インタビュー

「3D サンダーブレード」インタビュー(Part.2)

「スペシャルモード」では海外版をベースに敵を再配置! 撃って稼いで残機を増やす!!

「スペシャルモード」では海外版をベースに敵を再配置! 撃って稼いで残機を増やす!!

――さて、いよいよ「スペシャルモード」についてご説明いただけますか?

(「スペシャルモード」の概要は→こちら

奥成氏: はい! これが我々の考える「サンダーブレード」の完成形として作ったのがスペシャルモードです。これが本当の完成版というくらいの気持ちで。

 まず「サンダーブレード」は、日本では筐体版しか直接販売されていなかったので、あえて日本版/海外版といったような作り方はせずに、日本版=「アーケードモード」として、海外版で変わった細かい要素はすべて「スペシャルモード」に落とし込むことにしました。

 ベースは海外版になっていますが、もちろん、敵セットは「スペシャルモード」用に変えてあります。「スペシャルモード」のコンセプトとしては、「『サンダーブレード』のコンセプトを踏まえつつ、ゲームとしての面白さをさらに向上させよう」ということです。

 で、ゲームとしての「サンダーブレード」を突き詰めていく、ということは、昔の移植でいうところの……。

堀井氏: 「パワーアップ移植」ということです。

奥成氏: メガドライブやPCエンジンでの移植作にあった、忠実に移植できることを前提に、さらに家庭用ならではとしてアレンジしていく、という感覚ですね。マイコンソフトさんのX68000への移植などに近いと言いますか。「ゲームをより面白くする要素を加えたい」というところを「スペシャルモード」という形でいろいろ工夫しました。

 今回「スペシャルモード」でそういった工夫をいろいろさせていただいたので、最初から「スペシャルモード」をプレイできてもいいかな、とも思ったんですが、「オリジナルはこうだった」というところもちゃんと知っていただいた上で、「スペシャルモード」を味わっていただきたいということで、「3D アフターバーナーII」と同じように、「アーケードモード」を1回クリアすると、「スペシャルモード」がプレイできるという形にしました。

―― 「スペシャルモード」の企画は、開発スタート時からわりとすんなり決まった感じですか?

奥成氏: 「このゲームの『グラントノフ』(※セガ3D復刻プロジェクトの追加要素の総称)を何にするか?」という話をしたときに、まず僕は「ステージを増やそうよ」と最初からムチャ振りをしました。

堀井氏: してましたねー。齊藤(※)も「そうしたい」と言ってたと思います。

※齊藤彰良氏……エムツー所属のプログラマ。本インタビューシリーズでは主にサウンド関連の話題に登場することが多い。

奥成氏: で、STAGE4……というよりは実際にはこのゲーム、ボスステージも含めて全12面として計算してもいいぐらいのステージ構成になっているんですが、表記的には4ステージエンドなので……「ギャラクシーフォース」が「I」から「II」になったときに、最終面が追加されたじゃないですか。実はあの面は新規グラフィックは一切無くてすべて他のステージの画像を流用しているんです。

 ああいった形で、「既存の背景などをうまく組み合わせたりすれば、もう1つぐらいステージを作れないかな?」という話をしました。

 移植版でステージが増えるって、昔なら当たり前だったんですけれども……なかなか今日びそういうことはできなくて。「でも、『サンダーブレード』だったら堀井さん、やるよね」って(笑)。

堀井氏: まあねー。僕だけじゃできないこともいっぱいあるけれども……幸い、齊藤もやりたがっていたし。第1期の時奥成さんには「あんなにボリュームの少ないゲームを移植してどうすんの?」って言われたこともあったので、「じゃあ、どうにかすればいいんだな!」って思っていたので。

―― (笑)。そうか……。

奥成氏: という形で、まず、「『グラントノフ』は追加ステージ」というところから話が始まっていましたね。最初は「スペシャルモード」としてではなく、追加ステージとして存在していました。

堀井氏: このインタビューシリーズを読んでくださっている方の中には「『サンダーブレード』を移植したこと自体が「グラントノフ」じゃねーの?」と突っ込んでくださる方がいるんじゃないか、と思いますが。

―― (笑)。確かに!

