【特別企画】
NVIDIA、GeForce RTX 3090の8Kゲーミングの性能を公開
「デススト」や「Apex Legends」など多くのAAAタイトルで60fpsを超える性能を発揮
2020年9月5日 06:00
- 9月5日発表
NVIDIAは、米国時間の9月1日に正式発表したGPU「GeForce RTX 30シリーズ」の8Kでのゲーミング性能を公開した。
先日のオンラインイベントでは、同社CEOのジェンスン・フアン氏が、同社のゲーミング向けGPUの最新製品となるGeForce RTX 30シリーズを発表。その後行なわれたメディア向けの説明会により、GeForce RTX 30シリーズの最上位製品となるGeForce RTX 3090を利用した8Kでのベンチマーク結果などを公開した。
NVIDIAが公開したベンチマークデータによれば、Intel Core i9プロセッサー+GeForce RTX 3090の組み合わせで、8K解像度、グラフィックス設定は「High」、レイトレージングが有効の設定で、「Apex Legends」、「Destiny 2」、「Forza Horizon 4」、「Rainbow Six Siege」、「Rocket League」、「World of Tanks」、「World of Warcraft」などのタイトルで60fpsを超えており、「Control」、「Death Stranding」、「Enlisted」、「Wolfenstein:Youngblood」などに関しては同社のGPU機能であるDLSS 2.0を有効にした場合に60fpsを超えている。
新しい解像度が出始めた頃には、AAAタイトルではなめらかにプレイが可能な基準の1つとされる60fpsを超えるのは難しかったりするが、GeForce RTX 3090を利用することで、8K/60fpsでゲームを楽しむことができそうだ。
基盤の小型化や冷却機構の見直しで、性能倍なのに静かになっているGeForce RTX 30シリーズ
既報の通り、GeForce RTX 30シリーズには、GeForce RTX 3090、GeForce RTX 3080、GeForce RTX 3070という3つの製品ラインナップが用意されている。この中で最上位モデルとなるのはGeForce RTX 3090になる。
GeForce RTX 3090は、従来モデルに該当するTITAN RTXと比較すると、シェーダコアやCUDAコアと呼ばれる演算エンジンが倍以上(4,068から10,496)に増えており、演算性能も16TFLOPSから36TFLOPSと倍以上になっている。他にも、RTコアと呼ばれるリアルタイム・レイトレーシング(水面への映り込みなども物理演算して表示する仕組み、写真品質な画面を描画するのに必要な機能、DirectX12でサポートされている)の演算を行なうエンジンも49TFLOPSから70TFLOPSに、Tensorコアと呼ばれるAIを演算するエンジンも131TFLOPSから285TFLOPになっているなど、3つあるエンジン(シェーダコア、RTコア、Tensorコア)の全てで性能が大きく向上している。
GeForce RTX 30シリーズではそうしたGPUチップの性能改善がされているだけでなく、基板(GPUが実装されるボードのこと、ビデオカードは基盤にGPUやコネクタなどを実装してカードの中に組み込んでいる)の設計も見直されている。例えば、従来は補助電源と呼ばれる電源供給ユニット(PSU)からの補助電源ケーブルの為の端子は8ピンが2つという構成になっていた。
これに対して、30シリーズでは、新しく設計し直された12ピンの小型端子に変更されており、それらも併せて基盤をコンパクトに設計することが可能になっているのだ(なお、12ピンの電源端子は純正ボードなどでは標準で付属してくる12ピン-8ピンx2変換ケーブルを利用して、従来の8ピン×2がある電源でもそのまま利用可能)。
このように、基板がコンパクトな設計になることで、GPUから発生する熱を冷却して外に排熱する仕組みにスペースを取ることが可能になり、全体的な冷却性能が向上しているのだ。
さらに、基板が小さくなったこともありGPUの熱をヒートシンク(ファンの風を当てて冷却する金属のこと)に伝熱するヒートパイプを大きくすることなどが可能になる。また、ファンの構造も改良されている。具体的には、ディスプレイ出力ポート側に近い内蔵ファンはPCケースの内部の空気を吸ってビデオカードのブラケットに開けられている穴から外に排気され、カードの後方側に用意されているもう1つのファンはPCケースの内部の空気を吸うのは一緒だがそのままケースの内部へと排気され、PCケースに用意されているケース内部の熱を排気するファンにより外に出されることになる。
