インタビュー
中国展開2年目に突入! SIESHプレジデント添田武人氏インタビュー
2016年8月8日 00:00
「世界同時展開にはこだわった」 PlayStation VRの中国展開について
――PS VRの中国展開正式アナウンスはサプライズでした。というのも、今回、SCEWWSプレジデントの吉田修平さんは、香港のPS VRの発表へは行くけれど、中国へは来ない。だから、諸般の事情で発表は見送らざるを得なかったんだと思ったんです。そしたら発表会の最後にワンモアスィングとばかりに発表されたので、本当に私にとってもサプライズでした。
添田氏: 香港の発表会は、香港のローカルだけではなく、東南アジアなどにも向けた意味合いがありました。吉田についてはちょうどスケジュール調整ができてかつ本人もやると言ってくれたので、香港に行くことになったというだけですね。
――中国でPS VRが展開できると決まったのはいつくらいだったんですか? 中国はセンサーシップがあるから、タイミングの問題じゃなくて、できるできないがまずありますので。い当局から「良いよ」とお墨付きが出たのはいつくらいなんですか?
添田氏: 直近です(笑)。
――というと、7月ですか?
添田氏: そうですね。
――最後まで調整したポイントはどういう点だったんですか?
添田氏: 実はセンサーシップのところは、そんなに大きな問題ではなくて、PS VRタイトルも中国国産のものも含めてそれなりに入っています。それなりにタイトルが揃えられそうだなというのはかなり前にわかりました。ですので、これはまずビジネスとして成り立つのではないかと判断しました。あとはPS VRの準備が必要でした。アジア全体の中でも中国はいつも特注なんです。
――でも世界同時発売ですね。
添田氏: そこはこだわりました。中国のユーザーは、最先端の商品を好む傾向にあります。
――いずれにしても並行品が入ってくるから、それだったらちゃんとやって保証もつけて。
添田氏: はい、そのほうがお客さんのためになります。
――細かい質問なんですが、PS4は2年保証なんですが、PS VRは1年保証ですね。なぜ1年違うんですか?
添田氏: 中国の法律では1年の規定なんです。ただ、PS4を2年にしたのはメインのプラットフォームだからです。PS VRそのものは、PS4のような役割を果たすものではなくて、あくまでもPS4と組み合わせて楽しむ機器、つまりPS4とは違う意味合いのものということです。
――今、日本でも、グローバルでもPS VRは数が足りない状況ですが、中国でもそれなりの数を用意するということですか?
添田氏: 具体的な数は申し上げられませんが、頑張って準備しようとしています。
――今回会場でもPS VRの予約を受け付けていましたが、スタッフに何台なのかと聞いたら、1日80台限定だという話でした。それ以外にもリアル店舗やオンラインで予約を開始していますよね。そうするとやっぱり万の単位では予約をとっているという理解でいいですか?
添田氏: オンライン、オフライン両方分けてやってまして、それなりの数を用意したつもりですが、24時間で最初の予約は全て終わりました。うちのECサイトなんて、1分もしないうちに終わりましたからね。会場では一応毎日予約できるように用意しましたが、これが終わったら事前予約は全部終わりです。
――やっぱりすごい人気ですよね。今回会場を見ても、様々な玉石混交のVRデバイスが出展されていました。まさにバブルのような様相ですが、添田さんはどのようにご覧になっていますか。
添田氏: 中国は往々にしてそうなんですけれども、新しいものにいち早く飛びつくという傾向が非常に強いんです。どこかがやると、全員が一斉にグワーッとやるんです。なので、海外メーカー様だけじゃなくて国内メーカー様もかなりVRデバイスへの参入が増えていますよね。
――会場で幾つか触ってみましたが、VRデバイスとしても、VRコンテンツとしても見るべきものはひとつもなかったですね。これだとブームが早くも中折れしてしまうのではないかと、危機感を持ちました。
添田氏: それが中国の課題なんです。
――VRが他のコンテンツと決定的に異なるのは、VR酔いです。これが発生してしまうと、おもしろい、楽しい以前の問題で、もうイヤだとなってしまう。中国のVRはそんなのばっかりでした。
