インタビュー
「ファイナルファンタジーXV ロイヤルエディション」/「ウィンドウズエディション」インタビュー
“進化した「FFXV」”を集約。“「FFXV」を完結させるシリーズDLC”を遠くない時期に告知予定
2018年2月27日 12:00
1年以上に渡ってダウンロードコンテンツ配信(DLC)とアップデートを重ねてきた「ファイナルファンタジーXV」だが、3月6日にはこれまでのDLCやアップデートをまとめ、さらに追加要素を加えたプレイステーション 4/Xbox One用「ファイナルファンタジーXV ロイヤルエディション」(以下、『ロイヤルエディション』)が、そして同内容を収録しているWindows PC用「ファイナルファンタジーXV ウィンドウズエディション」(以下、『ウィンドウズエディション』)が発売される。
この「ロイヤルエディション」と「ウィンドウズエディション」について、スクウェア・エニックス第2ビジネス・ディビジョンのディレクター田畑 端氏にインタビューを行なった。
また、このインタビューでは「ロイヤルエディション」の担当として第2BDゲームデザイナの黒田洋一氏、「ウィンドウズエディション」の担当として第2BDシニアプログラマーの荒牧岳志氏、「FFXV エピソード:イグニス」担当及び今後のDLCを担当する第2BDゲームデザイナーの寺田武史氏にも同席頂いた。
「ロイヤルエディション」と「ウィンドウズエディション」のことを踏まえつつ、これまでの「FFXV」での取り組み、そして今後の展開や、さらにその先の展望もわずかではあるが触れているので、ぜひご覧頂きたい。
※これまで以前のパッケージ版およびダウンロード版を所有している人向けに、「ロイヤルエディション」の追加要素は「FFXV ロイヤルパック」として単体発売もされる。
「ロイヤルエディション」はただのDLC全部入りではなく、物語の新たな補完、要素の拡張を収録した“進化した「FFXV」”
――「ロイヤルエディション」の発売はいつ頃から予定されていたのでしょうか?
田畑氏:本編の発売前からになりますね。一連のDLCを配信後に、いわゆる“全部入り版”を発売しようという計画が当初からありました。
ただ、その後にちょっと予定が変わったんですよ。昨年で終える予定だったDLCの展開を2018年以降も続けることにしたことです。
――東京ゲームショウ 2017のステージイベントで「『FFXV』は来年も物語を強化していきます!」と発表されていましたよね。
田畑氏:そうです。予定が変わったところがあって「ロイヤルエディション」以降にもDLCを出していくので全部入りではなくなったわけですが、「ロイヤルエディション」には最初の「FFXV」から1年以上をかけて進化させたものがまとめてありますので、「FFXV」をまだプレイしていない新規のユーザーさんに向けた良い入り口になってくれるのではと思います。
あと、ここ1年で展開してきたDLCは全てこの「ロイヤルエディション」を想定して展開していた部分があるんです。例えば、「戦友」というオンラインマルチプレイのDLCを出しましたが、「戦友」のストーリーから本編の最終章へと繋がっていくストーリーを「ロイヤルエディション」に収録しています。他にも、「ロイヤルエディション」ではクルーザーで海を自由に移動して海釣りができるようになったりなど拡張もしています。
そういう、これまでのDLCには入らなかったけど「ロイヤルエディション」向けの計画として作っていたものがありましたので、そこをしっかりと出していこうというものにもなっています。
――「ロイヤルエディション」をただのDLC&アップデート全部入りにはせず、さらに要素や物語を追加拡張していく。その方向へと舵を切ったタイミングがどこかにあったのではと思うのですが、それはどのあたりの時期だったのでしょうか?
