インタビュー
「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」インタビュー
河野ブランドプロデューサー「10年ぶりのナンバリングタイトルを期待してほしい!」
2017年10月13日 07:00
10年ぶりのナンバリングタイトルリリースとなるプレイステーション 4/Xbox One/PC(Steam)用フライトシューティング「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」。本作の発売は2018年を予定しているが、東京ゲームショウ2017のバンダイナムコエンタテインメントブースでは、そのプレイアブルデモが出展された。今回は本作のブランドプロデューサーである河野一聡氏に話を伺うことができたので、その模様をお届けしよう。
――開発がスタートした経緯からお聞かせいただけますか。
河野氏:「エースコンバット6」まで行ったあとに、今後このシリーズをどうするかという話になりまして。これだけ続くと戦略的に難しいこともあって、中身もそうですし、どこまで実現できるのか、商品のターゲットを変えるのかといういろいろな話が出ました。そこで「エースコンバット アサルト・ホライゾン」のようにゲームシステムを変えて、ターゲットを変えてみた作品があったり、「エースコンバット インフィニティ」のような形で、触ったことがない人でも気軽に体験できることをやったり、挑戦の方向性を変えてきています。
しかしユーザーの方もナンバリングタイトルを楽しみにしてくれていて、今世代機だとナンバリングに相応しいものが実現できるかもしれないと。ということで「7」の開発がスタートしました。。
――本作のテーマはどこにあるのでしょうか?
河野氏:「空の革新」です。「エースコンバット7」の、空は立体的な雲があったり、気流があったり、環境がつくり出す立体的なフィールドを目指しました。今までの作品では、雲は見せていましたけど実体がない。飾りだったんですね。それを今回は雲を使って戦略的な判断が必要になったり、実際に視界が悪くなったり、空を飛んでいるときの気流で機体がぶれたりするという。何もない空間なんですけど、空は多様な手触りがある。そういう環境を現世代機のパワーと最新の技術で作り直すというのが「革新」と呼んでいる部分ですね。
――プレイアブルを触りましたが、確かに雲の中ではレーダーも利かなくなるし、雨粒で視界が悪くなりますね。
河野氏:今回デモで出しているところは“雲のプレゼンテーション”として作っていて、どこまでレーダーを利かなくするのかというのは調整段階です。雲の中に入ると敵機を見失いやすくなるとなれば、雲を避けるか、それともあえて最短距離を突っ込むかという戦略の違いが人によって出ます。今まで空中でそういう戦略ってなかったんですね。敵を追う最短距離のみだったので。それを環境によって、どう攻略するかをユーザーの判断に委ねる、というのが本作ですね。
――となると1つのドッグファイトも時間をかけて戦うことになりますか?
河野氏:つぎつぎと敵を一掃する感覚が気持ちいいというのは「エースコンバット」では大事なので、そこを変えるつもりはありません。雲を使ってくる敵もいれば、雲を使わない敵もいる。プレーヤーがそうであるように、敵も雲を使った戦い方の判断は様々です。最終的なレベルデザインは、全ミッションを通してバランス調整を行ないます。機体を自由に操って、エースパイロットとして自身の判断で戦って、「俺ってすごい!」と思えるように難易度曲線を作らなければいけないので。東京ゲームショウのようなデモの難しいところは、体験してくださるお客様が様々なので、簡単と思われた方もいれば、逆に難しいと思われた方もいたかと思います。製品版では、初めて「エースコンバット」を触る方も、ずっと「エースコンバット」を楽しんでこられた方も、どちらも気持ちよく楽しめるバランスを目指します。
――河野さんはシリーズにこれまでどのように関わっていらっしゃったのですか?
河野氏:「2」でデザイナーとして入ったんですね。ドットを打っていて。「4」でアートディレクターとシナリオや演出などをやって、「5」でディレクターをやって。その間が少し空いて「アサルト・ホライゾン」、「7」といった感じですね。長いのでいい加減にしろといわれていまして(笑)、若い世代にも参加してもらっているわけです。ユーザーさんから見たら信じられないところまで現場のことをやっていますけど(笑)。
――今回のアピールポイントはどこにあるのでしょうか?