添田氏: たぶん来年また来られた時、だいぶまた違う風景が見られるのでは無いかと思いますよ。おそらく良い例がSIEの隣の隣のブース、そこは毎年中国独自のゲームコンソールのパビリオンになっています。
――FUZEですね。
添田氏: 一昨年は、中国のゲームコンソールと言われていたFunBox様、去年はTCL様が出展していて今年はFUZE様なんです。
――毎回違いますね。
添田氏: そうやってどんどん出てきてどんどん変わるのが中国ですね。
――そうした中でPS VRのクオリティはしっかりしてるという印象を受けました。今回ちょっと中国産の「Ace Banana」を体験させてもらいましたが、初めてVRコンテンツを作ったチームの作品ですが、しっかり遊べて、一定のクオリティが保たれていました。やっぱりプラットフォーマーさんがしっかりコントロールしたコンテンツは安心して遊べるなという手ごたえが得られました。だから、中国ではPS VRがしっかり遊べるVRとして、グローバル以上の勢いで受け入れられるのではないかと感じました。
添田氏: VRは被り比べてみないとなかなかわからないので、ぜひPS VRのいわゆるVRだけではなくて、PS VRを通じてプレイステーションというものを理解してもらって、プレイステーションのファンになってもらいたい。で、その先にはPS4のタイトルもたくさんありますし、ということで、PS VRにはそういう部分にも期待しています。
――現在、中国メーカーのPS VR向けタイトルの開発というのは何タイトルくらい出ていますか?
添田氏: 3月のGDCの時にも中国系パブリッシャーさんが10数社手を挙げてくれましたね。
――実際に今動いているのは?
添田氏: 数タイトルですね。
――PS VRのローンチタイトルは、中国ではどうなるんですか? 吉田さんはグローバルで50タイトル以上のローンチタイトルを用意したいと言ってましたが、中国ではどうなりますか?
添田氏: 中国ははもうセンサーシップ次第です。
――もう通し始めている?
添田氏: はい。例えば著作権登録とかそういうプロセスはもう始めています。
――VRのセンサーシップは当局にとっても未知の領域ですが、彼らは、やっぱり1つ1つ被って周りを見渡して、ということをやるんですか?
添田氏: そうなるんじゃないですかね。実際今回、展示会用に出したものも、それなりに見てもらったんですが、そんなに問題はなかったですね。
――中国のPS VRのマネタイズはどうなりますか? グローバルと同じですか? それとも変えますか?
添田氏: そこは同じです。値付けは各国によってちょっと違いますけども、他のPSタイトルと同じように、パッケージを販売して最初にお金をいただきます。
――今回PS VRのラインナップが、普通の単体版と、PS Camera付き、PS CameraとPS Move付きの3種類が発表されましたが、なぜこの3つにされたんですか?
添田氏: まず、ご承知の通り、中国ではプレイステーションの導入が遅かったので、それがゆえに何が起こっているかというと、PlayStation Camera(PS Camera)がそんなに入ってきていないんです。しかも中国ではカメラ同梱版は売っておらず、別売です。
――そうなんですか。PS Cameraの所有率が相当低いわけですね。
添田氏: もっと言うと、PlayStation Move(PS Move)で遊ぶことを想定したPS VRタイトルはそれなりにありますが、中国ではPS3を販売していないのでPS Moveを持っている人がほとんどいないんですね。という風に考えているうちに、バラバラで買うよりもそれらを同梱したお得なパックを出してご購入いただいた方がお客様のためになるんじゃないかと考えました。
――PS Moveの単体発売も今後始めるのですか?
添田氏: 私としてはそういう希望を持っています。
――では中国での予約は、単体版よりもPS CameraやPS Moveを同梱したパッケージの方が人気が高そうですね。
添田氏: 今の数字を見るとそうですね。欧米、日本の場合はPS3での蓄積もありますし、かつPS Cameraも2010年から商品として出ているので、需要の中身がだいぶ違うんじゃないでしょうか。
――PS CameraやPS Move以前に、PS4自体がまだ普及促進の段階ですから、PS4とPS VRのセットパッケージも人気が出そうですよね。
添田氏: そうですね。