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別れは新しい出会いの始まり……シリーズ30年の“別れ”を味わう回顧展

「ファイナルファンタジー30周年記念 -別れの物語展-」先行体験レポート

1月22日~2月28日 開催予定

会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)

 スクウェア・エニックスは、「ファイナルファンタジー」シリーズ生誕30周年の集大成として“別れ”をテーマにした回顧展「FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION -別れの物語展- (以下、『別れの物語展』)」を、1月22日から2月28日まで六本木ヒルズ森タワー52階 森アーツセンターギャラリーで開催する。

 このイベントのオープニングセレモニーおよびメディア向けの内覧会が開催されたので、その模様をお伝えしていこう。

オープニングセレモニーに坂口博信氏、天野喜孝氏が登場!

 オープニングセレモニーではまず、「別れの物語展」制作委員会の代表として、スクウェア・エニックス代表取締役社長である松田洋祐氏が登壇した。

 松田氏は1年に渡った「ファイナルファンタジー」シリーズ生誕30周年の展開を振り返り御礼を述べるとともに、「『ファイナルファンタジー』はこれからもどんどん発展し、進化していきます。この『別れの物語展』で『ファイナルファンタジー』の今までの歴史を振り返って頂くとともに、これからの『ファイナルファンタジー』の発展、進化に、想いを馳せて頂ければと思います」と、これからのシリーズの発展を語る言葉を、挨拶とした。

 続いて、「ファイナルファンタジー」シリーズ生誕30周年統括プロデューサーである橋本真司氏が登壇。「別れの物語展」の見所を紹介しつつ、「『別れの物語展』という名称は一瞬、暗い印象を受けるかもしれません。しかし、出会いと別れは誰しも経験があるかと思いますし、仲間との出会いがあり別れがあって、そしてその別れから新しい出会いが始まっていきます」と、この回顧展の意図するところを語った。

 スペシャルゲストには、「ファイナルファンタジー」シリーズのイメージイラストやタイトルロゴのキービジュアルを手がける天野喜孝氏、さらに、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信氏が登場した。

 天野氏は、この回顧展への印象を橋本氏より聞かれると、回顧展という括りに思うところがあったのか、「『ファイナルファンタジー』は終わったわけではないですし、途中を見てもらうみたいな感じですよね?」と橋本氏に逆に質問。橋本氏はそれに対して、「もちろんです、『ファイナルファンタジー』はまだまだ続いて進化していきます」と応えた。

 続いて挨拶した坂口氏は、ニューヨークのカーネギーホールで「ファイナルファンタジー」楽曲のコンサートが行なわれるということで、先週は作曲家の植松伸夫氏とニューヨークにいたという。植松氏は「カーネギーホールで自分の曲が演奏されるなんて、こらえてないと泣いちゃいそうだよ」と話していたそうで、「ファイナルファンタジー」という作品がいつのまにかそこまで成長したことを実感したという。

 また、「私が生みの親という紹介がされましたけど、もちろんそれはスタッフのおかげ。チームで作ってきた作品ですからね。最近なら田畑くんや吉田くんとは、僕は一緒に制作をしたことはないですけど、ナベちゃんという裏方の暗躍している女性がいて、彼女が会わせてくれたりして『ファイナルファンタジー』を作る時の精神みたいなものは飲みながら話させてもらったりしました。『とにかくチャレンジしていこう!』って。そういうところは新しい世代にも引き継がれています」と、新しい世代に「ファイナルファンタジー」が受け継がれていることを語る。

 また当時の仲間についても、「もちろん、当時に制作で一緒だったメンバーで言うと、北瀬(北瀬佳範氏)ですとか、ドット画の渋谷さん(渋谷員子さん)のように古くから携わっていたメンバーは今もがんばってくれています。他にも、古いメンバーですと田中弘道や青木さん(青木和彦氏)もゲーム業界でがんばっていますしね。そういった面々のエネルギーが作り出した『ファイナルファンタジー』だったと思います。これからもがんばってもらって、40周年、50周年、次世代には100周年もやってもらいたいなと思います(笑)」と、仲間がいたからこそ生まれた作品であることを、当時を振り返りつつ語った。

坂口博信氏、橋本真司氏へインタビュー「チャレンジしていこうという気持ちでいつも取り組んでいた」

 オープニングセレモニー後には、坂口氏と橋本氏への合同インタビューも行なわれたので、その模様もお伝えしよう。

――「ファイナルファンタジー」が30周年を迎えるほどの人気となった、その人気の理由はどのあたりにあったと感じられていますか?

