インタビュー

SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏インタビュー

「Marvel's Spider-Man」など海外AAAタイトル続々!

9月20日~23日 開催

会場:幕張メッセ

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)ワールドワイド・スタジオ(SIE WWS)プレジデント吉田修平氏へのインタビューを行なわせて頂いたので、その模様をお伝えしていこう。

日本でも想定を越える売れ行きをみせる「Marvel's Spider-Man」。今後も注目作が続々

SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏

――まずは、ここ1年の雑感と今後の展望についてお話頂けますでしょうか。

吉田氏:SIEのタイトルですと、今年はなんといってもプレイステーション 4(以下「PS4」)「ゴッド・オブ・ウォー」と「Marvel's Spider-Man」が全世界的に大ヒットいたしまして。我々の予想を越える売り上げになっています。「Marvel's Spider-Man」に関して言えば日本でも想定を越える売れ行きです。

――「Marvel's Spider-Man」はまだ発売されてから2週間ほどですよね。

吉田氏:9月7日発売ですので約2週間ほどですね。発売3日間で世界累計330万本以上の実売を達成しました。

――かなり好調な売れ行きですよね。以前だと海外タイトルがヒットするのは難しかったと思うのですが、やはり右肩上がりになっているのでしょうか?

吉田氏:ですね。少しずつ海外タイトルへの認知が上がってきて、ユーザーさんも「試しにプレイしてみたら楽しかった!」となってもらえていると思います。オンラインタイトルですと「コールオブデューティ」シリーズに、「レインボーシックス シージ」、「フォートナイト バトルロイヤル」あたりの人気も高く、そういうところからも海外タイトルへの抵抗感が減っているのではないでしょうか。

――そうなると日本に向けてはローカライズの力が今後さらに重要になっていきそうですね。

吉田氏:そうなりますね。SIEのローカライズチームは何年も前からものすごく気合いを入れて良い仕事をしてくれています。

 以前の海外タイトルの国内販売は、海外での売り上げ数に対して日本での「PS4」の普及台数を考えての比率で言うと、「もっと売れてもいいのに……」となるような結果になることもあったのですが、最近はかなり上がってきています。ローカライズについてもおおむねご好評を頂けていますね。

――個人的には「アンチャーテッド」シリーズあたりから、SIEさんのローカライズチームの上手さを感じています。ユーモアの部分などの独特なセンスをローカライズするのは特に大変そうです。

吉田氏:とりあえず外国の言葉を日本語にしていく……というのではなく、1度立ち止まって「これ、日本人にはわかりにくいよね」というところをもう一捻りするという。うちのローカライズチームは、そのあたりまで踏み込んでいて、ユーザーさんに楽しんでもらおうという意識が高いですね。

 「Marvel's Spider-Man」に関してもゲームの中にSNSがあったりして小ネタがいっぱいあるわけですが、それもひとつひとつ丁寧な仕事をしてくれています。私は以前だとオリジナルを楽しみたいという意識から海外版でプレイすることが多かったのですが、今は日本語版でプレイしているんですよ。「Horizon Zero Dawn」、「Detroit: Become Human」、「Marvel's Spider-Man」と日本語版でプレイして、ローカライズの仕事ぶりを確認しました。

 というわけで、弊社のゲームローカライズに携わってみたいという人はぜひ、JAPAN Studioにご連絡ください(笑)。

世界中で驚異的な速度でのセールスをあげている「Marvel’s Spider-Man」

――今後のタイトルについてはいかがでしょうか?

吉田氏:来年2月予定の「Days Gone」も、海外タイトルにあまり慣れていないという日本のゲームファンの人でも楽しめるゲームだと思います。

 今回のTGSで試遊出展しているのは「Days Gone」中の「フリーカーモード」という要素を楽しめるもので、海外版だと「The Horde(ホード)」という名前のものです。フリーカーというゾンビのような敵が何百と襲い掛かってくるのを、プレーヤーは武器などを設置して、いかにして全部を倒すかというモードなんです。

 「Days Gone」はオープンワールドのゲームで、「フリーカーモード」はメインミッションではないのでやらなくてもよいのですが、クリアすれば良い物がもらえたりしますし、それ自体のプレイも楽しいです。なかなか難易度が高くて1度目ではクリアできないと思うのですが、やられた時には「あ、もっとこうすれば良かった!」という納得感もあります。爆弾を仕掛けておいて、そこにフリーカーを流し込んで良いタイミングで爆発させたり、いろいろなアプローチができます。

 「フリーカーモード」ができる場所は世界にいくつかあるのですが、それ自体も種類がありますし、それに対してユーザーさんがどう攻略するのかも、人それぞれに変わってくると思いますよ。YouTubeなんかで「フリーカーモード」を遊んでいる様子を配信されていたら、それを見るのも楽しいかもしれないですね。

――「Days Gone」はシングルプレイのタイトルですよね。ボリュームはどうなのでしょう?