田畑氏:それは……本編の発売直後ですね。DLC展開だけでなく本編自体のアップデートをしていくと決めたときに、その後に発売を考えていたDLC全収録版は、単なるDLC全収録版ではない“進化した「FFXV」”にするべきだと、そのタイミングで決めました。
――本編とDLCの繋がりを補完したりして、1本のゲームのように仕上げるというイメージになったと。
田畑氏:はい。それに加えてアップデートもありましたからね。1年以上をかけてゲーム自体が進化したところも収録して、ただのDLC全部入りではなく進化した作品として出す。その区切りとなるのが「ロイヤルエディション」なんです。
……そして、「ロイヤルエディション」を発売してのここからは、元々は計画になかった“「FFXV」をきっちりと完結させるための新しいストーリー”をやろうと、切り替えて取り組んでいるところです。
「戦友」から繋がっていく最終章「王都インソムニア」、「真・ファントムソード」ではより華麗なアクションを追求できる
――「ロイヤルエディション」に追加収録されている要素についてお伺いしますが、まずは「王都インソムニア」のエクストラマップ。これがやはり目玉というか、大きなものになりますかね
田畑氏:そうですね。しかもDLCのようにタイトル画面から選ぶ形式ではなく、本編のゲーム内容が拡張されているものになっています。それなりの広さのマップに拠点もあり、専用のクエストがあり、ボスもいて。そこだけでも最低2~3時間は遊べるボリュームがあると思います。
――以前の「FF」ナンバリングシリーズですと、インターナショナル版のタイミングにいろいろ追加されたりしていましたし、他のゲームでもベスト版発売のタイミングなどに「発売のときに間に合わなかったけど、本当はこれも入れたかったんだ」的なものが収録されたりなどもありましたが、この「王都インソムニア」のエクストラマップは、そういうところもあったのでしょうか。
田畑氏:間に合わなかったものを入れたというより、“本編自体を強化しよう”という意識からでした。強化するべき本編の物語のなかで、DLCやアップデートでも触っていないところとして、最終章の舞台を強化しようということになりました。
――なるほど。「真・ファントムソードの追加」というものもありますが、これはバトル要素の拡張になりますよね。
黒田氏:そうですね、まさにバトルの拡張です。ファントムソードは13本あって、それぞれ個別の機能で戦っていたわけです。今回は「ファントムソード」を発動すると、まったく新しい戦い方ができるようになっています。ボタンを押しっぱなしでもこれまで通り攻撃しますが、ボタンを押すタイミング次第で攻撃の分岐が行なわれて強力な技が増えるんです。
田畑氏:ステータス的に強くなるのではなく、プレーヤーのテクニックに応じて今まで以上に威力がある攻撃ができるといったテクニカルなものになっていますね。
――バトルスタイルを増やすという方向なんですね。アクション要素が今までよりも強い戦い方になっているのでしょうか?
田畑氏:誰もが遊べる要素というより、腕を磨いてこだわりのコンボを放ちたいという人向けです。
――某スタイリッシュアクション作品で、ひたすらに華麗なコンボを追求してそれを楽しんでいる人がいますよね。“魅せプレイ”の追求のような。あれに近い楽しみ方ができるのでしょうか?
黒田氏:まさにそういう人に響くような要素ですね。
――ちなみに、それを入れようと考えたきっかけなり理由はあったのでしょうか? 例えば、インソムニアのエクストラマップに登場する追加ボスに使っていくのに良かったり。
黒田氏:もちろん追加されたボスとの戦いにも使えますが、根底にあったのは“バトルの手触り感、戦っている感”をより高めたいという考えなんです。「FFXV」ではアクションが苦手な人でも楽しめるようにというスタンスがありましたが、今回のファントムソードはそれより一歩踏み出したプラスアルファなものになています。
――それは今回の「ロイヤルエディション」という、いろいろな展開を踏まえた後のタイミングだから入れられるということでもあるのでしょうか。
黒田氏:そうですね。もうひとつ上の遊びを追加しているというところがあります。
田畑氏:バトルのエンドコンテンツと言えるものですね。
――ちなみにユーザーさんからの要望でも、バトルのアクション要素をもっと高めて欲しいという意見が多かったのでしょうか?
