インタビュー

ZOTACの取り組み、そしてGeForce RTX 20シリーズ。ZOTAC、NVIDIAキーマンインタビュー

8月25日 収録

 8月24日より8月26日(現地時間)にかけて香港で行なわれた「E-Sports&Music Festival(EMF)」。EMFでは「ZOTAC CUP MASTERS CS:GO 2018 Grand Finals」を始めとした世界大会が開催されたほか、会場のそこかしこで大小のeスポーツイベントやライブ、生演奏が繰り広げられるという、活気と熱気に満ち溢れたイベントとなった。

 現地会場ではイベントに訪れたZOTACのグローバルマーケティングマネージャーChinny Chuang氏と、NVIDIAのコンスーマーマーケティング部部長 兼 チャネルセールスマネージャーの高橋一則氏に、GeForce RTX 20シリーズについてや、ZOTACのeスポーツへの取り組みなどについて話を聞くことができたので、こちらの内容をお伝えしたい。

ZOTACグローバルマーケティングマネージャーChinny Chuang氏(左)と、NVIDIAのコンスーマーマーケティング部部長 兼 チャネルセールスマネージャーの高橋一則氏(右)

ZOTACのeスポーツの取り組みとは?ZOTACのChinny氏にインタビュー

高橋氏と談笑するChinny氏

――初めてEMFに参加しましたが、eスポーツ+音楽というイベントは日本では珍しいです。海外ではこうしたイベントはよく開催されているのでしょうか?

Chinny氏:世界でもeスポーツと音楽の組み合わせは珍しいですね。EMFの開催は今回で2回目になりますが、そもそもEMFは香港が中国に返還されて20周年の節目に、香港政府が若者を盛り上げるイベントとして考案したものです。そのため、彼らが1番好きな音楽とeスポーツを融合させたものになっていて、海外のお客さんも呼びたいという意図もあります。ちなみに、今年は海外からのビジターは約1万人、参加総数は約8万人から9万人に上る見込みだということです。


メインステージでは大会はもちろん、DJによる光と音に満ちた音楽イベントも開催された

――それは凄いですね、そんなEMFにZOTACはどのように関わっていますか?

Chinny氏:昨年に引き続き香港観光局からお声掛けをいただいて、今年は「ZOTAC CUP MASTERS CS:GO 2018」の主催と、EMFに対してハードウェアスポンサーとしてPC150台の機材提供を行なっています。前回は1タイトルの大会主催のみだったのですが、今年はより規模を拡大して取り組んでいます。

――今回は「ZOTAC CUP MASTERS CS:GO 2018」を主催されていますが、そもそもZOTACがeスポーツの取り組みを始めた経緯を教えてください。

Chinny氏:ZOTACがeスポーツに取り組んだ大元の理由は、ゲーマーに対するブランドの認知向上のためです。初めてZOTAC CUPを開催したのは2007年で、はじめはヨーロッパ、次がアメリカ、そしてアジアと徐々にエリアを拡大していきました。

 ZOTAC CUPは登録するだけでオンラインで大会に参加できて、他のプレーヤーとコミュニケーションができる場となったほか、賞金も貰える場になりました。2016年のZOTAC CUP10周年には招待制で初のオフライン大会「World Invitational Counterstrike Global Offensive eスポーツトーナメント」も開催しまして、「ZOTAC CUP MASTERS」はそれをされに発展させたものとしてCOMPUTEXで「Dota2」を競技タイトルにした大会を開催しました。

――ZOTAC CUPとZOTAC CUP MASTERSの間には、どのような違いがありますか?

Chinny氏:ZOTAC CUPはオンライン上で開催される大会で、プロアマ問わず気軽に参加できるものです。どちらかというと「試合に勝つ」ということよりもユーザー間のコミュニケーションを重視したもので、ライバルを見つけて自分の実力を試すもよし、チームメイトを探すもよし、という形になっています。

 一方、ZOTAC CUP MASTERSは勝敗に重きを置いたハイレベルな舞台です。ZOTAC CUPで経験を積んで、いつかZOTAC CUP MASTERSに参加できるように練習するというのもいいですね。それぞれ目的は違いますが、一連のeスポーツイベントとして成り立っています。


