インタビュー
「The Good Life」クリエイターSWERY氏、二木幸生氏インタビュー
SWERY氏「本当に目指しているのは女版の『GTA』なんです」
2018年3月27日 02:00
- 3月収録
「レッドシーズプロファイル」や「D4」など不思議な味わいのアドベンチャーゲームを得意とする日本人クリエイターのSWERY氏と、「パンツァードラグーン」や「クリムゾン・ドラゴン」といったアクションゲームを得意とする二木幸生氏。この2人がタッグを組んで取り組んでいるプロジェクトが「The Good Life」だ。
この「The Good Life」は、昨年10月クラウドファンディングが失敗に終わる(参考記事)という残念な結末を迎えてしまったが、SWERY氏の予言通り、本日3月26日(日本時間3月27日より)キックスターターでリブートを果たした。
今回は、キックスターター開始に先立ち、GDC会場で行なわれたインタビューの模様をお届けしたい。1時間超のインタビューでふたりからは、前回の失敗を受けてゲームデザイン、グラフィックス、サポート企業の存在、開発環境を一新したことが語られ、より強い意欲で望んでいることが伝わってきた。ぜひ最後までご一読いただきたい。
ユーザーフィードバックを受けてグラフィックスとゲームデザインを一新
――今回GDCに参加された理由から教えていただけますか?
SWERY氏:去年9月にFigで「The Good Life」のクラウドファンディングをやっていましたが、3月26日よりキックスターターでリローンチすることが決まりましたので、二木さんとPR活動をしている最中になります。
――Figのクラウドファンディングが終わってから、ほとんど情報を出していませんでしたが、その理由は何ですか?
SWERY氏:純粋に前回の反省からですね。前回はキャンペーン前にトレーラーが流出したりしてしまったので、今回はすべて当日に準備して、オープンしたらすぐページにこれるようにするためです。このインタビューが最初の取材なのですが、ここで情報をお伝えして、記事を準備していただくと。
――前回のクラウドファンディングと、今回のキックスターターの違いは何ですか?
SWERY氏:4点あります。1つ目が、パートナー企業をいくつか入っていただきます。1社目はアンティーズさんです。資金面やPR面の援助を受けながらプロジェクトをスタートさせます。パートナーは今後も増える予定ですが、今回はアンティーズさんだけの発表となります。
――パートナーを複数社集めるというのはどうしてですか?
SWERY氏:どこどこに販路を持っている、PRが強い、イベントのコネクションを持っているなど、パートナーによって強みが違うからです。開発は二木さんのグランディングのみです。
――有力なパートナーを見つけからもキックスターターを実施するのは何故ですか?
SWERY氏:キックスターターをやることによって、「The Good Life」、White Owls、グランディングが市場に価値があるということを証明し、今後White Owls、グランディング、パートナーの三位が台頭の立場で開発を進めていくようにするためです。
2点目、3点目の変更点としてグラフィックスの向上と、ゲームデザインの変更を掲げています。まずは、比較映像を見て貰いましょうか。
――まだポリゴンっぽさは残っていますが、グラフィックスはかなり綺麗になりましたね。
SWERY氏:ありがとうございます。以前はグランディングさんとしても納得のいかないグラフィックスだったんですね。それをキッチリやってからキックスターターをはじめようということになって、本来は1月の予定だったんですが、3月までずれ込んでしまいました。
二木氏:とにかく以前はかなり短い時間で用意することになってしまったので、今回は背景はかなりクオリティを上げようということになりました。
SWERY氏:ナオミが綺麗になって、日本でも行けそうな感じになってきたなと(笑)。
二木氏:キャラクターの方向性としては、アートのスタイルとしてポリゴンっぽさを残して人形アニメのようなものを目指しているので、その方向性は変えずにクオリティを上げました。
――表現が難しいですが、グラフィックスに関しては、私は前のものも嫌いではありませんでした。何故今風のものに変えたのですか?