田畑氏:ユーザーさんから明確に「バトルをこうして欲しい!」というのは意外と少なくて、1番多いのは「もっと強いボスを追加して欲しい」というものでした。
今回のバトル拡張のコンセプトには「遊びの幅を広げる」というものがあるのですが、プレーヤーの操作に変化がないのでは幅は広がらないと黒田は考えて。そこで、やりこんだ上で手に入り、自分の腕次第で強さが変わっていくようなものを入れたというわけですね。
――なるほど。ちなみにオンラインマルチプレイの「戦友」も今後さらに拡張していくということですが、この「ロイヤルエディション」のバトル拡張要素は「戦友」にも影響していったり、後々に加わっていったりもするのでしょうか?
黒田氏:「戦友」は、別の進化をしていくことになると思います。ファントムソードのアクションになりますし、あくまでもストーリー本編中のノクト専用というものになっていくと思います。
黒田氏:(実際にプレイをし始めて)少しだけですけど見て頂きましょうか。
寺田氏:これが真・ファントムソードですね。
――おっと、これは……! この攻撃って、使うとノクトが辛い気持ちで出していたあの技なのでは? 本編ストーリーの最後の最後あたりで見たような……。
田畑氏:もちろん序盤のものではないですね(笑)。
黒田氏:ファントムソードを全部揃えてからの、その先の遊びになっているんですよ。他にも、空中を飛んでいるときに使ったあの攻撃とか、新しい動きもあります。
田畑氏:本編を十分に遊んだセーブデータであれば、入手はそんなに大変ではないと思います。
クルーザーで海を自由に移動できるようになって、ついに「海釣り」ができるように!
――続いての「ロイヤルエディション」の追加要素は「クルーザーで海を自由に移動できる」というものですが、これを見た人がまず思うのは「どこに行くの?」とか「何をするの?」ではないかなと。本編中では海は移動シーンとしてあっただけで特に何もしなかったですよね。
田畑氏:あのシーンでは何もできなかったですからね(笑)。
――でも、海自体は最初の段階からフィールドとして広く作ってあったわけですよね。
寺田氏:ありました。(マップ画面を見ながら)ちなみに、ここがオルティシエなので本編ではここからこういうルートを進んでいったというわけです。
――今、映画インディー○ョーンズの移動中みたいな画面になってますけども(笑)。こうしてみるとこの地域だけでも結構な広さがありますよね、海。
黒田氏:だいたいこの本編で渡った海域を「ロイヤルエディション」では自由に移動できます。それで、海で何をするかと言えば「釣り」ですね。
――「海釣り」がついに。
田畑氏:大海原で釣りを楽しんでもらうということですね。それにあわせて魚も増えてますし、料理も増えてます。まぁ、クルーザー移動というより“海釣りが入った”という方が話が早いかもしれない(笑)。
黒田氏:クルーザーは海のどこでも止められます。
田畑氏:寝泊まりもできて時間も進められます。
寺田氏:ショップもあります。
田畑氏:なので根を詰めて海釣りができます(笑)。
――なるほど(笑)。ミニマップに光っているのは魚影レーダーでしょうか?
黒田氏:そうです。海の釣りに関するクエストもあります。
――本編発売の段階では海にこういう要素はなかったわけですよね。移動手段を入れていないし、もちろん海に棲息する魚もいなかった。
田畑氏:ですね。でも、海を自由に移動できるようにしたいというのは開発当初から思っていたものなんですよ。そこで「ロイヤルエディション」を出すなら、まずは全てのユーザーに重要になる「王都インソムニア」を拡張するというのがあって、それともうひとつ、誰にとってもただの移動シーンだったクルーザーを自由に遊べる要素にしたいというのがあったんです。
――そこで何を楽しめるようにしようかという話になると、釣りの出番だったわけですね。「FFXV」の釣りというと異様に力の入ったものになっていてコンプリートが大変なエンドコンテンツ的存在だったわけですけど、今回は魚の種類などがどれぐらい増えるのでしょうか?
黒田氏:海なので海水魚がいますし、ユニークな魚もいます。海は広いので場所によって釣れるものも変わっていきます。それに、ちょっとした仕掛けもあったり……。いろいろ試してみてもらいたいですね。
――上陸できるところはどうなるのでしょう?「神影島」などの島にはいけるのでしょうか?
