インタビュー

陸・海・空を遊べる「War Thunder」日本サービス開始インタビュー

ハードコアなコンバットシムの国内本格上陸で何が変わる?!

「War Thunder」陸軍
「War Thunder」空軍

 8月9日よりDMM GAMESによる日本国内向けの正式サービスがスタートした本格オンラインコンバットシム「War Thunder」。8月12日には海戦モードの実装も正式発表され、陸での戦車戦、空での空中戦、そして海での海戦を1本のゲームで楽しめる、究極のコンバットシムとしての完成が間近に迫っている。

 DMM GAMESによる日本国内サービスのスタートにより、これまでWar Thunder公式サイトやSteamを通じてプレイしていた既存ユーザーは今後、DMM GAMESサイトを通じて本作をプレイすることになるが、具体的に「War Thunder」のサービスやコンテンツがどのように変わっていくのか、気になるところだ。

 特にDMM GAMESは、これまでブラウザゲームのサービス(特に有名なものは皆さんもお馴染みの「艦隊これくしょん」)を中心に展開してきたこともあって、「War Thunder」のようなコアゲーマー向けのゲームサービスをどのように展開していくかについて未知数な部分も多い。

 そこで今回、DMM GAMESによる本作サービス開始に合わせ、本作のサービスプロデューサーを担当するDMM.com Labo 企画営業本部 第二企画部 ディレクター の稲垣順太氏と、DMM.com Labo ゲームマーケティング本部 マーケティング部 広報の畑山裕美氏にお話を伺い、今後「War Thunder」のサービスがどのような方向に向かっていくか、その計画と意気込みを聞いた。

【War Thunder: Knights of the Sea - Naval Battles Teaser】
Gamescomの開催に合わせて現地時間8月11に正式発表された「War Thunder」の海戦モード。近日中の実装を予告しているが、本作には既に陸・空の要素も実装されているため、単に海戦のゲームが1つ増えるというよりは、陸・海・空が連動した全く新しいゲームになるという期待も高まる

DMM GAMESは本格ゲームのサービスを通じ、日本におけるSteamを目指す

DMM.com Labo 企画営業本部 第二企画部ディレクター の稲垣順太氏(右)と、ゲームマーケティング本部 マーケティング部 広報部の畑山裕美氏(左)

――まず、「War Thunder」をDMM GAMESでサービスを行なうことになった経緯を教えて下さい。

稲垣氏:Gaijinさん(開発元のGaijin Entertainment)に初めてお会いしたのは2年くらい前で、Gaijinさんは海外のパブリッシャーを探していたところでした。その頃、私たちはまだゲーム事業を始めたばかりでしたので具体的な話まではいかなかったのですが、また1年後くらいにもう一度お会いしたときに、互いにこうしたいということを具体的に話すことができました。

 Gaijinさんとしてはやはりマーケティングの部分、それぞれの国・地域でお客さんの集め方がわからないという部分がネックになっていました。私達の方ではゲーム事業もかなり波に乗ってきていましたので、じゃあ実際にやってみようかとGaijinさんが言ってくれたというのが大きいですね。

 私達としても「War Thunder」の面白さを高く評価していましたが、日本のユーザーさんに紹介される機会がそれまであまりなかったということで、ぜひウチでやりましょうとお話をさせていただきまして。そこでお互いの長所を活かしてやっていきましょうと、あとはとんとん調子で進んで、現状に至ります。

 私達としても、ゲームの中に空があって、陸もあって、遠からず海軍も実装されるということで、遊びの幅としても申し分ないですし、現在サービス中のゲームで人気海戦シミュレーションゲームもありますからお客様へのアピールもしやすいだろうということで、お互いのニーズがマッチできたものと考えています。

海軍の実装が行なわれれば、空・海の同時プレイもできるようになるはずだ
DMM GAME PLAYER。将来的にはSteamのようなゲームサービスに発展させていきたいという

――確かに、海軍の実装が行なわれれば、「艦これ」ユーザーの方が興味を持たれるかもしれませんね。

稲垣氏:そうですね。それに、海外のユーザーの方でも、日本の軍事系のゲームやアニメに興味を持っている方がけっこういらっしゃいまして、Gaijinとしてはそういったものを使った色々なコラボをしてみたいということは言っていましたね。

 僕らとしては、世界観を崩すことにもなりかねないので大丈夫ですか、という話しもしたんですが、いや全然大丈夫、ぜひやってくださいよと太鼓判も頂いています。どこまでやっていいかはわからないんですけども(笑)。空軍、陸軍、海軍のコンテンツを絡めて、かなりいろいろなことを展開できるんではないかなと思っています。

既存ユーザーもDMM GAMESを通じたプレイに移行。日本向け独自コンテンツも予定?

