【特別企画】
環境に配慮した模型製作って何? ホビー商品でエコロジー? 様々な技術や施策、ユーザー環境で変わりつつある「ホビーとエコ」
2019年7月25日 10:52
ウェーブの「水性・油性兼用塗料固化剤」のニュースが好評だった。本商品は塗料や溶剤などの液体を“固形廃材”にすることができる。塗料や薄め液などを処分するのに困っているモデラーは多いだろう。この商品をウェーブのHPで見つけたとき、筆者と同じように興味を持つ人は多いのではないか、という期待はうまく当たったと言える。塗料をどう処理すれば良いか、プラモの塗装をやった人ならば強く関心が寄せられるテーマだったわけだ。
一方でちょっと読者とのレンジが合わなかったか、“ハッピーセットのおもちゃリサイクル”の記事は残念ながらヒットはしなかったが、こちらも興味深い取り組みだ。ホビー関連は大きなプラスチックや金属の商品を手にする。筆者のようなコレクターは「墓の中まで」という気合いでため込んでいるが、手放す人も多いだろう。商品のリサイクルは興味深い取り組みだ。
現在エコ活動は大きな関心事であり、ホビーでもその動きは広がっている。モデラーにない人にとってウェーブの商品がどういう意味があるかを解説したいし、ホビーメーカーのエコ活動の取り組みも紹介しておきたい。今回は「ホビーとエコ」という視点でいくつかのテーマを取り上げていこう。
こだわりのモデラー必須の「塗料」、処理問題への取り組みは?
まずは話題を集めたウェーブの「水性・油性兼用塗料固化剤」に関して、ホビーに詳しくない人にも向けて、なぜこれが関心を得られたのか解説していきたい。この商品は塗料をはじめとしたプラモデル製作に使う液体材料に対し、粉末状の樹脂を吸わせることで、安定して処理ができるようになるという商品である。プラモデルは特に“塗装”で液体を使う。これが実はちょっとやっかいな代物なのである。
プラモデルを塗装する場合、多くの塗料が必要となる。水性のものだけでなく、「ラッカー系」、「エナメル系」といった種類がある。ラッカーやエナメルは揮発性の強いシンナーで液状に薄めることで塗装が可能となっている。プラモデルに塗ることでシンナーが揮発し、塗膜がプラモデルの表面に固着するのである。ラッカー系は特に安定した塗膜をつけることができるので、美しい仕上がりにできる。
モデラーは質感や色などを考えて塗料を使っていくのだが、安全性や使い勝手を優先して水性塗料を使うモデラーも多い。臭気や中毒の危険性が少なく、引火もしないので安全であるが、塗膜が薄くなりやすかったり、傷などに弱いといった点もある。水性は作業や処理がやりやすいが塗膜が弱い。一方でラッカー、エナメル系は洗い落としにくいため作業スペースにはより注意が必要だ。
塗装はプラモデルを美しく仕上げることができるが、かなりの道具が必要で作業の難易度も高い。だからこそ趣味としてのめり込めるのであるが、余り使わない塗料が中途半端に固まってしまったり、汚れてしまった薄め液(シンナーの溶剤で、塗装を拭き取ったり色を混ぜたり、筆を洗うなど様々な場面で使用する)をどう処理するかは悩みの種だ。
流しなどに流すことはできない。パイプなどで固まってしまう可能性があるし、環境問題としても大きい。モデラー達はティッシュや古新聞にしみこませて処理をしていることが多いようだ。この「水性・油性兼用塗料固化剤」は樹脂で固めて処理ができる。ペンキなどは固めるための薬剤なども販売されていたようだが、プラモデルメーカーのウェーブが製品として販売してくれたことは、モデラーにとってうれしいし、注目したいところだろう。
塗装は中毒の危険性や匂いが強く、特にスプレーやエアブラシを使う場合は周辺を汚しかねない。こだわりのモデラーは作業スペースなども用意しているが、アパートで暮らしている人などには中々難しい。この「作業スペース」をレンタルさせてくれる場所もある。東京お台場のガンプラの一大拠点である「ガンプラベース東京」はこの作業スペースをレンタルすることができる。
他にも「プラモデル 作業スペース レンタル」で検索するといくつかある。こういった作業スペースを使う、というのも、塗料の処理や、作業スペースの確保に有効だろう。作業スペースではもちろん公共のマナーが求められるが、廃材の処理などにも店舗の協力が仰げるというのも大きな利点だ。
様々な玩具メーカーが行っている環境問題への取り組み
話を一旦メーカー側のエコ活動に移したい。エコロジーへの取り組みは現代社会において全てのメーカーが求められる。ゴミ分別の徹底や、産業廃棄物の処理など法律で細かく設定されており、これらの基準を守らなければ、業務を行なうこともできなくなる。
