2017年2月16日 12:00
無印版「三國志13」のリリースから1年余、ついに「パワーアップキット」(以下、PK版)の発売日がやってきた。この日のために、あえて無印版を見送ってきたユーザーも少なくないだろう。かくいう筆者もそのつもりだったが、結局PK版を待ち切れずに無印版を購入してしまった。もっとも、無印版も想像以上に楽しめたので、とくに後悔はしていない。むしろ、名作の「三國志13」を無印版とPK版という2とおりの楽しみ方ができるのだから、一粒で二度おいしいとも言える(正確には一粒ではないが)。
そんな「三國志」シリーズを愛してやまない筆者が、今回は一足お先にPK版をプレイ。無印版との比較を交えつつ、何が新しくなったのか? どこが変わったのか? をレポートしていく。記事は、PK版から追加された新システムの紹介と、無印版から大きく変化した要素を解説する二部構成にした。無印版をやり込まれた方も、PK版から新たに参戦する方も、ぜひお目通し願いたい。
新たなシステムが導入され、プレイの幅が大きく広がった
弊誌でも何度か紹介してきたが、PK版ではさまざまなシステムが新しく追加されている。いずれもプレイの幅が大きく広がるものばかり。ここでは、PK版で初登場した新システムについて紹介する。
威名
PK版における柱の1つ。武将たちが持つ称号のようなもので、“ほかの武将や民草から何と呼ばれているかを示すもの”とでも言えばわかりやすいだろうか。君主から任命される官爵とちがい、条件さえ満たせば、功績に関係なく名乗ることができる。
威名は、いずれかの勢力に所属している武将が名乗れる「将軍」、「武官」、「軍師」、「官吏」と、在野武将が名乗れる「侠客」、「商人」の計6系統。各系統はいずれも複数の威名で構成されており、スキルツリーのような形状をしている。画面の右側にある威名ほどランクが高く、名乗るための条件も厳しいが、その分、得られる恩恵も大きい。
また、一部の武将には専用の威名が用意されている。たとえば張角であれば「大賢良師」、董卓であれば「魔王」、諸葛亮であれば「臥龍」など。いずれも史実あるいは演義に基づき、武将たちの個性を際立たせるものとなっている。
同志
こちらもPK版の核をなすシステムの1つ。無印版における「絆システム」をさらにもう1段階進化させたもので、主人公と絆武将たちで構成した小規模な軍団とも言える。同志となった武将は主人公と同じ都市に所属するため、「せっかく絆を結んだのに離れ離れになってしまった」ということがない。
これにどのような効果があるのか、劉備三兄弟を例に説明しよう。シナリオ1の劉備は君主ではなく、関羽や張飛とともに幽州・薊で劉焉軍に仕えている。下野して在野武将になる場合、無印版では関羽と張飛は劉焉軍に仕えたままだったが、PK版では同志に加えていれば関・張の2人も劉備とともに劉焉軍から下野、3人で劉備を中心とした勢力を結成する(厳密には、旗揚前なので勢力ではないが)。桃園の誓いで義を結んだにもかかわらず、その舌の根も乾かぬうちに兄弟がバラバラ……ということもなくなった。
親書
主人公の絆武将と、主人公が面識のある武将のあいだを、書簡を通じて取り持つシステム。演義でも、袁術を討った劉備が鄭玄に頼んで袁紹との仲をとりなしてもらう(袁紹は従兄弟の袁術を討った劉備を憎んでいた)シーンがあったが、イメージ的にはそれに近いかもしれない。ただし、筆者がプレイした範囲では面識があっても親書をかわせる武将とそうでない武将がいたので、どの武将でもOKなわけではなく、もう1つ別の条件がありそうだ。
要衝
パワーアップしたのは何も戦略面だけではない。PK版は軍略面、さらにはマップまでもが大きく進化している。マップにおける無印版との最大のちがいは、大陸の各地に要衝が追加された点。要衝とは都市と都市のあいだにある戦略上の重要地点のことで、無印版からあった集落もPK版では要衝になった(集落としての効果はそのまま残っている)。機能的には関と同じく敵の進軍を阻む関所のような役割を持つが、要衝には城塞を建築できる。むろん、建築したほうが守りがより強固になるのは言うまでもない。
要衝のもう1つの役割は、士気の回復。「三國志13」で再復活(「三國志12」にはなかった)した士気の要素だが、PK版では行軍中も士気が表示され、時間の経過とともに減っていくようになった。そのため、他の都市へ攻め込む際に何も考えずに進軍していると、士気が極端に下がった状態で敵軍と交戦することになってしまう。これでは、逸をもって労を撃たれても仕方がない。そこで要衝に城塞を築き、あるいは陣を布いて、戦闘に入る前に士気を回復させるわけだ。
戦術地点
采配戦闘で勝敗に大きく影響するシステム。PK版の戦闘マップでは、林や崖といった特定の地点に“戦術地点”と呼ばれるポイントが設置されている。戦術地点の付近に味方部隊を一定時間待機させると、その戦術地点を制圧することが可能。制圧した戦術地点では、交戦前に開かれる「軍議」で決定した戦術を発動できるのだ。
もちろん、これらの戦術を利用できるのは敵側も同じ。つまりPK版の采配戦闘では、いかに敵に先んじて戦術地点を抑えるかが重要になってくる。さらに、伏兵や落石のような敵に攻撃を仕掛けるタイプの戦術は、敵を戦術地点まで誘い込むための駆け引きも必要だろう。虚誘掩殺や十面埋伏といった計を彷彿とさせる戦術の登場により、PK版の采配戦闘は「三国志の世界」をより深く感じられるものに仕上がっている。
