【特別企画】

【CES2020】ASUS「ROG Swift 360」でゲーミングモニターは360Hz時代に突入!

テレビもPCや次世代コンソールを含めた最新ゲーミング環境に完全対応

1月5日~10日開催

会場:Las Vegas Convention Center他

 CES2020が本スタートした1月7日より、NVIDIAは例年通りメディア向けの内覧会をCES会場近隣のホテルで実施している。本年のNvidiaはメディアデイにプレスカンファレンスを実施せず、同社CEO、Jensen Huang氏の革ジャン姿に拝謁できなかったのは残念だが、本内覧会では魅力的な新製品を間近で見ることができた。

 本稿では、久々にリフレッシュレートの限界を突破してくれたASUSの360Hzゲームングモニタと、リビング向けの大型テレビでありながらBFGDs(ビッグフォーマットゲーミングディスプレイ)のトップに躍り出たLGの77インチ4Kテレビのファーストインプレッションを軸に、本内覧会の模様をお伝えしたい。

「ROG Swift 360」360Hzゲーミングディスプレイを使えばゲームが上手くなる!?

 NVIDIAは1月1日にはASUSと共同で開発してきたeスポーツ向けゲーミングモニタ「ROG Swift 360」を発表した。画面サイズはeスポーツ標準の24.5インチ1920x1080のフルHDで、DP1.4とHDMI2.0をそれぞれ1ポート搭載する。大注目はそのリフレッシュレートで、これがなんと360Hzという異次元の超ハイリフレッシュレートだというから度肝を抜かれる。従来のG-SYNC対応モニタの最高リフレッシュレートはHP「OMEN X 65」の250Hzで一気に1.44倍の高速リフレッシュが可能になる。

 本内覧会では、「ROG Swift 360」のリッフレッシュ性能を体感するために、eスポーツの定番ゲーム「Counter Strike: Global Offensive」(以下「CS:GO」)を活用した2つのデモが行なわれた。

 ひとつ目のデモは、スナイパーライフルでわずかに開け放たれた扉ごしに通過するエネミーを狙撃するというものだ。比較対象は60fps、60Hzの設定で、360fps、360Hzの「ROG Swift 360」とは、実に6倍の差がある。

 狙撃のシチュエーションは固定されており、通過するのはエネミーしかいないことから、テストとしてはごく単純な反応をみるものだと言える。ところが、扉の幅に対してエネミーの通過速度は意外に速く、60Hzのモニタでは、これが一向に当たらない。ところが、360Hz環境でまったく同じテストを行なうと、これが見事に当たるのだ。多くのメディア体験者が60Hzでは多くても1~2発の命中に留まる一方、360Hzでは少なくとも6発多い人で9発を命中させていることから、超ハイリフレッシュレートにはゲームプレイの精度を向上させる効果があると証明されたと言っていい。

【360Hzスナイパーテスト】
メディア挑戦者の記録。この結果を見ると「ROG Swift 360」が欲しくなって当然だ

 人間の単純応答速度は速くても150ミリ秒程度と測定されており、エネミーを目視してからマウスクリックするまでの時間は、試行回数が増えていくほど慣れによる応答速度が向上するにせよ、いきなり2倍の75ミリ秒になるようなものではない。陸上アスリートのフライング判定でさえ0.1秒、つまり100ミリ秒の基準が採用されているほどだ。

 コンソールゲームでは、ペリフェラル入力、ゲームロジックの処理、グラフィクス描画への反映という一連のプロセスを固定フレームレートを前提にフレームレートに同期させて行なうものも多いが、パソコンゲームの場合、古くから可変フレームレートであったため、ペリフェラルからの入力からグラフィクスへの反映は、実際に出ているフレームレートとは関係なくゲームロジック単独の時間周期に基づくものが多い。

 そのためフレームレートが6倍になったからと言って、ゲームロジックの処理サイクルが6倍になったりはしないし、入力を掴むチャンスが6倍細かくなったりもしない。ゲームロジックを処理した後、それに基づいて変化したフレームが表示されるまでの時間は確かに1/6になるが、それはエネミーにヒットした後のヒットマークやダメージ演出表示の問題で、狙撃しやすくなったことの説明はつかない。

 では、なぜ狙撃成功率が上がったのか。その答えは、エネミーの移動アニメーションを構成する画像が多くなったことに起因する。仮に扉の隙間の幅が1mだとして、エネミーの移動速度が時速10km(秒速2.778m)だとすると、エネミーが扉の隙間を通過する時間はわずか0.36秒ということになる。その結果、60Hzの場合に画像は秒間60コマしかないわけだから、エネミーが画面に描画されるチャンスは約21回ということになってしまう。360Hzであれば同じ0.36秒の間に6倍描画できるわけだから、約130回弱エネミーが描画されることになる。

 60fpsは人の目にとってフリッカーのないアニメーションが滑らかに見える最低限のフレームレートであり、この60fpsを超えたあたりからは仮現運動(動いていないものが動いているように見える現象を差す)の介在する余地はないとする説もある。同説によると、人間の目は秒間60枚の連続する静止画として捉えており、しかも注視している物体の網膜上の位置が変わらないように追従し、最高解像度を保っているという。

