インタビュー

F3レーサーでゲーマー! 宮田莉朋選手に「F1 2018」の魅力を聞く

プロだからこそ感じる「キャリアモード」の“リアルさ”とは?

9月20日 発売予定

価格:
7,980円(税別、パッケージ版)
7,100円(税別、ダウンロード版)
CEROレーティング:A(全年齢対象)

 9月20日に発売が迫るプレイステーション 4用レーシング「F1 2018」。シリーズ最新作となる今作では、2018年シーズンの最新のデータやレギュレーション変更が反映されているほか、大きな特徴として「キャリアモード」にメディア対応の要素が追加されている。

 これはレース後などにメディアから質問を受け、その対応によって他のドライバーとの関係やチームからの評価、ファンからの反応などが変化するというもの。レースの結果だけでなく、メディアへの対応によってレースドライバーとしてのキャリアが大きく左右される。

 より深いF1ドライバーの追体験が可能となった「F1 2018」だが、今回本作について、プロレーシングドライバーの宮田莉朋選手にインタビューすることができた。現在19歳の宮田選手は、2016年、2017年のFIA-F4 JAPANEPE CHANPIONSHIPで2年連続のシリーズチャンピオンを獲得し、現在は全日本フォーミュラ3選手権(F3)とSUPER GTをメインに戦っている。一方で遠征先には常にゲーミングPCを持ち込むほど、熱心なゲーマーとしての顔を持っている。

 宮田選手には、普段からプレイしているという「F1」シリーズと最新作「F1 2018」の魅力のほか、宮田選手のゲーム愛、レーシングドライバーとゲームの関係性などについて、たっぷり語ってもらった。

プロレーシングドライバーの宮田莉朋選手。4歳からレースをはじめ、2014年の全日本カート選手権のKF1クラスで最年少優勝。FIA-F4では2016年と2017年にシーズンチャンピオンを獲得。2017年よりF3に出場。2018年からは最年少ドライバーとしてSUPER GTへも参戦している

日々はレースとゲームの繰り返し。生粋の“ゲーマー”ドライバー登場!

――今日はシーズン中のお忙しい中ありがとうございます。

宮田選手:いえいえ。とても光栄なことです。普段、レースの世界を見ていただく機会は少ないと思うので、今回をきっかけとして少しでもレースのことを知っていただけたらいいなと思いますから。

――宮田選手のTwitterを拝見していると、レースと同じくらいの量でとにかくゲームの話をしていますよね。普段からゲームをプレイされているんですか?

宮田選手:レース以外の時間は日頃ずっとやっています。基本はレースゲームとFPSの2つですね。レースゲームなら「F1」シリーズがそうですし、FPSは「レインボーシックス シージ」、「PLAYERUNKNOWN`S BATTLEGROUNDS」をやっています。外に出たらレースをして、家に帰ったらレースゲームをして、それ以外は友達とFPS、という感じです。

――本当にレースとゲームばっかりですね!

宮田選手:そうなんです。レースをやっていなかったら、真っ先にニートになってたのかなというくらい。きっと、まずい生活を送っていたと思います。ただ、昔から1つのことに集中するのが何よりも好きだったんですね。集中して、相手の動きを読んで、駆け引きして勝利する。そこは共通しています。だからレースもゲームも、同じくらい好きなんです。

 今年から「Team GRAPHT」(MSYが発足したアスリートチーム)に加入することになって、「ザ クルー2」の予選会にゲストで参加したことでユービーアイソフトさんともご縁ができて。僕が普段から「F1」シリーズをプレイしていることもあって、今回のインタビューにも繋がりました。「Team GRAPHT」に入ってから、ゲームの世界がさらに広がりました。ゲーム好きの目線と、ドライバーの目線がとても役立っていると感じます。

――ゲームは昔から好きだったんですか?

宮田選手:父がゲーム好きで。ファミコンもありましたし、プレイステーションは初代から持ってて。その頃は「グランツーリスモ」シリーズをプレイしていました。レースを始めたのは4歳なので、レースとレースゲームはずっとやっていますね。大人になったら今度はFPSにも興味が出てきて。今はゲーミングPCを常に持ち歩いて、遠征先ではかなりやっています。

こちらが宮田選手愛用のゲーミングPC。まだゲーミングPCを買ったばかりだそうで、その前はPS4を専用ケースと共に持ち歩いていたという

――常に持ち歩いているんですか。ゲームにかける熱量がとてつもないです!

宮田選手:以前はPS4を持ち運んでいたんですが、ゲーミングPCの方が色々と便利で。荷物チェックもすんなり行きますしね。何よりネット環境があればすぐにプレイできるというのが。空港ラウンジなどでFPSができるくらいのネット環境を見つけると、思わず「レインボーシックス シージ」を立ち上げたくなるんです。

――もう生粋のゲーマーですね。話を聞いていて気になったのですが、周りのレーサーにゲーム好きはいらっしゃるんですか?

宮田選手:それが多いんですよ。レースゲームもプレイしますが、それ以外だと良く話題になるのは「荒野行動」ですね。「Team GRAPHT」の方と話したときも「ドライバーがゲーム好きって初めて聞いた」と言われて、逆に意外だったくらいで。あまりイメージがないかも知れませんが、「ドライバーは結構ゲーム好き」とこの機会にぜひ知ってほしいですね。

プロレーサーが証言する「キャリアモード」のリアル

――さて、ようやく本題の「F1 2018」に入りたいと思います。本作の見どころはどこだと感じましたか?