SWERY氏:ユーザーさんからのフィードバックが一番大きいですね。バックした方の中から「製品版での向上を願います」とか、バックしなかった方の中でも「絵が綺麗だったら買うのに」という意見があったので、グランディングさんに相談したらやれるところまでやろうということになって、それに甘えた感じですね。
二木氏:もっとより多くの人にわかりやすい形にしたいと。
SWERY氏:そうですね。前はアートだったんで、響く人に響くというスタイルだったんですが、もう少しマスに響かせる必要があるなと思ったんですね。
二木氏:もうひとつは、作っていく間に良くしていくというのは、ゲーム開発では当たり前なんですけど、今あるものが最終のものという受け取り方をどうしてもしてしまうので。
――なるほど、前回もこれぐらいにはしようと考えていたんですか?
二木氏:そうですね、やれるところまではやろうと考えていました。
SWERY氏:木のスタイルは悩んだりしました。もっとポリポリしたほうがいいかなとか。
二木氏:今パブの中も作っているのですが、かなり良い感じになっています。
――ゲームデザインはどのように変わったのでしょう?
SWERY氏:以前は犬バージョン、猫バージョンの2つのバージョンがあり、ユーザーさんはいずれかを購入してクロスオーバーして遊んでいただくという内容だったのですが、1つのバージョンにしました。1本購入すれば、犬も猫も両方遊べます。これがユーザーフィードバックで一番多かったんですが、「どちらを買えばいいかわからない」という。
――確かに正直よくわからなかったですね(笑)。
SWERY氏:以前の中村さんのインタビューでも「よりわかりにくくしましたね」と言われたのも響いています(笑)
――その犬と猫の要素は前回のクラウドファンディングのかなり後半で公開された情報で、それそのものを知らないという人もいると思います。改めてどういうものなのか教えていただけますか?
SWERY氏:このゲームは写真家が田舎に行って、写真を撮ることで借金を返すというゲームです。物語が進むと、街の住人がいなくなって犬または猫になってしまいます。その中でプレーヤーは写真を撮ったり、謎を追ったりするんですが、主人公自身も犬や猫になることができます。犬や猫になったら活動範囲が広がったり、謎を解くアドベンチャーの深みが増していく、というのが基本的な内容になります。
――以前お話を伺った際は、夜だけ犬や猫になれて、朝になると元の姿に戻るという設定だったと思いますが、仕様が変わったんですか。
SWERY氏:今の仕様は、月に1度チャンスが訪れるという設定にしています。昼にするか夜にするかはゲームデザインを見直しているところです。ストーリーとしてはそのほうがおもしろいけど、ゲームプレイとしてはユーザーを制限してしまうのではないかという懸念があってどちらが良いか探っているところです。
二木氏:できるだけ多くのシチュエーションで犬や猫の体験をして欲しいというところと、プレーヤー以外が犬や猫になったり、プレーヤーだけが犬や猫になっても、それぞれおもしろいことができるので、色んな状況を作りやすいゲームデザインにしたいですね。
――大阪に訪れた際に、犬や猫に変身するのを見せていただきましたが、どうゲームプレイが変わるのかまではわからなかったんですね。その点について詳しく教えていただけますか?
SWERY氏:猫だと、「アサシンクリード」みたいなパルクールがしたいと言っています。
二木氏:猫はジャンプと壁登りができます。人に比べて移動が自由で、人は2次元ですが、猫は3次元になります。行けなかったところにいったりとか、入れないところに入ったり、猫だと気づかれないので、そっと何かをのぞき見たり、違うゲームのアクションが可能になります。
SWERY氏:その先でこれまで撮れなかった写真が撮れるようになります。最終的には撮影に紐付くようになっています。
犬は横の広がりを見せようとしています。犬は人間よりも遠くまで行けるので、遠くまでものを運んだり、遠出をしたり、別の地で写真を撮るといったことができるようになります。特殊能力で臭いを辿るというのがあるので、「誰々と親しい人間の写真を撮ってこい」というタスクがあった場合、誰々がわかれば、そこから臭いを辿って親しい人物にたどり着けるとか。そういうアドベンチャーゲームとしての深みが足されるようなイメージです。
――犬や猫でも写真が撮れるのですか?
