インタビュー

「The Good Life」クリエイターSWERY氏特別インタビュー

クラウドファンディングについて。「結果論で言うと必要」

Figのクラウドファンディングページ。10月6日時点で達成率は20%となっている

――今回、クラウドファンディングを採用しましたが、これは必要だったんでしょうか?

SWERY氏:結果論で言うと必要だと思うんですよ。僕はゲームを作るのが目的なので、作るための資金集めもしくはチャンスを掴むことはなりふり構っていられないというスタンスなんですね。だからなんでもやると。例えば明日、凄いお金持ちのおじさんが、お金あげるからゲーム作ってと言われたら作ると思うんですよ。そういう中で、クラウドファンディングって1つの選択肢に過ぎません。

 今回はFigと組んでクラウドファンディングをやると決めたのは、一切クリエイティブに口を出しませんと。「クラウドファンディングですから、ユーザーが求めるものを直で届けてください」ということを聞いて、じゃあこの「THE GOOD LIFE」に向いているのはそれかもということで結果論として、必要になったということです。

――Figさんというのはどういうお付き合いなのですか??

SWERY氏:アメリカでできたばかりのクラウドファンディングの会社なんですけれど、ゲームオンリーで、彼らは自分たちをクラウドファンディングとは呼んでいません。パブリッシャーと呼んでいます。ゲームのパブリッシャーで、自分たちは一般のインベスターと、一般のユーザーの両方からお金を集めて、ゲームプロジェクトを成立させますと。ユーザーさんには商品やグッズをお届けして、インベスターの方には商品の売り上げからレベニューシェアをします、というのを作っているビジネスモデルなんですよ。僕も全く知らなかったんですよ。

 僕は前にもお伝えしている通り、アメリカでエージェント契約をしています。それを通じて紹介を受けまして、ビットサミットの時に京都で打ち合わせをしました。そのときに彼らから、我々はパブリッシャーですという話と、クリエイティブには一切口を出さないという約束を頂いて、じゃあこのプロジェクト真面目に動きましょうという感じに腰を上げたんです。

――そのクラウドファンディングで目標としている金額はどのくらいなんですか?

SWERY氏:今は1.5ミリオンなので約1億6,000万円かな。結構でかいので、集まっている金額はそんなに悪くないんですけども、ゴールに向けては足りないなというのが正直な状況です。で、みんなにストレスあるかと聞かれたら、ないとは言えないですが、そこにやっぱり重要なのがCamouflageの経験で、彼からは、クラウドファンディングはラスト10日で60%以上の出資が集まるように動くことが多いのでそこに向けてこれから後半戦、色々なものを導入してファンとのやり取りも増やして、メディアの方に「このクラウドファンディングは凄い」とか、「みんな応援してね」とか、「SWERYがゲーム作れなくなっちゃうよ」とか言ってもらうとかして最後に一気に駆け上がろうねと僕を励ましてくれています。

――もし100%に届かなかったらどうなるんですか?

SWERY氏:終わりますね。

――終わる? いま何パーセントですか?

SWERY氏:9月22日現在で16%。あと20日しかないので、結構数字としては厳しいです。一般のクラウドファンディングの流れですね。Figのポイントはそこにパブリッシャーがつけば、パブリッシャーの分が投資金で入ってパーセンテージが変わるんですけども、そこも交渉中のことですから、今ここではお伝えできないこともあるし、Fig次第じゃないですか。

――あと20日で開発できるかどうかが決まる?

SWERY氏:はい、クラウドファンディングについては決まります。もしフェイルした場合、キャンペーンはフェイルですから、終わります。ただ、その後「THE GOOD LIFE」をどうするかというのは別の問題です。

――なるほど「THE GOOD LIFE」プロジェクトそのものが終わるわけではない?

SWERY氏:それについてはグランディングの二木さんとも毎日打ち合わせしてますけど、「終わらせたくないよね」ともちろん言ってますし、僕も当然終わらせたくありません。うちのエージェントもそうだよって言ってます。だけど今はキャンペーンにフォーカスしないとダメでしょというところで、プランBを考えずに、キャンペーンをいかに成功させるかを毎日考えています。

――そのクラウドファンディングに出資したときのベネフィットはどういったものがあるんですか?