既存のシステムも大幅パワーアップ! 生まれ変わった新たな「三國志13」
さまざまな新システムが追加されたPK版だが、パワーアップしたのはそれだけではない。既存のシステムもより洗練され、プレーヤーが遊びやすいように進化を遂げている。ここでは、無印版から大きく変わった要素について解説しよう。
シナリオの追加
「三國志」ファンには言わずもがなのシナリオ追加。無印版は7本のシナリオを収録していたが、PK版には「小覇王勇躍」、「華容道の変」、「潼関の戦い」、「出師の表」の4本が加わり、合計11本のシナリオが遊べるようになった。また、さまざまな英傑を操作して「三國志13」の基礎を学べるチュートリアル的なストーリーの英傑伝も、外伝として2本のシナリオが追加されている。とくに1本目の「飛龍乗雲」では威名システムと在野プレイがわかりやすく解説されているので、1度は遊んでおきたい。
在野プレイの充実
誰もが望んでいたであろう、在野プレイが大幅に強化。まず、主人公の所属都市に本拠が設置されるようになった(これは勢力に所属している武将も同じだが)。本拠は主人公や妻子、同志たちが住む拠点で、武将の鍛錬や私兵の管理・訓練を行なうことが可能。また、各都市では募兵で兵を集めたり巡行で金・兵糧を得たりして戦力を増強できる。こうして鍛えた私兵を率いて各地を席巻し、中国大陸全土に自身の武名を轟かせるのも在野武将の目標の1つと言えよう。
ちなみに武名は、都市依存のパラメータ。たとえば史実でも、馬超などは涼州・益州方面には勇猛無比として知られていたが、孫呉の人々にそれほど恐れられていた印象はない。こういった事象を踏まえてか、武名も都市ごとに設定されているのだ
一騎討ち・舌戦のルール変更
じゃんけん色が強く、ルールもほぼ同じだった一騎討ちと舌戦は、大胆な変更・差別化が施された。一騎討ちは5ターン(五合)の勝負で使用するコマンド(攻撃)を最初にすべて決定し、その後は自動で進行する。闘志システムは廃止され、かわりに敵の攻撃を防御すると溜まる天地人のゲージを消費して必殺技をくり出すようになった。なお、無印版と異なり、必殺技は1度しか使えない。
舌戦は無印版と同じく、使用するコマンド(論)を1ターンずつ選択する方式。コマンドには“時勢属性”が割り当てられており、ターンごとの時勢と一致すれば、より強力な論をくり出せるように。また、弁舌の特技を持っている武将は、相手の論を受け流す「無視」を使用できる。
無印版は能力値と運でほぼ勝負が決まっていたが、PK版は圧倒的な戦力差であっても覆せるような工夫がなされているのがポイント。とくに舌戦は相手の論を読むだけでなく、ターンごとの時勢や無視コマンドも考慮しなければならないため、戦略性が非常に高い。そのぶん、知力の低い武将で知力の高い武将を破ったときのしてやったり感は異常だ(笑)。
【総評】かつてないほど充実した拡張機能で全武将プレイはさらなる高みへ!!
さて、PK版になって新たに追加されたシステムと無印版から変更されたシステムをざっと紹介してきたが、いかがだっただろうか。上に記したものはあくまで大きな要素であり、細かい追加点・変更点をあげていけばキリがない。さまざまな種類の小イベントしかり、成長手段の増加しかり、PK版から追加された新武将しかりだ。いっそのこと、「パワーアップキット」ではなく「スーパーパワーアップキット」と改名したほうがいいのではあるまいか(笑)。
なお、今回のレビューを書くにあたり、ユーザーインターフェイス(以下、UI)についてはあえて触れないことにした。その理由は2つあり、無印版をPS4、PK版をPCでプレイしたため、単純な比較はできないというのが1点。そして、今回プレイしたのはサンプル版であり、製品版としてユーザーの手元に届くときにはさらに洗練されているだろうと推測されるのが1点だ。
開発スタッフはプレ-ヤーが考える以上にUI改善に腐心しており、プロデューサーの利川哲章氏も過去のインタビューでそのことを語っている。とくにPCのUIをコンシューマのコントローラで再現するのは難しく、より快適化を図るべく議論・検討を重ね、幾度となく試行錯誤をくり返すという。そんな利川氏の言葉を聞くかぎり、期限が許されるギリギリまで操作性の向上を追及したであろうことは想像に難くない。何よりPlayStation Vita版「三國志12」のUIを見れば、今回も極限まで進化したUIで遊べるはずだと確信しているからだ(PS Vita版「三國志12 with パワーアップキット」の操作性の良さは異常)。
無印版を未プレイの人はもちろんのことだが、さまざまな遊び方ができるため、無印版をやり尽くした人も十二分に楽しめるデキ。歴史SLGながら、能力値の成長や特技の獲得、名品の収集といった要素があり、RPG好きにもオススメできる。ゲームは半リアルタイムで進行するが、いつでも一時停止をして落ち着いてコマンド入力できるので、アクション要素は苦手という人も安心。さすがに「三国志にまったく興味がない」という人は別だが、少しでも三国志を知っていれば誰もが楽しめる最高の歴史SLGに仕上がっている。ありとあらゆる遊び方が想定されている、非常に懐の深い新生「三國志13」、この機会にぜひ触れていただきたいものだ。
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