黒田氏:乗り降りは港に限られていますので、残念ながら島に上陸したりはできないです。
田畑氏:行ってみたいですよね神影島。今回はとりあえず、近くから見られるようにはなります。あと、今回の自由移動で世界の形とか距離感はよりわかるようになると思いますよ。
ウィンドウズエディションではMODにも対応。MOD制作用ツールの提供は5月から6月頃を予定
――ファーストパーソンモード、いわゆる1人称視点でプレイが可能になるという要素ですが
田畑氏:これは元々は「ウィンドウズエディション」に搭載を告知していたもので、それを「ロイヤルエディション」にも入れることにしたというものです。Windows版でどういうやり方をすれば1人称視点にできるかが確立できたので、それを持ってきているものになります。
黒田氏:(実際にゲーム画面で視点を切り替えながら)このようにいつでもどこでも視点変更できます。
――非常にスムーズに切り替えできてますね。これは見た目の違和感を抑えたりなど、調整がかなり必要だったのでしょうか?
田畑氏:そこは結構ありました。地道に、例えばチョコボに乗ると「あ、こういう見た目になっちゃうんだ……」というのをひとつひとつ洗い出して調整していきましたね。
――カメラの置き場所やコントロール周りですよね。そこが全然話が違ってくるのだと思うのですが。
荒牧氏:そうですね。操作周りでも、並行に横移動できたり正面を向いたまま後ろ移動したり、1人称視点だからこその操作も必要になりますが、そこももちろん入れています。視点の高さも違和感がないように対応しています。
――これを見て多くの人がパッと思うのは「VR化も検討しているのかな?」というものだと思うのですが、それはどうでしょう?
田畑氏:あくまで1人称視点モードというものにしていて、VRは考えていないですね。
黒田氏:(1人称視点で帝国の魔導兵と戦いながら)こんな風に敵と目があう怖さもありますね。
――1人称視点になることで迫力はかなり出ますね。
田畑氏:世界の広さもこれまでより感じられるようになりますね。仲間とも同じ目線で近くに感じられるようになります。
――なるほど、仲間と同じ目線になれるというのは大きいかもしれませんね。世界にスケール感も出ますし。
田畑氏:モンスターの迫力や臨場感も高まりますよ。
――「ウィンドウズエディション」ではMOD(ユーザーが制作するゲームデータの改造や追加用データ、テクスチャ差し替えなど)にも対応するとのことですが、それはかなりアグレッシブな話ですし、「FF」シリーズ、ひいてはスクウェア・エニックスとしてもあまりやってこなかった領域だと思います。ユーザーさんにはどの程度の範囲まで触れるようにするのでしょう?
田畑氏:許される限り、やれるだけのことをやろうと思っていますね。
――あまり制限は設けない方向で考えているということでしょうか。
田畑氏:そのつもりです。ただ、段階的にやっていくことになります。今はMOD開発用のツールをどのぐらいの時期に提供できるのかが見えてきたところです。スキン作成ツールの配信は5月か6月になりそうです。
(画面で実際にMODデータを適用しているのを見つつ)発売時でもキャラクターのデータはいくつか提供する予定なので、リプレース(置き換える)をして楽しむことはできますよ。
――(人物を全員ケニー・クロウの外観にして、物語序盤のハンマーヘッドを訪れるシーンを見つつ)これは、「猿の惑星」ならぬ「ケニー・クロウの惑星」みたいになっちゃいましたね。ついにケニーに支配されましたか……。
一同:(笑)。
――(シドがノクトを見て「親父の威厳をそっくり拭き取ったような顔だな」と話すシーンに)顔はみんなケニーですけどねー、これ。
一同:(笑)。
――こんなふうにシュールな設定にして、ツッコミを入れながらの実況プレイみたいなこともできると。
田畑氏:そうですね、こんな風に“ならではの楽しみ方”が生まれますよね。「FFXV」は基本はシングルプレイのゲームではありますが、開発が用意した遊びをなぞっておしまいではなくて、そこをもとに自由に楽しんでもらいたい、長く愛してもらいたいっていう目標でやってきていますので。
MOD対応は、スクエニでは前例がないという意味でアグレッシブかもしれないですが、ユーザーに喜んでもらえる要素なら、挑戦しておくべきだと考えました。これによって前例もできますしね。
――ツールで制作したMODデータは、ユーザーさん間で自由にやり取りができるようにするのでしょうか?
