beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE』The 9th KAC 決勝大会」。「今日のためにしっかり仕上げてきた」と自信を見せたU*TAKA選手の2連覇を阻んだ、大会初参加のKKM*選手が優勝した

ゲームセンターを活性化する新たな起爆剤となるのか? コナミアミューズメントの担当者を直撃!

 はたして「BEMANI PRO LEAGUE」も、「KAC 決勝大会」と同様に盛り上がるのだろうか? 2,000万円もの高額な賞金が用意されていることも当然注目に値するが、筆者がそれ以上に注目しているのは、これを機に新たなゲームセンターのビジネスモデルが誕生する可能性を持つのではないかということだ。近年のアーケードゲーム業界は厳しい状況が続いており、昨今のトレンドであるeスポーツのムーブメントにうまく乗れていない感がある。

 前述のとおり、チームのオーナー会社はいずれもゲームセンターを経営するオペレーターなので、所属選手が本リーグで活躍することによって、とりわけ地方の活性化と、店舗の収益改善にもつながるビジネスモデルが構築されることを大いに期待している。また、コナミ陣営としては「beatmania IIDX27」の宣伝だけでなく、ほかのBEMANIシリーズ作品の開発チームやプロゲーマーが監修した、ゲーミングPCや各種デバイスの販売拡大も当然視野に入れていることだろう。

 では、主催するコナミ側では、具体的にどのような運営コンセプト、およびビジネスモデルを練ったうえで本リーグの開催を実施するのだろうか? JAEPO2020会場にて、コナミアミューズメント プロモーション企画室の本田顕一郎室長と、同じく島田千佳氏にお話を伺った。

コナミアミューズメント プロモーション企画室の本田室長(右)と、島田千佳氏

――「BEMANI PRO LEAGUE」を実施するにあたっての目的は、自社のゲームの宣伝だけでなく、チームのオーナー会社として参加した各社が経営する、ゲームセンターの活性化も含まれているという理解で宜しいですか?

本田氏: もちろんです。JAEPO2020の会場でチーム名を発表させていただきましたが、各オーナー会社様がプロチームを持つことによって、皆様が経営されているゲームセンター、あるいはアミューズメント施設の宣伝効果も大いに期待できるということでご賛同をいただいております。

――賞金は、選手たちに直接支払われるのでしょうか?

本田氏: いいえ。賞金はまずチームにお支払いをして、その後は各チームと選手との契約によって決められた金額が分配される仕組みです。チームへの賞金は、順位によって異なります、また各選手の報酬は、チームオーナーとの取り決めで決定されるので決まった金額が分配されるかどうかはチーム次第となります。

――選手たちはコナミ側ではなく、各チームとの契約になるわけですね。すると、試合がない日は各所属チームのオーナー会社が持つゲームセンターで練習をしたり、プロモーション活動などをすることになるのでしょうか?

本田氏: 契約にあたってのガイドラインは弊社で用意しますが、選手はチームと契約する形になりますね。ですから、選手の練習場所を提供したりですとか、イベントなどをやってほしいといった契約内容については、オーナー会社の皆様にお任せすることになると思います。

――今回は「beatmania IIDX」だけでの開催となりますが、今後はほかのBEMANIシリーズ作品でもプロリーグを実施する予定はあるのでしょうか?

本田氏: 今回のプロリーグが盛り上がったら、来年、再来年と競技種目を増やしていきたいですね。「beatmaia」以来、音楽ゲームを長年出し続けているのは弊社だけですし、我々はただ単にものを作って売るだけでなく、それを使ってどう遊ぼうかというところまで、きちんとプロデュースを続けている会社であると思っております。今回の「KAC」も、あまりの盛り上がりぶりに我々主催者側も感動のあまり、見ていて思わずもらい泣きするほどでした。ただものを作っただけでは、ここまで盛り上がることは、おそらくなかったでしょうね。

――現在はコナミでは直営のゲームセンターを持っていませんので、自社製ゲームの宣伝・販促と、ブースに展示されていたゲーミングPCや関連デバイスの売上を伸ばそうというビジネスモデルをお考えということですね?

本田氏: 我々のほうでも、オーナーの皆様と同じよう、ゲームセンターという場が盛り上がることを目指しています。「BEMANI PRO LEAGUE」が話題になることで、「今度は自分でも遊んでみようかな?」と思う人が増えることによって、メーカーである我々もゲームセンター側もプラスになるだろうと。ですから、ビジネスモデルという明確なお金の流れをどうしようと言うよりは、まずは業界全体で盛り上げていきたいということで、ご賛同をいただいたオーナー会社の皆様が参加することになったわけですね。単に我々の宣伝だけとか、ただ賞金目当ての人が来るというだけでは終わらせないようにしていきたいと考えております。

――今のアーケードゲーム業界は、昨今のeスポーツのムーブメントをうまく取り込めていない感があります。風営法などの法律の問題もあり、けっして簡単ではないと思いますが、本リーグを機にゲームセンターのさらなる活性化につながることを期待しています。

本田氏: そうですね。一番のリアルの場、いわゆる「コト消費」と言うのは、まさにゲームセンターのことだと思います。「BEMANI PRO LEAGUE」の開催を通じて、特にゲームセンターに遊びに行かないお客様に対しても、試合をご覧になったことがきかっけで、「ちょっと遊びに行ってみようかん?」と、体験型のものに対してもお金を使っていただく、そんなきっかけ作りもできればと思っております。

コナミブース内には、自社プロデュースのゲーミングPC、「ARESPEAR」や各種デバイスも展示されていた。「BEMANI PRO LEAGUE」が盛り上がることで、これらの売上アップも見込めることだろう
BEMANIシリーズの「jubeat」と「pop'n music」の新筐体もプレイアブル出展。今後はこれらのタイトルでのプロリーグ開催も、おそらく視野に入れているハズだ

 ゲームメーカー1社のみならず、ゲームセンターを経営するオペレーターも参加したうえで開催されるという意味でも要注目の「BEMANI PRO LEAGUE」。将来的には、選手が実力次第ではゲーム一本で生活費を稼げるようになるだけでなく、オペレーター側から見れば自社店舗が「プロ選手がホームグラウンドの店」として注目され、店舗がファンから聖地化されて連日多くの客でにぎわう、そんなムーブメントが起きることを望んでやまない。