宮田選手:1番は「キャリアモード」のインタビューの受け答えですね。実際のレースでもメディア対応の時間はありますし、そのコメント次第でその後のキャリアが変わっていく、というのはかなり現実に近づきました。

今作から「キャリアモード」に導入されたメディア対応要素。答えによって周囲の評判が変化し、その後のキャリアに影響していく

――宮田選手から見てもリアル、ということなんでしょうか。

宮田選手:答えの選択肢は決まっているので本当に言いたいこととは少しずれますが、基本的にはとてもリアルです。チームに対して失礼のないように、でもどれだけリアルに伝えられるかは普段でも考えなくてはならないところです。

 たとえばレースがダメだったときがあったとします。そのダメだった理由は、大きくは車に問題があって、でもドライバーも少し失敗してしまっている。ここでどちらを伝えるべきか。ドライバー側からすると、応援してくれている人のために本当のことを言いたいけど、その記事をチームメンバーが見たら「車のせいにしやがって」ときっと雰囲気は悪くなる。そこをどう上手く伝えるかは現実でもとても難しんです。この感覚をゲームで体験できるって、相当すごいことだなと。

――そのお話、結構生々しいですね……!

宮田選手:レース中は、何かしらトラブルを抱えることが結構あります。そのトラブルを週末を通してなんとか乗り越えて、チーム内としては最善を尽くした結果を出します。そんなときに、「もっと攻めた走りをすれば優勝できたのでは?」と質問されたりするんです。

 もちろん質問は正しいのですが、中には言えない事情もあります。それを言ってしまえばチームやメーカーに失礼だし、でも納得できる答えが出せなければ応援したいという人が減ってしまう。このもどかしさを多くの方に知ってもらいたいというのは、ドライバーとして切実なんです。

――すっごいリアリティを感じます。

宮田選手:「F1 2018」の中では、環境に合わせた車のセットアップや、順位に応じた走り方、タイヤ交換のタイミングなどレース中に考えることはたくさんあります。これは実際もそうですね。ドライバーがどんなことを考えてレースを走り、その後のメディア対応でどんなことを考えているかをゲームを通して知っていただけたら嬉しいですね。ドライバーの気持ちを知るなら、かなりリアルですよ。

――宮田選手がリアルと言うんだから、本当にそうなんだと思います。また、宮田選手は「F1 2018」をシミュレーターとしても使っているそうですね。

宮田選手:そうですね。車の設定のところで役立っています。僕は運転することが好きで、もともと車そのものにはあまり興味がなかったんです。チームのエンジニアに頼ればある程度は速く走る車になるのですが、いざという時に知識があればもっと速く走れるはずだと思いなおしました。

 「F1 2018」だと、F1の車で何を変えたらどうなると説明があるので、これがヒントになってくれるんです。普段からも勉強しますが、「F1 2018」を通して車の機能を改めて見ることで、似たような場面に実際のレースで出くわした時に「これを試してみたらどうだろう」と思いつくことがあります。今作では「ERS(運動エネルギー回生システム)」が使えるようになってより現実に近づいていますし、実際のレースチームもシミュレーターを使って設定を決めていますから、その点を大いに活用しています。

 ゲームで勉強した、というと「えっ」と言われることもありますが、中にはゲーム好きなエンジニアもいて、「『F1 2018』ではこうだったよ」なんて話すと興味深く聞いてくれることもあります。そういうエンジニアは最近のゲームが正確なのも知っているので、機能の説明で話が長くなりそうなときは「ゲームで勉強してきてよ」と逆に言われることもあるくらいです。

現実をできる限り再現した車の設定が、実際のレースでも役立っているという

――宮田選手の「F1」のプレイスタイルはどのようなものでしょうか?

宮田選手:僕は「F1」シリーズでは、「キャリアモード」をひたすらプレイします。最初に自分のパフォーマンスよりもAIのレベルを高めにするのが好きで、そこからアシストを外すなどの調整をしていきます。

 またフェラーリなどの伝統的なチームだと当たり前にトップを取れてしまうので、下位チームのザウバーなどで始めて、レースウィークの中でいかに速いチームに追いつくかを目指していきます。自信があるならおすすめのプレイですね。

――最後に、宮田選手の今後の目標を教えてください。

宮田選手:今シーズンのF3は、チームメイトのチャンピオン獲得がほぼ確定していますが、チャンピオンが決まったからすべて終わりではありません。過去のF1でもルイス・ハミルトンが優勝を決めたあとに、ニコ・ロズベルグがぜんぶ勝った例もあります。まずは優勝目指して、残りのレースすべて勝つつもりで臨みたいと思います。

 SUPER GTは、日本国内最高峰のツーリングカー選手権です。出場できること自体がみなさんの支えあってのことなので、まずは感謝を忘れずにいたいと思います。その上で、クラッシュせず、その状況での最善の結果を出せたらいいですね。

――そして、ゆくゆくはF1にも。

宮田選手:はい。F1への出場は夢から目標に変わりつつあります。「F1 2018」をプレイしていて思うのは、もっと上に行くことで、自分がやらなければいけないことがたくさん増えるということです。プレイすればするほど、はやくF1に上がってみたいという気持ちにさせてくれますね。

――その傍らにはゲームもあるわけですね。

宮田選手:当然です! それだけはぜったいに忘れないので(笑)。

――ゲーマーとしてもドライバーとしても、今後に期待しています。本日はありがとうございました!