インタビュー
PS3/Xbox 360「LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII」プレイ&インタビュー
ライトニングで、多彩に戦い、魅力的に見せ、プレーヤー好みに
(2013/6/13 12:00)
ライトニングで、多彩に戦い、魅力的に見せ、プレーヤー好みに。
3つを叶えるためのウェアシステム
――バトルシステムのもう1つの特徴は、やはり戦闘中に衣装を変える“ウェアシステム”ですよね。ウェアを変えると、見た目だけでなく、戦闘能力やアビリティも変わる。
鳥山氏:“1人のキャラクターでどれだけ多彩に戦えるか”、“ライトニングという女性ヒロインを魅力的に見せたい”、“プレーヤーの好きなライトニングの姿を作り出せるようにする”という3つの目的を満たすには、衣装を変えることに集約するのがわかりやすいと思いました。ですから、ウェアを軸にしたスタイルを切り替えるシステムにしました。
北瀬氏:「FFXIII-2」でも、セラとノエルのコスチュームはDLC等で変えることができましたが、海外のユーザーさんから多く寄せられた意見に、「見た目だけじゃなく、着替えたらパラメーターが変化して欲しい」というフィードバックがありました。そこで、今回は見た目だけじゃなく、戦い方のスタイルが変わり、強さもカスタマイズできるようにしています。
――以前のタイトル発表時でもウェアは相当な数を出すと話されていましたが、大体どれぐらいの種類があるのでしょう?
北瀬氏:今の時点でも、約80種類近くありますよ。
――かなりの数ですね。
鳥山氏:さらに、衣装の色をプレーヤーがカスタマイズできます。簡単にカスタマイズできるプリセットも用意していますが、パーツごとに色を変えることも可能です。結構細かく設定できますよ。
北瀬氏:イベントシーンでもライトニングは、プレーヤーの決めた衣装を着た姿で動きまわります。公開したPVでも、途中でウェアを変えている場面があります。よく見て頂くと「あれ、このライトニングはなんだろう?」と思うカットが一瞬あるんです。
――自分好みのウェアを着たライトニングでプレイできる。ウェアのカラーも細かくカスタマイズできるというわけですね。例えば、DLCでお遊び要素のあるものを出すといったことは考えていますか?
北瀬氏:まだ未定ですが、前作の経験上そういうリクエストは多かったので、検討したいと思います。
――3種類のウェアを切り替えながら戦うので、ライトニングだけで3人分の操作をしているような感触です。今作を最初に知った時に「ライトニングだけでパーティーメンバーはいないんだ」とゲームファンのみなさんは感じたかと思うのですが。でも、全く問題ないですね。
鳥山氏:むしろ今までよりもバトルのテンポは忙しいんです(笑)。
北瀬氏:「FFXIII」と「FFXIII-2」は3人パーティーだったんですが、基本的には1人の操作キャラクターに注目して、後の2人はAIで動いていました。プレーヤーは全体のフォーメーション戦略だけに注意を払えばよく、実際にプレーヤーが注目しているのは1キャラクターのみで、他の2人は自動的に戦っていました。
それが今回は、1キャラクターに完全に集中しています。しかも、その3つのウェアとATBゲージを常に考えながら動かしていきます。頭の使い方とかコントロールという部分では、3つのスタイルを自分で操作し続ける「LRFFXIII」のほうが、3人パーティーだった「FFXIII」や「FFXIII-2」よりも戦略的ですね。
――変な例えですけど「FFXIII」と「FFXIII-2」のバトルは、、リアルタイムストラテジー的に戦法の指示を与えておいて、うまくいくかなと見守るような感じでした。今回は完全に自分でひたすら操作をしますね。
鳥山氏:ひたすら操作しながらも、一手一手考えつつバトルを進めていく感じです。
北瀬氏:面白いのがガードです。クセになるというか(笑)。例えば敵が使用してくる魔法や飛び道具などは。今までの「FF」だと、スパーン! スパーン! と、アニメーション効果がスピーディーだったんですが、本作ではあえてスピードを遅めにしている部分もあります。ライトニングを移動させて敵から離れるほど滞空時間が長くなるから、ガードのタイミングが取りやすくなります。
――プレーヤーが見て反応できるようにしてあるんですね。攻撃が当たる瞬間にジャストガードすると反撃もできますよね。ガードがそもそも手動でできるということで、だいぶアクションゲーム寄りに感じる人もいるのかなと思います。
鳥山氏:あらためて言われてみれば確かにそうですね。
