インタビュー
松山洋氏が熱く語る「.hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK/WHITE」
2017年11月1日 07:00
「ハセヲはこうなんです!」、サイバーコネクトツー社内が一丸となって想いを込めたフィギュア
「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK/WHITE」は、コレクターズ事業部に松山氏が原田氏を訪ねるところからスタートしたという。世間ではまだ「.hack//G.U. Last Recode」がアナウンスされる前である。しかし松山氏は、このゲームの発売に合わせて、ハセヲのフィギュアを世に出すべく、活動を開始していたのだ。
「ゲームが出たからフィギュアもよろしくね、じゃダメなんです。お互いに夢を見たかった。10年前、実は原田さんは全ての『.hack//G.U.』の仕込みを終えた時点で、3代目プロデューサーにバトンタッチして、見守る立場になっていた。だからこそ、10年前の“続き”をやりたかったんです。ゲームとフィギュアはそれぞれが独立しているんじゃなくて、同じプロジェクトで、だからこそ原田さんと進めたかったんです」と松山氏は語った。
実は数年前、「.hack//G.U.」のハセヲのフィギュアの試作品が作られ、コレクターズ事業部主催の展示イベントである「魂ネイション」で出展されていた。松山氏はそれを見ており、だからこそコレクターズ事業部を訪れたのだが、ここには“同志”である原田氏がちょうど部内異動となり在籍していた。そしてサイバーコネクトツーはユーザーに近い位置でユーザーからの声に耳を傾けるメーカーである。ユーザーからは「ハイクオリティなフィギュアが欲しい」という声はずっと大きく、松山氏をはじめとした社内全体でも、「フィギュアを!」という想いを温め続けていた。
「だからこそ、ただのフィギュアじゃダメなんです。このフィギュアを買うことで『.hack//G.U.』の謎が1つとける、そういうフィギュアにしたいんです」と松山氏が語ると、原田氏はすかさず「謎はもちろんなのですが、フィギュアを入手することで『.hack』シリーズをもっと好きになってもらいたい。ファンアイテムであることはもちろん、このフィギュアでゲームに興味を持ってもらえる様な、そういうフィギュアを目指して作りました」と言葉を重ねた。
そして商品へと話は向かう。「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK」は、「.hack//G.U.」でのハセヲがプレーヤーの前に現われる“最初の姿”なのだと松山氏は語った。彼はPK(プレーヤーを殺すプレーヤー、プレーヤー・キラー)を狩るPKKとしてその衝撃的な姿を見せる。
禍々しさを感じさせるとげが生えたような黒い甲冑、「人の命を刈り取る」事を象徴する、死神のように禍々しい“鎌”を武器にして、こちらを振り返り鋭い眼光を向けるその姿……彼は何者なのか、彼がここまでなってしまったのは、“何”があったのか、否応なくプレーヤーは「ハセヲの物語」に引き込まれていく。フィギュアはその、全てのプレーヤーが出会う最初のハセヲを立体化している。
そして“白いハセヲ”の姿を再現したのが「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE」。この姿はVol.3でハセヲの“内面”として現われる。ハセヲはプレーヤーの前で1st、2nd、Xthと様々なフォームを見せるが、3rdフォームのみ元の姿と異なる白い姿でも登場する。プレーヤーに印象的な黒い姿と、対となる白い姿の2つを立体化する、というのが松山氏と原田氏が仕掛けた、「ハセヲというキャラクター表現」なのだという。
ハセヲの姿はCGイラストを元にしているが、サイバーコネクトツーは、フィギュア作成にあたり高精細なCGの“ハイモデル”を新規に作成し、コレクターズ事業部側に提示したという。フィギュアはそのモデルを原型に、フィギュアならではの解釈を加えて製作されている。
装備している甲冑は生物的な雰囲気もある。どちらも非常に細やかなグラデーションがかかっていて、黒はどこか生物的な雰囲気、白は陶器のような感触もある。振り返りこちらに伸ばした手、力のこもった目線など、細かくチェックするほどに楽しいフィギュアだ。
フィギュアの造型にもサイバーコネクトツーらしいこだわりに満ち満ちている。本商品に寄せた「要望書」の圧倒的な量は、驚くべきものだ。「現在白くなっている頭の頭頂部は黒くして欲しい」、「ここのグラデーションはこちらのフィギュアのようにして欲しい」、「武器の色味はこうして欲しい」……などなど、本当に全面にわたって意見が寄せられている。これは松山氏やサイバーコネクトツーのメンバーが本当にフィギュア製作に関われるのがうれしく、だからこそものすごいものにしたい、という気合いを感じさせる。