吉田氏:非常に大きな世界のオープンワールドゲームになっていて、ストーリーを進めるメインミッションだけでなく、サブミッションが用意されています。かなりボリュームがあって長く遊べるゲームになっていますね。

――タイトル発表から発売まで時間がかかりましたが、そのぶんだけ詰め込まれていますか?

吉田氏:開発のBend Studioが手がけた前作は2011年に発売されたPS Vitaローンチタイトルの「アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり」ですから、それから約7年ぶりになります。Bend Studioはさらにその前はPSP(プレイステーション・ポータブル)の「RESISTANCE ~報復の刻(とき)~」を作ったりとポータブルタイトルの開発チームだったのですが、「Days Gone」で「PS4」に移るにあたって規模を拡大して。そういう背景も込みで時間をかけて取り組んできたんです。

2019年2月22日発売予定の「Days Gone」。TGS2018ではフリーカーモードに挑める。試遊レポートはこちら

――「Ghost of Tsushima」(仮称)もブースで大きく扱っていますね。

吉田氏:あれも個人的にはすごく期待しているんです。私は開発を手がけるサッカーパンチのゲームが大好きで、「プレイステーション 2」(以下、「PS2」)の「怪盗スライクーパー」時代から好きなんですよ。私はPS2の頃はアメリカで仕事をしていたのですが、サッカーパンチ、ノーティードッグ、インソムニアックの作るゲームが特に好きです。インソムニアックは先の「Marvel's Spider-Man」の開発チームですね。

 サッカーパンチの作るアクションゲームは操作の感触がいいんですよね。アクションゲームの肝だと思うのですが触っているだけで楽しい。以前に手がけた「inFAMOUS」も触っているだけで楽しいゲームになっていました。今作の「Ghost of Tsushima」(仮称)ではこれまでありそうでなかった日本を舞台にしたオープンワールドのアクションゲームに挑むということで、非常に楽しみにしています。

サッカーパンチが手がける、日本を舞台にしたオープンワールドタイプのアクションアドベンチャーゲーム「Ghost of Tsushima」(仮称)

――同じ和風では「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」もSIEブースで大きく扱っていますね。

吉田氏:フロム・ソフトウェアさんの「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」ですね。私は「ソウル」シリーズの大ファンでしたし、「Bloodborne」もプラチナトロフィーを取りました。今年は初代「DARK SOULS」のリマスターが発売されましたが、それも「PS4」でプレイして2周クリアしました。で、2周クリアしても「まだ足りないっ!」と思ったもののさすがに3周は……と思って、気分を変えて「DARK SOULS III」を再プレイしました(笑)。

――すごい(笑)。「DARK SOULS」シリーズも今触り比べると1作ごとに手触りがだいぶ違っていて新鮮ですよね。

吉田氏:そうなんですよ。「Bloodborne」もかなり手触りが違っていますし。「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」はさらに違ったものになっていると聞いていますので、楽しみにしています。

フロム・ソフトウェア開発の新作「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」。試遊レポートはこちら

――なるほど。先ほど吉田さんがおっしゃられた特に好きなデベロッパーチームですと、ノーティードッグの「The Last of Us Part II」は、今回のTGSでは出展がなかったですね。

吉田氏:今年のE3でお見せしたゲームプレイ映像が最新のものですね。E3の時の映像には私もびっくりしてノーティードッグと話したのですが、敵のキャラクターが下を覗いたりとかそこらを蹴ったりとか、本当に細かな動きをするじゃないですか。それで、「あれはトレーラー用に特別に手を加えてあるの?」って聞いたら、「いえ、あれはゲーム用のAIでちゃんと動いているんです」ということで驚きました。それだけ細かくシチュエーションに応じて反応するAIになっているということですね。ストーリーも気になりますが、そうした進化も楽しみにしているんです。

――「The Last of Us Part II」に関しては次の情報はまた少し先になるのでしょうか?

吉田氏:そうですね、また別の機会になります。楽しみにお待ちください。

「The Last of Us Part II」の最新情報は残念ながら今回のTGSではなし。また別の機会になる

――今回はMedia Moleculeの「Dreams Universe」が一気に情報が出てきましたが、こちらもタイトル発表から長く取り組んでいるタイトルですよね。

吉田氏:2013年の「PS4」の発表会でもうデモを出していましたから、あれから5年以上かかっていますね。

――「Dreams Universe」はどんなゲームも作れてしまう無限大なゲームという印象です。

吉田氏:そうなんですよ。もう本当に楽しみなタイトル……いや、タイトルというより新しいプラットフォームみたいになっているんです。Media Moleculeが以前に手がけた「リトルビッグプラネット」はクリエイト&シェアという形で2Dアクションゲームを作れるというものでしたが、「Dreams Universe」はもうゲームエンジンみたいなものになっているんですよ。

