インタビュー

「ソニック AT 東京2020オリンピック」、ディレクター・笠原英伍氏インタビュー

スマホ向けゲームに、自分の開発経験と想いをどう活かすかの挑戦

「ソニック AT 東京2020オリンピック」

2020年春発売予定

 「ソニック AT 東京2020オリンピック」は、2020年春発売予定のAndroid/iOS向け東京オリンピック公式スポーツゲームである。本作は東京オリンピック会場を舞台にソニック達が様々な競技に挑戦する。

 今回、本作のディレクターを務めるセガゲームスの笠原英伍氏に話を聞くことができた。ゲームはまだ開発中と言うことで規格もこれからであり、スクリーンショットもまだではあるが、笠原氏がどのような想いをこのゲームに託しているかを聞くことができた。

本作のディレクターを務めるセガの笠原英伍氏

 笠原氏はこれまで「マリオ&ソニック AT」シリーズのディレクターを務めており、今回がスマホ向けゲーム初挑戦とのことである。「スマホゲームはどうあるべきか」を問い、スタッフと話し合い、自分なりのビジョンを提示すべく開発を進めているという。ちなみにATはあっとと読み、「AT 北京オリンピック」や「AT ソチオリンピック」など様々なオリンピックが入る。笠原氏は1作目からこのシリーズに関わっている。

 「ソニック AT 東京2020オリンピック」は東京のマップに様々な拠点が提示される。本作のマップの拠点はDr.エッグマンに占領されており、プレーヤーは様々な競技に挑戦しマップを解放していくという。本作ではこういったストーリーの元、競技をプレイしていく。基本プレイは無料で、マップを購入していくコンテンツ課金型のゲームとなるとのことだ。

 今作は「マリオ&ソニック AT」ではなく、ソニック単体のゲームとなる。このためゲーム要素の中に「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」でおなじみの要素を多数盛り込んでいる。例えば400mハードルでは上手くハードルを越えていくとソニックがパワーアップ、身体を丸めて高速移動をする。このためスピード感を重視し、アニメーションをなめらかな表現にすべく磨き込みを行なっているという。競技によってはエキストラコースが存在し、ピンボールのジェットバンパーも用意される。アーチェリーは風を読んで的を射る。エキストラコースでは的がドローンにつり下げられて動いたりするとのことだ。サービス開始時に15種目、さらに名所でのミニゲームも用意するとのことだ。

 本作のコンセプトは「スマホを片手で持って気軽にプレイできるところ」。基本は手で持ちタップだけでプレイし、チュートリアルなどの説明なしに遊べる手軽さを目指している。UIや表示位置、どこまでプレイのハードルを下げるか、そこに挑戦していると言うこと。「スマホってそれこそ、お年寄りや子供も持っている。だからこそ誰でもプレイできるゲームを目指したいと思っています」と笠原氏は語った。

 そのためコンシューマーゲームとは全く違うゲームの面白さを目指している。もちろんゲーム開発者として、できるだけ簡単にしながら、奥深く、何度でも楽しめるゲーム性を突き詰めている。それは笠原氏が手がけるゲームとして、強く求めていく部分だという。プレーヤーの試行錯誤だけでなく、Tipsとして「タイム短縮のコツ」といったメッセージも提示し、ユーザーにさらにゲームを楽しんでもらうようにするとのことだ。

 笠原氏はこれまで「マリオ&ソニック AT」シリーズを手がけ、コンシューマゲームを開発してきた。スマホゲームを手がけるのは今回が初めてだという。ゲーム開発のノウハウを、スマホゲームでどう活かすか、それが笠原氏のチャレンジだ。片手持ち、タップ操作でオリンピックを再現する。しかも本作は全世界でのサービスを考えており、例えば言語が対応していない地域でも遊んでもらうことも考えている。「マリオ&ソニック AT」がハードの制限で遊べなかった人たちにも触ってもらうことができることには、楽しみにしているとのことだ。もちろん多言語対応も積極的にしていくという。

開発が進められてる本作は、現在まだキービジュアルのみの公開だが、様々なコンテンツが作り込まれている

 スタッフにはスマホゲーム開発に長けた人もいる。そういうスタッフと協力しながら、自分なりのスマホゲームを実現させる。セガ社内のモバイルゲーム部門にアドバイスももらいながら開発を進めているとのことだ。笠原氏にとっては新しく感じる概念もある。しかしスマホゲームももうノウハウが蓄積されている。そういったポイントを学びつつ、「ソニック AT 東京2020オリンピック」は開発が進められている。

 現在はまだ競技を作っているところだという。開発中の400mハードルをプレイさせてもらった。ソニックはオートで走り、プレーヤーはジャンプでハードルを越えるだけだが、このタイミングがシビアだ。慣れないとハードルを倒してしまうが、飛び越えるとソニックは加速、連続するとその加速は倍増していく。タップがうまくいくほど早くなり、慣れてくるとさらに爽快になる。ゴール近くはタップ連打でラストスパート。笠原氏の「ゲームの楽しさへの想い」がシンプルに伝わるゲームとなっていた。

 この競技は攻略が熱い。簡単な操作だがうまくいくとタイムが大きく違ってくるし、爽快感はどんどん大きくなる。ラストスパートの演出も楽しい。プレイすることで笠原氏の本作への姿勢を感じることができたように思う。この競技もまだまだ作り込んでいくという。

 最後に笠原氏は「今作はシリーズ初のモバイルゲーム、そしてソニック単体ですが、私達の新しい挑戦でもあります。オリンピックに向け、多数の人にプレイしてもらいたいです。よろしくお願いします」とファンに向けて語りかけた。

 ゲーム作りとはこういうモノだ、という笠原氏の想いはゲームをプレイすることで端的に伝わった。ベテラン開発者が挑むスマホゲーム、それはとても興味深いテーマだ。今後も注視していきたい。