河野氏:3つの柱を成立させようとしていまして、1つ目は、先ほどご説明した「空」という環境をアップデートしてゲーム性に絡めようということ。2つ目は「エースパイロットごっこ」。これはパイロットができることを可能なだけゲーム内で実現したいと。例えばフレアやチャフという、ミサイルから護衛するための兵器だったり、「ポストストールマニューバ」(失速下機動)という動きがあるんですが、こういうことをできるようにしたり。戦闘機が好きな人たちがやりたいことをちゃんとやれているという“ごっこ”をキチンと高めること。
そして、3つ目が攻略に幅を持たせるということです。1つ目と2つ目の柱が結局倍がけになっていくんですよね。環境がこうで、持っている武器がこれで、こういうこともできる、と。そうなると攻略法のパターンも増えてくるので、その自由度を担保しようと作っています。
――そうなると今度はどのような機体が出てくるのか楽しみですね。
河野氏:現状だと約30機くらいを予定しています。そして現世代機に会わせて全部作り直しています。前回のデータを使えば効率的なので、いろいろと議論があったのですが、今できてみると段違いなんです。見た目や質感が微細なところまで再現されている。このため現世代機初めての「エースコンバット」として、この機体が入っていなければいけないな、というところまでそろえている段階です。オリジナル機ももちろん入っています。
――現世代機だから実現できたことというとはありますか?
河野氏:空ですね。プレイ時間は全てスクリーンに向かってコントローラーで操作しているわけですから。最もスクリーンの時間占有率、面積の大きい空のビジュアルに実際の温度まで感じる表現を入れて、そういう表現をゲーム性に絡めることができたのが、現世代機なのかなと思いますね。
――ところで「エースコンバット」シリーズのインタビューでいつもお伺いしているのですが。「トンネルはありますか」ということについて教えてください。
河野氏:その質問もよく受けますが(笑)。「トンネルだけとは限らないですよ」とお答えしておきます。実はユーザー的には二分されているんです。絶対嫌だという方もいて。なので「エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー」とかは入って抜けてと出入りができるようになっていました。歴代のディレクターで特色があって、「ゼロ」のディレクターは中庸派というか、意見が真っ二つに分かれたので両方を取り入れましたというスタンスですね。ただし今回はストロングスタイルなので、皆さんに頑張っていただくことになるかなと思います。
――ストーリーについて教えていただけますか?
河野氏:1番大きいのは「この世界の片隅に」の監督である片渕須直さんに戻っていただいたことですね。片渕監督とは「04」、「5」でご一緒させていただいたので、親しくさせていただいていて、「7」を作るにあたって片渕監督にご相談したんです。
その時はすでに「この世界の片隅に」を作っていらっしゃることは知っていたので、お忙しいと思い、片渕監督のような方がいたらご紹介くださいというメールを出したら、「そのような人はいないので私がやります」と。それでお忙しい中でも負担をかけない形で、と始まったわけです。そのあと「この世界の片隅に」がご存じのとおり大ヒットいたしまして、テレビなどにも出られるようになられました。このため連絡が取れなくなることを心配していましたが、メールをするとすぐにお返事をいただけて助かっています。
なのでロイヤルのファンの方には片渕監督がシナリオに戻ってきたというのが最大の魅力の担保かなと思います。独特の台詞回しもありますし、エンターテインメントにも振っていただくんですけど、それでも片渕節というか、根底に持っている片渕監督の世界観があって。それをゲームにするのはかなり苦労しました。すごいことが起こるんですけどね。シナリオ上。これがゲーム上で表現できない。どうするかと。大変すぎてどうやってゲームに落とせばいいんだと。今までの「エースコンバット」ではそれがなかったので。どうやったらいいんだろうという。開発陣が頭を痛めています。
基本的には人の内面だったり、人間を語っていくのが片渕監督だと思うのですが。どうしてもゲームなので、こういう遊びをさせたいですという体験要素が入れてあって、それでシナリオを融合させていくわけですが、そこで化学変化的なことが起こって、だったらこうしようと。そうなると舞台も引き立つし。それで盛り上がったシナリオをゲームにしようとすると、これは盛り上がりすぎたかな、どうする? と。今苦労しているところです。
シナリオは固まっていますし、お話の演出もできているのですが、戦闘機のゲームなので、キャラクター同士の演劇はさせたいとは思っていません。なるべくゲーム中でプレーヤー自身が体験して、実感に落とし込みたい。シナリオ上にワナがあったら、突然ムービーが入って「ワナでした」というよりは、体験として「これはワナかも?」というプレイに置き換えたいんですね。そういう風に考えたとき、シナリオが上がってきた中で、ここは映像でやれば簡単ですよと。でもそれをプレーヤーの手で遊んでもらって、実際に体験をしてもらうところまで落とすのが我々のクリエイティブだし。「エースコンバット」シリーズがウケているのもそこにあるなと。なのでそこは最後の最後までいつも苦労するところですね。
――それは今回のプレイアブルにもあるように、敵機を全部倒して帰ろうかというときにいきなりミサイル攻撃を受けたりしたことですね?
