インタビュー

中国展開2年目に突入! SIESHプレジデント添田武人氏インタビュー

「ファイナルファンタジーXIV」やその他のタイトルの中国展開について

中国でもいよいよ「ファイナルファンタジーXV」が登場する
ディレクターの田畑氏とガッチリ握手を交わす添田氏
今回発売日は発表されなかったが、2種類のパッケージ情報が公開された

――そして「FFXV」の中国展開についてですが、発表会では別格の扱いでしたが、これはどういった考え方ですか?

添田氏: 「FFXV」はAAAタイトルとして、最初から中国市場も考えて一緒に作っていただいているというところが大きいですね。ですので私たちとしてもこれは、ぜひ中国で成功させたい。やっぱりユーザーの皆様にそういう世界を代表するタイトルが、しっかり中国でも華が開くようなマーケットのモメンタムを作っていきたい。

――スクウェア・エニックスさんの最新タイトルだけに、オンラインでどんどんアップデートが掛かると思うのですが、そのあたりはどのように対応していくつもりですか?

添田氏: それはもう中国のパブリッシャーの東方明珠様がセンサーシップの担当者と話をして決めていくことです。

――今回「FFXV」だけ東方明珠さんがパブリッシャーになっていますが、それは「FFXV」にはゲームのみならず、CG映画やアニメーションも含めて、それらを一括してお願いしたいからなんですか?

添田氏: どうでしょうか。東方明珠さんも色々とお考えがあることとは思いますが、私からコメントは控えます。

――田畑さんは発表会やステージイベントで、繰り返し発売日を出したかったが出せなかったのが残念だと語っていました。

添田氏: 中国の場合、センサーシップのスケジュールが読めないので仕方ないですね。

――中国での発売時期の見込みについては?

添田氏: それはたぶん、修正をしなければならない数によると思います。あとは開発でこういう大作というのはご存知の通りものすごいタイトなスケジュールでやりますので、しかも多言語で。どこまでできるかはわからないですね。

2015年に発表されたPS4版「ファイナルファンタジーXIV」。この1年具体的な進捗はないようだ
中国ローンチに合わせて発表された「3on3」。こちらは年内にテストがスタートするようだ

――ちなみに去年、目玉として発表したPS4版「FFXIV」はどういう状況ですか?

添田氏: プロジェクトは進んでいます。

――SIESHブースでもShandaさんのブースでも見ることができませんでした。

添田氏: テクニカル的に結構、色々と解決しなければならない課題があるらしいので。

――ではまだスケジュールは見えてない?

添田氏: まだですね。本当は去年話したことを、今年キッチリできればいいと考えています。「FFXIV」だけではなく、「3on3 Freestyle」もですね。

――「3on3」も何か問題を抱えているのですか?

添田氏: いえ、「3on3」はもう去年コンセプトを紹介して、今年は完美世界さんが中国でパブリッシングする予定です。

ユーザーイベントは毎月実施! SIESHのこれまでとこれからの取り組みについて

ユーザーとの直接的な触れあいを重視する添田氏
PS VRは22カ所で体験機会を提供する
体験施設のひとつ「GAMEPOCH Experience Center」

――ユーザーとのリアルイベントは、どれくらいのサイクルでやっているんですか?

添田氏: ユーザーイベントはもうほぼ毎月やっています。

――これまで何都市くらい行きましたか?

添田氏: 今までカバーしたのは、メジャーなところで16都市くらいです。

――遠いところでは?

添田氏: 奥地でいうと重慶でもやりましたね。

――チベットとかウルムチとかでも?

添田氏: そこまではまだ行けてませんね(笑)。後は廈門にも行きました。

――地域によって、お客さんの質に違いはありますか?

添田氏: 地方に行けばどこでも、ユーザーの皆様の熱は熱いですね。やっぱりいろんなイベントをやっていないし、メーカーの人に直接会うとか、話をすることが少ないので、すごく新鮮なんだと。

――イベントの内容はどんな感じなんですか?

添田氏: 新しいタイトルのローンチの時には、必ずイベントをやります。

――いろいろな都市で違うことをやるんですか?

添田氏: ロードショーでやるんですよ。例えば前回、「トランスフォーマー」のタイトルをローンチしたときに、4都市でやったんですけれども、カフェを借り切って、そこで親子デーというのをやりました。お父さんが子どもを連れてきてそこでゲームをいっしょに遊んだりとか、ちょっとしたパズルゲームみたいなものをやったりとか。そこでお父さんが息子さんに「トランスフォーマーとは」という話をするわけです。中国の場合世代によって受けた情報ってだいぶ違いますので、「トランスフォーマー」はちょうどいま20代後半から30代前半の人たちが当時受けた情報なんですね。結構喜ばれましたね。

――お母さんは?

添田氏: 当然一緒に来ます。別のタイトルの時には結構カップルの人が多かったですね。そういうものを、何都市かでやって、あとはちょうど私たちが中国展開を開始して1周年の際に、1周年記念のイベントを4カ所、北京、上海、広州、成都で実施しました。1カ所でだいたい200人か300人くらい集まるんです、そしてみんなでゲームを楽しく3時間、4時間遊ぶんです。

――そこに添田さんも参加されるわけですか?