SWERY氏:出資の場合のベネフィットはすべてレベニューシェアになります。

――個人投資家というか、個人のゲームファンの投資はあまり期待していないんですか?

SWERY氏:そうですね。その人たちはゲーム買っていただいて楽しんでもらえればいいと思うんですが。データを見ると50%が投資、50%がいわゆるプリッジというバックくらいの比率にはなっています。その投資はたぶん別の個人投資家の方とか、今日も会場で声をかけていただいたんですが、お付き合いの会社の方とかが、投資しときましたよとか言っていただいて。なのでユーザーさんはゲームを買うという方が多いんじゃないかなと。

――プリッジについてもう少し詳しく教えていただけますか?

SWERY氏:今一番シンプルな奴で言うと、おまけでサウンドトラックとかアートブックとか、シナリオデータがもらえるものが49ドルで一番安いバンドルであります。商品は29ドルですから。そこから先に69ドル、129ドルみたいなふうにどんどん値段が上がっていって、フィジカルでTシャツがもらえるとか、マグカップがもらえるものもありますし、300ドル以上になると街の住人として過去の住人台帳に名前が載ったり、街のお墓の名前に名前が載ったり、街の中にブロンズ像が立つというのもありますね。

――SWERYさんに会ったりとか、そういうユニークなものはないんですか?

SWERY氏:あります。でも、2つあって1つはデジタルで僕に会いうというのがあるんですよ。ゲーム中で、SWERYが街のキャラで出てきて、そのキャラが自分の家でディナーをしてくれるというのがあるんです。これは割と皆さん買っていただいています。もう1つは僕と一緒にイギリスの田舎町に行って、田舎街の豪華なホテルに泊まってそこで晩餐会をというのがあるんですが、これはまだ1つも売れてないです(笑)。

――ちなみにそれはいくらなんですか?

SWERY氏:150万円くらい。

――150万円(笑)。

SWERY氏:だって旅費込みですからね。開発費兼ゲーム兼旅費込みだからそうなっちゃうんですよ。高いすよ。でも冗談で乗せといたら、だれか物好きが買ってくれるかなと思ったけど、今のところゼロですね。

――まだ日本ではそういった大々的な告知は行なっていませんが、今後行なう可能性はあるんですか?

SWERY氏:このタイミングで行なっていきたいです。さらに言うとページがまだ英語しかないので。

――そうですよね。見た時に、これだとなかなか日本人だと、僕らのゲームだという感じ方してくれないだろうなと。

SWERY氏:日本語のページを用意したいんですが、そこはちょっと手一杯で手が回っていないんですよ。何とかそれを用意したいなといま動いていて、もしかしたらPLAYISMさんがブログで、日本語化したものを上げてくれるかもしれない。「D4」のお付き合いでSWERYをめちゃくちゃ応援してくれてるんです。White Owlsラブなので。

――発売プラットフォームは何を予定していますか?

SWERY氏:現状ではSteamとPS4が決まっています。Steam版が29ドルで、PS4版が39ドルです。で、ストレッチゴールの1つ目がNintendo Switch対応ということになっています。ちゃんと100%ゴールして目標金額を上回った場合にはSwitchに対応したいというのが今の計画です。

――それ以外のストレッチゴールを教えて下さい。

SWERY氏:いろいろありますよ、キャラクターの追加もありますし、街の施設の拡張というのももちろんあります。Xbox Oneへの対応ももちろんあります。あとはなにかあるかな? いままだストレッチゴールについては、Figの方からゴールもしてないのにそっちの話はするなと言われてるんです。だからそこまでくらいしか言えないですね。

――私はちょっと意外だなと思っているのは、SWERYさんとクラウドファンディングだったりストレッチゴールというのは相性が良くないんじゃないかなと思っていたんです。それはなぜかというと、SWERYさんはすごく作家性を大事にするクリエイターだと思うからです。プリッジによって純粋な作家性を発揮できなくなるわけですが、それに対する抵抗感みたいなものはないんでしょうか?

SWERY氏:例えば、外からの意見ということですか?

