インタビュー

賑やかすぎる箱庭&育成ゲーム「ぷちココ」インタビュー

データマイニングの経験が生み出した「驚き」と「面白い」を心がけるWebアプリの挑戦

5月 収録

3月に配信がスタートした「ぷちココ 光とたまごと聖なる樹」

  3月に配信がスタートしたgloopsのスマートフォン版Mobage用育成&箱庭シミュレーション「ぷちココ 光とたまごと聖なる樹」(ぷちココ)。同社のタイトルは、これまでは「大戦乱!!三国志バトル」、「大連携!!オーディンバトル」などをはじめとした、他のプレーヤーとのバトルを大きく打ち出したタイトルが中心となっていたが、今タイトルだけは全く毛色が変わったものとなっている。

 「ぷちココ」は、プレーヤーが聖なる生物「ココ」の世話係となって、ココを育てながら島を発展させていく育成&箱庭シミュレーション。様々な属性を持つココを交配しながら、新たなココの発見と島の拡大を目指す。Webアプリでありながら画面いっぱいにココたちが動き回る様子や、ココたちそれぞれに付けられたアニメーションによって、各プレーヤーがお気に入りのココを視覚的にわかりやすく見つけられるようになっている。

 ココたちのかわいらしさにすっかりやられてしまい、筆者も配信開始以来すっかりハマってしまったのだが、今回、「ぷちココ」ディレクターの久田幸司氏とデザイナーの村下麻衣子氏にお話を聞くことができた。聞けば、久田氏はゲームタイトルのディレクションを担当するのは今作が初だという。

 では久田氏はなぜ、本作のディレクターになったのか? その辺りの経緯から、本作に対するこだわりに至るまで、両氏にお話を伺っていった。

コンペ優勝でいきなり「ぷちココ」ディレクターに就任。“常に変化のある世界”を目指す

「ぷちココ」ディレクターの久田幸司氏
デザイナーの村下麻衣子氏
賑やかに動き回るココたちが印象的な「マイページ」

――久田さんは「ぷちココ」以前は何をご担当されていたのですか?

久田幸司氏: gloopsでは、データマイニングといって各コンテンツの分析を行なっていました。他社タイトルや市場の動向を共有しながら、数多くのタイトルを見てきました。

――そんな久田さんがなぜ「ぷちココ」のディレクターに?

久田氏: 弊社では月に1回、全社員参加可能なコンペがあって、昨年の9月にコンペに応募したというのがきっかけになっています。gloopsでは、自分で手を挙げる人は、多くのチャンスをもらうことができます。自身の企画を実現したい! という強い気持ちはあったのですが、チャレンジングな内容でありましたので、社内の多くの方々に色々なアドバイスを頂きました。実際決まってみると……素直に嬉しい反面、プレッシャーもすごく感じました(笑)。

 コンペでは、自分でチームメンバーを集めてより具体的なプランニングを見せなくてはいけないのですが、そこで企画に賛同して集まってくれたのが村下です。

村下麻衣子氏: 私は1年前くらいに入社してから、「大熱狂!!ダービーカード」の運用画像、イベントタイトルロゴ作りなどを担当しました。コンペの時に、「ぷちココ」のデザインコンペを経てメインデザイナーになりました。

――企画発想の根源にはどんなものがあったのでしょうか?

久田氏: 企画の元には、3つのコンセプトがありました。それは「常に変化がある世界」、「ゲーム内でお気に入りを作ってもらうこと」、「自由度の高さ、個性が表現できること」です。

 このコンセプトというのは、データマイニングの仕事をする中で、“ディレクターが目指すべきもの”として自分の中に段々とできあがっていったものです。それでgloopsではどんなものが可能かを考えていって、できあがったのが「ぷちココ」です。ふと浮かんだというわけではなく、そういう積み重ねで生まれました。弊社としても、Mobageプラットフォームとしても新しいジャンルなので、チャレンジングなタイトルになったと思います。

――データマイニングの経験が正に生きていますね。ラインナップの中でも毛色が変わっていますが、gloopsの中では「ぷちココ」はどのような立ち位置なのですか?

久田氏: 現在はチャレンジモデルとして取り組みをさせていただいてます。ジャンルとしても箱庭に育成が加わったものはMobageプラットフォームでも唯一かなと思います。なかなか実験的なことはさせてもらえないので、とても幸運です。

――本作をプレイして最初に感じるのは、マイページの賑やかさです。ココたちが自由に動き回っているのもそうなのですが、Webアプリらしくないというか、画面内の何かをタッチすると、ページは切り替わらないままアニメーションでメニューが入り込んでくる、みたいな動きが面白いですよね。

久田氏: マイページの動きに関しては、村下にほぼ決めていってもらいました。企画段階では、「1つの画面で色々やりたい」ということだけがあって、それを伝えていました。

村下氏: 女性向きのタイトルでもあるので、ココの個性的な動きも含めて、「1画面で遊べる」というところで制作しています。最もこだわった部分もここで、すべての基盤になっています。

――ココを育てていくと、とにかくココたちが画面を好き勝手に動き回りますが、これも最初から考えていたのですか?