河野氏:そうですね。ゲームによっては終わった瞬間にムービーが入って、敵が出てきて戦うという。あのシーンも開発段階で上がってきたときはそうだったんです。でも、これでは体験がぶつ切りになってしまう。ちゃんと繋がっていなければダメだよとなりました。安心した瞬間にミサイルが飛んできて「なんだこれは?」となってから敵につなげないプレーヤーの気持ちがつながっていかない。そういう部分を詰めていって流れるような体験化していくということですね。映像にしてしまえば楽なんですけど、そこはこだわってやっています。あくまでも自分が体験したことがストーリーになるので、監督に書いていただいたストーリーを体験させることを前提に考えつくしています。
凝った世界観を用意
河野氏:今回は「5」の10年後を描いていますので2019年の設定ですね。でもあの世界の文明は我々よりちょっと進んでいますので、軌道エレベーターも出てきます。僕らの世代って宇宙への憧れもあったりして、軌道エレベーターみたいな、ちょっと未来の「こうなるぞ」というのにロマンというか、わくわく感があります。そういうのをゲームとして体験に落としてあげたい。
「エースコンバット」ってすごく広いマップの中で展開するゲームなので、今までだとクレーターだとか、今回は軌道エレベーターみたいな。あれくらいの大きさじゃないとモニュメントにならないんですね。「7」のお話の中心軸になりますし、象徴的なものとして軌道エレベーターを入れています。
――本作で1番注目してほしいというポイントはありますか?
河野氏:10年ぶりのナンバリングタイトルを十分に楽しんでほしいということですね。皆さんが待ち続けて期待しているナンバリングはこうだ! というものになっていると思います。自分が1ユーザーだとして、すごく期待してるゲームがあって、10年ぶりにナンバリングが出るんですとなると、やはり、気持ちの高まり方や期待、不安だったり、いろいろな部分を持つと思うんですね。それに対して「ナンバリング待っていてよかった」という回答を出さなければいけないので。そこが1番見てほしいところですね。そのために歴代のナンバリングスタッフに集結してもらっていますし、片渕監督にも入ってもらった。音楽もずっと担当している小林啓樹が作っています。
――VR対応にもなりましたね。
河野氏:ナンバリングって割とレジェンドでもあるので、正当な満額回答を持ってユーザーに返さなければいけない。そうなると飛び道具の挑戦は入れにくいんです。雲やパイロットごっこ、攻略性を高めることは、よりよい「エースコンバット」を作ろうという改良、改善、進化なわけです。そこに急に、思ってもみないところから持ち込んだものって危険なんですね。今回は10年ぶりのナンバリングなので、まずは安心していただきたいというのがある。それ以外に我々が挑戦的で、ユーザーに待ち望まれているのはVRだったのかなと。
正直最初は、本編を作ってちょっと頑張ったらVRになるかなと思っていたんですが、大誤算で(笑)。平行2ラインみたいな状態になりました。VRとしての価値、体験が大事であって、ボリューム感はなくてもいいと思っているんです。量よりも、VRならではの体験の価値といった感じです。あくまで挑戦的で、「エースコンバット」の未来を感じていただく。皆さんが実際のパイロットになってコックピットに座ってみる。そういう体験が入っていれば、チャレンジ的にはいいと思っていました。でもそこを実現させるのが本当に計算外に難しいところがあって。
また「ジェット機だけはVRは絶対無理だ」と公言されている時期もありました。。VRは地面に張り付いていないと、自由空間を飛ばすVRなんて無理だと。それを聞いて「絶対やってやる」と思っていたんですが。そういう意味でも、ユーザーがキチンとプレイできるものになるかということだったり、技術的に本当にできるのかということ、スケジュールも含めてもろもろの要素が非常にチャレンジャブルなんです。結果、ユーザーにプレゼンテーションさせていただいて反応を見ていると、やっぱりやってよかったと思います。「エースコンバット」の1つの可能性として今回は受け取っていただけたのかなと。ただVRに対応するというような作り方ではないんですね。