添田氏: そうです。ゲームをしたり、サインをしたり、みんなと写真を撮ったり。実際に1年やってみて思うのは、コンソールゲームのローカルビジネスができて、正々堂々とみんなで遊ぶということができるようになったんですね。だから、この点をだんだんと線につなげていく活動をやっていきたいですね。

――なるほど遊び手にとっても同じゲームでも、受け取り方、向き合い方の質が違うわけですね。

添田氏: コンソールゲームが出てくるきっかけを、ビジネスを始めたことで作れたのは結構良かったと思います。コアユーザーだけではなく、全くゲームをやっていなかった人が、ショッピングモールでロードショーをやって、「面白いじゃん」と。「このゲーム、お父さん、やりたいんだけど」、で一緒に買っていくとか。昨日も親子連れで、お父さんが子どもに買ってあげていたのが3人くらいいましたよ。

――良いエピソードですね。

添田氏: ユーザーの皆様の顔が見える。ユーザーの皆様と、ダイレクトにコミュニケーションができる。イベントを仕掛けることができるというところが一番大きいですよね。

 逆にそれは使っている中で、いろいろと課題があったり、わからないところがあったりあれば、どんどん問い合わせてもらえればいい。売ったらこのビジネスは終わりというものではなく、プレイステーションはハードウェアが変わった後でどんどんタイトルが出てきますから、お客さんとの接点がずっとつながるんですね。ですので私たちとしてもこういうのは、どんどん続けていこうと思っています。

――一方、PlayStation Network(PSN)のサービスについては、中国とグローバルでまだ差がありますが、徐々にその差は縮まっているのですか? それともあまり変わっていませんか?

添田氏: 一番大きい違いはコンテンツの数と内容です。中国のPlayStation Store(PS Store)に載せているコンテンツはすべて中国のセンサーシップを受けている。センサーシップが通らないものはそもそも載せられない。どうしてもそこのところで差分がでるのは、仕方がないです。一方で、私たちとしては、中国の国内のタイトルのボリュームを少し増やす、あるいは比率を高める活動を通じて、中国のPS Storeの魅力を別の側面で出せるような仕組みがあればと思います。いわゆる単純な量だけではなくて。

――PS Plusの内容は違いますか?

添田氏: PS Plusは3カ月、半年、1年単位の有料サービスというところはグローバルと同じです。後は例えば無料で遊べるゲームの数が違いますね。

――映画とかアニメの提供はスタートしましたか?

添田氏: まだ開始していません。スタートした1年目はまずはゲームに特化したサービスですね。

――もう2年目に入りましたが、そろそろ考えていきたい?

添田氏: いろいろと考えていきたいなと思っています。ただ、ネットワークサービスは中国では様々な規制がかかっていますので、映像系のものになった瞬間、今度は別のライセンスが必要だったりですとか、ちょっとハードルが高いですね。

――最終的には、中国のPS Storeでも映画やアニメを展開したいと考えているんですか?

添田氏: 中国でもできるだけ海外のサービスは提供できるようにはしたいと、方向性としては考えていますが、ただし、それができる前提条件、時期、それは私たちのコントロール外でもあります。まずはゲームそのものもまだ完璧にはいけてないので、同時に進めてもいいんだけれど、しばらくはゲームに特化したいですね。

――中国におけるPS4そのものの普及のスピードは想定内ですか、それとも遅い?

添田氏: 想定内です。ただ、当初考えていた計画の中で、実はちょっと意外感があったのは、ビジネスの開始によって、こんなに多くのファンが出てきたことです。そして新規のユーザーが最近になってすごく増えています。

――それはなぜですか?

添田氏: やっぱり、他にはないオリジナルのゲームを提供できているからだと思います。今までは知らなかったけれど、友達に誘われてプレイステーションのゲームをやろうという人達の分母が、コアの人たちとコミュニケーションを密にすると、その人たちが広めてくれて、その結果、中国版の正規品を購入されるんです。そんな中で、私たちのT-mall(天猫、アリババが展開する世界最大規模のECサイト)のユーザーの情報を見ていると、実に85%が新規ユーザーなんです。

――利用者の85%が新規ですか?

添田氏: そうです。私たちの中国製の製品を買ってもらう人たちの。これには驚いています。

――もともとコンソールゲームのファンが正規品を買ってるだけではなくて、これまでまったく縁がなかった人が買ってると?

添田氏: そうです。これはすごく嬉しいことです。

中国でのヒット作は「DRIVECLUB」
「グランツーリスモSPORT」は中国でも大ヒットが期待される

――この1年でベストヒットタイトルは何ですか?

添田氏: 今のところ、1番数で言うとレースゲームの「DRIVECLUB」ですね。

――ということは「GT SPORT」は期待できますね。

添田氏: はい、中国は山内さんのファンが凄いんです。

――今年は例年にも増して楽しみな1年になりそうですね。

添田氏: 1年間やってみて強く感じたのは、中にいないとなかなか見えないものがあるということです。中にいるとすごく具体的に見える。やっぱりプレイステーションの良さといいますか、コンソールゲームを受け入れる素地は中国にもある。それをいかに開花させるか。小さい花を大きな花に。これは、もう私たち自身がやらなければならないことも色々あります。

 あとはいろんな各方面です。センサーシップであったりとか、ローカルなゲームを作っている私たちのローカルパートナー様とか、そういうところともっともっと、ああこの分野は今ここがダメなのでこういう風にしていこうとか、関係を密着してやらなければいけない。それができたのが今回のGamepoch様ですね。ああいう体験施設は海外ではあんまりないパターンですね。

――最後にゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

添田氏: 2年目の今年はすべてに向けて加速です。進むべき道、やるべきことはしっかりと見えてきていますので、あとはエンジンを全開にして「CHINA HERO PROJECT」のような新しいことと、継続してやっていかなければならないことの両方を加速していかなければならないと思っています。

 そういう意味においては事業全体の加速と今までやってきた、セールスをもっともっと加速させていきたいですね。たとえば、今回のChinaJoyでもわかりやすいんですが、ブースの面積が720平米と、去年よりも3分の1くらい大きくなってます。試遊出展タイトルも去年に比べると本数が増えています。引き続き中国のプレイステーション展開にご期待いただければと思います。

――ありがとうございました。