SWERY氏:それはGoProみたいなもので撮る拡張を考えています。
二木氏:あとは人に自由に戻れることも考えています。ここまでは猫で行って、人に戻って写真を撮るようなイメージですね。
――月に1度は、そうやって犬猫になって行動範囲が広がるわけですね。
二木氏:はい、最初から自由になるわけではなくて、段階的に解放していきます。
SWERY氏:ゲームデザインとして教えながら作っていくので、最初は人間だけで写真を撮って、犬や猫になれるようになったら、犬や猫でも写真を撮って、さらに進んだら自由にスイッチして写真が撮れるようになるという感じです。
――犬や猫になれるのは30日に1日ですか?
SWERY氏:いえ、1週間です。30日に1週間ですね。月に1/4だけ犬や猫になれます。
――ゲーム内の1日はどれぐらいなんですか?
SWERY氏:実はまだそこは調整できていないのでハッキリお答えできないんですが、オープンワールドのゲームぐらいで朝昼夜が切り替わっていくイメージです。
――では夢中になって遊んでいたら1週間経ってしまった、みたいな流れですね。
SWERY氏:そうです。1週間の間に写真を撮っていただいて、ネットにポストするんです。FLAMINGOというインスタグラムみたいなサイトにアップするんですが、そこではいいね数に応じてお金が貰えるという仕組みになっているので、そこに写真をアップして小金を稼ぐというのが基本的なサイクルになります。重要な写真はクライアントに送ればがっぽり稼げるという。ただ、クライアントに写真を送らなくても、FLAMINGOに写真をアップしてお金をちまちま稼ぎ続けても借金を返せるデザインにしようと思っています。
それからゲームデザイン上のもうひとつの大きな変更点としては、キャラクターのAIがあります。以前は住人がそれぞれの行動テーブルを持っていて、こちらが思うとおりの行動を取るようになっていたんですが、現状は性格や欲求というパラメータを用意して、AIで自動行動をするものを作ろうとしています。
プレーヤーとの関わり合いによって、街の様相が変わってきます。たとえば僕の街ではAさんとBさんが夫婦でしたが、中村さんの街はBさんとCさんが夫婦でした、みたいなことが起こりえます。街の中で写真を撮ることで街に影響を与え、影響を与えることで様相が変わり、様相が変わることでまた新たな写真が撮れるという、オンラインで友達の待ちに行った時に自分とは違う景色が撮れるとか、最終的に写真に帰結するデザインをずっと今練り込んで行ってます。
――住人は何人ぐらいですか?
SWERY氏:今だと20人ぐらい何ですが、これはキックスターターのゴールによって変わってくると思います。僕の究極の目標は、これはまだ確約はできませんが、殺人犯の犯人もそれで変わるようなデザインにしようと思っています。誰がエリザベスを殺したのか。
――このゲームはマルチストーリー、マルチエンディングになるんですか?
SWERY氏:そういっていいんかなあ?(笑)
二木氏:マルチストーリーと言うよりは、キャラクターの好みや人間関係がプレーヤーの影響を受けてどんどん変化していくので、どうなるかは僕らにもわからない、ぐらいまで作れればいいなと思っています。
――AIはどのようなものを使うんですか? ベースとなるAIが存在するんですか?
二木氏:いえ、全部グランディングでフルスクラッチで作る予定です。
――AIに名前はありますか?