「CS:GO」世界最高峰の舞台のひとつ、ZOTAC CUP MASTERS。大勢の観客が固唾を呑んで、時には大歓声を送りながら試合を見守った

――大会を主催するにはやはりある程度コストもかかることと思います。ZOTACがこうしたeスポーツ大会を手掛け続ける理由はどのようなところにあるのでしょうか。

Chinny氏:例えば「ZOTAC CUP MASTERS Americas」では「StarCraft2」を競技タイトルとして、ZOTAC CUPでの各地の勝者を招いてオフライン決勝を開催しました。大会に参加したプレーヤーからは「まさか自分が大会に出て、こんなに派手な場所でプレイできるとは思わなかった」という声も寄せられました。そういう意味では、ゲームの上手いプレーヤーのために、晴れ舞台を用意するという側面もありますね。

 また、ハードウェアメーカーとして最初にeスポーツに取り組んだのはZOTACですし、今のZOTACユーザーさんにも、未来のユーザーさんのためにも、こうした活動を続けていきたいと思っています。

――今回のEMFもそうですが、イベントに関しても積極的に取り組んでいますよね。

Chinny氏:ZOTACの主力製品はビデオカードですが、他のコンポーネントを扱うメーカーさんなどとも協業して一緒に業界を盛り上げていきたいという想いがあります。eスポーツやイベントを一緒に開催することで、ユーザーさんも我々も他のメーカーさんもWin-Winの関係になれるといいなと思います。

――ZOTACブースではGeForce RTX 20シリーズの新製品をはじめ、日本未発売のものも含めて様々な製品が展示されていました。今イチオシの製品はなんですか?

Chinny氏:GeForce RTX 20シリーズのビデオカードはもちろんですが、ZOTACは昨年から新たに「ZOTAC GAMING」というブランドを立ち上げておりまして、ゲーミングPCやミニPC、そのほかのデバイスも徐々にリリースする予定ですので是非ご期待ください。

 また、ZOTACは小型化を得意としています。サイズの大きなハイエンドモデルを作ることは難しいことではありませんが、ハイエンドのものを小さくしようとすると様々な制限があるので技術的に難しい部分が出てきます。しかし、ZOTACは開発から生産までを一貫して手掛けることでハイエンド、かつ小型という、例えば「MEK Mini GAMING SYSTEM」のような製品をリリースすることできるのです。社内では"小は大を兼ねる"と言ったりします(笑)。


ハイエンドの性能と、本体のコンパクトさを兼ね備えた「MEK Mini GAMING SYSTEM」

ZOTACブースでは「CS:GO」のエキシビションマッチや、香港で人気の配信者を招いたゲームイベントも開催され、盛況をみせた

――逆説的で面白いですね(笑)。では最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Chinny氏:ZOTACは今後もGeForce RTX 20シリーズの新作を発表していきますし、ZOTAC GAMINGの新たな製品も継続して発表していきます。ZOTACは開発から生産まで一括したソーシャルソリューションができるメーカーですので、日本のエンドユーザーにもこの良さを知ってもらうため、今後頑張っていきたいと考えています。

――本日はありがとうございました。

NVIDIAの高橋氏に聞く!「GeForce RTX 20シリーズ」

GeForce RTX 20シリーズについて熱く語る高橋氏

――先日新たな製品としてGeForce RTX 20シリーズが発表されました。改めて特徴を教えてください。

高橋氏:GeForce RTX 20シリーズのお話の前に、今年はグラフィックスの大変革の年と言われています。というのもマイクロソフトが3月のGDCにおいて「DirectX Raytracing」という新しい技術を発表したからです。

 これは今まで不可能だと言われていたリアルタイムのレイトレーシングを可能にするものです。実はレイトレーシング自体は古くからある技術で、映画やCGなどに使われていました。ただレイトレーシングの処理は非常に負荷が大きく、ネットワークレンダリングやハイエンドのサーバーを使用して、例えば数分のムービーを作るのに何時間もかけてレンダリングをしていました。

 我々もGDCのときからデモを行なってきましたが、やはり処理は大変で、最初はDGXサーバーにTesla V100を4枚挿したものを使わないとリアルタイムレイトレーシングができなかったのです。しかし、新たなGeForce RTX 20シリーズではビデオカード1枚でリアルタイムレイトレーシングを実現できるようになります。

 GeForce RTX 20シリーズの特徴としまして、既存のGeForce GTX 10シリーズとは異なり、次世代GPUアーキテクチャの「Turing」を搭載しています。今までは高速化処理のためにCUDAコアの数をいかに増やすか、製造プロセスをいかに微細化するかということに拘っていたのですが、Turingでは初めてAIコアとなる「Tensor コア」を搭載しています。また、GeForce RTX 20シリーズではレイトレーシングを実現するために「RT コア」も搭載しています。