北瀬氏:ただ、敵の攻撃始動モーションが遅いですから。優しいんですよ。
鳥山氏:ここはまだわからないですよ。また速くするかもしれない(笑)。
北瀬氏:そうだね(笑)。アナログスティックでの移動ができるから、魔法で攻撃しつつ敵の魔法もガードしたいと思ったら、自然と距離を取るようになると思います。
――初めての敵と戦うときには遠距離攻撃で様子を見ることもありそうですね。
北瀬氏:そのへんの間合いの取り方などは今までと違ってきそうですね。
「World Driven(ワールドドリブン)」をコンセプトに生きている世界を。レベルデザインも独特に
――昨年の4月から開発がスタートしたということですが、約1年半で発売ということになります。開発のスピードが速いですよね。
北瀬氏:スタッフ全員がほとんど休みなく開発していますから。
鳥山氏:3作目ということもあって、開発環境ももちろん「FFXIII」からずっと熟成させてきました。プロトタイプを作る時のグラフィックスのリソースも揃っているので、開発がスムーズに進むんです。
北瀬氏:基本的にコアなメンバーは同じで「FFXIII」、「FFXIII-2」とDLCを作っています。さらに今回の「LRFFXIII」も一緒に作っているので、非常に経験値が上がっているというのが大きいですね。
――もう、いちいち会議を重ねなくとも、だいたい意思の疎通が取れるような関係なんですね。ライトニングっていうキャラクターの人物像ひとつにしても、ライトニングってこういう人だよねというのをもう全員がわかっているというか。「だってライトニングだよ?」みたいな(笑)。
鳥山氏:それは確かにあります(笑)。ライトニングというキャラクターに対して、開発チーム全員の持っているイメージはそんなにずれていないです。ただ、今回の勝利モーションはやりすぎかなと思ってるんですけど(笑)。
――ウェアごとにあるバトル勝利ポーズっていうのはサービスショット的になっていますね。
鳥山氏:あれはやりすぎたので、製品版では修正になる予定なんです(笑)。でも、ライトニングを凄くかっこよく見せたいんだと伝えれば、動きに関わるセクションはかっこいい動きを作ってくれるし、エフェクトを作るセクションならライトニングをよりかっこよく見せるためにどういう表現にするかを考えてくれるので、チーム一丸となってライトニングを作り出してる感覚ですね。
――逆に「FFXIII」、「FFXIII-2」の頃を思い返すと、チーム全員で話し合って共通イメージを高めていかないと、というのは多かったですか?
鳥山氏:「FFXIII」などの新作を作るときは、さっき言ったライトニングとはどういう人か、コクーンという世界はどんなものなのか、最初の成り立ちを考えて伝えていく時はやはり時間がかかります。
――特に世界観の理解というのは大変ですよね。今作の世界はどのように作られていったのでしょう?
鳥山氏:今回は「World Driven(ワールドドリブン)」という言葉をコンセプトにしていて、まったく新しい世界を作っています。そういう意味では確かに「FFXIII」と同じように、この世界のインフラや、経済の仕組み、物資の供給はどうなっているのかというところからしっかり作り込みました。
例えば街を作る時、そういう経済のシステムが成立した上で人々はどう動くのかを考える作り方をしています。“リアルな世界をしっかり作っていく”ということを、わずかな期間ですけど、最初の1~2カ月の間に詰めていきました。
――生活の仕組みレベルからリアルな世界をしっかり作る。いわゆるオープンワールドRPGの世界作りにも聞こえるのですが、それはこれまではやっていなかったことです。それをやろうと思ったのはなぜでしょうか?
鳥山氏:広い手触り感のある世界を作るというか、自分が生活しているかのように体験できる世界を作ろうとすると、どうしても避けられない道だったからです。
――世界のリアリティを高めようとすると、自然に“生活させないといけない”というか“世界がちゃんと仕組みに従って動いてない”といけないということですか。
鳥山氏:そうですね。その生活している世界、動いている世界の中で、今回はどこに関わるのかをライトニングとしてのプレーヤーが決めていくようなゲームになっています。
今までの「FF」では、ライトニングが街に行ったら、そこで時間の流れを固定して何かが起きていく。そこだけを作ればよかったんですけど、今作ではその事件が起こる前の1日の流れも全部作っています。そういう意味ではすごく密度が濃いと思います。
――プレーヤーが行かなかった場所で事件が勝手に起きて、勝手に終わっている、なんていうことも起こりうるのですか?