奥成氏: そして、制作の過程でディレクターの松岡さんと、齊藤さんがゲームをいろいろ解析していったら、だんだんゲームバランスが変わっていって。

堀井氏: ガンガン変わりましたね。

ハイパーミサイルは発射後地面近くで高速に前進する

奥成氏: アーケード版って、コントローラーで操作する家庭用ゲームとしてみると、例えば「ミサイルのリロードが遅い」とか、結構やりにくいところがあるんですよね。そういった部分を含めて「もうちょっと調整したい」という欲求が出てきて。「そもそもミサイルが使いにくい」とか……。ミサイルを空対地ミサイルにしたのは齊藤さんですよね?

堀井氏: 齊藤ですね。当てづらかったので、「できるからそうした」と。

奥成氏: アーケード版でも、キャノンとミサイルって使い分けが必要になってくる部分があるんですけれども。ミサイルは大きな爆風で当てる感じだったものを、明確に変えて。「スーパーサンダーブレード」はロックオン式のホーミングミサイルになっていましたが……あれ、ストーリー上ではアーケード版の3年後が舞台になってたんですよね。

堀井氏: そうですね。

奥成氏: 「アーケード版と『スーパーサンダーブレード』の間の時代というイメージで考えるなら、このくらいのパワーアップしていてもいいかな?」ということで、ステージをどうするか、というところはエムツーさんの課題として残しつつ、「スペシャルモード」としてのプレーヤー機体の能力の向上の部分は、齊藤さんの手によってだんだん作られていったと。

 プレーヤー機の性能が向上しただけだと、ゲームとしてものすごく緩いものになっちゃったんですよ。「スペシャルモード」はすぐクリアできちゃうという。何しろミサイルがすごく強力なので。それで、「ミサイルが強力になったんだから、ゲームバランスを変えよう」って言い出して。これも齊藤さんなんですか?

堀井氏: そうです。最初から敵のセットも変えるつもりでミサイルも強化したんですよ。それこそやりたい放題でしたね。

奥成氏: 敵セットは完全に新しいゲームバランスになっていますので、ゲームとしてシューティングゲームっぽいというか、敵の強力な攻撃をこちらも強力な攻撃で倒していくという形になっています。「アーケードモード」で操作に慣れたところで、「本番です」という感じになっているかなと。アーケード版のストイックさも、操作にある程度慣れるとシンプルになっている分、楽しんでいただけると思っているんですけれども、「スペシャルモード」に関しては、爽快感に向いているという感じです。

 最初ビルの屋上に戦車が配置されたときに「あれ、こんなところに戦車?」って感じで。「スペシャルモード」がROM(データ)に載ったのは結構最後の方だったので、そこからどんどんできてきた、という感じでした。

―― 敵セットがガラッと変わって、とにかく敵の数が増えたなーって思いました。

堀井氏: そうですね。でも(処理は)何とかなったという感じですね。

―― 「スペシャルモード」って、ROMにもし焼くことがあったら、実機でも再現できるレベルなんですか?

堀井氏: 「ファンタジーゾーンII」の時の様に、少しだけハードウエアを拡張しています。今回はキャラクターのバンク数を増やして、ステージが増えた分のキャラクターを載せています。バンク数を増やしたセガのカスタムボードがあれば、ワイド対応こそ無理ですが、動きますね。

―― このプロジェクトの第2期の特長とも言えるかと思いますが、データ配置やプログラムの最適化などがさらにうまくいくようになって、そういった部分の余力が出てきたのかなと思ったんですが?

堀井氏: 第2期は、全般的にうまくいっていると思いますが、「サンダーブレード」はてこずったほうですね。

―― 3D立体視の部分なども含めて、なんだか「手馴れた感」が感じられるんですよね。とはいえ、描画の部分などにはギリギリなんだろうな……と勝手に感じる部分があったりもするんですが。

奥成氏: 「X-BOARD」としては「アフターバーナーII」に続いて2枚目ですけれども。「スーパーハングオン」は「アウトランボード」をベースにしてましたよね。

堀井氏: ゲームを作る側の視点では、「アウトランボード」も「X-BOARD」も似た使い勝手の部分はあるんですけれども、移植する側の視点では結構違うんですよね。

―― なるほどー。オリジナル版の制作スタッフが旧AM2研とAM1研という違いもあるんですかね?