荒牧氏:はい、その予定です。
田畑氏:ユーザージェネレーテッドコンテンツ(ユーザー制作のコンテンツ、UGC)と、いわゆるMODは、どちらも対応する予定です。
――ゲームバランスをいじれるような、結構深いところまで触れるようにするのでしょうか?
田畑氏:今は、まずキャラクターを作成できるようにします。その後、クエストを作成できるように、レベルエディターをツールに実装するということまで計画しています。その先にどう拡張していくかは、一旦今のスケジュールを完了させてから決めたいと思っています。
ただ手がけている荒牧たちは、「1本違うゲームが作れてしまうぐらいにしたい」と言っています。たくさんの人が楽しんでくれたなら最終的にそうなるのかな、そうなってくれるといいなというところですね。
――「クエストを作れる」となると、本編に具体的にはなかった世界設定をオリジナルで補完したりもできるかもしれないですね。そのオリジナルクエストには一般人の、いわゆるモブキャラが用意してあって出させたりなどもできるのでしょうか。
荒牧氏:はい、そういう素材的なものも用意して使えるようにしていますね。
田畑氏:Steam ワークショップに対応させて提供することになると思います。
SteamにはSteamのコミュニティがありますので、コミュニティとコミュニケーションを取りながら、やるべきことを定める、もしくはやらないことを決める。つまりユーザーと一緒につくっていくつもりです。
発売後も継続して作り続けることになった「FFXV」は、開発チームにとってプラスの多い作品に
――あらためて「FFXV」というゲームの取り組みは独特なものになったと思います。オンラインゲームのような拡張スケジュールでもありますし、今のMOD対応のようなオープンワールドRPGの定番とも言えるアプローチもやっていくということで、枠組みに囚われずに展開しているという印象です。
田畑氏:それはつまり、とらえどころがない感じということですよね(笑)。
――そうですね、難しいです(笑)。でも、本当にチャレンジの多いタイトルだなと思えます。
田畑氏:それはもう、1番最初から掲げていた「今までやってないこともどんどんやる」という気持ちがあったので、そう見えるものになったのは嬉しいですね。
もちろん、うまくいくことばかりではなかったです。ですが、いろいろと経験をつめていますし、いろいろなことを知ることもできました。とても有意義な取り組みになっていると思うんですよ。
――なるほど。それに対するユーザーさんの反応であったり、「FFXV」というゲームとの付き合い方はどうでしょう? これまでの「FF」になかった展開をしているだけに、ユーザーさんも人それぞれでだいぶ違っているのだと思うのですが。
田畑氏:喜んでくれてるファンは非常に多いですよ。とはいえ、当たり前ですがこのゲームとの付き合い方は、ユーザー個々でそれぞれです。最初に購入して早解きしておしまいっていう、いわゆるオフラインパッケージな遊び方をされた人はもう遊ばない人が多いでしょうし。この世界観やキャラクターを気に入ってくれた人、やはり長く遊んでくれているのだと思います。そういう人の中には、普段はマルチプレイのゲームをしないっていう人もいるんですけど、「戦友」は遊んでくれていたりするようです。
そういう意味では、ユーザーさんの遊び方を調べていくと、「FFXV」はかなり独特で興味深いデータになっているだろうなと思います。
――不思議なゲームになっているなと思います。こういう多方面な展開をして、さらに本編にも肉付けしているというゲームは他にないですしね。
田畑氏:他にないですか? でも、今後は増えていくかもしれませんよ。大きく垂直でローンチして、その後は買ってくれた人と長く付き合っていく、そのためにいろいろなことをやっていくという取り組みは、やってみてとても将来性を感じてます。
――そうなると、ユーザーさんの意識というか捉え方も、それに慣れていかないといけないというか、そうしたタイトルをどう楽しんでいくのかも、気がついたら自然と変わっていくのかもしれないですね。
田畑氏:そうかもしれないですね。