鳥山氏:それもあると思います。1回のプレイでは全て体験できない作りになっています。
――レールに乗せてのストーリー展開から、自由なオープン方式に近づいた感じですかね。
北瀬氏:「FFXIII」、「FFXIII-2」と続けていく中で、より世界を自由に遊びたい、世界に触れていきたいという意見が多く、自然と行き着いた結果です。
これまでの「FF」シリーズだと制作期間が数年かかってしまうので、前作を遊んでくれたユーザーさんからの要望をすぐにフィードバックできないし、反映されるとしても3年くらい先になってしまいます。でも、今作のように1年、2年というペースで作れているからこそ、要望が熱いうちにフィードバックできるというのが大きいです。
――まだユーザーさんの意識がそこまで変わってないうちに、要望をフィードバックした次の作品が出せる、今作がそれであるということですね。今作は4つの大陸があって、自由に探索・攻略できるということで、そこでいろいろな出来事がその地域に起きていく。プレーヤーはどれを触るのも自由なのでしょうか?
鳥山氏:プレイして頂いたE3プレビューは、主にチュートリアルのようなストーリードリブンなパートでしたが、そこが終わると一気に行動範囲が広がります。大陸ごとにメインクエストと言えるストーリーがあるのですが、それをどのタイミングから体験していくのか、体験を途中でやめて他のところへ行き、また別のクエストを進行していく。さらに、そのクエストを経験してる間に時間経過でいろいろなことが起こり始めるので、それも拾っていくと、ますます世界が広がっていく。そういうイメージです。
――どこに行ってもいいし、途中で止めて他のところに行ってもいいんですね。
鳥山氏:ただし、そうしているうちに世界が終わってしまうという危険もあります。
――世界が終わるまでの13日。それがリミットになっている?
鳥山氏:13日という世界のリミットですが、最初から13日間あるわけではないんです。最初は7日間ぐらいの自由な時間が与えられるのですが、その間にメインクエストをクリアすると、7日を8日に、8日を10日にという具合にリミットを延ばしていくことができます。
――プレーヤー次第で延命されていくというわけですね。時間が経過していくというゲームですが、レベルデザインはどうなっているのでしょう? 敵の強さが変わったりとか、自分が強くなったり、そこが非常に難しそうに思うのですが。
鳥山氏:いつもの感覚とは違っていて、最初はどこに行っても大丈夫なんですが、敵は日数が経っていくと強くなっていくので、時間の経過に合わせてライトニングも強くしていく必要があります。
ライトニングは、クエストをクリアすることによって世界に住んでいる人々の魂を解放していくのですが、その魂から得られる力を自分の力にしたり、世界の延命に使う。それが成長システムの基本となっています。
(筆者補足:ライトニングにはレベルアップの概念がなく、剣、盾、魔法を合成して強化することで強くなっていく。ウェアによっても能力が変わっていく。また、クエストをクリアして魂を解放することで、アタック+10のようにパラメーターを高めていけるということだ。)
――今回ライトニングは解放者という異名が付いていますが、今も“解放”というキーワードがありました。作品全体のテーマや目的もそこにあるのでしょうか?