それとは別に、エコ活動への取り組みも求められており、玩具メーカーは公式ページでアピールしている。そういう中で、ホビーメーカーではないものの多くの玩具を「ハッピーセット」として扱うマクドナルドが玩具の回収と、プラスチックの再生、活用を行なっているという活動は評価したいところだ。
タカラトミーは「エコトイ」という基準を設けている。電池などを使わず手で遊ぶ玩具などは「遊び方がエコ」ということで、再生材料を商品に使用している場合は「おもちゃづくりがエコ」、部品の交換などで長く遊べる設計を目指している商品は「おもちゃであそぶときのエコ」など自社の様々な取り組みもきちんとどのような工夫をしているかアピールし、対応した商品にはパッケージにマークをつけているという。
個人的に感心させられたのは東京マルイのBB弾「パーフェクトヒット バイオ」だ。植物由来の素材やミネラル成分で構成された、石油系の原材料を一切使用していないBB弾である。地表落下後に水と二酸化炭素に分解されるため、屋外フィールドでの使用に適している。
筆者がエアガンの試射レビューで屋外で使ったとき、紛失したBB弾がきちんと分解されるというのは、気持ち的にもとても助かった。迷惑を掛けずに遊びたい、というところで感心させられた技術である。また、「パーフェクトヒット バイオ」はベアリング機器製造の技術を活用した品質の高さもウリで、まっすぐ弾を飛ばしたいというユーザーにはグッとくるBB弾である。
今回エコ関係で非常にイメージしやすく、その工夫に感心させられたのがBANDAI SPIRITSホビー事業部の“ガンプラ”でのエコの取り組み。こちらのページで見ることができるのだが、ガンプラ製造での「多色成形機」による必要な色素材を必要なだけ、1つのランナーで製造できること。さらにランナーをより細く、パーツを圧縮しランナーを少なくする工夫なども紹介している。
ガンプラはより組みやすく、少ないパーツで可動ができるようになったり、様々な素材を1枚のランナーで組み合わせていたりと、その技術には感心させられていたのだが、エコへの配慮もしているのがわかった。こういった取り組みは様々なメーカーで取り上げている。商品紹介ほど大きく告知はしていないが、メディアとして取り上げる価値のある情報だと感じている。
ホビーは中古流通も活発に
もう1つちょっと視点を変えて、ホビー商品や、組み立てたプラモデルの「処分」についても考えておきたいところだ。ただ捨てるだけでなく、それを求めるユーザーに自身のアイテムを売るという「中古販売」は現代は活発である。
「ハードオフ」グループにはホビー専門の買い取り・中古販売を行なう「ホビーオフ」があり、カードやアクションフィギュアといった商品だけでなく、組み立て済みプラモデルなども回収してくれる。もちろんジャンク扱いも多く、自分の思い入れのある商品を手放す場所としては……という思いもあるが、実は模型ユーザーなどはこういった所で改造パーツを入手することもあるようだ。壊れてしまったアイテムの補修用品としても活用していたりするのだ。
ヤフオクなどでは手間がかかるが、個人で出品でき、購入専門ユーザーも多く、中古商品の取引も活発だ。ただ妙に強気というか、できるだけ中古品を高く買ってもらおうとしてだぶつかせている個人や業者も多く、こういったところはMMORPGのオークション取引を思わせる。適正と思える価格で高品質な商品が出ると猛烈な争奪戦にもなりかねない。オークションで「宝探し」を趣味としている人も多いのではないだろうか。
高価なホビーアイテムが多く生まれてくる現在、秋葉原の専門店も始め、こういった中古取引の活動もさらに活発になっている実感がある。「あのとき手に入れられなかったけど、どうしても手に入れたい」という想いを持っている人も少なくないだろう。リニューアルで叶えられる場合もあるが、中古市場は濃いホビーユーザーが強い関心を寄せている場所なのである。中古商品でもそれを望む人がきちんと手に入る環境作り、というのも需要が高いと思う。
玩具やアイテムをため込んでるに筆者は「迷宮の奥で宝物をため込んでるドラゴンって、ひょっとしてこんな状況じゃないの?」と思うこともある。エコとかリサイクルには一見縁遠い生活だが、企業や個人活動でも環境に配慮した動きは活発で、そのエネルギーは現代の我々全体に波及している。高品質で高精度なホビーが楽しめるようになった一方で、環境への取り組みも高度なものになっている。今回はこういった企業の取り組みを中心に、変わっていくホビー業界の風景を取りだしてみた。今後もユニークな視点でホビーを考えていきたい。