坂口氏:最初の「1」の時はそれほどでもなかったんですよね。初期出荷40万本ほどでした。いろんな経緯があったのですが、最終的にはハードウェアと共に歩めたことが大きいのかなと思います。ファミコンで3作品、スーパーファミコンで3作品、そしてプレイステーションで3Dグラフィックスになり。チャレンジしていこうという気持ちでいつも取り組んでいました。常に最先端の技術を取り入れ、最先端のハードの深いところをちゃんと使って作る。もちろんゲームですから面白くなければいけないですが、それとは別に技術的に深いところを追求して作っていたのが良かったのかなと思います。

橋本氏:坂口さんを中心にクリエイターの集まっていた力というのがやはりすごくて。そこでいいものを作るという環境があり、恵まれていたと思います。そしてハードの進化と共に歩んで、世界にも出していけたのが幸せだったと思います。

――坂口さんは今はもう「ファイナルファンタジー」は作られていないわけですけど、もう1度「ファイナルファンタジー」を作りたいと考えることはありますか?

坂口氏:いやいや、「テラバトル2」を作ってますから(笑)。「テラバトル2」! 「テラバトル2」! いっぱい言っておこう「テラバトル2」(笑)。それはさておき、1度離れていますからね。田畑くんとか吉田くんとか新しいディレクター達がいて、彼らにチャレンジしていって欲しいと話ましたし。「『ファイナルファンタジー』ってどういうものですか?」みたいに聞かれたときもあるんですけど、最先端の技術で若いクリエイターが作るということが大事だと思うんですよ。なので、自分が作るよりも、新しい世代、新しい力が「ファイナルファンタジー」を育てていって欲しいと思いますよ……「テラバトル2」(笑)。

――(後ろのシリーズ作品の年表を指して)これだけたくさんのシリーズ作品があるわけですが、思い出深い作品や苦労した作品はどれでしょうか?

坂口氏:やっぱり1作目はスタートですから大変で、当時は雑誌社さんに自分で持ち込んだりしたんです。でも、「『ドラゴンクエスト』の対抗馬になるようなゲームは扱えない」と門前払いを喰らったことも。なかなか表舞台にでれなかったですね。あとはやっぱり7作目ですね。そこで3Dグラフィックスに一気に進みましたので。当時は3D映像のRPGというものの答えがなかったので手探りで作りましたね。

――ストーリーについてお伺いしますが、ストーリーでこだわったところや思い出深いものなどありますか?

坂口氏:ゲームってそもそもストーリーがなくてもいいんですよね。ストーリーって1方向へと流れていくのですが、ゲームって自由度が命で、そういう意味ではストーリーとゲームシステムって水と油みたいなところがあるんですよ。ストーリーでがんじがらめにすると遊ばされているような気がしてつまらなくなる。だからどちらかというと、ストーリーそのものを楽しくするというよりも、ゲームにどう馴染ませるか。ゲームを自由に遊んでいるんだけどストーリーが自然と入ってくるような。そこに気を使っていましたね。

――シリーズが進んで行くと、命が巡っていくというような深いテーマを持たせている作品もありますが、ストーリーをゲームに馴染ませることを優先していたのは変わらなかったのでしょうか?

坂口氏:もちろん伝えたいことってあったんですよ。でも、それをグッとこらえて作らないと(笑)。そうしないとゲームをプレイした人に入っていかなくなっちゃう。根っこには言いたい話ってありましたし、もっと言いたいっていう気持ちもありましたけど、ゲームなんでほどほどにしようっていうところでしたね。

――今回の展示内容でこだわったところや苦労したところはどんなところでしょうか?

橋本氏:ナンバリングだけでも1作目から15作目までありまして、それぞれに作ったクリエイターが異なりますし、派生作品もありますしね。それに、スマホアプリはどうするんだという議論もあったんですよ。ただ、展示スペースは限られていますから、かなり絞り込んだ形にして泣く泣く落としたものもあります。また、それぞれのタイトルをどう見せていくかというのも大変でしたね。

――今回の展示のテーマは“別れ”ですが、坂口さんが手がけられた作品中での別れ。このキャラをここで別れさせた、パーティーメンバーから外したという……

坂口氏:(喰い気味に)エアリスですね!

――やはり、あれが1番思い出深いですか。

坂口氏:当時、ユーザーさんから「エアリスは生き返らないのか!?」って声がたくさん来ましたからね。今だと北瀬という「ファイナルファンタジーV」あたりから一緒だった彼が「VII」のリメイクを制作中ですけど、どうなるんでしょうね? 生き返るようにするんですかね? スクープで書いちゃいましょうよ、「生き返るようにするらしいぞ!」とか!