奥成氏:そうですね。鈴木裕さんがプログラムしているのと、そうでないゲームという違いはありますね。

―― 今回、ソースコードがあったことで、より解析が進んで内部データを結構いじれるようにはなったんですね?

堀井氏: そうですねー。地図で言えば東西南北はわかったし、大通りは「いじってなければこう走っているよね」、という部分はわかりました。ただ、細かいところは結構違っていて。でも、ソースがあるのとないのとでは全然違いますねー。

―― これまでの集大成として、いろいろ工夫も入っているし、移植+スペシャルモードを含めて、いろんなところに手が入れられているという。

堀井氏: 「3D スペースハリアー」のときはワイド化して、筐体モードを入れて、「HAYA OH」を入れて……と拡張しましたが、それから比べると本当にいろんなところに手を入れてきましたね。今回は1ステージまるごと増えてますし、「手馴れてきた」というのは間違いないですね。

奥成氏: これまでやってきたことを1つ1つ、全部やってきたというところはありますね。

―― 今回、「スペシャルモード」で「サンダーブレード」を「どういじってどう面白くしよう」という柱を立てるのって意外と難しかったのかなと思ったんですが?

堀井氏: 「ステージを増やす」とか、打ち合わせのときはそれぞれがバラバラのアイデアを出してましたしね。

―― 個人的にアーケード版は「どこか物足りない」と思っていたんですが、「どこに何を?」というと、意外と「これだ!」ってところに納まるまでが意外と方向性がいろいろあったと思うんです。

堀井氏: 結構いろいろあると思います。結局「プレイ時間に対する密度」を上げる方向に持っていったんですね。「サンダーブレード」がそれほど遊ばれなかった理由に「進行が遅いよね」とか、いろんな要因があったと思うので、敵をどんどん倒す方向に持っていって。そういう意味では「3D アフターバーナーII」の「スペシャルモード」とコンセプトが近いと思います。今回も「たくさん倒して残機を増やせ!」です。

奥成氏: 「3D アフターバーナーII」の「スペシャルモード」の場合は、ロックオンミサイルの爽快感を追求する、というところで敵のセットを変更しました。「3D サンダーブレード」では、さらにそこから1歩進んで、自機の武装の性能にも手を入れているので、1つ先を行っているんですよね。「3D アフターバーナー」はアレンジの延長的な部分がありますが、「3D サンダーブレード」ではその先をやっているという。

右に旋回しているのがROM内に眠っていた敵キャラ

―― STAGE3では途中に新たな戦闘機が追加されてたりして。

奥成氏: あれは、ROMを解析していたら、使われていないキャラクターがいたので、「出したい」という話になって、わりと開発の最後の方に追加されましたね。ファイナルの1週間前とか、そんな時期に増えてましたね。

―― (笑)。

堀井氏: そういうことをやっていいときと悪いときがあるんですが、たいていダメなんですけどね。今回は要所要所で変えてあります。

奥成氏: 出てこなかったのには理由があるはずなんですよね。でも今回は「行っちゃえ!」ということで。

―― ROM内にあったデータは完全なもので、描きかけとかではなかったんですね?

堀井氏: 使われていないだけ、という感じでしたね。

奥成氏: 敵セットが多分間に合わなかったんだと思います。ほかにも、遠くの色が白くなっていくという空気遠近の表現とか、そういった細かい演出も加えています。

堀井氏: フォグっぽい処理になっていますね。

奥成氏: 齊藤さん、本当に細かいところをいじってますよね。

堀井氏: 「時間がない」って言ってたのに……「ファンタジーゾーン」と「アウトラン」を手伝いながら「僕はいつ『サンダーブレード』だけに集中できるんだろう?」って言ってましたね。

(佐伯憲司)