 この注視している物体の解像度を最大に保ち続けるためにはサンプル数が多い方が有利であるから、単純に21枚のサンプルの60fpsより130枚のサンプル数を持つ360fpsの方が動体を高解像度で認識し続ける上で有利に働く。しかもアナログに目を動かし続けてエネミーを追った時、60Hzのときより360Hzの方が、実際に目の一番よく見える位置に捉えられる期待も大きい。

 ごくわずかな時間でも、ちゃんと真っ直ぐにハッキリと見据えることさえできれば、適切なタイミングでトリガーを引くことは容易になる。ごく簡単にいうとこれだけのことなのだが、ゲームの勝敗を左右しかねない。

 この他、扉の隙間のどの位置にエネミーが最初に表示されるのかの違いも大きいだろう。最悪のケースで隙間にさしかかる寸前の遮蔽された位置にエネミーを描画したとすると、次の描画は60fpsの場合、エネミーの出現は0.0166秒後の46mm前進した場所ということになる。対して360fpsの場合は、0.0028秒に7.7mm前進した場所ということになる。プレーヤーのエネミーの発見が60fps基準で1フレーム遅れるごとに、60fpsの方では時間軸で13.1ミリ秒遅く、位置で38.3mm先に進んでしまっていて不利だいうことになる。位置はともかく、エネミーを視認し続けられる最大時間0.36秒のうち約3.6%のチャンスが失われるというのは無視できない。

 続く2番目のテストは、同じ位置で反時計回りに回転しながら、画面内に出現したエネミーにヘッドショットを決めると言うものだ。自己操作によって、見かけ上は常に水平方向にスクロールし続けているのと同じことになる。フレームインしてくる敵を撃つという意味では、最初のテストと大きな違いはないが、回転する動きの量や向きはプレーヤーの任意で決められるため、こちらの方がプレイ難易度は低い。ただし、エネミーの出現には揺らぎがあり、最初のテストほど周期的で単純な動きを繰り返すわけではないため“ヤマを張る”ことはできない。発見次第、的確な照準合わせとトリガー操作が必要になる。

 こちらの方も、60Hzと360Hzの結果の差は明らかで、どの体験者もおおむね20%程度良好な成績を修めている。この2つのテストから360Hzの超ハイリフッレッシュゲーミングモニタには、eスポーツなど特に即応性を要求されるゲームのプレイにおいて、スコアアップ確実な効果が認めらたといえるだろう。

 この「ROG Swift 360」は、2020年内後期に予定されている。G-SYNCディスプレイのローンチには発表からかなりの時間を要したため、本製品の方も開発が難航するかもしれない。とはいえ「ROG Swift 360」は、どんなに待ってでも手に入れたいと思わせるほどの突き抜けた個性が光っている。

【360Hzヘッドショットテスト】
メディア挑戦者の記録。狙撃と比べて差が少ないがそれでもスコアが出ているのがわかる

OLEDテレビの最高峰LGの2020年モデルは全12機種がG-SYNCに対応

 LGのOLEDテレビの2020年モデルは、ここ数年のアップデートの集大成とも言うべきもので、全12機種がありとあらゆる規格に対応する。もっぱら映像視聴にウエイトを置いた製品展開を行なうテレビメーカーが多い中、LGだけがゲーミングを重要な柱と位置付けている。

 日本のテレビメーカーは放送波の視聴一辺倒で、一部の日本メーカーや多くの海外メーカーでもストレート表示を行なう、いわゆる“ゲームモード”を搭載するに留まっている。これに対してLGは従来からPC向けモニタのラインナップにFreesyncやG-SYNCに対応する製品を加えてきたが、2018年まではあくまでPCはPC、テレビはテレビといった位置付けだった。その潮目が変わったのが2019年で、2020年に至って完成度を増し、LGはテレビを、ゲームを含めた全てのソースを飲み込む家庭内のセンターディスプレイとして再定義している。

LGテレビ2020年モデルの商品コンセプト

 次世代ゲーミングの可変フレームレートに対する取り組みも積極的で、Freesync、a-sync、VRRに加えて、他社では対応を手控えるG-SYNCにまで対応している。2020年のテレビにカテゴライズされる製品のなかで、ゲーミングに対してLGほど豊富に製品を取り揃えたメーカーは他にない。

 4K解像度に、55、65、77インチのBXシリーズ、48、55、65、77インチのCX、55、65、77インチのGX、8K解像度に77、88インチのZXがラインナップされており、2019年のE9、C9、B9モデル同様、G-SYNCに“互換”対応する。加えて、ファームウェアのアップデートを経て2019年モデルの88インチ8KモデルZ9もG-SYNC“互換”対応を果たすことになった。

 昨年のCES時点では、G-SYNC対応BFGDsモニタのトップランカーにして唯一の商品はHPの「OMEN X 65 Emperium」で、4K、144Hz、HDR最大輝度1000NITSのLED液晶ゲーミングモニタだった。それが今回、出自の違うリビングテレビの世界からやってきたOLEDが、サイズと解像度の面でゲーミングモニタを軽く凌駕してしまったということになる。