DMM GAMES「War Thunder」公式サイト(http://warthunder.dmm.com/)
本作のゲーム内有料通貨である「ゴールデンイーグル」。今後はDMMポイント経由で購入することになる

――具体的に、「War Thunder」の日本国内サービスはどのような形になるのでしょうか?現状でもSteamを通じて普通に日本からも利用できますけれども、これがどう変わるのかというのは気になるところです。

稲垣氏:既に発表させてはいただいたいるのですが、時期を見てSteam上でのサービスはいったん閉じるという方向で進めています。時期的にはDMM GAMESでのサービス開始からあまり間を置かずにと考えています。

 そのための移行期間というものをもうけておりまして、これまでSteamを通してプレイしていただいていたユーザーさんも含めて、日本国内から接続する皆さんについては、将来的には全てDMM GAME PLAYERを通してプレイして頂く形になります。

――なるほど、国内からはDMM経由に完全に置き換えられるわけですか。

稲垣氏:それから私達で手掛ける部分としては、マーケティングと決済の部分になります。有料アイテムの購入について、いままでは決済がちょっとややこしいとか、Steam経由では金額がちょっと高いですとか、いろいろあったかと思いますが、そのあたりの不満点を今後なくして行こうと考えています。

 弊社の場合ですとDMMポイントという決済システムがありまして、これはいろんな形で購入ができます。クレジットカードは国内のものも含めてほとんど使えますし、コンビニでも買えますので、決済の手段が増えて、お客さんとしては使いやすい形になります。

 ログインについては、まずDMM GAME PLAYERを起動していただき、そこから「War Thunder」のランチャーを起動していただく形になります。一手間かかる印象はあるのですけども、ランチャーのほうはゲーム側のアップデータの機能もありますので残す形になります。それ以外の部分ではほぼかわらず、ということになります。

――現状ですと「War Thunder」のアカウントと、Steamのアカウントでプレイしている方の両方がいるかと思いますが、移行についてはどのようになりますか?

稲垣氏:そのまま全部移行できます。ゴールデン・イーグル(ゲーム内マネー)や、それまでに開発した機体の状況などはすべて「War Thunder」のサーバーに保存されていますので、それをユーザーさんのDMMアカウントと紐付ける形でプレイ状況が全て引き継がれる形になります。Steam等で購入されたDLC等も問題なく引き継がれます。データ自体は「War Thunder」の中に入っていますので、今まで買ったものがなくなる、といったことは無いです。入り口が変わるだけ、というふうに認識していただければと思います。

――既存のユーザーさんには多少混乱や抵抗があるかもしれませんね。

稲垣氏:いやー、そうですね。最初の頃に私達の方から情報を出すことが少なくて、かなり混乱を招いてしまったのではないかという反省はあります。その後GaijinさんにFAQのような形で情報を出していただいて、それを交えて私達の方でも日本のユーザーの皆さんにご案内をさせていただいています。

 1番心配されたのは、DMMが間に入ることでマージン等が入り、有料アイテムの金額が上がるんじゃないか、といった部分だったと思います。その点、私達としては、ユーザーの皆さんには世界のユーザーさんと同じ共通のサーバーでプレイしていただくことになりますので、世界の方が100円で買っているものを150円で買わせるといったことはしないというのが前提になっています。為替の問題はありますので、ほぼ変わらない価格、という形でご案内する感じです。今ですと1ドル110円の計算で出させていただいています。

空軍要素は本作で最初から搭載されていたもので、長年続けているベテランユーザーも多い
コックピット視点では本格フライトシミュレーターの風格がある。なおVRにも対応

――「War Thunder」はかなり濃ゆいユーザーさんが多いですしね。

稲垣氏:αテストの時期から数えるともう5年目に入るタイトルですし、かなり凝縮されたユーザーの皆さんがいらっしゃると思います。普通ですとデイリーユーザーの5倍くらいはマンスリーのユーザーがいるというふうに見られると思うんですけれども、「War Thunder」の場合はそれが2~3倍くらいになるのかな、と見ています。

――稲垣さん自身の「War Thunder」プレイ歴はどれくらいですか?