――先ほどもあった、最初の発売で早解きしておしまいっていうオフラインパッケージ的な遊び方をした人と、「ロイヤルエディション」で今から遊ぶ人とでは全然違ったものになっている。いつ遊ぶのが良かったのか、どう付き合えば良かったのかが難しかったなと思ったりもするんですよ。
田畑氏:実際、生き物のようなところがありますね。僕らは“今遊んでいる人”とのライブな関係性をすごく大事にしています。それでやっていくと日々、いろいろなものが変化して進歩もする。でも、世の中の変化とか、その速度って実際にそういうものですよね。
逆に、「FFXV」をリリースする前は僕らは何年も開発を続けていたわけです。その時は世の中の変化とは基本的には隔離された状態で、長期化していくゲーム開発というのを続けていました。それはそれで「このままでいいのかな?」って思うところもあるんですよ。
――何年もかけて開発して、発売したら1カ月で消化されて終わりというのでは、合わないと。
田畑氏:はい。正直ビジネスとしてもリスクが高くて難しいですし、何より、作り手がやりがいのある仕事と思い続けること、モチベーションを保ち続けることが、だんだんと難しくなっていくと思います。結果的にユーザーの皆さんにとっても不利益になる。
――そうなると、ひとつは、ある程度バランスのとれるものにまで規模を縮小するしかない。
田畑氏:労力を減らすのはひとつの道です。
――もうひとつは、「FFXV」のようにオフラインパッケージというスタートでも、常にアップデートし続け、DLCを出して、ちょこちょこといろんなところで採算を合わせていくっていうアプローチも、ひとつの道だったというわけですよね。
田畑氏:「FFXV」で取ったサービスモデルへのアプローチは、思っていた以上に我々とファンの双方にプラスがありました。ビジネスとしてのバランスもそんなに悪くはないです。今後にとっての重要な経験になってると思います。
――仮に、最初のパッケージ発売をもっと延期して、例えば今の「ロイヤルエディション」の内容で発売していたら、数字などの諸々はどうだったでしょう?
田畑氏:それは想像するのがとても難しい質問ですね。そこを無理やり想像すると、「ロイヤルエディション」まで引っ張っていたら、今考えているような追加DLCの開発という動きはなく、ローンチして終わりという流れになっていたんじゃないかなと思います。
――そうした場合、「ロイヤルエディション」の内容をユーザーさんがだいたい1カ月ぐらいで消費して、それで終わりということになっていたかと思うのですが。
田畑氏:と、思います。
――それだとやはり、ビジネス的な数字や開発のモチベーションなど、いろいろな面で合わない?
田畑氏:そう単純ではないと思いますが……なんとも言えません。その道を選択できないからこそ、今の現実がありますし。最初のパッケージを発売せずに、さらに1年以上も追加で開発を続けるというのは、色んな理由から無理でしたから。
――わかりました。そうすると、早い段階で「FFXV」をプレイしたという人にもう1回、今の「ロイヤルエディション」の「FFXV」を、遊んでみてもらいたい、知ってもらいたいという気持ちも出てきますよね。
田畑氏:そうなんです。その機会をどうやって作るか、どうやって知ってもらうか。
この1年で、かなり速度のある開発ができるようになったと思うのですが、作っている一方で、それを(ユーザーさんに)届けきれているかと言うと、届けきれてない。そこが課題だなと思います。
「ロイヤルエディション」というタイミングは、今後も継続してプレイしてくれるファンに加えて、ここから「FFXV」をスタートしてくれる人も生まれる、滅多にない機会です。そういう意味で、僕らにとっても届ける力不足という課題解消に取り組む、とても重要な施策なんですよね。
――なるほど。オフラインRPGながら、毎月のようにマスターアップされて、拡張もされていくRPGと付き合っていく。どこかのタイミングでその展開に加わって遊んでいく。「FFXV」は本編もいじっていますし、他のオープンワールドRPGがDLC展開をしてきたものとも違ったアプローチに思えますね。