フィギュア製作に当たり、サイバーコネクトツーでは当時「.hack//G.U.」を手がけていたスタッフだけでなく、ゲームをプレイしファンとして入社したクリエイター達の目線も加えて要望書を作成している。もちろん松山氏がその意見をまとめているのだが、溢れんばかりの要望に交通整理にも苦労したという。林氏はそれを受け止め、実際の作業を原型師に伝えていくのだが、この細かい要望には助けられた部分もあったとのことだ。
フィギュアという“手法”でのキャラクター表現への松山氏のこだわりはやはり深い。「CGは装甲の内側にはなんにもない。重なってる部分などは、その下にはデータそのものがないわけです。だけど造形物、立体物であるフィギュアは、骨を持ち、筋肉を持ち、皮膚を持っている人間が、甲冑を着ているんです。
甲冑はベルトなどでまとめられて体に装着されている。そういう本当に存在するからこそ求められるリアリティをCGとはまた違った形で実現していく。そのため、胸回りや、腕など、様々なところで“装備をしている”という雰囲気が出せたと思います。“存在感”が違うんです」と松山氏は語った。
存在感、実在感というところで林氏にもこだわりを聞いてみた。林氏は「S.H.Figuarts キン肉マン」シリーズや、「S.H.Figuarts WWE」シリーズ、「S.H.Figuarts ストリートファイター」シリーズなど、筋肉や、体型など、肉体の表現に注力した商品を手がけている。松山氏達サイバーコネクトツーの要望もあり、ハセヲのフィギュアは細身ながら骨格や筋肉がしっかりと表現されており、ハセヲの“強さ”、“怖さ”がきちんと表現できている。
“実在感”というところは今回のフィギュアで注力した部分だと林氏は語った。元となったCGやイラスト以上にハセヲの筋肉の感じや装備のディテールを強調して再現するなど、サイバーコネクトツーの要望以上にこだわっている。腹筋など生身の肉体を感じさせる部分と、硬質な甲冑の質感と言った、素材によるコントラストを造型と塗り分けで表現している。今回のモチーフとしては、形状や質感のコントラストを活かせ、かつ装備に意味が持たせられるというところで、「フィギュア映え」するモチーフだったとのことだ。
林氏はハセヲに関してはやはりその“中二感”というか、ダークで、イメージ的にも突っ走っている雰囲気がお気に入りであり、「フィギュア化しがいのあるキャラクター」としてやる気を燃え立たせたという。「イケメンキャラで、デザイン自体にメリハリがあってカッコイイ、すごく造型しやすいモチーフでした」とコメントした。彩色見本が上がってきたときは、社内で色んな人にその格好良さを自慢したという。「『.hack//G.U.』を知らない人にもかっこいいと思ってもらえるフィギュアですよね」と原田氏も語った。
このハセヲの格好良さ、そしてダークな感じは、しかし物語にとっては「間違った成長」なんだと松山氏は指摘する。ハセヲは「The World R:2」を訪れ、最初のプレイでトラウマを負い、そして間違った成長を経て、プレーヤーの前に姿を現わす。ある意味「バッドエンディング」の姿とも言える。だからこそハセヲは「.hack//G.U.」の物語において、データドレインを受け、レベル1の状態から再び成長していくことになるのである。
そして、「白いハセヲ」はVol.3のクライマックスで登場する、「ゲームをやりこんでいないとわからないキャラクター」だ。しかし、だからこそ松山氏はこちらのハセヲにも感情移入して欲しいと語る。さらに本商品の「受注時期」もポイントだ。
本商品は、「.hack//G.U. Last Recode」発売後、12月20日まで注文を受け付けている。前作をプレイしていない人でも、リマスターとして11月1日に発売される「.hack//G.U. Last Recode」をプレイし、そこからハセヲを好きになり、購入するのも充分可能なのだ。
2つのハセヲはフィギュア化にあたり、色指定もサイバーコネクトツー側で指定し直している。単純な色替えでなく、意味と、“面白さ”を意識して盛り込んでいる。このため厳密にはゲームと異なる部分もあるが、原型師はこの要望に見事応えてくれたという。特に白いハセヲはゲーム内では武器を持たない姿で登場する。このため「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE」が持つ鎌の色設定は全くの新規の設定とのことだ。
指定を活かしながらも林氏側でも「フィギュア作成のノウハウ」を活かした部分も多い。白いハセヲの場合は、白いアーマーの立体感を出すにはどのような色やグラデーションで立体感と、アーマーの質感を出すかなどこれまでの経験を活かした部分も多いという。「ゲームではライティングで色が変わります。一方で、フィギュアは立体感を出すために様々な色を使って効果的に見える塗装をしています。そして体のひねりや筋肉の感じなど、ディテール部分でもCGとは違う味が出ている。フィギュアはそういったポイントをチェックして欲しいです」と林氏は語った。