NVIDIAブースに展示されていたのは77インチモデルのZXだ

 LGのOLEDテレビは、最大リフレッシュレートこそ120Hzと飛び抜けた性能ではないものの、88インチでHDR色空間をサポートするフラッグシップモデル「2020ZX」は他を一歩も二歩もリードするものだ。その他のモデルも完成度は高く、G-SYNCだけでなく現在規定されているすべてのリフレッシュレート制御規格に対応するから、LGの2020年モデルなら何を買ってもオールマイティなゲーミング環境として申し分ない。

 液晶に対してOLEDは原理的に応答性に優れている。自己発光体であることからフレーム間の繋がりが滑らかで、激しい動きのソースに強いとされる。また、最大輝度こそLEDバックライト液晶に劣るものの、シャドウ部分の中間階調表現に優れ黒ツブレしない。ゲームシーンに暗所が多いゲームの場合、OLEDの方が圧倒的にプレイしやすい。これらのOLED特性を熟知しており、大型OLEDパネルを生産可能な世界で唯一のメーカーLGの製品には絶対的な安心感がある。

PCモニタでは早くからVRRをサポートしG-SYNC互換認証を受けてきたLG。2019年に引き続き2020年モデルでも多様な機器に積極対応

 ただし、LGのG-SYNCテレビに関して、ひとつ頭の片隅に置いて欲しいのは、これが“互換”対応だという点だ。G-SYNCの規格にハードレベルで完全に対応している機種には、ディスプレイ側にもG-SYNC制御用チップが搭載されており、G-SYNC動作を完全に保障する。一方で、LGテレビのような“互換”対応のものは、ディスプレイ側にG-SYNC制御チップは搭載されていない。

 NVIDIAが実施するFreesync由来のVRR(可変リフレッシュレート)対応製品のG-SYNC動作検証プログラムをパスした製品が、“互換”対応の認証を受けているに過ぎない。この“互換”認証プログラムは、2019年にNVIDIAがG-SYNC対応製品の拡充の進捗をみて、Freesyncに対して優勢とは言えない市場動向に迎合して間口を広げたとみることもできるだろう。“互換”対応製品は、完全対応製品の持つ残像低減機能やオーバードライブには対応しない。

 また、潜在的には将来のNVIDIAのGPU製品側やFreesync由来のVRR側の動向によって、G-SYNCとの互換性が低下する可能性が否定できない。とはいえ、少なくとも現状リリースされているNVIDIAのGPU製品に対しての可変リフレッシュレート動作に問題がないわけだから、殊更に不安視する必要はないだろう。

 1000NITSを超えるHDR色深度や120Hzを超えるリフレッシュレート、低遅延を優先するなら、G-SYNC ULTIMATEに位置付けられ、アドバンスドG-SYNCプロセッサを内臓したAcerの「X35」やASUSの「PG35VQ」が35インチながら4K、200Hzと秀逸だ。大画面を求めるなら前述した「OMEN X 65 Emperium」ということになるが日本では未発売のままだ。結果的に、日本で入手できる大画面G-SYNCディスプレイはLGのテレビだけということになる。

LGテレビ2020年モデルのラインナップ

 本内覧会場に設置されていたのは、77インチのモデルで、88インチの最大サイズのモデルではなかったが、その存在感は圧巻だ。ホテルの一室で、ちょうど広めのワンルームくらいの大きさの部屋であったこともあり、部屋の短辺を埋めつくさんがばかりの大きさだ。視野を覆い尽くすほどの大画面は、88インチならなお良いかもしれないが、77インチでも十分すぎる臨場感と没入感が得られる。

 大型テレビ最大の問題は価格面だ。88インチ8KのZXの場合で、2019年モデルのZ9同様、アメリカで3万ドル前後、日本では350万円程度の価格が予想される。Z9が日本でも発売されたことから、ZXも日本市場に投入されるのは間違いないとみていい。77インチモデルに野心的な価格設定を期待したいところだが、それでも2万ドル前後の価格にまで抑えられるのかは未知数だ。大画面高解像度のOLEDパネルは他社に作れないLGの独壇場であるため、8K OLEDは2020年も引き続き高嶺の花となりそうだ。

後日LGブースで近撮したZXの88インチモデル。圧倒的な実在感をもつ描写が魅力だ

 例年より規模を縮小した感がある本年のNVIDIAだが、しっかりと目玉製品を用意してくれていた。次世代コンソール機の動きもあって2020年はライバルのAMDに注目が集まっているが、リアルタイムレイトレーシングで先行するGPU製品の次の一手がみられるのもそう遠くないはずで、早ければ今年3月のGDCかGTC会期に合わせて新情報が出てくるかもしれない。

 また、本内覧会で展示されたディスプレイ製品は、どちらも従来の殻を破り大きな飛躍が期待される製品ばかりだ。2020年の秋から冬にかけての大きな出費に備えて、今から準備をしておく必要がありそうだ。