VR化すると、ミッションだけでなくてハンガーにいるときでさえ新しいバリューなんですね。翼ってこうなっているんだとか。そういう所も含めて「エースコンバット」のVRとして今考えているところなので。
――確かに昨年の「PlayStation Experience」でプレイしたときに、スティック操作で上下左右を見るのは速度が速すぎて見づらいのが、頭の移動と共に見渡せるので、敵を視認しやすい気がしました
河野氏:それを含めてバリューですので、ミッションバリエーションを多くつくれば良いということではなくて、“パイロットとしての体験”というバリューをどれだけVRで実現できるかを考えています。
先ほどの話もそうですが、人間が首を振るという操作をわざわざ右スティックに割り当てるという、むしろこっちが不自然ですよね。VRだと見たいところを見るという当たり前の行動に出られる。VRの方が人間の体感的に合っているんですね。そういう発見があったりとか。「エースコンバット」が今後どうなるかはわかりませんが、「1つの方向性における可能性のプレゼンテーション」という形で受け取っていただければなと思います。VRが浸透していった先に、そういう「エースコンバット」という作り方もあるかもしれないですね。今回は「7」で正統進化の「エースコンバット」を楽しんでもらいながら、未来の可能性を感じていただくという構成になっています。
――ユーザーの方の反応も楽しみですね。
河野氏:今日公開した「ポストストールマニューバー」の映像ですが、戦闘機好きからは大絶賛でした。ゲーム中にドッグファイトにおいて有利な意味があるわけではないんですが、それができるということがすごいと。でもあの映像を見て一般の人はまったく何のことかわからない(笑)。あんなにごく一部の人の心を刺しにいくのは珍しいと(笑)。こんなものをTGSで出してくる(笑)。「エースコンバット」の戦闘機が好きな人はそうなんですね。先ほどもTwitterを見ていたんですが、「神です」と大喜びしていて。そういう所に面白いところもあるのかもしれませんね。
このシリーズも、シナリオから入って楽しんで、興味を持ってもらえて、それでコミュニケーションも生まれて。好きな人たちは語りたいわけです。そういう所でコミュニケーションが展開するのは僕も大好きで。なので今回はポストストールマニューバーの、マニアは語り、初心者の方は全然わからないという構造がいいなと(笑)。初心者の方に教えてあげてほしいですね。
――私は英語音声で日本語字幕でプレイするスタイルでして、今回のプレイアブルもそういう設定になっていましたね。
河野氏:それは日本語の公開をまだ抑えているからですね。キャストさんがものすごく豪華な方々を押さえていまして。贅沢なキャスティングをしています。全体的に頭がミリタリーによっていて、声の合致を重視して選んでいるので、声優さんがどれほどすごいのか疎くて……。結果「よくそんな人を押さえられましたね」といわれる方もいます。なのでキチンと紹介した方がいいという話になりました。しっかりと発表する機会を持つつもりです。
あと英語音声日本語字幕なのか、日本語音声なのかは世代で分かれますね(笑)。最近は日本語でプレイする人も多いみたいですが、「英語音声をやめます」と言ったら大変なことになるのはわかっているので(笑)。そこは死守です。濃い方は英語と日本語、両方やるみたいですが。日本は日本語で演技の味もあったりとか、英語は洋画的な雰囲気もあったり。日本語に吹き替えることで音でわかるので、プレイスタイルも変わったりとか。そこは良い面が両方あるので、両方を採用するという感じですね。
――最後にファンの方にメッセージをお願いします。
河野氏:日本でVRではないフラット版の試遊は今回初めてになっています。日本で遊んでもらえるまで、発表からずいぶんと時間がかかってしまったのですが、きちんとしたものを作っています。TGSで触っていただけた方はそれを実感していただけたのではないかと思っています。TGSで触れられなかった方も、ナンバリングとしてしっかり作っていますので、安心してもう少しお待ちいただければと思います。
――ありがとうございました。
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