こうした改良により、GeForce RTX 3090はTITAN RTXと比較して動作温度が下落しており、また同じ温度で動作させる場合には、ファンの騒音を低く抑えることが可能になっている。そして各種のベンチマークで計測した結果を見ても、TITAN RTXと比較して1.5倍~1.7倍程度の性能を発揮している。つまり、有り体に言えば、従来よりも性能は上がっているのに、ファンは静かになっているということだ。
多くのAAAタイトルにおいて8K60fpsを超える性能を発揮、DLSSが有効時にはさらに高いfpsを実現
GeForce RTX 30シリーズでは、8K対応に合わせて新しいディスプレイ出力としてHDMI 2.1というHDMIの新しい規格に対応している。従来のGeForce RTX 20シリーズ(TITAN RTXやGeForce RTX 2080 Tiなど)は、HDMI 2.0bというHDMIの1つ前の規格への対応に留まっていた。このため、8Kのディスプレイに、従来のビデオカードを接続する場合には、HDMIのケーブルを4本ないしはDisplayPortのケーブルなら2本のケーブルを利用して接続する必要があった。2本や4本のケーブルで接続するというのは、コストの点でも、ケーブルの取り回しという観点でもあまり美しいとは言えない。しかし、HDMI 2.1では伝送速度を改善している新しいケーブルなどを採用していることで、8Kの信号をHDMIケーブル1本で転送できるようになっており、ケーブルは1本だけで済むのだ。
既にコンシューマ市場向けのテレビとしてLGとSamsung(今後アップデートされるファームウェアの適用が必要)が複数製品を、ソニーがZ9Hという8K TVを投入しており、そうした8K TVを入手することで、GeForce RTX 30シリーズを内蔵したPCで8K表示が可能になる。現時点ではPCゲーミング用の8Kモニターというのは登場していないが、GeForce RTX 30シリーズがHDMI 2.1に対応したことで、今後はそうしたPCモニターが登場してくる可能性が出てくる。
PCゲーマーとして気になるのはそうした8Kのディスプレイでゲームした場合、実用になるのかという点だろう。今回NVIDIAが公開したベンチマークの結果を見る限りはそれは杞憂に終わりそうだ。
AAAのタイトルを利用したフレームレート(1秒間に描画できるフレーム数のこと、このフレーム数が高ければ高いほどゲームはスムーズに描画できる)のベンチマークでは、「Apex Legends」、「Destiny 2」、「Forza Horizon 4」、「Rainbow Six Siege」、「Rocket League」、「World of Tanks」、「World of Warcraft」で8Kでいずれも60fpsを超えており、「Control」、「Death Stranding」、「Enlisted」、「Wolfenstein:Youngblood」などに関しては同社のGPU機能であるDLSS 2.0を有効にした場合に60fpsを超えている。環境や設定はIntel Core i9プロセッサー+GeForce RTX 3090の組み合わせで、8K解像度、グラフィックス設定は「High」、レイトレージングが有効の設定になる。これはなかなか画期的な結果と言える。
DLSS(Deep Learning Super Sampling)はNVIDIAがGeForce RTX 20シリーズから提供している手法で、非常に乱暴に説明すると映像のクオリティに影響がなく必要のない部分を、AI(ディープラーニング)の手法を活用して描画を端折る事で、描画性能を引き上げるという技術だ。それにより、シャープで美しい画質を実現することが可能になり、かつフレームレートを引き上げることができる。
その意味ではDLSSを有効にしている場合はあたり前としても、DLSSが有効ではない場合でも多くのゲームで60fpsを超えていることは十分注目に値すると言っていいだろう。なお、PCゲームのベンチマークのデファクトスタンダードと言ってよい、3DMarkもGeForce RTX 30シリーズとDLSS 2.0に対応したテスト「NVIDIA DLSS Feature Test」がアップデートされることも明らかにされた。これにより、GeForce RTX 30を利用してDLSSがどの程度効果があるのかをユーザーが実際にテストしてみることが可能になる。