鳥山氏:世界は終わりに向かっていて、そこで悩める人々を救済していく。宗教チックな都市もあります。終わりに向かってどういう人生を送るかが世界を描く上でのテーマになっています。それらを総じて、魂の解放というキーワードがあります。
――先日、スノウが登場するという情報が公開されました。彼もまた、世界が終わることを悟っていて、絶望に満ちている。苦しんでいますよね。
鳥山氏:スノウに限らず、終わりに向かう世界には、苦しんでいる人達が多いですね。特にかつてのメインキャラクター達は、終わることが決まっている世界の中で、何年も何年も牢獄にいる囚人のように生きている。世界の人々をどうにか勇気づけながら、もしくは世界を支えるためにある都市を守っている。そういう役割を担っています。
スノウもまた、そういう世界の中で人々を守りながら暮らしていて、セラを失った悩みも含め、全てを自分で受け止めようとしている。それが彼の心の苦悩の深いところにあります。
――もう生き地獄ですね、まさに。ずっと苦しいままで。でも、何もできない。
鳥山氏:そう、何もできないことが彼に無力感を与えています。
――それで500年。それを解放する存在がライトニングであると。
鳥山氏:ライトニング自身は、世界を感じてはいたんですけどクリスタルになっていたので、体感というか実感としては、この世界で生き続けるスノウ達とは違います。。その状態でスノウ達の前に現われるため、対立するような関係になってしまうんです。
――ライトニングは彼らの変貌具合に驚くというか、眠っていた状態に近いライトニングにとっては、500年は一瞬だったのかもしれませんね。
鳥山氏:500年間ずっと悩んでいた人達と比較したら、ライトニングには理解しきれないものがあると思います。この立ち位置はプレーヤーとも同じです。終わりゆく世界に触れた時の驚きや哀しみ、苦労を知るというのが、本編で語られていきます。
各大陸で繰り広げられるメインストーリーそれぞれにプレイのコンセプトがある
――新しい都市として、スノウが太守として守護している「ユスナーン」が公開されましたが、都市ごとにテーマがありますよね。ルクセリオは「捜査」、デッドデューンは「探検」。そして、ユスナーンは「潜入」とあります。
鳥山氏:もちろん、ビジュアルや設定的なところでも各大陸や各都市にコンセプトがあって、ルクセリオは「神様ブーニベルゼを崇める宗教都市」。そこで起きるメインストーリーも、宗教的な背景から殺人事件が起こるんですけど、その犯人を捜す「捜査」がコンセプトとなります。
ユスナーンは、ノウス=パルトゥスという世界へ物資を供給している都市で、滅びゆく世界の中ではすごく豊かな暮らしをしています。そこを守っているスノウがいる宮殿は厳重に警備されていて、その警備網をどうやって突破していくのかが、「潜入」というコンセプトです。
――「潜入」というと、タイトル発表時に会場限定で公開された映像では、壁の背後に隠れたりする、いわゆるスニーキングアクション的な動きをしていました。潜入というテーマとそれらアクションが結びついてくるところがあるのですか?
鳥山氏:ユスナーンは「潜入」をするのですが、どちらかというと隠れて進むというよりは、派手に警備網を突破していくようなコンセプトの遊びになっています。ユスナーンという都市自体も、静かなところではないですから。
――派手ですよね。観光地というか。
鳥山氏:その華やかな雰囲気を活かして、街を盛り上げつつ、最終的に潜入していく……という感じですね。
北瀬氏:ただ、ユスナーンの潜入は強行突破だ! っていう話ですけど、実際に強行突破をしようとすると、かなりしんどい展開になっていくこともありうる。そこをプレーヤーがどうするかという楽しみはあります。
――強行突破は選択肢の1つということでしょうか?
北瀬氏:そうです。避けられるんです。
――スノウだけでなくPVにはノエルも登場しています。明言こそされていませんが、彼もスノウと同じように苦しんでいるというか、セラとの関わりから、スノウもノエルもどちらもライトニングに恨みを抱いてるというか、難しい感情を抱いているような。そんなイメージをPVから感じました。
鳥山氏:セラを失ってしまったことが、それぞれのキャラクターに影を落としています。おそらくPVだけを見るとぶつかり合いみたいに見えるんですけど、それぞれライトニングに対する感情の持ち方が違います。
――それぞれが苦悩している。これまでの積み重ねも相当にありますし、彼らの想いは独特なんでしょうね。ライトニングを含め、彼らはどういった終着点に向かっていくのでしょう?
鳥山氏:魂の解放というのが作品全体のテーマですが、ライトニングの最後の作品になるので今回はきっとハッピーエンドになります。それぞれの人達を幸せに導くことによって、ライトニング自身も救われる。そういうストーリーが展開します。
――これまでのシリーズを振り返ると、ライトニングはハッピーエンドを迎えた事がないですね。「FFXIII」も、「FFXIII-2」も。
鳥山氏:これまでは常に不幸な状態になってますから、どうにかプレーヤーの力で幸せにしてもらいたいですね。