久田氏: 最初に想定していたのは、もう少しライトな印象のもので、動きも2、3パターンくらいしかありませんでした。その頃は左右に動くくらいかな、という感じだったのですが、ココたちの個性を出していこうとする中で、段々と「どこまでできるのか」というようになってきて(笑)。技術的にはギリギリのところまで突き詰めました。

 マイページについては、キャラクターが常に動いていたり、昼夜の概念があったりと、「常に変化がある世界」というコンセプトの部分でこだわっています。「ログインするたびに変化し続けること」というのを目指して制作しています。実際のところ、マイページについてはUX(ユーザーエクスペリエンス)にこだわり、まだまだこれから進化させるつもりです。

 まずは操作性の改善やAndroid端末でもより良く動くようにして、その上で画面の中で驚きがあるようなことを実現していきたいですね。また今後は、よりキャラクターへの愛着をもってもらうための仕組みなども考えています。

「マリーのしま」。画像ではわかりづらいが、画面左上にも見えるココが画面中を動き回る。これをタップすると、ある変化が起こる
ココの飼育画面。特にどこにも説明があるわけではないが、ここでは「BREEDING」の看板をタッチしてクルクルと回転させられたり、ココをタッチしてハートのエフェクトを出せる、という仕掛けが存在する

――驚き、という言葉が出ましたが、日々色々やっている印象があります。

久田氏: 最近ではサポート役の妖精の島にでかけられる「マリーのしま」というのがあって、そこで画面に現われる“あるモノ”をタッチすると……という仕掛けがあります。特にイベントというわけでもなく、裏技的な要素なのですが、そういった驚きは常に入れています。これは裏話ですが、同時アクセスで最高値を出していて、「そんなに反応があるんだ」とこちらも驚きました。

村下氏: 実は、この施策は私がキャラクターにアニメーションをつけて遊んでいたことがきっかけとなっていて、開発チームが1日で入れ込んだものです。企画を担当していなくても、どんどんアップデートしていけるという雰囲気がありますね。

久田氏: かなり柔軟な追加をしています。ただ、その本質にはしっかりと「面白さ」、「話題性」、「驚き」を提供するというのがあります。そこはブレずにやっているので、今後も続々とやっていきたいですね。要望に応えること、また自分たちがやりたいと思ったことがすぐできること、それが今の「ぷちココ」ではできているのかなと思います。

――「マリーのしま」もそうなのですが、他のタイトルと比べて全体の説明が少ないというか、自分たちでできることを発見していくような作りになっていますよね。

久田氏: 「ぷちココ」では、ユーザー同士のコミュニケーションを最も重視しています。1人でとことん楽しむこともできますが、もっと楽しむために、誰かと一緒に遊ぶことが必要だと思っています。遊び方の幅が広がりますしね。実際のところ、公式サークル(タイトルに付随したMobageの掲示板)の盛り上がりには驚かされています。中にはこちらが勉強になるほど丁寧な情報もあって。

 そうやって交流を楽しんでほしいというのがあって、実際コミュニケーションが生まれています。細かく説明するよりは、直感的にわかりやすく、スタンプといった機能で交流をサポートするようなもの重視しています。

村下氏: 仕掛けという点では、例えば「COLLECTION」などと書いてある看板をタッチすると、クルクルと回転するんです。何度かタッチすると回転が速くなったりもして。それと、ココの飼育画面でココをタッチすると、ハートのエフェクトが出ます。

――これは毎日触っていても気づきませんでした!

村下氏: ユーザーの皆さまが気付くか気付かないかという隠れ要素の遊び心や、カラクリ的な要素もこだわって入れています。

久田氏: 運営が意図したことだけでなく、ユーザーの皆さまが自分で面白いと思うものを見つけてくれたり、遊び方を考えてくれたりというのが実現できたらいいなと思っています。ユーザーにとって遊園地みたいな場所ですね。そのための面白いカケラは多く提供していきます。

――先ほど話にも出た「マリー」ちゃんは、自分の島で毎日決まった時間に違うことをつぶやいていて、本当に芸が細かいなぁと感じます。

久田氏: あのつぶやきも、担当してくれてるメインプランナーが大変なのですが……(笑)、できるところまでやっていきます。マリーだけでなく、他の妖精も個性があるキャラクターなので、今後にご期待下さい。

【チュートリアル】
チュートリアルも文字を極力排除して、絵で操作方法を伝えるようにしている

(安田俊亮)