二木氏:今はまだ仕様面の検討をしている段階ですので名前はありません。いずれ何か付けると思いますが。
――そういうプロシージャルなAIはアドベンチャーゲームにおけるひとつの理想でしたが、それが実現するというのは楽しみですね。
SWERY氏:ユーザーに対する影響が限定的ならできると思ってるんです。たとえば主人公を殺しに来るとなると難しいですが、主人公にとって他人の行動なので、ハッキリ言えば仕事をしようが、酒を飲んだくれようがどちらでもいいですよね。そこを組み上げるAIです。
二木氏:ひたすら好感度の複雑なマトリックスで作ろうとしています。
SWERY氏:しかもそれはキャラクター同士も影響を与えるという。
――それでは同じように遊んでいるのに、展開が変わるということも起こるわけですか。
二木氏:ストーリーが終わった後も遊び続けられるようにしたいと思っていますが、プレーヤーの行動によって様相が変わるようにしたいと思っていて、たとえばある人の街では、夜になると、広場に出てみんなで望遠鏡を眺めているとか(笑)。振り切っちゃうとわけがわからなくなるので、制限を付けつつ、こちらでもコントロールできないようなプロシージャルなAIを入れたいと考えています。
――ゲームの最終目標は借金を返して、ニューヨークに戻ることですか?
SWERY氏:そうです。途中で殺人事件が発生して巻き込まれてしまって、重要参考人として街から出られなくなってしまうので、お金を返すついでに解決することになります。お金を返し終わったらエンディングを迎えますが、その後も遊び続けられます。そのエンディングまでをしっかり遊べるようにいまデザインしているところです。
――仮に主人公が大人しく写真を撮ってFLAMINGOにアップして小金を稼ぐという慎ましい暮らしをしていても殺人事件をはじめとしたイベントには巻き込まれるわけですか?
SWERY氏:巻き込まれると思います。殺人事件は絶対に起こりますね。
――それ以外に大きなイベントはありますか?
SWERY氏:ありますよ。ニューヨークのクライアントは実は……みたいな。田舎町だけのスローライフで終わりたくないので、プレーヤーが意識を持って挑むようなものにしたいと思っています。
――といいますと、田舎町だけのスローライフは飽きたので、ロンドンに出るぞとかですか?
二木氏:いえ、田舎町のみで話は進むんですけど、田舎町に重要なキャラクターがやってくるとかですね。事件が展開されるとか。
――その街で発生するイベントにランダム性はないんですか?
二木氏:犯人が違うという意味ではランダム性はありますね。黒幕は変わりませんが。
SWERY氏:軸となるメインストーリーがあって、ここで変わるのは、殺人事件の犯人など、ちょっとした分岐です。それ以外にサイドストーリーを一杯用意しようと思っていて、それはNPCとの兼ね合いによって発生するしないは起こってくるので、ユーザー体験としては遊び手によってガラッと変わってくると思います。
――エンディングまでのボリュームはどれぐらいを想定していますか?
SWERY氏:そんなに長くするつもりはありません。10~20時間ぐらいだと思います。
二木氏:ストーリーだけをひたすら追うゲームにはならないので、サイドもある程度追っていくとなると、もう少し時間が掛かるかもしれません。
SWERY氏:「モンハン」みたいに何千時間も遊んでくれたらいいなと思っていますが、いきなりは難しいと思うので。
二木氏:今、写真を撮るということを自由度をかなり作り込んでいます。
――その撮った写真は現実世界でシェアできたりするのですか?
SWERY氏:あくまでインゲームのFLAMINGOというサイトでのシェアだけです。FLAMINGOを実際に立ち上げようかという話もあるんですが、それはパートナー企業やキックスターターの結果によると思います。
二木氏:SNSへの共有は何かしら入れたいですね。
SWERY氏:PS4シェアで普通にできますので、どこかと組んじゃうとややこしくなる気もしますよね。
――撮れる写真はライティングやシャドウもしっかり適用されたリアルな写真が撮れるんですか?