橋本氏:ダメです! 書かないでください(笑)。

――(笑)。とりあえず、別れといえばやはりエアリスのシーンが思い出深いわけですね。

坂口氏:そうですね。ユーザーさんの反応があれが1番すごかったんですよ。正直、作っている時にはそこまでのものとは思っていなかったんですよ。「やっちゃえ!」みたいな感じでしたけどね(笑)。

――衝撃的(笑)。わかりました、ありがとうございました。

展示レポート ― ナンバリング作品を中心に、あの別れの名場面を曲とともに楽しんでいく

 ここからは展示の内容を紹介していこう。この「別れの物語展」では、入場時にスマートフォンを使った「専用音声ガイド機」が貸し出される。このスマホから、展示を観ている作品の曲や、音声による作品紹介などが聴けるという仕組みだ。

 最初に待っているのは「オープニングシアター」。来場者が最大50人一緒に楽しむというもので、壁一面に大空が映し出されるなか、飛空挺エンタープライズに乗ってバハムートとの戦いを繰り広げる。音声ガイド機をタップして魔法で応戦するという仕組みになっていて、壁一面の映像に音響の効果が組み合わさっての大迫力の戦いを楽しめるようになっている。

 シアターを抜けると、そこは「FFI~FFVIエリア」。各作品の“別れ”の名場面が描かれたボードには、そのシーンの名台詞、そして実機のそのシーンの映像も流れている。また、各ボードの前に立つと、音声ガイド機からはその作品を思い起こさせる楽曲とともに、発売時期や当時のエピソードなどを交えた紹介が再生されて、より思い出を呼び起こしてくれる。

 ピックアップされている場面はいずれも「やっぱりこのシーンだよね」とか、「あー、これあったなあ……」と、プレイ経験のある人なら、納得の場面ばかり。“別れ”という一風変わったテーマの展示ではあるが、実際に展示を見ていくと「ファイナルファンタジー」の別れは名シーン揃いというのを実感できるはずだ。

 続いては3Dグラフィックスになってからの「FFVII~FFXIIIエリア」。ムービーシーンが増えた世代でもあるので、こちらでは映像をより大きく映し、各作品の別れの名場面が紹介されている。テーマとハマっているものだと、やはり、「FFVII」のエアリスとクラウド、そしてクラウドとザックスのシーンはマッチしている。そして「FFIX」のビビ、「FFX」のティーダの涙する表情もグッとくる。

 「FFX」は通常のシーン展示だけでなく、ティーダとユウナの記憶が散りばめられている「FFXエリア」という区切られたスペースも用意されている。この中は壁が全てミラーになっていて、その壁にたくさんのモニターがあり、ティーダとユウナの旅の軌跡が映されている。最初の出会いから辿るように観ていくと、その最後へとたどり着く。

 続いては世代が飛んで、最新のナンバリングタイトルになる「FFXVエリア」。こちらにはイメージアートやワールドマップのアイデアボードをはじめ、たくさんの資料が展示されている。その奥の仕切られたスペースには、ノクティスとルナフレーナの「幻の結婚式」があり、ここではノクトの父レギスやイグニス、プロンプト、グラディオラスたちが式の祝辞を話す。この展示だけのオリジナルなシナリオだ。

 オンラインタイトルの2作品のエリアとして、「FFXI」と「FFXIV」のエリアが並ぶ。「FFXI」のエリアではその歴史として、追加ディスクごとのシナリオをダイジェスト映像で紹介している。

 「FFXIV」のエリアでは、オルシュファンとイゼルに捧げる追憶の部屋として、クルザス中央高地の墓標を展示。冒険の世界を描いたアートや設定画、さらにシヴァのフィギュアも展示されている。

 最後に待つのは、「FFVII」エリア。エアリスとクラウドが最初に出会った「スラムの教会」が再現されている場所だ。この展示用に収録されたエアリスの言葉が聴けるほか、このエリアには現在制作中の「ファイナルファンタジーVII REMAKE」の初公開となるイメージボードも展示されている。なお、リメイクのイメージボードは撮影不可。実際に来場した人のお楽しみというわけだ。

 全ての展示を楽しんで最後に待つのは、「ファイナルファンタジー」を生み出したスタッフからの言葉。メッセージは、坂口博信氏、植松信夫氏、天野喜孝氏、渋谷員子氏、河津秋敏氏、石井浩一氏、田中弘道氏、北瀬佳範氏、時田貴司氏からのものとなっている。

 出口付近では、天野喜孝氏が「FFXV」のために描いた「BIG BANG」を別のアプローチで描き直したという「BIG BANG -誕生-」や、田中達也氏が制作した「ファイナルファンタジー」シリーズをモチーフにしたミニチュアも展示されている。

カフェではコラボメニューを展開、30周年グッズの先行販売も

 「別れの物語展」の開催スペースと同じフロアにあるカフェ「The SUN」では、「ファイナルファンタジー」とのコラボメニューが楽しめる。また、六本木ヒルズ内のカフェやレストランにて1,000円以上の注文をすると「別れの物語展」の限定コースターがもらえるというコラボも行なわれているので、そちらもぜひチェック頂きたい。

「ファイナルファンタジー」30周年関連グッズ先行販売