 Turing世代のGPUというのは初めてレイトレーシングに焦点を当てたGPUで、これまでのGTXシリーズ以上に実写に近いCGを実現することができます。前世代のコアアーキテクチャPascalと比較すると、リアルタイムレイトレーシングにおいてTuring世代は実に6倍の処理能力を持っており、現実と見間違うほどの、非常にクオリティの高いCGがグラフィックスカード1枚で実現できるようになるのです。

 さらに、GeForce RTX 20シリーズではVRにも注力しておりまして、VRデバイスとの接続規格である「VirtualLink」に対応したUSB-C端子を搭載します。これまではVR機器を使用する際に複数本の複雑な配線が必要だったのですが、今後はType-CのUSBケーブル1本で済むようになります。


GeForce RTX 20シリーズでは「VirtualLink」に対応したUSB-C端子を搭載

――ありがとうございます。今回NVIDIAは「E-Sports&Music Festival」に対してどのように関わっていますか。

高橋氏:今回はEMFというよりも、「ZOTAC CUP MASTERS CS:GO 2018」のメインスポンサーという立場です。我々は春に行なわれた日本予選やCOMPUTEX TAIPEI 2018で行なわれたアジア予選、EMFで開催されている決勝に至るまで、様々な形で「ZOTAC CUP MASTERS CS:GO 2018」を会社を挙げてサポートさせていただいております。

――大会を主催するZOTACからも様々な新製品が発売されますね。ZOTACとの関係はどのようなものでしょうか。

高橋氏:我々NVIDIAは生産能力、技術能力の高いパートナーをTier1として、チップの供給契約を結んでおります。なかでもZOTACは、我々のパートナーのなかでも1、2位を争う生産供給量を誇っておりまして、世界中に商品を供給するTier1パートナーとして、我々にとっても非常に大切なお客様です。

――新製品に期待しているファンに向けてコメントをお願いします。

高橋氏:やはり今回は一新された「GeForce RTX」ということで、リアルタイムレイトレーシング機能をお楽しみ頂きたいです。既にアナウンスがあった通り、「Battlefield V」や「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」といったリアルタイムレイトレーシング対応のタイトルがこの秋に続々とリリースされますので、発売を楽しみにしていただきたいと思います。

 また、新しい技術コアには2つのポイントがありまして、1つは「Deep Learning Super Sampling(DLSS)」。これは深層学習を用いたAI的なアプローチで、レンダリング処理にポストエフェクト(後処理)をかけるということを実現しております。これによって既存のゲームをより綺麗かつ高速に描画することも可能になっています。

 これはなぜかというと、今までポストプロセスというのはCUDAコアを用いて行なわれていましたので、処理のどこかでCUDAコアをレンダリングに割かなければならなかったのですが、今回はTensor コアを使って別コアで処理をします。また、AIコアを使って専属で処理を行ないますので、残りのコアを全てレンダリングに生かすことで非常に高速な処理が可能となっております。

 もう1点はRTコアを活用した新たな技術「Ansel RTX」という機能です。「Ansel」はゲーマーからご好評をいただいている、ゲームのワンシーンをキャプチャーする機能ですが、新たな「Ansel RTX」ではRTコアを用いて光を射出することによって、これまで以上に非常に高解像度できれいな映像がキャプチャーできるようになります。

 実はゲーム中にキャプチャーを行なう場合、ゲームの進行を妨げないよう処理速度を優先してキャプチャーしたものの解像度を落としている部分もあったんです。そこもDLSSの機能を用いて高解像度でのキャプチャーが可能となりますので、ゲーム内撮影もこれまで以上に楽しくなります。

 これまでプレイされていたゲームも4K解像度、かつ120FPSでプレイできるようになったり、「Ansel」機能がさらに楽しくなったりと様々な機能がお楽しみいただけますので、これまでのゲームをお楽しみの方々、新しいリアルタイムレイトレーシング機能を使ったタイトルを楽しみたい方々、全ての方にお勧めしたいのがGeForce RTX 20シリーズとなります。

――本日はありがとうございました。

【Battlefield V: Official GeForce RTX Trailer】
【Shadow of the Tomb Raider: Exclusive Ray Tracing Video】
「Battlefield V(上)」と、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(下)」のレイトレーシングを用いたデモ映像。光の演出が格段に美しくなっているのがわかる