二木氏:そうですね、カメラに関しては、以前お見せしたものから一新しています。
SWERY氏:システムとしては加点式になっています。どういう写真が良い写真なのかがキッチリ説明できるような。芸術的な写真というのは難しいですが、「いいね」が付きやすい写真というのはわかりやすくして、攻略性のあるものにしたいと考えています。
――「デッドライジング」は、セルフで撮れて、ゾンビを入れたりすると楽しいというそういうモードですが、このゲームはどのような写真が撮れる、あるいは撮ってこいと言われるのでしょう?
SWERY氏:メインストーリーで依頼されるものは、街の秘密に関わるものです。街の中で、ほかの街では見られない住人達の行動や、遺跡を撮っていく。あるいは何月何日何時にしか発生しない決定的な瞬間。オモシロ写真も撮れるようにしたいですよね。住人達が動物になっているような写真をオモシロ写真としてシェアしたり、住人同士もAIで動いていて予測が付かないことをしているかもしれないので、それも許容して、ユーザーが笑いながらシェアできるようなものを目指しています。
――街の秘密というと、密談しているところを撮るとかだと思いますが、構図を決めてズームを合わせてその瞬間にシャッターを切るというのは結構難しくないですか?
SWERY氏:そうかな、そんなに難しくないと思いますけど(笑)。
二木氏:カメラの撮影については、露出やピントをプレーヤーが合わせる必要はないようになっています。そこはレンズなり、カメラを変えるとどんどん良い写真が勝手に撮れるようになっています。テクニカルにコントローラーをカメラと想定して動かす必要はなくて、良いカメラだとピントが合うけど、安いカメラだと一定確率でピンボケしてしまうみたいなそういうシステムを想定しています。あくまでRPGなので、装備=カメラなので、良いものを使えば良いものが撮れると、あくまでプレーヤーはフレーミングだけこだわればいいようになっています。
SWERY氏:構えて狙ってシャッターを押すだけです。
――なるほど、わかってきました。確かにそれぐらい簡単だったら誰でも撮影できそうですね。
SWERY氏:あとは良いレンズを使えば、動きが激しい被写体も撮れるようになりますので必要に応じてレンズを交換していくことになります。
――それにしてもなぜここまでカメラにこだわるんでしょう?
SWERY氏:オープンワールドを作って、どういう遊びをするかという中で、僕は世界に住んで浸るということをやりたいというのが基本コンセプトとしてあります。その上で、その世界のディテールを切り取って貰う方法というのが、カメラへの着目です。色んな部分を意識的に見てもらい、世界に居る感覚を増していただく。このアイデアを二木さんに相談しにいったら、「もっとゲームメカニクスとして骨太なものができるんじゃないの?」ということになって、最近はもうカメラと住人の話しかしてません(笑)。
――このゲームは武器を手に取って敵を倒すと言うことはないのですか?
SWERY氏:ありません。ですがペンは剣よりも強しです。主人公はジャーナリストですから、ペンの力で敵を倒すことはあると思います。
――記事を書くこともあるんですか?
SWERY氏:基本的にはFLAMINGOに写真をポストするだけですが、今FLAMINGOにコメントを付けられるかどうかを悩んでいる所なんですが、自分で記事を書くと言うよりは、FLAMINGOに決定的な写真をアップすることで、誰かの名声をコントロールすることはできると思います。その行為によってもNPCのAIへの影響がでてくる感じですね。
――現在の開発の進捗状況は?
SWERY氏:開発はまさにこれからです。現在、4月のPAXで見せる為のビルドを作っている最中です。そこでは主人公、カメラ、猫についてはある程度見せられるものを出そうと考えています。毎日ボストンで、12時から14時まで、キックスターターのステージで、「The Good Life」のデモを行なう予定です。
――それが対外的なデビューということになるのですか?
二木氏:ビルドが一般向けに公開されるという点ではPAXがデビューになりますね。
――改めてこのゲームの魅力はなんだと思いますか?