――ゲームジャンルごと作れてしまうような感じなわけですよね。

吉田氏:いろんなものが作れますね。UIを工夫していて、ユーザーさんは手軽に好きなものを作れます。非常に簡単にアニメーションをつくれたり、音楽を作曲できたりと、プロの人のツールとしても使えるぐらいになっています。そういうプロの人が作ったものや、あるいは才能のあるユーザーさんが手がけたものがたくさんシェアされていく。そういう世界を作りたいなと思っていて、長くサポートしていきたいと思っています。

――日本では今後に「プログラミング教育」というものが始まっていきますが、「Dreams Universe」はゲーム作りの入り口のようになりそうですね。

吉田氏:ゲームスクールなどで「Dreams Universe」が使われてくれるようになるのは夢ですね。例えば2日間でハッカソン(※)みたいなことをする時に、使いやすいツールがあると想いを形にする時間が短縮できますよね。「Dreams Universe」の強みはクオリティの高いものを簡単に作り出せるところにありますので、そういうところで使われるのも期待しています。

※ハッカソンは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語。短期間でのアプリケーション開発などにチームで挑んで成果を競うイベント

あらゆるジャンルのゲームを作れる「PS4」用ゲームクリエイティブプラットフォーム「Dreams Universe」

「PlayStation VR」用タイトルは、より深いゲーム体験が味わえる次のステージへ

――「PlayStation VR」関連の今後はいかがでしょうか。僕は「Firewall Zero Hour」がものすごく面白くて最近プレイしまくっているんです。

吉田氏:そうなんですか! あれは本当に何人かのチームで集まって遊んでいるような感じがしますよね。海外のユーザーともマッチングすると思うのですが、海外ユーザーともコミュニケーションしながら遊んでいるんですか?

――つたない英語ながらも、がんばって話しながらプレイしています(笑)。

吉田氏:そうですか! ありがとうございます。「Firewall Zero Hour」もそうですし、今後登場する「ライアン・マークス リベンジミッション」や「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」は、“「PS VR」のユーザーさんが時間が経つに連れてより深いゲーム体験をVRでも求めるようになるだろう”というのを想定して、それに応えられる本格的なゲームを「PS VR」に出していこうと考えてリリースするものなんですよ。

――「PS VR」タイトルのステージが一段上がってきたようなところがあるのでしょうか。

吉田氏:そうですね。ハードが同じでもデベロッパーの経験値が上がってくれば、出てくるゲームのクオリティが上がりますし、今後はさらに良くなっていくと思っていますよ。

「PlayStation VR WORLDS」に収録されていた「The London Heist(ロンドン ハイスト)」のフルゲーム版と言える「ライアン・マークス リベンジミッション」。試遊レポートはこちら
JAPANスタジオの“ASOBI! Team”が開発する「PlayStation VR」用360度アクション「ASTRO BOT:RESCUE MISSION(アストロボット レスキューミッション)」

「PlayStation Now」はゲームデータのDLも可能に。日本でも準備中

――海外で本日(インタビュー9月21日収録)発表されたものなのですが、クラウドストリーミングサービスの「PlayStation Now」でPS2タイトルの取り扱いを開始するほか、ゲームデータをダウンロードしておいてプレイすることが可能になるということでした。これについてはどのような展開なのでしょうか?

吉田氏:海外で発表されたもので日本ではまだ発表していませんが、ユーザーさんからの要望に応えての進化というところですね。

――より本格的な“月額料金制の遊び放題サービス”というものに近づいたのかなという印象を受けます。

吉田氏:そうですね。実際のところ「PlayStation Now」は月額料金制の遊び放題サービスでしたが、これからはより本格的にプレイできるようになります。ゲームデータをダウンロードしてからプレイすることで、解像度が上がったり、レスポンスがよくなったりします。DLCを購入して追加コンテンツを楽しんだりもできるようになりますね。

――日本でも今後にこの対応が予定されているのでしょうか?

吉田氏:日本でも導入に向けて、現在準備中ですね。後日正式なアナウンスを予定していますので、続報をお待ちください。

大作・話題作のものすごいゲームが目白押し! 長くたくさん遊んで欲しい

――それでは最後にゲームファンの皆様に一言頂けますでしょうか。

吉田氏:「Marvel's Spider-Man」が日本のユーザーさんにも受け入れられて、大変嬉しく思っています。今後も10月、11月、12月とストーリーを追加するコンテンツが登場しますので、長くお楽しみ頂いて、「Marvel's Spider-Man」の面白さをぜひお友達にも勧めてもらえたら嬉しいです。

 今後も、個人的にも楽しみにしている「アサシン クリード オデッセイ」や「レッド・デッド・リデンプション2」などのものすごいゲームが目白押しで、SIEからも「Days Gone」などの大作・話題作が続いていきますので。「PS4」で長くたくさん遊んで欲しいと思います。

 「PS VR」では、「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」は超オススメです(笑)。私は昔、「クラッシュ・バンディクー」などのアクションゲームのプロデューサーだったのですが、2Dから3Dになった時のような驚きと楽しさが「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」にあって、新しいVR世代のアクションゲームとなっております。そちらもぜひお楽しみください。

――ありがとうございました。