インタビュー

「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー第3弾!

「アーケードはコインボックスにお金を投入してプレイするもの」を再現

「アーケードはコインボックスにお金を投入してプレイするもの」を再現したコイン投入時の環境音

タイトル画面からクレジットを投入すると、コインが落ちる環境音が追加された。コインボックスは筐体の右側にあるので、落下音も右から聞こえるようになっている
松岡氏によって、コインボックスに何段階かに分けてお金が入った状態で投入音が録音された

並木氏: 今回、「スペースハリアー Ver.2」ではコイン投入環境音も入れてあるので……(笑)。あれも「何をしているんだこの人たちは?」という感じですよね?

―― いやー、話を伺ってまず「なるほどね」って思ったんですが、なかなかそこまでは気が周らないというか、実際にお金を投入してプレイしていたときの記憶をそこまで鮮明に覚えていらっしゃる方もそこまではいないと思いますが、でも、あるのとないのは違うな、というところはありますね。

堀井氏: 聞くと思い出すというか、わかるというか。ゲーセンの喧騒の中に置かれた「スペースハリアー」の臨場感が欲しいなと。最終的にはゲーセンそのものの音の中で「スペースハリアー」が稼動すればいいんですけれども、今のところは環境音としては「スペースハリアー」の音をがんばるという形ですね。

並木氏: そういう意味ではあらゆる「環境音」を組み込みたい、という欲求は最初からあったんですけれども、欲張りすぎると開発に負担もかかってしまうので、少しずつやれることを増やしていった感じですよね。例えば電源を投入したときのアイドリングのモーター音、「バチン」っていってから「ブゥゥーン」ってモーターが駆動する音とか。最初にやったのは「3D ギャラクシーフォースII」からですが、環境音も作を追うごとにやれることを模索していった部分はありますね。

 「3D アウトラン」ではそれまでの「セガ 3D復刻プロジェクト」のラインナップの中になかったアクセルやブレーキがあって、これを組み込んだときもハンドルの操作感と、実機のハンドルのロック音が、スライドパッドでの操作で思い出せるようにしましたし。「3D サンダーブレード」も自分が筐体を動かすタイプですが、操縦桿を振り切ったときの音を入れることで、自分が操作している手ごたえを感じてもらえるようにしたり……。

 そうしてできることをいろいろ追求していった1つが、「スペースハリアー Ver.2」で松岡さんが提案してきた「コイン投入時の環境音を追加したらどう?」ですね。その話を聞いた時もまた「面白いね!」というより先にプロモードのスイッチが入っていたので(一同笑)、「コインボックスに100円玉があまり入っていないと『カツン』って寂しい閑古鳥のなく音になるから、収録の時に多めに100円玉を持っていって、『チャリン』とか、ある程度『繁盛してるんだよ』って感じの音が録れればいいんじゃないかな」って提案をしたんですよ。

 そうしたら、その提案以上に松岡さんが「何回プレイするとどれぐらいコインボックスに100円玉が貯まったか、というのがわかるように、何種類か録るよ」って言い出して、「ああ、そこまでするんだ!」って今度は僕のほうが驚くような提案をしてきたりとか(一同笑)。雑談やバカ話的なものでも、ボールを投げ合って面白いことを追求しあえるというのは、ここまでシリーズのリリースを重ねてこれたから、多少の余裕もできたってことですよね。

―― (笑)。あの収録現場を見ていて、とても興味深かったし、面白かったです(笑)。

並木氏: 「3D スペースハリアー」は違いましたが、その後のシリーズでは、Xボタンを押すとクレジットが投入されて、Aボタンを押すとスタートという形に統一されていったと思うんですが、「クレジット投入」という行為に対して環境音を設けるというのは、「一コイン入魂」みたいな感覚を甦らせたいな、という思いで。

 3DSなんで、お金がどうのこうの、というのはないんですけれども(笑)、元はアーケードゲームですから、コインボックスにお金を投入してプレイするものだったんだよ、ということをゲームの中に入れ込めた、というのはすごくよかったのかなと。まあ、これはこれで実装にあたってクレジット音とのタイミング的な課題もあったりしますが、まずは入れてみようと。ここまでやったものは他にないと思いますので。もしかしたらメダルや硬貨を使ったシミュレーター的なものではあるのかもしれませんが、ビデオゲームでは……。

―― ここまでやったものってあるんですかね? 聞いたことがないです(笑)。クレジット投入というものも、エミュレーターレベルになってからのことだと思うんですよね。クレジットのフラグを立てなければならないようになってからですよね。

並木氏: クレジットのSEならわかるんですが、コインボックスの音というのは……(笑)。

―― また1歩、環境を再現するというレベルが上がったなと思うんですよ(笑)。あの収録は不思議な感覚で見守っていました。

堀井氏: 「君らは何をしているんだね?」という気になるというか。

―― わからない方にはきっとそう思われるんだろうなと。でも、お金をちゃんと入れてプレイしていた方なら当然その側で鳴っている環境音ではあって。意識しているかどうかは別にして。

並木氏: そうなんですよね。シリーズをこれまでリリースしてきて、リクエストの中に「なぜ環境音を入れるなら、コイン投入音をいれないんだ?」っていうハードコアなご意見が来てもおかしくないんじゃないかなと思っていたんですが、あまり来なかったですね。もしかしたら自分たちの知らないところでそういったご意見を頂いていたのかもしれませんし、それを我々に伝えるところまでいっていなかったのかなとも思いますが。

―― そこまでの必要性を感じていなかったのかもしれませんね。「セガ 3D復刻プロジェクト」で環境音を入れたことによって、再現したほうがいいものの1つではあったと思うので、人によっては小さいことの1つかもしれませんが、あれを入れたことによって、クレジットを入れたときの空気が変わるというか。アトラクトデモからお金を入れることで、単にスタートボタンを押す、ということとはちょっと違うな、と思ったので。

並木氏: せっかく「セガ 3D復刻プロジェクト」という貴重な機会だったし、しかも今回はそれがアーカイブされるという、想像すらしていなかったパッケージ化という機会に恵まれたので、我々もできることはやっておきたいな、というか、楽しんでいただけることはやっておきたい、ということで、サウンドの方でも取り組んだ感じですね。

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(佐伯憲司)