SWERY氏:本当に目指しているのは女版の「GTA」なんです。女の子が主人公で大人が遊ぶオープンワールドゲームなんです。「GTA」と言うと語弊があるので、正しく伝える言葉を今探しているところですが、スローじゃないスローライフということをスタッフには言っています。虫取りとか畑を耕すのではない生活シミュレーションです。
――確かに「GTA」というのは語弊があると思いますが(笑)、「GTA」の魅力はそこで起こる人間ドラマだと思います。このゲームはそういう人間ドラマが展開されるゲームだと期待していいですか?
SWERY氏:はい、ドラマでいうと「ツインピークス」みたいな、違和感のある世界に異邦人として自分が訪れ、それを楽しめるゲームです。「GTA」ってマフィアを演じる面白さがあると思いますが、このゲームではジャーナリストやニューヨーカーを演じることが楽しくなってくる、そういうものを目指しています。いつのまにかナオミの心情に寄っていって、ニューヨーカーっぽく振る舞ってしまうみたいな(笑)。
二木氏:ちょっとやっぱり変な世界なんですよ。そこで生活するというところを目指して作っています。お酒を飲んだり、無駄なものを買ったり、現実で我々がやる人生の楽しみ方って、従来のゲームにはない要素ですよね。従来のゲームはきれい事の上にちょっと変な世界を作っているんですよね。「The Good Life」は、生活しているほうにずらして、でもやっぱり変な世界という。
犬猫に関しても、猫とか人っぽく振る舞っている写真がネットにアップされて話題になっていたりするじゃないですか。ガチな猫というよりはああいう擬人化された猫、「こいつ本当は人じゃないの」っていう猫を作ろうとしています。そういう意味ではこのゲームは、「本来こうあって欲しい」と大人が思う、大人のファンタジーなんです。それを体験できる世界というところが、他のスローライフ系のゲームとは違うところだと思います。
――SWERYさんは、ちょっと変な世界の中で遊んでいるうちにのめり込んでしまうようなゲームを作るのが得意な方だと思っています。ですからこのゲームはSWERYさんらしいゲームだなと思うわけですが、二木さんは、「パンツァードラグーン」や「Crimson Dragon」など、手触りにこだわったリアルタイムシューターの名手という印象を持っています。このゲームは二木さんにとって、本当の自分を感じているのか、それとも新境地を開拓しようとしているのか、どちらですか?
二木氏:今回はどちらかというと新境地を作ろうとしていますね。ミーティングをするとかなり熱くなるんですよね。
SWERY氏:そうです、ぶつかりますね(笑)。こだわるところがふたりとも違うというか。僕はユーザーで、何もしていないときの雰囲気を大事にしたいんですが、二木さんは仰るように、システム的な入力に対する感触を大事にしていて、お互い言っていることは正解なのに、6時間後ぐらいに議論して最後に握手をするみたいな。ふたりとも入り口が違うんで、ぶつかるんですが、6時間ぐらい同じ話をして、「ああ、そういうことか」となって、一個の形ができるという。
――はー、聞いているだけで大変さが伝わってきますね(笑)。おふたりとも実績のあるディレクタータイプのクリエイターだから、どう意見を摺り合わせているのだろうと思っていたんですが、壮絶な衝突を繰り返しながら作っているわけですね。
二木氏:いや、だからおもしろいんですよ(笑)。
SWERY氏:なんかね、やりごたえがここまである企画ミーティングはなかなかないですよ。「これでどうですかね?」、「はい、わかりました」と言われるよりもよっぽどおもしろい。このGDCが終わったら福岡に詰めて、PAX用のビルドを作ります。
――メインの開発は福岡なんですか?
SWERY氏:そうです。
二木氏:東京のチームもやっていますが、福岡がメインで、僕も福岡にいます。今は京都にもスタジオがあるので、そこに寄ったついでというとあれですが、大阪に寄ってミーティングするということをやっていますね。
SWERY氏:二木さんのお膝元で作ることになったのも今回の変更点のひとつですね。
――このゲームで、福岡ならではの要素というのは何かありますか?