稲垣氏:いやぁ、私はまだ2年くらいなので、そんなに長くはないです(笑)。ランクも30ないくらいかな。あと私は戦車ばっかりやってるので、飛行機もマスターしないといけないかなと頑張っているところです。ただ、「リアリスティックバトル」、「シミュレーターバトル」の飛行機は私にはまだ早いかなといったところで(笑)。

 逆に「アーケードバトル」のほうは、あんなに簡単だとは思わなかったですね。敷居が高そうに見えるんですけど、やってみると本当に簡単だったりするので、皆さんにもぜひやっていただきたいですね。結構無理をしても簡単には落ちないですし、いろんな操縦をして皆さんにも楽しんでいただければと思っています。

――今後は、新しいユーザーを獲得していくことがDMM GAMESとしてのミッションとなりますね。

稲垣氏:そうですね。やっぱりまだ「War Thunder」をご存じない方がたくさんいらっしゃいますし、一度やっていただくと、面白さをかなりわかっていただけるのではないかと思います。

 かなり独特のゲームでもありますし、他のゲームとはやはりユーザー層が少し違うかなという思いもあります。「War Thunder」の場合は本物好きの方に向いているといいますか(笑)、Gaijinでは本当に信じられないほど凝って作っていますので、そういうところに気づける方は「War Thunder」を気に入っていただけると思っています。

――オンラインゲームの運営としては、ユーザーを引っ張っていくためにイベント等の展開も期待したいところです。

稲垣氏:はい、イベントも展開していく予定です。Gaijinのほうでも地域限定のイベントというのは色々やってきた経緯があるのですが、日本でも地域限定のイベントをやらせていただけるということなので、仕掛けていきます。

 あまり突拍子もない、他の国のユーザーさんに比べて日本のユーザーさんが著しく有利になるようなものは難しいのですが、ある程度販売物を安くするといったことはできると思います。また今回、事前登録キャンペーンということで独自のデカールをご用意しましたが、それと同じように今後もいくつかユニークなデカールをご提供できると思います。

 戦車とか飛行機といった特別なユニットについては、Gaijinとしては作れると言っていまして、ただ少し時間がかかるということです。そこで私達としましては、日本のユーザーさんからどういう機体が欲しいかといったご意見を取り入れて、Gaijinに伝えていきたいです。

 その時に資料も一緒に来てますよ、という話ができればいいですね。彼らもやはり資料集めにはかなり苦労していまして、私達にもこの飛行機のデータを集めて欲しい、といった要望も来たりしています。それで私達の方でも博物館とか図書館で調べたりはしているのですけども、まあ大変なんですよね(笑)。そのための専属スタッフが欲しいくらいです。

――特に日本の機体のデータとなると、まとまった形で残ってないなどありそうですね。

稲垣氏:Gaijinのほうでもなかなか見つけられないと言っていましたね。特に彼らが欲しがっているのがテスト飛行の時のデータだと言うんですよ。そういうのが欲しいと言われても、なかなか見当もつかなくて困るといいますか(笑)。それで今、いろんな方にお伺いしています。そこでぜひユーザーの皆さんの力も借りたいというところはありますね。

ユーザー要望を開発元に伝え、反映させるのがミッション。DMM GAMESはプラスアルファを提供していく

日本軍の研究ツリー。空軍は充実しているが陸軍がまだ存在しない
本作の戦車は緻密なダメージモデル等、史実データ至上主義で作りこまれている

――日本の場合、航空機はかなり多数が実装されていますけども、まだ陸軍のツリーが存在しないという問題がありますね。このあたり、DMMさんの力でなんとかなるものでしょうか?

稲垣氏:はい、私達としてもなんとかしたいですね。まずはランク1~2といった低いティアの戦車だけでも入れてもらいたいなと考えています。なので、ユーザーの皆さんからの意見もどんどん集めたいですね。皆さんが言ってくれれば、私達としても、ユーザーさんがこれだけ望んでいます、ぜひ入れてくださいということを言いやすくなります。

 Gaijinの良いところは、ユーザーさんとすごく近くて、ユーザーさんの意見を聞く姿勢と意思があるところです。ですが公式のユーザーフォーラムでは英語でのやりとりになりますから、伝えにくいというところもあると思います。そういうところを私達のほうでお手伝いして、皆さんから集めたご意見を集約してGaijinに伝える、ということをできるんじゃないかなと思っています。