田畑氏:はい。ただ今後は、オンライン環境でプレイするシングルプレイのRPGというスタンスが当たり前になってきますよ。そうなると、オンラインゲーム並みに色んなアップデートを入れていく、サービスとしてのシングルプレイゲームも、増えていくかも知れませんよ。
ゲームをクリアしたらそれで終わりではなく、体験する物語自体が人によって違っていたり、何度も繰り返し遊んでいけるものになっていたり。そういう方向へと、ゲームは進化できると思っています。
――1本のゲームでも、作品の世界観や物語が補完されたりして、まるで生き物のように変わっていく。プレーヤーはそれと長く付き合っていく。「FFXV」の発売以降の展開は、その一端が少し感じられるというか、実験されているかのように思えます。
例えば、最初のパッケージ発売時点の「FFXV」を仮に80点としたら、いろいろなものが加わり変わった「ロイヤルエディション」だと、その点数が変わりますよね。印象ももちろん違ってくる。
田畑氏:それは当然だと思います。ただ僕らはやはり、DLCやアップデートを受け入れて、楽しんでくれて、長く「FFXV」を遊んでくれている人たちが1番大事です。その方たちのために開発をしていたら、こうなってしまったといいますか……。
――例えば僕なんかは、それこそ最初のパッケージの発売前に「FFXV」をプレイしてレビューを書いたので、もう0状態で「ロイヤルエディション」を評価するというのは、できないんですよね。
田畑氏:どの時期に「FFXV」をプレイしてもらったのかで違ってくるでしょうね。発売して開発終了にしていれば、そういう難しさも生まれなかったのでしょう。2017年で開発終了していれば、「ロイヤルエディション」は、いわゆる全部入りになってました。しかし僕らは、そうはできませんでした。
――ユーザーさんも、どの時期にどういうバージョンをプレイしたかで体験に違いがあって。そこに損する得するみたいな価値では計れないですけども、付き合い方が難しい……。ただ1つ言えるのは、今回の「ロイヤルエディション」は「FFXV」に触れるいいタイミングということですね。
田畑氏:そうですね。進化を味わえる、わかりやすい良いタイミングになると思います。
新たなシリーズ展開のDLCを遠くない時期に発表予定。積み重ねて得たノウハウは“次の作品”へ
――「ロイヤルエディション」と「ウィンドウズエディション」の発売以降にも、さらにDLCの展開もアーデンの物語を描くという「エピソード:アーデン」が予定されていますが、今後はどのようになるのでしょう?
田畑氏:今後は……「FFXV」を完結させていくための、ひとつのシリーズとして展開するDLCを計画しています。
――……シリーズ展開のDLCですか?
田畑氏:これまでは個別のDLCを配信していきましたが。そうではなく、いくつかのDLCを合わせて“「FFXV」を完結させるシリーズ”というひとつの物語になるというものです。
――単体で完結するものではなく、複数でひとつの物語を展開するDLCということでしょうか。
田畑氏:はい。詳しくはそう遠くない時期に、どういうコンテンツをどう提供していくか発表できるのではないかなと思います。
――わかりました。さらにその先というか、展望もお伺いしたいのですが、この1年あまりの展開、「ロイヤルエディション」と「ウィンドウズエディション」を作ったことは、次の取り組みにどんな繋がり方をするのでしょうか?
田畑氏:イチからではなく、様々な経験をしたチームとして、より大きなプロジェクトに挑戦できるといいなと思っています。「ロイヤルエディション」に至るポストロンチでは、開発とサービスを一体化する取り組みを行ないました。「ウィンドウズエディション」では、NVIDIAと共同でゲームエンジンを強化し、技術によってゲーム体験の質を高めるというより試みをやりました。これらはすべて、ユーザーの皆さんに良いゲームを提供するための全力の取り組みです。そして同時に、次世代で必要なことへの準備でもあると考えています。僕はビデオゲームやゲーム産業は、まだまだ進化できると考えていますので、そこに向かって進んでいきたいです。
――わかりました。ありがとうございました。
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