二木氏:福岡チームは経験豊富なチームで、福岡は色んなゲーム会社がありますが、そういうところで開発経験のある人が多く在籍しています。それからリアルさと外連味のうまくブレンドしたようなグラフィックスや演出のうまいスタッフが多いので、このゲームにはそういう素材が多いので、では福岡で作ろうかということになりました。
――グラフィックスとゲームデザインについてお話を頂きましたが、ストーリーについてはどのようになるのですか?
SWERY氏:そこは今お話しするのは難しいですね(笑)。PAXのビルドでは、軽くストーリーを感じられるものを見せようと考えています。ニューヨークにあるモーニングベルという超巨大メディア企業から依頼を受けて、世界一幸福な街に調査に行く、というのがプロローグになります。
――そういったイベントシーンはフルボイスで処理されるのですか?
SWERY氏:基本はテキストベースで、キャッチボイス、エモーションボイスというんですか、冒頭で「はーい」とだけいうような、という形のものになると思います。そのほうが物量を作れますし、変更が掛かっても対応が容易ですので。ただ、重要なシーンではナオミのキャラクター性を出したいので、そこは映像としてのカットシーンを作りたいですね。その数はキックスターターによって変わってくるのでまだ明言できませんけど。
――キックスターターのゴールはいくらに設定したのですか?
SWERY氏:それが4つ目の変更点になります。Figの時が150万ドルでしたが、今回は65万ドルになります。
――前回の半分以下なんですね。
SWERY氏:理由は、Figで67万ドルが集まったので、そこを起点として少し下の値にしています。キックスターターで絶対成立する金額にして、そっから先の部分はすべてストレッチゴールにして、ゲームのボリュームを増やしていく形にしたいと思っています。足りない部分については、パートナー企業と調整していくという形になります。
――ストレッチゴールの中身についてはどのように考えていますか?
SWERY氏:そこについては、コンサルタントに、最初のゴールが達成するまでストレッチゴールについては言うなと言われています。
――でもキックスターターとストレッチゴールはワンセットというイメージがありますよね。
二木氏:キックスターターを運営しながらストレッチゴールを決めていくのが本来のやり方みたいです。
SWERY氏:ゴールを達成しない時点でストレッチゴールを設定すると、ゴールを無価値に感じるユーザーがいるみたいです。「どうせこれは中間ゴールなんでしょ?」と。
二木氏:スタートから短期間で達成したら、そこで初めてストレッチゴールを設定しようと考えています。
SWERY氏:今回キックスターターから紹介いただいたコンサルタントを入れるというのも大きな変化のひとつです。これはやりましょう、これはやめましょうというのをデータから貰っていて、それに則って進めています。
――前回はリワードの中にSWERYさんとイギリスの田舎町に行って食事をする権とかありましたよね(笑)。
SWERY氏:ありましたね(笑)。そういうのは今回も残すかもしれません。
二木氏:リワードについては前回変化球を投げすぎたので、今回は割と直球が多くなると思います。
SWERY氏:面白い奴は残すと思いますけど、前回は変化球だけだったので、もう少しわかりやすいものも増やすと思います。
――「The Good Life」の発売計画について教えて下さい。
SWERY氏:パッケージはSteamとPS4で、初期言語は英語と日本語です。その先の話はストレッチゴールになってくるのでまだ言えません。
――モバイル版の計画は?
SWERY氏:その規模にはならないと思います。発売後3年ぐらい経ってモバイルの性能が追いついてきたら出すこともあるかもしれませんが、今その計画はないですね。
――パッケージはPC版29ドル、PS4版39ドルということですが、アイテム課金やダウンロードコンテンツの計画もありますか?