――日本の独自コンテンツを充実させていくためには、ユーザーさん力も大きなものになるということですね。

稲垣氏:そうですね。ユーザーさんの中には、私達などよりもずっと深い知識をお持ちの方や、いろいろなお知り合いをお持ちの方もいらっしゃると思います。この間もとある記者さんから、その資料でしたらこの方が持っていますから、ぜひお話してくださいというサジェッションを頂きまして、早く連絡を取りたいなと(笑)。

――そうすると、今後サービスの展開としては結構長い目で見ていく感じにはなりますか。

稲垣氏:そうですね、私達としても長い目でサービスとコンテンツを充実させていくためにも頑張っていかなければと思っています。最初のほうはユーザーさんにとって、移行等の手間も増えますし、私達との意思疎通がなかなかうまくいかないといったことも出てくるでしょうし、そういった部分でご不安を与えてしまうこともあるかもしれません。

 ですが、Gaijinさんとしても1番気にしていたのが既存のユーザーさんに不利益を与えないことでしたので、私達としてもサービスを立ち上げるにあたって既存のユーザーさんのことを1番に考えてローカライズを進めています。

――ローカライズというと、テキストと音声ということになりますか。

稲垣氏:はい、テキストのローカライズについてはかなり前から進めていまして、現在は弊社で手を入れたものがゲームのほうに入っています。Gaijin謹製のちょっと味のある日本語(笑)の修正ですね。それからフォントも見やすくするため、私達の方で用意したものを1カ月か2カ月前に導入しました。音声も同様ですね。

 ただ音声については、現状のものを気に入っている方もいらっしゃると思いますので、今あるものは残しつつ、プラスアルファとして新たに2人の声優さん、大塚芳忠さんと朴ロ美さんに収録していただいたものを追加で入れています。これについては音声を選ぶオプションで選択肢を増やした形になっていますので、ユーザーさんの好みで選んでいただけます。

ゲーム内容そのものに手を加えることはない、と稲垣氏
戦車戦モードでも頻繁に航空機での出撃ができる。というわけでまず戦車からのデビューがオススメ

――ローカライズの一貫として、ゲームの開発自体にもある程度口を出していく、という考えはありますか?

稲垣氏:いえ、開発そのものに口を出すことは基本的にないですね。少なくとも私達が勝手に何かを変えるということはないです。私達としてはGaijinさんのゲーム開発能力を高く評価していまして、そこはGajinさんの世界ですので。

 そこは私達がどう思うかよりも、ユーザーの皆さんがどう思っているかということが1番重要ですので、皆さんのご要望をお伝えしていくことに注力していきたいと考えています。

 例えばこの戦車を出して欲しいとか、この飛行機を出して欲しいとか、あるいは海戦を早く実装して欲しいといった要望はどんどん出していきたいとは思います。DMMが入ったことで、意見を伝えやすくなった、叶えやすくなったということを実現することに注力していきたいです。

――オンラインゲームの展開では、PCメーカーとのタイアップで推奨PC等を展開するといった方向もありますが、そのあたりはどうですか?

稲垣氏:予定はしているのですが、「War Thunder」自体、オプションを調整するとけっこうどんなPCでも動いちゃいますので、私達としてはどこからを推奨PCにしようかなと考えているところです。でも1番楽しんでいただきたいのは画質を「MAX」に設定したときの映像ですので、良いPCでぜひ楽しんでいただきたいですね。

――最後に、「War Thunder」に関心を持つユーザーのみなさんにメッセージをお願いします。

稲垣氏:既存のユーザーさんにつきましては、最初の頃、私達の方からいろいろと情報を出すのが遅れてしまい、ご迷惑をおかけしてしまった部分もあるかとは思いますが、私達としましては、皆さんが楽しんでいらっしゃる「War Thunder」というゲームを変えることはしたくないと思っています。

 それよりは、DMM GAMESが入ることでプラスアルファできることをご提供していきたいと考えています。私達がGaijinさんにお願いすることは時間がかかることばかりだとは思いますので、ぜひ長い目で見ていただいて、最終的にDMM GAMESのサービスが始まってよかったな、と思っていただけるように頑張っていきたいと思います。

 新規の方に向けましては、敷居が高いかなとお思いの方も多いかと思いますので、もし最初にやるのであれば戦車をオススメしたいです。戦車が上手にプレイできるようになりますと、飛行機に乗りたくなってくる仕掛けもあります。このゲームの良い所というのは、どっちもできるということですね。入り口は全然難しくないゲームですし、高いスペックも要求しませんので、ぜひお気軽に触っていただいて、ハマっていただければ嬉しいです。