――というよりも、人の名前やキャラクターがゲームに入ってしまうわけですよね。

SWERY氏:ああ、なるほど。そういう意味では意図しない名前とか、意図しない、さっきいったブロンズ像のモデルとかですよね。それについては確かにそうかもしれないですけど、僕自身この「THE GOOD LIFE」が完成したら、プレーヤーの1人として遊びに行きたいくらいの気持ちなんですよ。もちろん自分が提供するものだから皆さんにはこの世界を楽しんでくださいどうぞという立場ですけれども、ついでに自分もこの世界で、エンディングのない世界に入りたいからこのゲームを作りたいというのがあって、そのためには僕1人のビジョンでは補いきれない、自分の中でのグレーゾーンという部分を目に見えない力で補ってもらえると。グランディングさんと組むのもそこだと思います。

――「D4」は今のところまだ完成しない作品になりましたけど、この作品は一応完成まで作っている?

SWERY氏:はい、エンディングまで存在します。ちゃんと殺人事件の結果もわかるでしょうし、なぜ猫になるかもたぶんわかります。でもそのあと、街を離れられなくなって、永久にやれるゲームになったらいいなあと。

――その殺人事件というのはゲームのプロローグで起こるのか、それとも物語の途中で起きるんですか?

SWERY氏:まあトレーラーに出ているくらいですから、みんながまだかよ!と思わないくらいのタイミングじゃないですか?

――比較的序盤で?

SWERY氏:そう思いたいですけど、まだちょっとゲームデザインは固まってストーリーもかたまってきていますが、その中で遊んでみないとどれくらいのタイミングでどういうインパクトをユーザーに与えていくかは、作っているうちに変わってくるんですよ。だからはっきり確約はできないですね。今の計画では序盤で出してあげたいですけど。

――キャラクターにはボイスもあるんですか?

SWERY氏:今は英語ボイスと日本語テキストというのは確定していて、できれば日本語ボイスもやりたいので、予算のやりくりをしようよという相談をしているところです。もしできるのであれば、トレーラーで起用した園崎未恵さん。主人公の声をやっていただいたんですが、ものすごく上手ですし、もとから好きな声でしたからはまり役なので、ぜひナオミを彼女にやってもらいたいなと。

――あのヒステリックな声も含めて?

SWERY氏:あの人はキャットウーマンの声をやってるんですよ。

――それを連想してお願いした?

SWERY氏:そこまでじゃないけれど、提案があったときに「キャットウーマンやん、決まり!」みたいな(笑)。そういうのはありますね。

――先ほどサウンドトラックもプレゼントするという話でしたが、サウンドトラックはどなたに作曲を?

SWERY氏:現状オーディオ関連はスタジオカリーブさんといって、「D4」の時に一緒にやった会社です。その会社さんが、実はグランディングさんともよく一緒に仕事をされているということで、むちゃくちゃ相性いいやんという。僕ともやったことがあるし、グランディングさんとも相性がいいということで、そこにお願いをして、そこから今後いろんな作家さんに声をかけてもらうんです。やはりクラウドファンディングですから、成功してないのに曲を提供されてしまって問題が出たら困るし、いまそこを調整しているところです。

――曲については、「こんな曲を作って欲しい」と細かくお願いしているわけではなく、完全に丸投げなんですか?

SWERY氏:これは僕のスタイルなんですが、どのゲームもまったく同じなんです。毎回必要な曲のリストを作るじゃないですか。で、お願いするんですが、僕の場合は自分でBGMのアルバムを作ります。それはありものの曲とか、ネットで拾ってきた曲になるんですが、ありものの曲だろうがなんだろうが、タイトルを勝手に書き換えちゃって、例えばビートルズの「レット・イット・ビー」でもいいです。あれを「曲01:静かな夜明け」とかにタイトルを変えて、アルバムを作ります。そして、それで発注します。こんなイメージで曲を全部やりたいんですよと。なので、例えば「焦燥」とか「疑惑」とかいうタイトルの付いた曲が来るんですよ。なんやろと思って聞いたら、ああ、知ってる曲やということもあるんですが。それをベースにイメージを膨らませていただいてというところはいつも同じです。

――今回は、どういう曲が入るのですか?

SWERY氏:やっぱりイギリスが舞台のミステリなので、アガサ・クリスティとかコナン・ドイルとかのドラマとか映画があるじゃないですか。ああいうのに出てきそうな言葉やシーンをチョイスして雰囲気のある曲にしたいなと思っています。