SWERY氏:アイテム課金は考えていません。ダウンロードコンテンツは、将来的にずっと遊んで貰いたいので入れていきたいですが、まずはゲームを完成させるのが先ですね。
――先ほど、SWERYさんが私の世界に遊びに来るという話をされましたが、そのマルチプレイの仕様についてもう少し詳しく教えて下さい。
SWERY氏:現状の仕様は、プレーヤーは犬または猫になって、他のプレーヤーの街に遊びに行く形になります。ナオミが2人にはなりません。
――ストーリーを協力プレイで遊べるというわけではなく、マルチプレイ専用のモードが遊べるという理解でいいですか?
SWERY氏:専用のモードです。基本的にフリーロームと呼ばれるイメージですね。
二木氏:犬や猫としてできることはすべてできます。
――マルチプレイならではのお互いに干渉可能なインタラクションというのは何かありますか?
SWERY氏:そこについては実はまだ仕様を詰めていません。猫パンチを実装するということはできると思いますが、それで何を生むかというのはキチンとこれから話し合っていかないといけないですよね。
――なるほど、ではマルチプレイは何が遊べるゲームなんでしょう?
SWERY氏:今の計画では、自分の街では撮れない写真が撮れるということですね。
――「どうぶつの森」の非同期型のマルチプレイのように、自分の村にはない果物が採れるみたいな、そういうイメージですか。
SWERY氏:そうですね。
――「The Good Life」が商業的に成功を収めた場合、どのようなことをやってみたいですか?
SWERY氏:パートナーが入って下さっているので、パートナーが得意とするジャンルを進めていきたいと思っています。たとえば、CGアニメやマーチャンダイズでもいいですし、もちろん続編の制作もありだと思います。
――アップデートで拡張したいことは何かありますか?
SWERY氏:それは街の規模を広げたいですし、犬専用、猫専用のアクションも掘り下げていきたいですよね。「主人公の声優に誰それを起用したいです」とかはわかりやすい答えだと思いますが、残念ながらそういうゲームではありませんので(笑)。
――ゲームの完成はいつになりますか?
SWERY氏:2019年の第3クォーターになります。おそくとも2019年11月には配信を開始する予定です。PC、PS4同時発売です。
――VR対応の予定はありますか?
SWERY氏:今のところありません。
――今、キックスターターを目前に控えて決戦前夜という感じですが、今のお気持ちは?
SWERY氏:難しいですね(笑)。凄くおもしろいゲームなので、キチンとプロモーションをして、ユーザーさんが反応してくれることを期待しています。もしうまく伝わっていなかったら、理由を分析してキャンペーン期間中にどんどん改善していきたいと思ってます。それしかないですね。
二木氏:プレイステーションが出た頃って、変なゲーム一杯あったと思うんですよ。いつのまにか予算の関係とか、新しい挑戦がしづらいということで減ってきています。あの頃のゲームってワクワクしたよねと、そういう頃を思い出してくれるようなげーむにしたいなと思っていますね。
――最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
SWERY氏:前回、Figのキャンペーンでバックしてくれた皆さん、バックし忘れてしまった皆さん、今回キックスターターで新たなキャンペーンを開始することになりました。グラフィックスも向上し、ゲーム内容も一新しています。より皆さんが遊びやすいものになっていますのでぜひご期待下さい。
二木氏:だいたい今SWERYさんが綺麗にまとめてしまったんですけど(笑)、キックスターターって海外に比べると、まだ日本は及び腰のところがあると思うんですけど、確かにキックスターターには、できるできないかわからないものや、出来上がってみたらクオリティ低いじゃんというものが、タイトルは何とは言いませんが、あるのも事実です。今回に関しては実力のあるスタッフが、そういうものが作れる体制で取り組んでいるので、キックスターターでバックしてみるという体験をやってみて欲しいですね。キックスターターが終わっても、変わらず情報共有はしていきながらゲームを完成に持っていくと思うので、“ゲームができるダイナミズムを買う”というつもりでお金を出していただけるとありがたいですし、そこも含めて楽しんでいただければなと思っています。
――頑張って下さい。ありがとうございました。
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